やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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 更新が遅せえなこのタコ作者ともっぱら噂の読多裏闇です。(え?噂になる程知名度無いだろって?・・・すみません見栄張りました。

と言うわけでブランシュ編本格スタートです。

止まるんじゃねえぞ・・・俺・・・。


入学編21

 この世の勝負のほとんどは出来レースである。

 以前俺が孫子の言葉について語ったことを覚えているだろうか?

 ”勝負は戦う前から終わっている。”

 以前考察した事前準備の重要性を説くこの言葉だが、よくよく考えてみて欲しい。勝利の方程式を整えている人間が居て、双方の情報を客観的に得れる人物がいるとする。するとその人間はこの勝負の結果が分かってしまいこの勝負はただそれを現実に落とし込む作業となってしまうのだ。それが勝利の方程式を整えた側だとそれはもう詰みだ。その勝負には形式上の意味を超える価値はなく、敗者側は決まってしまっている結果へと、確定された未来に辿り着かされてしまう運命を辿るのだ。

 要するに何が言いたいのと言うと。

 

「こいつらの負ける理由は”負ける運命”を証明しに来てしまった事だな。」

 

「八幡、それは流石に暴論が過ぎる。

 せめて、飛んで火に入る夏の虫くらいにしておくべきだ。」

 

 それ、むしろ追い打ちじゃね?

 

「いやもう負ける運命だったと言った方がマシだろ、これ。」

 

 そう言って目の前に繰り広げられている公開処刑ならぬ実質個人演説会を眺めた。

 

 

 

 

 

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 あの放送室占拠事件を起こした生徒の要求を飲み交渉に応じた生徒会だが、その話し合いはあまり建設的に行われなかったらしい。

 と言うのも、向こうの意見は一科生と二科生における差別撤廃を主張するものの具体案は無く、その方法は生徒会が考えろというほぼやっかみに近いものだったというのもあり、会話が押し問答と化してしまったのが大きな原因だ。もちろんの事ながらこれでは双方納得できないのは明らかであり、勿論の事ながら議論の結論は出ない。(最早、議論と言えるレベルではないが。)

 

 その折衷案として出されたのが双方の主張の正当性を示し、かつ学校全体にそれを示す場を設置すること。生徒会と有志同盟による”公開討論会”の開催だった。

 

 討論会自体は話し合いの2日後というほぼ準備期間皆無かつスピーディーに開催されることが決定した。開催決定後も有志同盟による過剰な討論会参加の呼び掛け等のパフォーマンスこそあったもののさして大きな問題も無く公開討論会は開催された。

 討論会自体は生徒会vs有志同盟と言う構図で行われているが、生徒会側の解答者は七草生徒会長のみ。本来ならば生徒会総出で対応するのがセオリーだが本人曰く「一番怖いのは発言内容の小さな矛盾に揚げ足を取られて感情論に持ち込まれることだから。」とのこと。まぁ、あんな押し問答やらかす相手にはそれがベストだろうな。

 

 まぁ結論から言えば、当日の公開討論会は酷い物だった。

 

 学内の差別撤廃を目指す有志同盟一同は冷静に討論こそするもの、同様に冷静な論破を繰り返す七草会長を相手に返せる言葉はどんどん無くなっていく。理由は簡単で、そもそもが言いがかりレベルの内容を状況をしっかり把握できてる人間相手に文句を付けるのだ、相当な説得力がないと話にならない。次第に発言の勢いは失われ、なんとか言い返すのがやっと、という様相。

 結果としてこの実質会長の演説会(精一杯擁護して討論会形式個人演説会)と化した公開討論会は有志同盟が話せば話すほどドツボに嵌まる段階まで来ており、本人達は業腹だろうが完全に七草会長の引き立て役となっている有り様だった。正直、もうライフ0なんで勘弁したって・・・。八幡見てらんない・・・。

 

 そしてこれらを綺麗に踏み台にし会長様はこの学校に残る最後の差別要素「生徒会役員は二科生を指名できない。」と言う制度の撤廃を求めることで大衆を味方につけトドメを刺した。

 正論で全て答えきり、あしらうのではなく誠実に対応しきって、彼らの要求に自分なりに答え、その成果を学校の利益として示すべく理解を求めた。完璧にデザインされていて文句のつけようもない。初めから思い描いていた、勝つための方程式を現実に落とし込んだのだ。

 会長を支持する声と拍手喝采に包まれる講堂。冷静に状況を見れる人間がいれば予定調和であり、美しいまで出来レース。

 これらは俺達(生徒会関係者)の予想通りであり、この後の流れもそれは同様で。

 

 客観的に情報を得れてしまった俺達(四葉)だからこそ、悲しい事ながら”これから起こること”も予想通りだ。

 

 

 

 けたたましい音と振動が会場の空気に水を差す。これは学校機関では本来あり得てはいけない無粋の極みであると同時に非日常の始まりであった。

 俺達(生徒会関係者)は事前の打ち合わせ通り”講堂内部に紛れている”エガリテ工作員を確保。それと同時に俺達(四葉)も打ち合わせ通りに動く。俺は達也にアイコンタクトをしてうまく意識の隙間を抜けるように外に出た。

 

 

 

 

 

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~達也side~

 

 

 

 爆発音が響き渡った瞬間八幡の予想通りの事態になってることが確定した。

 八幡は計画通りに動き始めており離脱の準備に入っている。上手く離脱させる為派手に音を立ててエガリテの工作員前に立ちはだかる。

 俺は八幡を見送りつつエガリテの工作員一人を捕縛し朝行った八幡のとのミーティングを思い出していた。

 

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『今日の討論会、下手すると派手な戦闘になるかもしれない。』

 

 早朝、八幡からの電話があり開口一番出て来たのは物騒極まりない未来予想だった。

 

「何か分かったのか?」

 

『どうやらブランシュのアジトで戦争準備してるっぽいのと、工作員に対しての説明集会みたいなのがあったらしい。

 今日はうちの有名どころがあらかた討論会に出張ってるからな。そこさえ押さえれば他は手薄だし、討論会参加者として足止め部隊も待機させやすいしな。』

 

 なるほどな。これは師匠の予想通りの展開だな。

 

「師匠が昨日何か仕掛けてくるかもしれない、と忠告していたが現実味を帯びてきたな。

 それより、いつの間にブランシュのアジトの場所が分かったんだ?こっちは司甲がブランシュ日本支部のリーダーの弟だと昨日知ったばっかりだぞ?」

 

『はぁ!?あの剣道部の眼鏡使いっぱしりどころかバリバリ関係者じゃねえか。

 それ先に言ってくれれば戸塚にもう少しマシな指示出せたのによ・・・。』

 

 やはり戸塚か。情報収集に向いている魔法適性があるとは言え優秀だな。何よりも八幡の利益にならない事は絶対にしない。諜報員としては文句の付けようがない。

 

「で、始まる前に潰すか?今からだとかなり強引な流れになるが。」

 

『俺も迷ったんだが、今動くと事後処理が面倒な上に学内の奴らが炙り出せない。それに見つけたとは言えアジトが1つとは限らないから別の拠点があるとそっちが暴発する可能性も捨てきれない。』

 

 妥当だな。だが少し八幡らしくないな。

 

「だが、それだと学校への襲撃が前提だぞ?良いのか?」

 

『良くない。

 だが、この状態だと学内の奴らは間違いなく知らぬ存ぜぬで隠れ仰せて潜在的な脅威になる。そうなりゃ学校内のテロリスト予備軍が何の制裁もなしに野放しだ。来年小町も来るのにその状態は見過ごせねえ。

 それにこっちの方が事後処理は十師族に丸投げ出来るしな。』

 

「この襲撃を無くせば合法的に壬生先輩の精神汚染を解除する機会は永遠に失われるかもしれないから、じゃなくてか?」

 

 八幡のうめき声が聞こえる。図星を刺された時のいつも通りの反応だ。

 

「それで、このタイミングでかけてきたって事はあらかたの方針は固めてるんだろ?

 どう動けば良い?」

 

 相変わらずのお人好しだな。かと言ってここで止めれば一人で無茶しかねんからな。まぁ、いつも通りフォローするだけのことか。

 

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 八幡が提示したの基本方針は3つ。

 

○テロリストの目的と思われる非公開文献奪取阻止。

○拉致は恐らく無いと思われるが人質を取る可能性はあるためそれを阻止し、武力攻撃からも可能な限り生徒を守ること。

○その後、これを理由にブランシュのアジトへ殴り込みに行く様、うまく話を付けること。

 

 目的が判明しているのは事前集会とやらで襲撃ポイントの見取り図等を使ったミーティングが行われていたらしく、その中に図書館の見取り図が含まれていたらしい。

 そこで八幡が先に図書館で現場を押さえ、俺と深雪が後詰めという流れでいくようだ。

 しかし、相変わらず八幡のプランは押さえるポイント以外が自由過ぎるな。

 

 俺と深雪は渡辺委員長に一言入れて実技棟に向かう事を告げて外に出た。外では既に戦闘が始まっており負傷者も数名見られる。だが、生徒が迎撃しており早急に手を出さないと不味いという状況では無さそうだ。

 周りのテロリストを無力化しつつ進むとレオとエリカに合流でき、軽い状況共有を行った。

 

「要するに、敵の正確な目的は不明だけど見た感じ誘拐目的じゃ無さそうだから窃盗目的っぽいって感じなのね?」

 

「八幡は先行して主要施設を回ってる。目聡いから今頃当たり引いてるんじゃないかな。」

 

「比企谷君が辿り着いたかどうかは分からないけど、敵の狙いは図書館よ。」

 

 出てきてくれたか。このまま隠れられると引っ張り出さないといけないところだったから手間が省ける。

 これで違和感なく図書館に向かえるな。

 

「図書館となると魔法大学が所有する非公開文献辺りが狙いですか?」

 

「その可能性が高いでしょうね。主力は既に侵入しています。壬生さんもそっちね。」

 

 やはり情報収集していたみたいだな。この隠密能力に加え、手馴れた対応。本職か?

 

「後ほど説明していただけますか?」

 

「却下します、と言いたいところですが、そうも言ってられないわね。その代わり、一つお願いしたいことがあります。カウンセラー小野遙としてお願いします。壬生さんに機会を与えてあげて欲しいの。」

 

 機会・・・?この非常事態において何を考えている?

 

「彼女は去年から剣道選手としての評価と二科生としての評価のギャップに悩んでいたわ。そこを彼らにつけ込まれてしまった。」

 

「甘いですね。そして、何より頼む相手を間違えています。

 行くぞ、深雪。」

 

 小野先生が何か言いたげな顔をしているが、今は時間が惜しい。八幡がわざわざ”後詰めで俺たちが来る”ように指示を出したということは俺達が図書館に行く事が必要なプロセスになるのだろう。

 もたついてはいられない。

 俺達は図書館の方に向かいその途中レオが俺に問い掛けた。

 

「あの言い方は流石にあんまりだったんじゃないか?」

 

「馬鹿ねぇ。それで怪我をするのはこっちなのよ?それにさっきの達也君の話聞いてなかったの?

 ”頼む相手を間違えてる”って事はもう動いてる人が居るんでしょ?」

 

「あぁ、成る程。そう言う事か。八幡が動いてるなら多分大丈夫だろ。

 よし、ここは受け持つ先に行ってくれ!」

 

 ここはレオに任せれば十分だな。

 そういえば図書館を押さえてる間にある程度生徒を守るのは当然としてブランシュへの殴り込みの話を取り付ける件は俺に丸投げされてたな。

 なにが「俺には人望とかないから説得は達也に任せるわ」だ。

 




この前次は戦闘シーンだと言っていたが、あれは嘘だ。

・・・いや、気が付いてたら文字数が4000字超えてましてね・・・?

ビ、ビビって無えよ?



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