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宮城県石巻市の島、田代島を歩いてきました。
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前回の「石巻市田代診療所跡」の続きで、そこから引き続き「田代島 島のえき」を目指して歩いていきます。
森の中に通されたやや上りの舗装路を歩いていくのですが、そこは猫の楽園・田代島、思い出したように猫が前から歩いてきます。
猫と人間、お互い何もなくすれ違うのかと思いきや、猫は少し手前で急にこちらの前を斜め横断してきて、ちょうど目の前にきたあたりでスピードを落とし「何かやることがあるのではないか」と気配で訴えかけてくるので、かまってやらざるを得ず、そうしながらの移動なので、距離に比して島のえきまで時間がかかりました。
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石巻市立田代小学校(廃校)の校門前まで来たら、島のえきまであと少しです。
田代小学校の廃校は1989(平成元)年で、それ以降、島の小学生は島外の小学校に通っているという。
田代島の人口は昭和30年代には1000人を超えていたものの、今は約50人とのことで、島は限界集落であるとされています。
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「田代島 島のえき」は、田代小学校に隣接していた石巻市立田代中学校(廃校)の跡地にあり、島の中間地点にあるため、観光客の丁度よい休憩場所となっています。
島のえきは田代島でもっとも猫が集まる場所だとのことで、テラスには何十匹という単位の数の猫がたむろしていました。
足の踏み場もないくらいで、うっかりすると踏んづけてしまいそうですが、そんなことをする人はこの島に来ないのだろう、人間が近づいても猫は自分からどいたりはしません。
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島の駅にはトイレも設置されているのですが、トイレに続く道もくつろぐ猫でいっぱいでした。
それでも、日なたになっているところはきちんと避けているところが面白いですね。
トイレのドアの前にまで猫が居座っていたので、ここはやむを得ずその猫に一言断って、なんとかどいてもらいました。
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時間になるとキャットフードが配られ、ほとんど動かない猫たちもその時間だけは機敏に動きます。
日がな一日ゴロゴロし、島に来る人々に愛され、時間になれば飯にありつける田代島の猫たち。
猫よりも長生きできるとはいえ、生きていくために日々様々なことで悩み、生きることだけで苦しい人間と、いったいどちらが幸せな生涯といえるだろう。
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島のえきの前には、中学校跡地らしく二宮金次郎の像があるのですが、その像の前にボロボロのプロペラが置いてありました。
これはなんでしょうか?
気になりましたが、なんの解説板もなくよく分からないので、いったん島のえきから北へ300mの位置にある猫神社(美與利大明神)へ参拝に行くこととしました。
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猫の安全と大漁を祈願して、猫を猫神様として祀る猫神社です。
神社というより祠ですが、猫が祠の前で寝そべっているところがいかにも猫神社らしいと思いました。
猫神様の御利益があるように、神社だけでなくその前にいる猫にもお詣りしておきました。
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猫神社を参拝後、猫と遊んでいる子供たちを迎えに再び島のえきにやって来ると、先ほどの謎のプロペラに、一匹の猫が寄りかかっていました。
猫に「このプロペラに注目しろ」と導かれているような気がして、プロペラについて調べてみたら、このプロペラはなんと大日本帝国海軍の陸上攻撃機「九六式陸上攻撃機」のプロペラであるという。
近年、田代島の近海から引き揚げられたものらしく、機体はまだ田代島近海に眠っているとのことです。
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十五年戦争が始まった1930年代、帝国海軍は航空本部技術部長・山本五十六少将の号令のもと、新型発動機を搭載した陸上攻撃機の開発を進め、1935(昭和10)年、世界的な航空機となる海軍九六式陸上攻撃機を誕生させました。
長大な航続距離をもつこの九六式陸上攻撃機は、1937(昭和12)年の日中戦争勃発とともに中国大陸への渡洋爆撃を行い、アジア・太平洋戦争では緒戦のマレー沖海戦において、一式陸上攻撃機との協同でイギリスの戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈する戦果を挙げるなどした有名な海軍航空機です。
田代島近海に墜落した九六式陸上攻撃機は、どのような理由で墜落してしまったのか分かりませんが、博物館に展示されるような貴重な戦争遺跡と思われます。
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しかし現在、野ざらしとなっているこのプロペラの周囲は猫の一休み場となっているようで、この後も違う猫がプロペラ近くにやってきて寝転んでいました。
日陰だし、冷たい金属は寄りかかるのにちょうどいいところなのでしょうか。
猫の島・田代島に戦争遺跡があるとは思いもしませんでしたが、猫神様のご利益か、貴重なものを見せていただきありがとうございました。
(訪問月2023年8月)