『バビル2世』感想
『バビル2世』(文庫版)及び姉妹編である『その名は101』を読んだんだけど、これが本当に素晴らしいバトル漫画だったので語れる部分を語っておく。大昔に読んだんだけど、なんとなく読み返したくなったので読んだら、これが本当に面白くて感動したのでした。現代の少年漫画は誇張ではなくこれを見習って欲しい。
何と言うか、現代の少年漫画に多く見られる不満点が、この作品にはまったくないというとことが素晴らしいんだよな。以下、『バビル2世』の素晴らしい点。
・主人公がまったく容赦ない。
まったくこの主人公は殺る気に満ち満ちているぜー。なんとなれば、相手を生かせば、それだけ自分の命の危機に直結しているので、勝機は絶対に逃さない。そして勝機があれば必ず殺る。相手が命乞いをしようと泣きわめこうがお構いなし。すげー。
・主人公が無敵ではない。
バビル2世は確かに最強なんだけど、無敵と言うわけではないんだよね。隙を突けば銃でも殺せる。多勢無勢で押しつぶせばしばしば危機に陥る。油断すればどんな最強の力の持ち主でも死に掛けるところが容赦ねえよなー。
・組織の力は偉大である。
世界征服をたくらむヨミ様は、個人能力ではバビル2世に及ばない。一対一で戦えば、基本的にヨミ様に勝ち目はない。それならばどうするかと言えば、その圧倒的カリスマ性と政治力によって作り上げた組織の力によって対抗するんだね。前述したけど、バビル2世は最強ではあっても無敵ではない。さまざまな策略と組織力でもって対抗していくヨミ様はかっこいい。きちんとそのための手段も、すごく納得のいく「これならバビル2世もだめかもしれない」作戦なんだもんな。そして組織力で負けているために危機に陥ったバビル2世のとった手段が、日本政府の情報局に接触し、力を借りるあたりも素晴らしい。最強の力を持っていても、個人では戦局は動かせないのです。
・主人公も敵も油断と言う言葉がない。
バビル2世もヨミ様も、お互いの行使しえる最善を常に尽くしているところがすごい。ヨミ様が策略をしかけ、しかしバビル2世はそれを察知し迅速に回避し、だが回避していることを予測しているヨミ様はさらなる攻撃を仕掛け、回避していることがばれたバビル2世はさらなる機転で攻撃を退け…延々とこれが繰り返される。どっちも基本的に楽観論とは無縁で、基本的に相手は自分の行動を予測して手段を打ってくることを予測しているので、もはやお互いどっちが先に疲弊してミスするのかを待つ領域になってる。この駆け引きには、もはや何と言うか執念と言うか妄執と言うか、とにかく曰く言いがたい緊張感がある。
・敵に魅力がある。
なんつってもヨミ様がいい。バビル2世の最大の敵なんだけど、どっちかと言うと、圧倒的な力を持ってせまってくるバビル2世を、ヨミ様がなんとかしてしのいでいくところが、すごくかっこいい。また、部下思いで、決して部下を使い捨てにしない。もちろん非情な判断をすることはあるけど、それはより多くの部下を救うため、敵を確実に倒すための決断で、時には部下を身を挺して守ることさえある。まあそんなヨミ様や部下の人たちを容赦なく蹂躙していくのがバビル2世なのですがー…。どっちが悪党なんだかわからん。
まあ他にも良いところはいっぱいあるけど、現在の少年漫画にありがちなのが、主人公の覚悟の無さと、組織力の軽視と、油断の多さかなー。主人公が最強の能力者だったりするのは別にいいんだけど、それに対する組織のやり方が甘かったり(刺客をわざわざ一人づつ送り込んで各個撃破されたり)、勝敗の結果がそのそも敵の油断で終わったり(なん…だと…そんな力が残っていたとは…とか。さっさと殺せよ)。ジャンプで言えば、最近だとワンピースとネウロぐらいだよ、組織力の描写と油断のない駆け引きバトルをやってたの。
まあ、ちょっと現代の漫画と比べると人物描写が淡白と言うか、心理描写すらほとんどないので、バビル2世が何を考えているのかわからんとか、あとバビル2世は基本孤独で、友達と呼べる相手いないので日常が想像できないとかあるんだけどね。でも、それがないからこそ、このスピード感につながっていると考えれば、個人的にはこれぐらいがちょうどいいかなー。
ただ、バビル2世にも不満がないわけじゃなくて、特に第4部はいらない。これは本当に蛇足。駆け引きも不満だし、緊張感もない。なので僕の中では、『バビル2世』3部→『その名は101』で主人公が生死不明になった時点で終了しています。これで終われば本当に名作。
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コメント
OVAジャイアントロボにおけるビッグファイヤはバビル2世だと言うことは周知の事実ですが BF団の命名は初代バビルに敬意を払いバビルザファーストからBFと命名したと推察したのですが如何でしょうか?
投稿: | 2014.03.22 18:53