そろそろ展開だけでなく筆も遅せえな、とツッコミが飛んできそうだと冷や冷やしておりました。
理由につきましては忙しく無くなったと、思っていた時期が私にもありました、と言う感じです。はい。
・・・はい。
~真由美side~
九校戦は全国にある9つの魔法大学附属の国立高校が集まって開催される魔法競技大会。この催しは今年で10年目となり、その光景は毎年テレビで全国放映されている。
この事からも各魔法科高校にとって九校戦は、学校を上げて準備し優勝を目指す魔法科高校の一大イベントであり、その参加メンバーは学校においては代表という扱いになる。
魔法科高校に入学した人間にとっては自分の実力を学校側から認めれたことに等しく、名誉と考えるのが一般的。出られないと嘆くことはあっても出たくない人間はほぼ存在しないと言っても過言ではない。
ましてや、メンバーに選ばれた感想が"え、めんどくせー・・・"なんてありえない。
「と、春頃までは思ってたんだけどね・・・。」
そう言って溜め息をついた私を苦笑いしながら眺めるりんちゃんとあーちゃんとは今後も良い付き合いが出来そうね、なんて考えていたら溜め息の原因が到着したみたい。
いえ、正確には連行かしら?
「会長、お待たせしました。」
「護送、お疲れ様。深雪さん、北山さん。
まさか、発足式をすっぽかす暴挙を働く生徒が居るなんて想定していなかったから助かっちゃった。」
そう、今日は魔法大学付属第一高校の九校戦参加メンバーのお披露目会及び発足式。
今から体育館の壇上に九校戦に参加する生徒が並び第一高校のエンブレムが入ったメンバーの証であるバッジを授与される栄誉ある(はずの)式典。
基本的に九校戦は参加出来ること自体がステータスの筈であり、学内全員にそれを示せる名誉な式。
けれど、少しだけ困った事態が発生した。
過去、自分のCADを自分で調整した選手は数多く居たけれど、"自分も2種目試合にエントリーしつつ、CADエンジニアとして調整を行う"などという明らかにオーバースペックな生徒なんて前例がない。
運営側としてもエンジニアチームか選手かどちらとして式典に出るのか難しい所もあり、本人の意志に任せる判断となった。
しかしながら、この式の存在を八幡君に告げた段階で九校戦参加メンバー辞退も辞さない覚悟といったレベルでの参加完全拒否。問いの解答も聞けず現在に至るまでになってしまった。
とは言っても賽は既に投げられているのだから諦めて来ると思ってたら当日ボイコットするとは流石に予想できなかったわ・・・。
深雪さんが事前に「おそらくギリギリまで出ないで済む方法を模索してると思うので、直前に探しに行ってきます。」って言ってくれなかったらどうなってたか・・・。言われたときはドン引きだったけど。
と、苦笑いを浮かべていた私がいかに認識不足だった事をこの後の発言で思い知らされた。
「会長、それは冤罪です。すっぽかそうとしたのであって、実際にはすっぽかせてないんで。」
「すっぽかそうとしてる段階で同罪じゃないとでも思ったの!?
・・・しかも、すっぽかそうとした事は否定しようともしないのね。」
この上まだ追加があるなんて・・・。
なんだか頭が痛くなってきたわ。
「八幡、そろそろ諦めるべき。
八幡がサボったら発足式どころじゃなくなる。
・・・・・・寒さで。」
「雫?私もそこまで無節操じゃ無いわよ?」
「でも不機嫌にはなるよね?
司会進行が不機嫌オーラ纏って、しかもそれが深雪でしょう?
空気は少なくとも凍ると思う。」
確かにそれは想像するのも躊躇われる事態ね・・・。
「いや、俺が出てる方が空気凍るだろ。自慢じゃねえが学校内では悪目立ちしてる。
最低でも野次は飛んでくるな。」
「・・・じゃあなに?私達を野次に巻き込ませないためにサボろうとたって事?」
「・・・いや、ぼっちはあんな目立つところ行ったら死ぬんですよ。
だから先輩方を人殺しにするような事を防ぐためにですね・・・。」
そんな分かりやすく目を反らしながら出て来る言い訳がそれなの・・・。
どっかの狸親父と違って嘘をつくのは下手なのね。
「八幡君。
貴方は生徒会推薦し九校戦作戦スタッフ全員の了承を得て壇上にあがる権利を持っています。
その決定に異を唱えるどころか、この出発に泥を塗るような生徒は生徒会の名の下に絶対に許しません。
だから、私達の顔を立てるために壇上に上がってくれない?」
「・・・いや、もうここに連行された段階で選択権がないでしょう。」
素直じゃないわね本当に。
癪に障るから反撃を食らいなさい。
「それに、脱走したからって探しに来てくれるお友達が2人も居るんだからぼっちで死んだりはしないでしょう?」
「いや、深雪達が俺を探しにきたのは仕事でしょう?」
「確かに深雪さんは生徒会所属だから仕事の側面もあるかもしれないけれど、北山さんは純粋な善意での行動よ。
それに、うちの生徒なら諸手をあげて羨むような両手に花じゃない。」
あら、絶句してる。
ああやって慌ててくれることもあるのね。
「一年生の綺麗どころ二人を袖にした、なんて事になったらどっかの自称ぼっちさんも目立って死んじゃいますよ。」
そう言って準備のために私は立ち去った。
よし、初勝利っ!
この後に式での事も考えると最先が良いわね。
なんて考えていたけれど、こんな形で反撃がくるなんて。
先程の勝利で気分の良いまま発足式は開会。
講堂には全校生徒が参加し、壇上には九校戦参加メンバーが全員並んでいた。
目下の問題となっていた八幡君は出場選手用のユニフォームを身につけ壇上に立っている。このユニフォームが選手用とエンジニアチーム用に2種類あるため議論となったのだ。そして、そんなこっちの苦労も知らずに当の本人はというと。
欠伸をしていた。既に3回目である。
な、に、が目立つところに立ったら死ぬよ!緊張感どころか緊張そのものもして無いじゃないの!
頑張って欠伸を噛み殺してるつもりみたいだけど見てたらバレバレなんだから!
さっき突き放したけど本当に緊張し過ぎたりしないか、心配した私の優しさを返して!
・・・と、30分は文句を言いたいところだけど鋼の精神力で押さえ込んで、式を進めるしかないわね。だってこの式は既に始まっているのだから、止めるなど以ての外だし。
現在は参加メンバー一人一人の名前を呼び上げ、選手の証明であるバッジを授与する演目。ちなみにもうすぐ八幡君の番なのだけど・・・。
なんか、うつらうつらしてない?よくこの状況でうとうと出来るわね・・・。ゴキブリでももう少し繊細な心臓持ってるわよ。
あーもうなんだか腹が立ってきたわね。驚くがいい。
「1年A組、比企谷八幡君!!」
少し大きめに名前を呼んだことで、少しハウリングが起きている。
驚いてビクッとなってる比企谷くん。いい気味よ。
「失礼しました。」と再度名前を呼び直し、機材トラブルと判断したのか特に問題も発生していないみたい。注目がこっちを向いたので寝かけてた八幡君にはみんな気が付いていないみたいね。
八幡君が居心地悪そうな顔で深雪さんからバッジをつけて貰う。
さっきの大きな声がわざとだと気が付いたのかこっちを見てくるけど居眠りがバレるよりましでしょう?
そしてバッジの授与も大詰め。ラストに達也君が呼ばれ参加者全員にバッジが配られた。
さて、ここからが本番よ。
「バッジは全員の授与が終わりましたが、重ねてお伝えしたいことがあります。
現在、エンジニアチームのユニフォームを着ているのは7名のみですが、今年のエンジニアチームは選手として出場が決まっている比企谷君も含めた合計8名です。
この選手とエンジニアを両方とも兼任するのはこの第一高校においては九校戦始まって以来の事ととなります。
この快挙も重ねまして、参加者一同に盛大な拍手をお願いいたします。」
一瞬のざわつきを経たものの凄さは伝わったのか大きな拍手が会場を包んでいく。
八幡君はどうにも目立つのが嫌いみたいだけど、あの実力でかつあの気質で目立たず生きるのは物理的に不可能ですもの。少し荒療治気味だけど馴れておいた方が良いでしょう。ふふん、精々盛大に目立って苦悩したら良いのよ。
こうして色々あったものの一応は勝ち越し(?)てバッジ授与を終えた。
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~鈴音side~
「ーーーこの快挙も重ねまして、参加者一同に盛大な拍手をお願いいたします。」
そう言って拍手を促す会長の目は爛々と輝き、少々小悪魔じみた印象がある物の大変魅力的な笑顔でした。おそらく、これを見た会場の生徒にも好印象に映り、七草真由美生徒会長としての評判にも好印象として記憶されるでしょう。
その笑顔の理由を知っている生徒会所属の一部を除いて。
そもそもこの様な発足式を私物化、もとい暴挙(暴走?)を働く切っ掛けになったのは先の比企谷君のネガティブな噂が切っ掛けになります。そもそもが根も葉もない噂でしかないにも関わらず、中途半端に真実を内包していることから完全否定がしにくい状況で、まるで誰かが悪意的に操作している印象まで感じられる様に比企谷君が悪者に仕立て上げられていく様は私としても見ていて気持ちの良いものではありませんでした。
それに対して司波さんの反応は考えるまでもなく明らか。噂が蔓延する進行度に比例、・・・いえ、加速度的に悪くなっていく機嫌が生徒会室を霊安室の様な重苦しい空気に変え、中条さんの精神がすり切れるのも時間の問題でした。
問題は本来重い空気を嫌う会長が、司波さんへのフォローに出るはずが予想以上に噂に対して深い嫌悪感を持っていた為、司波さんと同調してしまった事でしょう。 どうやらこのブランシュの事件の功労者たる比企谷君へのこの仕打ちは会長にとって許し難い物だったらしく、時には生徒会で対処について司波さんと議論までしていた事もあったほど。
そして、深雪さんの発案で九校戦へ参加させること、それによる比企谷君への印象を変える事に全面協力を申し出た会長はこの発足式の場でだめ押しとして今回の暴挙に出ました。
本人は「そろそろ実力に見合った周りの目という物に馴れるべきよ。それに、この前のお礼もしなきゃいけないし。」などと言っていたのと、やる内容については事前に聞かされていたため構わないのですが、少々やりすぎ感が否めません。
ですが、今の会長の顔を見て以前から感じていた”疑惑”が”予測”に近い物に変わったことで色々な疑惑が氷解しました。
「要するにあれですね。お気に入りの玩具が貶されて頭に来て、挙げ句公的な場で玩具の自慢ですか。」
自分が気に入っているものを貶されれば嫌悪感を持つのは確かに普通ではあります。
先程の声も居眠りがバレるのを助けるため。
今回のこれもおそらく九校戦で活躍するであろう事から、今後の注目を考えればこれくらいの注目は馴れておいた方が良いと言う荒療治。
という事なのでしょう。なんとまぁ。
相変わらず、肝心なところで素直じゃない人ですね・・・。
もうここまで異常に構ったり意識したりしてたらある種の恋のようなものだと思いますが、素直に認めたりはしないでしょう。会長の場合家の都合もありますし多少は仕方無いのかもしれませんが・・・。
まぁ、これでも長い付き合いですからね。少しくらいはアシストするとしましょう。
今回なのですが、忙しさに加えて七草会長が私の予想を超える勢いで暴れたため本来投稿するものを派手に修正するのに時間がかかりました。
りんちゃんの部分が修正の為に生み出された感じなので作者の混乱具合が伝わってきますね。本当にタコが治りません。
誤字報告下さる方、助かってます。何分タコですので、大変助かってます。
ありがたや、ありがたや。