やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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遅 く な り ま し た 。

理由は察しの良い方なら想像がついているかと思いますが、後書きにしましょう。


九校戦編13

~雫side~

 

 

 私の家はそこそこ大きな資産家の家で、所謂富裕層のゴタゴタやお家騒動、政略結婚などの話についてはそこそこ耳年増な所がある。

 実際、そういった場面に遭遇したことも珍しくないし政略結婚をした知り合いも何人か知っている。

 それ故にある程度の力を持った家が何かを望んだり、家が公認で物事にあたるということがどれほどの影響力を持つのかはよく分かってるつもり。

 こういった家の意向にその家の子女の望みが大きく影響するのは珍しくないし、実際に"自分の娘が取引相手に嫌悪感を持ったが故に取引が無くなった”なんて話は御伽噺でもなんでもなく現実に起こる事。

 事実、うちの家に遊びに来てたほのかに失礼を働いた取引先の人間にパパが怒って、その関連会社と取引を打ち切った事があったし。

 だからこそ、目の前で話してる内容は看過出来ないし、そこまで話が進んでることに恐怖した。

 旦那様?王子様?婚約者?

 盗み聞きの趣味は無いからさっさと話に加わりたいんだけど、漏れ聞こえてくる内容が穏やかじゃない。

 話してるのは一色愛梨さんだからこの話は一色家の中でもかなり発言が重い内容になるし、そもそもこんな話が出てる段階でほぼ一色家公認の婚約者も同然。

 ・・・なんか、出てくる単語が想像の斜め上過ぎて一周回って冷静になってきちゃった。

 とりあえず、このまま放置したら外堀を埋められて八幡の関係は手が出せない状態にされかねない。八幡がいかに元師補十八家の家だとしても現役の師補十八家が相手だと分が悪いと思うし。

 それに一色さん。この人、必要だと感じたことなら一切手段を選ばないタイプだと思う。野心家の経営者みたいな眼をしてるし。

 この人は明確な敵。手を抜いてたら呑まれかねない。

 とりあえず、まずは。

 

「ねぇ、八幡。今の話、どう言うこと?」

 

 八幡にお話をしてからかな。

 

 

 

 

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~愛梨side~

 

 

 

 

「ねぇ、八幡。今の話、どう言うこと?」

 

 先程に続いて2回目の招かれざる乱入者。

 魔法科高校の生徒は全体的に礼節という物を学び直すべきではないかしら?・・・あら?この顔確か・・・。

 

「もしかして北山雫さん、かしら?」

 

「うん久しぶり。

 多分うちのパーティーに参加していただいた時以来だから数年ぶり。」

 

 とても久しぶりですが、一校に通っていたのですね。

 にしても雫さんはこういった場面で空気が読めないような人ではない筈。何よりそういった躾はしっかりと受けていることでしょう。少なくとも話し中に横入りをする様な印象はありません。

 となれば何を目的にこの様な・・・。

 

「北山さんはどういったご用件なのかしら。

 見ての通り今比企谷さんとお話中なので後にしていただければ助かるのですが?」

 

「そうしたいのは山々だけど、聞き流すにしては大き過ぎる内容が聞こえてきたから。

 で、八幡?八幡に婚約者が居るのは初耳。

 詳しく聞きたいんだけど。」

 

 ・・・あら、そう言うこと。比企谷さんも罪作りな方ですね。

 まさか雫さんともそういったご関係だったのは予想外です。

 

「・・・いや、居るわけないでしょ?

 俺の家はそんなもの決めるほどデカくねえし、俺の婚約者とかどこの拷問だよ。」

 

「・・・そっか。

 なら、なんで婚約者なんて話題が出てたの?」

 

「いや、一色さんの冗談だよ。

 一色家はどうにも俺に恩を着てると勘違いしてるみたいでな・・・。正直律儀すぎるし、俺は妹たちの相談に乗っただけだから気にしなくて良いんだが・・・。」

 

 ・・・なるほど。比企谷さんをうまく誘導して私の今までの話を冗談という事に仕立て上げたわけね。

 比企谷さんとの接した長さの差で響いていますね。

 いろはの為にも道筋くらいは引いておきたいのですが、こうなってしまうと押し通すのは難し・・・・・・なるほど、その挑発的な目。私を、いえ、私たち一色家を明確な敵と捕らえているのですね。

 北山家は大きな資産家の家で、魔法師業界の影響力を持つ。

 うちとも十分張り合える、という訳ね。

 

「そうは参りません。それに勘違いでもありませんよ。

 先程も申しましたが、恩を忘れるほど一色家は恥知らずではありません。

 それに、先程の事も冗談では・・・。」

 

「それは本人の居るところで話すべき内容。

 それに、その話を進めていいのは八幡の事が好きな人だけ。」

 

 ・・・手強いわね、北山さん。

 その論調で攻められるとあくまでも当事者ではない私の言は弱くなる。

 けれど、比企谷さんの反応を見る限りまだ気持ちは伝えていませんね。ならば、そこが弱点と・・・。

 

「はいはいそこまで。

 愛梨、流石に今回は愛梨の負けっしょ。馬に蹴られに行くのは感心しないし。」

 

 優美子がこっちを見て首を振ってる。どうやら私が言う内容を察して止めに入ったって所かしら。

 いろはの為なら少しくらい馬に蹴飛ばされても気にしませんが・・・まぁ、確かにあまり行儀の良い言い回しでは無いでしょうか。

 

「・・・はぁ。分かりました。今回は引き下がりますが、先程の事は冗談のつもりはありません。

 少し考えてみてくださると嬉しいです。」

 

「は、はぁ・・・。

 ・・・まぁ、いつも通り早口で振られてキモがられて終わりだろ。てか、わざわざ振られに行けって事か?

 ・・・拷問にも程があるだろ。」

 

 北山さんが少し睨み気味な目線を向けてきますが、引いてあげているのです。これくらいはさせて貰えなければ引くに引けません。

 にしても、いろはもなかなか難儀な方に想いを寄せてしまったわね。ここまでの流れから遠慮で私の発言を否定する人は居なくは無いですが、おそらくこの方は”巻き込まれた事件を妹たちに請われて解消しただけ”程度にしか考えていないのでしょう。自分が起こした行動がどれだけの価値があるのか正確に把握出来ていないタイプですね。

 それに北山さんはかなり露骨にアプローチしているように見えます。これにも気がついていないのではなく、考慮に入れてないといった感じでしょうか?かなり謙遜するタイプ・・・ではなく自己評価が異常に低いのですね。他人が向ける好意を肯定できないレベルともなると重傷ですね。

 何が彼をここまでにしてしまったのでしょうか・・・?

 

「あー、三浦。

 話って言うと葉山の事だろ?」

 

「あ、うん。

 隼人、そっちでどう?」

 

 少し考え事をしている間に話の内容が変わりましたね。

 優美子の想い人である葉山家の御曹司。いろはが言うには良い話は聞いていないですが、訳ありと考えて良いのでしょうか?

 優美子も面倒な方に引っかかってしまったものですね。

 

「結論から言えば気にしなくて良い。

 卒業間近の頃から状況が継続しているだけだ。」

 

「それ、ヒキオとゴタゴタしてるって事だよね?

 前も言ったけど隼人の事はあーしに・・・。」

 

「雪ノ下が一枚噛んでんだから三浦家が介入するのはやべえだろ。

 それにああなってるのは葉山家絡みだろ。

 ”葉山家から葉山だけ引っこ抜きたい”なら今変に刺激しない方が良いと思うぞ?」

 

 優美子は葉山隼人さんをどうにか婿養子として引き抜こうと考えています。これについては優秀な魔法師を護るという観点から一色家にも協力を要請され、お父様も状況次第では協力する事になっています。

 ですが、現在その話は立ち消えしかかっている。

 というのも、葉山隼人本人が以前とは違う無鉄砲かつ愚かしい行動を取り始めたからです。

 生まれは変えることが出来ず、それによって生まれる不幸に手を差し伸べる事は通すべき正義。ですが、それは愚か者に適応できる程安い物ではありません。

 両家は一応保留としていますが、優美子は今の葉山隼人から何かを感じ取ったのかどうにかしようともがいています。

 

「・・・何か困った事になったら言って。あーしに出来ることなら何でもやるから。

 今の隼人はなんかおかしいから。」

 

「まぁ、状況が動いたら連絡入れるわ。

 ・・・ん?」

 

 話が終わった頃を見計らったかの様に照明が絞られていきます。

 司会進行の方から来賓の挨拶がある放送が流れ、壇上に次々と魔法師社会の著名人が顔を出し、挨拶を述べていきます。

 そこで事件が起きました。

 進行を受けて登場するはずだったのは魔法師社会の重鎮でもある九島烈。

 ですが、実際に登場したのはドレスに身を包んだ女性。

 何らかの事故でしょうか?

 

「・・・事故?」

 

「何かの事情で来れなかったとか?」

 

 他の皆さんも同じ様な見解の様ですね。

 

 

「は?後ろに居るだろ?てか、何やってんだあのおっさん。」

 

 

 

 

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 来賓紹介とか聞いている人間がほぼ居ない無駄イベント挟むくらいならパーティーそのものの時間を短くするべきではないだろうか。

 事実、誰も得をしないのだ。

 聞く方も、来賓に話を聞く間時間を拘束されるわ、会ったことも無いような人の応援メッセージなど「あ、ありがとうございます。」と、どもりながら礼を言うのが関の山だ。

 話す方も仕事がただ増えるだけでろくに感謝もされなければ”早く終わらないかなー”的な目線で眺められるのだ。ある種の拷問である。

 

 だが、だからといって壇上の上で女の人に隠れて登場は奇を狙いすぎじゃね?

 

 てか、かえって目立つだろ。

 話をまともに聞いてもらうためのユーモアか何かなの?八幡高度すぎて理解できないわ。

 だが、隣から聞こえてくる内容はまるで後ろのおっさんが見えてないかのような会話。

 

「は?後ろに居るだろ?てか、何やってんだあのおっさん。」

 

「え、後ろ?」

 

 まーじで見えてないの?・・・あ、そう言う。

 精神干渉魔法か。会場全体とか派手な事しやがる。

 とりあえず雫達の分くらいは吹っ飛ばす事にして自分の周りに軽く領域干渉を張る。これで見えるだろ。

 俺のこの行動に周りの人間がこっちを見るのとほぼ同時に女性が壇上を降りはじめ、後ろからこの悪戯の主犯が現れた。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。」

 

 そういって語り出しすこの悪ふざけの犯人、九島烈。

 

「今のは魔法というより手品の類だ。

 だが、手品の種に気付いた者は私の見たところ6人だけだった。」

 

 視線が見破ったと想われる人間達へ向けられる。てか、俺を見んじゃねえ・・・。

 

「更にこのうち一名はこの魔法に対して正しく対処もしてみせた。

 大変素晴らしいことだ。

 だが・・・。」

 

 

「もし私がテロリストで、毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こせるのは6人だけであり、この相手に先制を許した状況で後手に回らず行動を起こせるのは対処まで終えた1人だけだという事だ。」

 

 

 会場がざわつく。

 視線がおっさんと、おっさん曰わく正しく対処できたであろう俺を行ったり来たりする。

 止めてぇ、こっち見ないでぇ・・・!!

 

「魔法を学ぶ若人諸君。

 魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。」

 

「私が今用いた魔法は規模こそ大きい物の、強度は極めて低い。

 だが、君達はその弱い魔法に惑わされ、私を認識できなかった。」

 

「魔法力を向上させるための努力は決して怠っていけない。

 しかしそれだけでは不十分だという事を肝に命じてほしい。

 使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。」

 

 

「魔法を学ぶ若人諸君。私は諸君を工夫を楽しみにしている。」

 

 

 会場に拍手が鳴り響く。

 追加で視線もこっちに来る。

 ・・・帰りたい。

 

「八幡凄い。老師に誉められるなんて。」

 

「いや、あれは勘違いだっての。

 俺は雫達にも見える様にしようとしただけだし。」

 

 結果的に正しい対処になっただけだっての。

 

「ですが、真っ先に魔法を見抜きそれを無力化しました。

 私は気付きも出来なかったですから・・・。」

 

「単純に相性だろ。

 俺はああいった魔法が効きにくいからな。伊達に分析系の家系じゃねえって事だから気にしなくて良いだろ。

 それに、これだけ人数居て俺以外に5人だろ?偶然の産物なんじゃねえの?

 てか、そろそろ失礼するわ。俺、ここに居たら30秒で死ぬ。」

 

 こんな針のむしろ空間死ぬわ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

~老師side~

 

 

 

 スピーチが終わり、自室に引き上げ先ほどの悪ふざけを思い出す。

 先程の悪戯は言わばテストを兼ねたものであった。

 確かに、伝えた思いは本心ではあるがそれ以上に今の子供達がどの程度対応できるかを見たい側面が大きかった。

 結論から言えば6人が正確に私を捕らえいつでも動ける状況にあったのはこの年代である点を踏まえれば上々な成果と言えるだろう。

 だが、今回のテストはもう一つの意味を含む。

 四葉のせがれ達の力量をはかる。まぁ、ちょっとした力試しのような物だった。

 七草や十文字の子らはこの2年でよく見ておる。この程度見破ってくるのは予想しておったし、一条のせがれも予想通り見抜いてきた。

 だが、最初に見破ってきたのは四葉のせがれ2人だった。

 深夜の息子は魔法を受けた上で直ぐに気がつき、こちらを捕らえてきた。

 

 そして、沙夜の息子はそもそも”最初から見失っておらなんだ”。

 

 理由は判らんが、魔法の影響を全く受けずに此方を見てきたことには驚いた。

 魔法の手応えはあった。更には沙夜の息子が魔法に気がついたのは他者を見て、といった具合。

 恐らくは魔法に対して何らかの耐性を持つか、あるいは”魔法の介入を無視して私を捕らえる手段を持つ”か。

 ・・・なるほどのう。将来が楽しみな若造じゃないか。

 

 

 

 

 




 早く投稿したいとはなんだったのか。

 さて、言い訳になりますが、新作書き始める→ワールド設定書き始める→15000次超える(説明回かよ1話目から)→めっさ削ってまとめる。

 といういつも通りのタコ作者が居たのもあるのですが、大部分は課題に追われておりました。なかなかリアルが爆ぜてくれないので大忙しです。

 とまぁ、雑魚はいつも通りですがとりあえず後数話で九校戦は始まりそうです。
 始まるまでがながいのは作者補正です。勘弁してください。


 さて、例の新作です。艦これ物でございます。
 私個人としましては「夕立が、可愛いんです。」って想いを投げた結果むやみに重たいワールド設定とキャラクター背景が生成された迷作となっております。(名作とは程遠いです。)よろしければ突っ込み批判、ご指摘、やらかしてるぞタコ作者などをこちらにも頂ければと思っております。

↓とりあえずURL貼ってみましたが見れるんでしょうか?見れなさそうなら消します。
https://syosetu.org/novel/180853/

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