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ロマンシング サガ2|ゲームの遺伝子解析記録vol.6

いつもご視聴ありがとうございます。
ゲームゲノム第6回「ひらめきで歴史を作る~ロマンシング サガ2~」を担当させていただきましたディレクターの中村です。ファミコンからスイッチまで、ゲームとともに育ち、今もつらい時はゲームに助けられながら暮らしています。
好きなハードはドリームキャスト。今回取り上げた『ロマンシング サガ2』(以下、愛を込めて『ロマサガ2』と呼ばせていただきます)で好きなキャラはホーリーオーダーです。

まずはこちらをご覧ください。一部の30代なら見るだけでテンションが上がる「スーファミの箱」ですね。今回の番組制作でどうしても撮影したいカットがありまして、私の実家の押し入れから発掘したものです。

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小学校の頃遊んでいたスーファミのケースです。

中を開けてみると…ご覧ください。『ロマサガ2』のロムカセットです!
(上石神井のゲームショップでお小遣いをはたいて買ったのをよく覚えています。)

画像 ロマサガ2のソフト

さて、試しにこれを起動してみると…

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きちんとデータまで残っていました!
主人公の名前が当時好きだったロボットアニメのライバルロボの名前ですからおよそ28年前のデータです。それが、まだ動くなんて日本の技術はすごいですね。そう、実は番組ではSFC版のこのセーブデータを使った映像も1カットだけ入っています。ぜひNHKプラスの「見逃し配信」などで探してみてください。
(その他の映像はリマスター版のゲームを使用しています)

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この『ロマサガ2』は19作ある「サガシリーズ」の5作目にあたるタイトルです。ご覧になった皆さんの中には“数あるサガシリーズの中で、どうしてロマサガ2なんだろう?”と思われる方もいるかもしれません。それもそのはずで、ご出演いただいた河津秋敏さんの手掛けた「サガ」のゲーム達は、それぞれに強烈な「ゲノム」を持っています。実は番組の準備段階では候補として複数の「サガ」が挙がっていました。その中で今回は『ロマサガ2』をぜひ取り上げたい!となった理由が、副題にもなっている「ひらめきで歴史を作る」という要素でした。

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下から2番目のキャラクターが黄色い電球を出して「ひらめいて」います

ひらめき」。バトルの中で電球が光ると、新たな技を覚えて強くなる、シリーズを代表するシステムです。単純に見えますが、強敵相手に閃きによって突然強力な技を繰り出し、逆転して勝つというドラマが生まれる、しびれる仕組みです。まるで少年漫画で「主人公が覚醒して敵を倒す」かのような驚きがあり、私が初めてプレイしたときは大興奮したことを覚えています。今回ゲストとしてご出演いただいた、ミュージシャンで俳優の金子ノブアキさんのゲームプレイでも、ノエル相手に見切りを閃いて勝つというミラクルがありました。一人でプレイしていても本当にガッツポーズが出ます。

ただ、『ロマサガ2』のいいところは、この閃きが出るまでが一筋縄ではいかないところです。実は「ある特定の技から閃きやすい」技があったり「ある武器からしか閃かない」技があったり、プレイヤーが色々と試さないと、強い技を閃かないようになっているんです。つまりコツコツとした試行錯誤と粘りが突破口を生むということ。そう、本当にただ偶然出てきた「思いつき」と、この「閃き」は似て非なるものなのです!
テレビ番組のディレクターをしていると「とにかく突飛なアイデアの企画を通したい」と、その場の思い付きのような企画書を書いてしまうことがよくあります。
ですが、実際に番組として実現するのは突飛なように見えて「コツコツした取材の裏付けがある」とか「今まで満たせなかった視聴者のニーズに応えられる」…まさに「閃き」によるものばかりです。
大人になるほど胸に来る、学ぶところの多い仕組みだと思います。

画像 三浦大知さん 金子ノブアキさん
七英雄ノエルを撃破、喜びの瞬間

もう一つ素晴らしいのが、「プレイヤーごとに違った物語を遊ぶ」という仕組みです。番組では「カンバーランドという同盟国を無事に領土にできるか」というイベントを例に挙げましたが、あらゆる選択で物語が変わっていきます。本作の宿敵である七英雄の一人とは、一旦和平を結ぶことすらも可能なんです。小学生の頃、私にはエンドウ君というロマサガ友達がいました。ただ当時はこんなに進め方で物語が変わるゲームだと知らなかったので、私とエンドウ君で同じゲームをやっているはずなのにいまひとつトークがかみ合わないんですね。たまに微妙な空気になったのを今も覚えています。

さらに、主人公=皇帝が交代していきます。イベントが終わったら100年の時が経って、皇帝継承。強い敵相手に全滅したら、皇帝継承。次々に主人公も仲間も変わっていきます。最初にプレイしたときは「なんで愛着のある仲間たちを変えなきゃいけないんだ!」とガッカリしたのを覚えています。ですが、プレイしていくと、その印象が変わっていきました。前の皇帝や仲間たちが得た武器や覚えた技は、後の皇帝にも引き継がれるからです。技を使うと時に「あ~これ、前にあいつが閃いた技だ…」と昔の仲間のことを思い出すんですね。人は亡くなっても、遺すものがある。「閃き」は次の世代に継がれることで価値が増していく。人の営みの積み重ねまでをも感じさせてくれる奥深いシステムです。
「自分もわずかでも、何かをだれかに継承するのかもしれない」という勇気をもらった気分になります。

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伊藤賢治さんのBGMも相まって、盛り上がります!

閃きと変わっていく物語、この二つが合わさってプレイヤーは「自分だけの歴史を作り上げた」という体験をすることができます。他の媒体では味わうことのできない、ゲームならではの体験ではないでしょうか。金子ノブアキさんが『ロマサガ2』を評して「かっこいい大人が作る、かっこいい大人のRPG」とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。今回はこの、何年経っても色あせない「ゲノム」の一部でも伝えられればと願いながら制作をさせていただきました。

画像 金子ノブアキさん

そして今回、何よりうれしかったのがクリエイターの河津秋敏さんのゲーム哲学の一片を番組でご紹介できたことでした。河津さんはRPGの世界では異色の存在で、新作を作るたびに今までにない新しい仕組みを搭載してくれます。「技と技とが合体する連携」「すべての行動を回転するリールで決定するシステム」などなど、度肝どぎもを抜かれた経験は、挙げればきりがありません。新作のたびに過去作と全く違うゲーム体験ができるので、河津さんが携わる作品の発売をワクワクしながら待ってしまう―そんなクリエイターです。

今回取材を通して見えてきたのが、河津さんのそうした「挑戦的なゲーム作り」はすべてユーザーを楽しませるという部分を考え抜いた末に生まれたものだということでした。例えば閃きシステムは「RPGで一番楽しい成長の瞬間を、バトルの最中にも味わってほしい」。
物語の変化や継承は「プレイヤーの価値観をゲームに反映させたい」というところから出発されたそうです。今まで無心にプレイしていた一つ一つのゲームの仕組みに、クリエイターの願いが込められている。スタジオでの金子ノブアキさんのお言葉を借りるなら、すごい体験をさせてもらった」という気持ちになります。

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「サガシリーズ」を30年以上制作してきた 河津秋敏さん

そしてこれは半分ファンとしての妄想なのですが、河津さんが斬新なシステムを仕掛けてくる時、そのシステムの狙いをユーザーが理解して楽しみきるに違いないという、ある種の「ユーザーへの信頼」のようなものを感じることもあります。
ですから、河津さんの「ゲームはプレイしてもらって最後まで行ってもらわないと完成しないんですよね。本当にプレイヤーが最後までやったからこそそのゲームが初めて完結するので、そういう意味では最後のピースをはめるのはプレイヤー」という言葉をスタジオの副調整室で聞いた時には、ちょっとウルッと来てしまいました。
作品を通して、ゲームという文化の可能性を広げ、さまざまな人たちの人生を豊かにしてくれた偉大な存在だと、改めて確信いたしました。ぜひ皆さんにももう一度、河津さんの作品の持つ「ゲノム」を味わってほしいと願っております。

画像 河津さん

最後になりましたが、今回の番組では、メーカーの皆さんにご理解をいただき、ラスボスの第一形態やエンディングの一部までをご紹介させていただきました。御礼申し上げます。
(あのラスボスの恐るべき本領も、エンディングに仕掛けられたさらに物凄ものすごい仕掛けもまだまだ隠されておりますので、よろしければご自身の目で確かめてください!)

また、番組のゲーム映像はすべて私が実際にゲームをプレイして撮影しているのですが、手がかりにしたのは、ファンの有志の皆さんが長年ネットの世界に残してきた様々な攻略情報や詳細な分析の数々でした。御礼申し上げます。
(特にダンターグの形態変化の複雑な法則について、様々なファンサイトの情報から勉強させていただきました)

最後に、今回のロケで一番うれしかった瞬間の写真です。

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「下り飛竜」という技を閃くためにはどうしてもこれが必要でした。

氷竜など何百倒したかしれないよ…。

「ゲームゲノム」第6回は2022年11月16日23時28分まで「NHKプラス」で見逃し配信をしています。

画像 NHKプラスの見逃し配信案内

ディレクター  中村友信

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