210821 ノストラダムス預言詩10巻72章は仏語なのか
前に書いたノストラダムス預言詩10巻72章の記事(210715)の中で、この預言詩の本当の作者がノストラダムスこと、ミシェル・ド・ノートルダムではなくて別の誰かだと書いたその理由として
②生前公表されたノートルダム作の預言詩と比較すると数字の表記がフランス語的とは言えずむしろラテン語(イタリア語)であること。
と述べたことに対して何人かの方からご質問を頂戴した。

中に、(10巻72番の預言詩は)具体的にどこがフランス語ではないのか?という質問があった。

んー、これには少しがっかりだった。この質問者が『大学(教養課程)でフランス語を学んだ』と書いていたからだ。

さて
L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois
Du ciel viendra un grand Roi D'effrayeur
Resusciter le grand Roi D'Angolmois
Avant apres Mars regner per bon heur
この10章72章の預言詩に数字(Cardinal-number)があるのは(厳密には)一行目だけである。それが
milとneuf(二回)とcensとnonanteとsept
の五個。

まずのっけからだが、千を意味するmilはフランス語ならばmilleが正しいスペル。

milになっている理由の考察は後回しにするが、milが数字の千なのは現世ではスペイン語とポルトガル語(※註)だけだ。スペイン語のmilは(古代)ラテン語からの借用というか継承である。ポルトガル語でmilなのはスペイン語の影響ということになる。

ノストラダムス(もちろん本人ではない、ノストラダムスの名を騙るニセモノ)があえて(古代)ラテン語のmilをここに入れたのは単なる間違いということではない。もちろん印刷業者による誤植なのでもない。

何故なら、版を重ねてもこのmilはそのままラテン語のスペルのままだからだ。理由はあるのだろう。

私たち現代人にはその理由がわからない。状況証拠を積み重ねて推理するしかないのだ。

手っ取り早く一番解りやすい理由(推理)は、この預言詩には元ネタとなる四行詩があって、彼はその行をそのまま丸パクリした可能性だろう。

つまり、ノストラダムスよりはるか以前に、古いラテン語のカトラン(四行)デカシラブル(十音節)形式の、預言詩なのか風刺なのか、それとも単なる寓意詩なのかそはれはわからないが1999年を入れ込んだ詩があり、それがそのまま使われているのでフランス語ではないという説である。

ほかにも、接続(英語のand つまり&)のet が入ると長くなるので省いて音節を整える必要からあえてmille をmilとラテン語式の表記にしたという(あくまでもノストラダムス作を信奉する人たちによる)説などがある。

しかし、直截な、ぶっちゃけをいうと.、生前公表のノストラダムス預言詩は千をmilleと(フランス語)表記しているのが多数を占めてるのに、死後公開の五巻以降になるとmilになっているのが多くなる、というのは、すなわち五巻以降の作者はノストラダムス本人でない(可能性が高くなる)という大きな証拠なのである。

nonanteはnonagintaという90を意味するラテン語から派生した古代フランス語だが、15世紀フランソア大王の時代、東西フランク王国の分裂と西ゴート王国の併合を経て誕生した正字法フランス語が定められたあとも、イタリアに近いスイスやスペインに近い南仏では「90」を意味する数字として使われ続けた。正字法での「90」の発音と表記はもちろん「quatre-vingt-dix(カトル・ヴァン・ディス)」。現行フランス語にもそのまま引き継がれている。

さて、わたしが質問者に対して『がっかりした』という感想を持つのは(それを表明するのは)失礼なことには違いない。

しかし、質問を受けたのはこのわたしなのだからあえて「がっかりした」と書くのだ。

まあでもこの質問者だって所詮は素人である。ノストラダムスの研究をしているというわけでもない。

本当にわたしが許せないのは、ノストラダムスの研究家を名乗り、テレビ番組に出演してノストラダムスについてウソデタラメばかりをしゃべるような連中であり、そういうなんちゃって研究家を出してウソをしゃべらせて人類滅亡預言の番組を作って流すようなクソなテレビ局だ。(つづく、かもよ)
※[註]
ここで『スペイン語とポルトガル語だけ』と言っているのはもちろん(ラテン語系列)主要五か国語のうちでスペイン・ポルトガル語だけということ。現在でもラテン語属(族)と分類されている言語は約20ある。イタリア語スペイン語フランス語ポルトガル語、そして現世ラテン語(バチカン市国公用語)以外でも、ルーマニア語やベルギーの公用語のフラマン語(系)も大きくいうとラテン語の後継に含まれる。そのなかには数字の千をmilと表記する語族もあることはあるだろう、今でも。

『スペイン語とポルトガル語だけだ』と言い切るような書き方をすると、このような少数の、主要でない語族を持ち出してきて『ウソ書くな』みたいなことを寄越すコメンタが出てくるのが困ったちゃんである。

特にオカルト業界にはこういう自称論破王が何人かいる。

むかしこんなことがあった。たとえば、組織名と個人名を併記した場合、それはその個人が併記された組織に所属するという社会通念がある。誤解を招くような書き方をしたら、それは読む側の責任ではなく書いた側にある。このことを諭したら、その人物は、自分がさいとうプロと仕事をしたときのことを持ち出して「○○敏○○さいとうプロ 」と署名記事にしたときのことを持ち出して「誰もわたしのことをさいとうプロ所属だと思わなかった」と反論してきた。そんなアホなオカルト関係者は実際いたのである。

しかし、そんなの普通に単なる誤記の類いが見逃されたということであって、それは組織名称+個人名の併記が所属を示すという社会通念を否定したことにもなんにもなっていない。

いやもうね、オカルトの人たちすべてがこういう硬直した大脳の持ち主だとはいわないが、オカルト業界人特有の職業病はなぜか脳梗塞のような高血圧と不摂生からくる糖尿病、高脂血症である。不思議なもんだが。それこそ、オカルトだよな。


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