モブ崎くんに転生したので、謙虚に生きようと思う 作:惣名阿万
◇ ◇ ◇
国際会議場の前へ戻ると、大亜連合軍の部隊はすでに国防軍によって駆逐されていた。
各方面を守っていた人たちも一部の警戒要員だけが残っている。恐らく会議場の中へと戻ったのだろう。
搬入口から中へと入り正面入り口前のホールへ向かうと、やはり多くの人がいた。
三高の学生が集まっている方へ向かう一色さんと別れ、一高のメンバーのもとへ。最初に一番近くにいた五十里先輩が気付くと、すぐ友人たちに迎えられた。
「無事だったみたいだね」
「聞いたぜ。やり手のやつを倒したそうじゃねえか」
「耳が早いな。七草先輩から聞いたのか?」
幹比古とレオが口々に掛けてくる言葉へ応じる。
あの二人を捕らえるのはそもそも七草先輩から持ち掛けられた話だ。直前まで《ドライ・ブリザード》で追い詰めていたようだし、僕らが彼らを捕らえる場面も遠隔視で見ていたのだろう。
話しながら歩いていると、こちらに気付いた女性陣の中から雫が歩み寄ってきた。
「無事でよかった。本当に、良かった」
安心を目に湛えた彼女の声は小刻みに震えていた。
また随分と心配を掛けてしまったようだが、今回に関してはこちらも同じだ。
「雫こそ、怪我がなくて良かった。屋上が狙われたときはどうなるかと」
実際、あの時は頭が真っ白になってしまった。
全員無事だと聞かされていなければジョンソンを倒すことなどできなかったかもしれない。冷静さを欠いた状態では《疑似・固有時間加速》は扱えず、あの魔法なしでは勝算などほとんどなかっただろう。
「雫のお陰だよ。雫が守ってくれたから、屋上の人たち皆無事だったんだ」
ほのかが雫の傍に進み出てそんなことを言った。
すると雫は困ったように笑んで謙遜を口にする。
「あれは達也さんが助けてくれたからだよ」
あくまでも達也のお陰だという認識らしい。
一面ではその通りなのだろうが、雫の尽力がなければそもそも達也の《術式解体》が届くまでに被害者が出ていたはず。彼女の貢献も疑いようがない事実だ。
「司波の魔法は僕も見た。とはいえ、それまで屋上の守りを支えていたのは雫なんだろう? だったら光井さんの言ったことも間違いじゃない。無事でいてくれて、本当にありがとう」
いまいち呑み込めないようで、それでいて嬉しそうにはにかむ。
そんな彼女の微笑みが眩しくて、思わず髪に手が伸びかけた。
すぐに手を握り込んで止め、気付かれる前に拳を解く。先の戦闘でさらに『汚れ』た手だ。身勝手な理由で触れるわけにはいかない。
「森崎」
だから、そこで達也に声を掛けられたのは都合が良かった。
これ以上、僕は彼女に何もあげられなかっただろうから。
「司波、どうかしたのか?」
「先輩方が呼んでいる。来てくれ」
「わかった。すぐ行こう」
雫とほのかに声を掛けて、達也の後へと続いた。
慌ただしく人が行き交う通路を達也と並んで歩く。
曰く、先輩たちは控え室の方にいるらしい。怪我をした人が各校の控え室で休んでいるそうで、先輩たちは被害の確認を行っているのだとか。
「負傷者は防衛に当たった人間の約半数、43人に上るそうだ」
「死者が出なかっただけ、幸運だったと考えるべきだな……」
本当に、死者が出なかったのは幸いだった。
大亜連合の正規軍を相手に30分以上防衛戦を戦ったのだ。魔法師の数こそ少なかったとはいえ、機甲兵器に多数の銃火器を前にしてよくぞ持ち堪えたものだと思う。
「そうだ、司波。屋上の件、あの《術式解体》は君が放ったものだろう? お陰で雫たちも助かった。ありがとう。礼を言わせてくれ」
顔だけを向けて言うと、達也は驚いたように眉を少しだけ持ち上げた。
「お前に言われるのも妙な気がするが、受け取っておこう」
「そうしてくれ。同じ手札があったのに、僕には同じことが出来なかったんだからな」
実際、僕には逆立ちしてもあんなことは出来なかった。
エイドスへの干渉を頼りに100m離れた魔法式へ当てることも、立て続けに展開される魔法式を個々に撃ち抜くことも、それを続けて戦闘能力を継続させることも。
羨ましいと心から思う。達也のような能力があれば、もっと多くの人を守れるのにと。
けれどそれはただの夢想であって、現実に出来るのは僕の手の届く範囲だけだ。どれだけ強力な魔法を得てもそれは変わらない。
口を閉ざしたこちらに、達也はそれ以上何かを言ってくることはなかった。
案内された先には七草先輩の他、渡辺先輩と市原先輩、そして深雪の4人がいた。
前生徒会と風紀委員長から成るメンバーだ。現生徒会長の中条先輩が地下からの脱出組を先導していた以上、一高の代表格は彼女たちということになるのだろう。
「戻ってきて早々に呼び出しちゃってごめんなさいね」
「いえ。どのようなご用件でしょうか」
両足を揃えて腰を折ると、七草先輩はクスッと小さく笑いを零した。
「用というよりはお礼よ。森崎くんのお陰であの厄介な魔法師を捕まえることができた。だからそのお礼」
「恐れ入ります」
重ねて腰を折ると、彼女の隣から渡辺先輩が訊ねてきた。
「身柄は国防軍に託したのだな?」
こう訊いてくるということは、二人を預ける場面まで七草先輩が見ていたということだろう。
真田大尉は所属を明かしていなかったし、まだ達也の身分も判明していない段階だ。名前まで言う必要はないはずだ。
「はい。近くで国防軍の士官と会いまして。そのまま捕虜として預けました。勝手な判断をして申し訳ありません」
「いいのよ。ここで捕まえた人たちはみんな国防軍に引き渡す予定だったから」
それはそうだろう。学生と民間警備員が主体の義勇軍では捕虜の扱いなど手に余る。ましてや相手は他国の軍人。言葉も通じない者が大半だ。下手に暴力を加えて揚げ足を取られる素を作るのも業腹。手早く専門家に渡すのが無難に違いない。
唯一心配があるとすれば、独立魔装大隊の規模がそう大きくないことだ。
「先程の飛行魔法を使っていた部隊ですね? 捕虜の人数はかなりの数に上ると思いますが、すべて引き受けてくれるでしょうか?」
「それは訊いてみないとなんとも――」
先輩がそこまで呟いた直後、後ろから伸びた手が彼女の肩を叩いた。
誰だろうかと七草先輩が振り向く。と、その先には一人の女性軍人が立っていた。
迷彩服に身を包んだ細身で黒髪の女性。
年の頃は20代中盤で、スラリとしているのに弱々しさは一切ない。
女性は目を丸くする七草先輩を面白そうに見ながら愛嬌のある声で語り掛けた。
「お久しぶりね、真由美さん」
「えっ? もしかして、響子さん?」
原作でも語られていた通り、旧知の間柄なのだろう。
心底から驚いたような表情を浮かべる先輩に、藤林響子はクスクスと笑いを零した。
「ふふ、良い反応をありがとう。急で申し訳ないんだけど、ちょっと来てもらっていいかしら。できれば皆さんもご一緒に」
皆さんも、と言ったのが達也を連れ出す口実だったのは間違いないだろう。
丁寧に驚いた風を装う兄妹も一緒に、全員で藤林響子の後に続いた。
● ● ●
響子は一同を臨時指令室へと連れていった。
そこには真由美たちの他、克人や五十里たちを含めた一高メンバー全員、将輝や真紅郎など防衛に加わった各校の代表数人もいて、室内には学生ばかり30人ほどが集まっていた。
多少の違いはあれ全員が困惑を顔に浮かべていて、それは待ち構えていた壮年の男性軍人を見てさらに色濃くなる。訳もわからぬまま並んだ彼らは、背後で扉が閉じるのを見て緊張に顔を強張らせた。
「特尉、情報統制は一時的に解除されています」
扉がロックされるや否や、男の隣に並んだ響子は一同へ呼びかける。
訳が分からず困惑を深める彼らの中から一人、達也が進み出た。驚きの視線を背に集めた達也は男の前まで歩いていき、姿勢を正して敬礼する。
達也の敬礼に同じく挙手の敬礼で応じた男性は、手を下ろすなり一同へと顔を向けた。
「国防陸軍少佐、風間玄信です。訳あって所属についてはご勘弁願いたい」
風間の名乗りに最も大きな反応を見せたのは克人だった。
一瞬だけ目を見張った克人はすぐに納得の表情を浮かべ、姿勢を正して名乗りを返す。
「貴官があの風間少佐でいらっしゃいましたか。師族会議十文字家代表代理、十文字克人です」
魔法師の世界における公的な肩書きで名乗った克人に、風間は一礼で応じた。
「藤林、現在の状況をご説明して差し上げろ」
「はい」
正面に向き直った風間が命じると、響子は脇に抱えていたタブレット端末を手元へ持ち上げる。
いくらかの操作によって読み出されたデータがプロジェクターへと送信され、指令室奥のスクリーンに市内の戦闘状況図が表示された。
「我が軍は現在、保土ヶ谷、鶴見の駐留部隊が侵攻軍と交戦中。藤沢からも一個大隊が当地に急行中。また魔法協会関東支部も独自に義勇軍を編成し、自衛行動に入っています」
「ご苦労。さて、特尉」
短い言葉で響子を労った後、風間は達也へと顔を向けた。
「現下の特殊な状況を鑑み、別任務で保土ヶ谷に出動中だった我が隊も防衛に加わるよう命令が下った。国防軍特務規則に基づき、貴官にも出動を命じる」
困惑と疑問がほとんどの人間の顔に浮かび、説明を求める声が上がりかけたのを、風間は室内を一瞥しただけで封じて見せた。
「国防軍は皆さんに対し、特尉の地位について守秘義務を要求する。本件は国家機密保護法に基づく措置であるとご理解いただきたい」
軍事用語や語感の強さではなく、その眼力で一同は口を縫い付けられていた。
そしてそれは真由美や摩利、花音といった女性陣のみならず、克人や将輝、真紅郎などの男性陣であっても同じだった。
「すまない、聞いての通りだ。皆は先輩たちと一緒に行動してくれ」
達也本人は何でもないような表情で振り向き、友人たちへ目礼を配る。
言われた友人たちもエリカですら呑み込みきれていないようで、困ったような顔を浮かべた達也の隣へ響子が並んで口を添えた。
「皆さんの護衛には私と私の部下が当たります」
「ありがとうございます」
響子が率いているのは2輌のオフロード車両と8人の隊員からなる分隊だ。
少人数とはいえ、未だ戦闘中の状況下で友人たちのために精鋭を割いてくれるという彼女の、そして風間の精一杯の厚意に達也は素直に感謝した。
友人たちの前を離れた達也はそのまま真由美の前へと向かう。
会議場に残ったメンバーがどう行動するにしろ、実質的なリーダーになるのは真由美だと達也は確信していた。
「妹たちをよろしくお願いします」
「……え、ええ。任せて頂戴」
真摯に頭を下げられて一瞬面食らった真由美はしかし、すぐに切り替えてしっかりと頷く。
達也が深雪を他人に任せると口にするのは余程のことがない限りありえないと、真由美でなくても理解していた。
そうして、その場の後事を真由美へ託した達也は風間の方へと踏み出す。
振り返った彼の表情は鉄の色をしていて、呼び止めようとする者はいなかった。
ただ一人、妹の深雪を除いて。
「お兄様! お待ちください!」
思い詰めた顔で兄を呼び止めた深雪は、ゆっくりと集団から進み出た。
達也は風間へ視線を運び、風間は頷きを返して先に部屋を後にした。
部屋の中央に戻った達也の前に、深雪が歩み寄る。
彼女が兄の頬に手を触れると、兄は何かを悟ったのか驚きに目を丸くした。
間近から見上げる妹の目をまっすぐに見つめ、確かな決意をその瞳に見て取る。
一つ頷いて、達也は深雪の前で片膝を突いた。
背をまっすぐに張り、浅く頭を垂れる姿はまるで姫に跪く騎士のようだった。
深雪はその頬に手を添え、瞼を閉ざした兄の顔を自らの方へ持ち上げる。
腰を屈めた深雪が、達也の額へ唇を落とした。
妹の顔が離れ、手が離れ、兄の顔が元のように足元へと垂れた。
瞬間、室内を満たすほどに鮮やかなサイオンの粒子が達也の身体から溢れた。
魔法の素養を持つ者にだけわかる嵐が吹き荒れ、誰もが顔を覆い後退った。
唯一サイオンの奔流へ動じずにいた深雪は、風が収まるなり淑やかな笑みで囁く。
「――ご存分に」
「
万感を込めた妹の眼差しに見送られ、達也は戦場の中心へ出陣した。
● ● ●
達也の出ていった後の指令室では、残ったメンバーが集まり今後の行動を協議し始めた。
「さて、これからどうする?」
最初に切り出したのは摩利。響子の表示したままの戦略図を見ながら悩ましげに呟く。
彼女が頭を悩ませるのも尤もで、避難先の桜木町駅付近に敵勢力が迫っているためだ。地上から向かうことを考えた場合、高確率で敵に見つかってしまう。地下から向かうのであればまだ安全も確保できるが、実際は――。
「地下通路の方は残念ながら、また瓦礫に埋もれてしまったようです。復旧は可能かもしれませんが、時間が掛かってしまうのは確実でしょう」
ジェネレーターの襲撃前、南側搬入口で壊れた直立戦車が起こした爆発によって地下通路は再度の崩落を引き起こしていた。服部たちが駆け付けた時にはすでに通路は瓦礫で埋まっており、その場での復旧は断念されていた。
「避難していた連中はどうなった?」
「8割は避難が完了していましたが、残りの2割は引き返すしかありませんでした。今は控え室の一つで待機してもらっています」
幸いだったのは怪我人が出なかったことだろう。
崩落に巻き込まれるという最悪の事態だけは免れることができた。
「ここまで来たら、ここに残った方がいいかもしれないわね。怪我人を連れて移動するのは難しいし、駅の方にはまだ敵も残っているから。どうせなら救助を呼び寄せた方がいいかも」
地下シェルターへの避難が難しいとわかり、真由美も頭を抱える。
怪我人の存在も無視できないことで、今すぐ命に関わることこそないもののなるべく早く治療を受けた方がいいのは間違いなかった。
「だが呼んだとして救助が駆け付けられるのか? この状況だ。救助要請なんてそこかしこで発せられていると思うが」
「家に連絡してヘリを寄越させます。それで安全な場所まで脱出しましょう。幸いここにはヘリポートがあるし、駐車場を利用すれば複数機が一度に発着できるスペースもあるわ」
三高の風紀委員長が発した疑問に即答する真由美。
敵に捕捉されることなく怪我人を脱出させるにはもはや空からしかないと彼女は踏んでいた。
この提案に、次々と賛同者が出始める。
同じ関東に基盤を持つ十師族の克人を初め、五十里や静岡出身の四高生が続いた後、三高からも一人が進み出る。
「では私も。本家からは間に合いませんが、関東にも伝手はありますので」
「私も。父に連絡してみます」
「一条くんも北山さんもありがとう。お願いしますね」
将輝に次いで雫も声を上げると、真由美は二人へそれぞれ笑みを返した。
これで最低でも6機のヘリが用意できた。一度に全員が脱出できるかはわからないが、怪我人の搬送と逃げ遅れの避難には事足りるだろう。
念のため2機以上を寄越すようあの狸親父に念押ししなくては。
そんなことを考えていた真由美へ、摩利から懸念の声が掛けられた。
「敵の襲撃にはどう対処する? 空からとなると目立つ分、狙われる可能性もあるぞ」
「交代で守りましょう。連戦になってしまうけれど、国防軍が来てくれた今なら包囲される危険も少ないし、敵の機動兵器もあまり残っていないはずだから」
真由美が口にしたのは、更なる防衛戦を行うという旨の発言だ。
多数の怪我人を出しながら守り抜いたこの国際会議場という拠点。
今度はそこを脱出するための防衛戦が必要だと語られて、先の戦闘を戦い抜いた精鋭たる学生たちに怖気づく者はいなかった。
● ● ●
斯くして、国際会議場に残った学生96人と民間警備員12人、警察官2人は、護衛についた国防軍独立魔装大隊1分隊と共に脱出用ヘリの到来を待つ方針を固めた。
一通りの方針が決まったと見て、克人は部屋の隅に立つ響子の元へと歩いていった。
「藤林少尉殿」
「なんでしょうか」
高校生離れした体格を持つ克人に近付かれても響子が動じることは一切なかった。
礼を尽くして腰を折る克人へ手振りで頭を上げるよう求め、顔を上げた克人を真摯に見据える。
「車を一台貸して頂けないでしょうか?」
問いかけた瞬間、周囲の方が驚きを露わにした。
貴重な車両、それも今はこの会議場を守る数少ない国防軍の車両だ。
勝手な別行動が許される状況ではなく、そこに貴重な車両を使われては堪らない。
そうした考えは当然響子も理解していて、けれど彼女は克人の依頼を頭ごなしに否定したりはしなかった。
「何処へ行かれるのですか?」
「魔法協会支部へ。私は代理とはいえ、師族会議の一員として協会職員に対する責任を果たさなければならない」
腹に肝の据わった、低く伸びのある低音。
言葉自体も遠回しではあったものの、響子も真由美もその意味をすぐに理解した。
「義勇軍に加わるのね?」
「ああ。七草、皆を頼むぞ」
互いの信頼を感じさせるやり取り。
それを見て響子は僅かに唇の端を吊り上げたが、その慎ましい笑みに気付いた者はいなかった。
「わかりました」と、承認を口にしようとしたところで別の人間が駆け寄ってきた。
「十文字さんが行かれるのなら、私も同行します」
「将輝!?」
第三高校一年、『一条』の御曹司だと、響子は一目で気付いた。
九校戦で達也の活躍を応援した際、同い年の筆頭として少年の顔は映像でよく見かけたものだ。
「将輝が行くなら、僕も……」
「いや、ジョージは一色や十七夜と一緒にヘリの発着を警護してくれ」
「だけど!」
食い下がる小柄な少年はどうやらあの吉祥寺真紅郎らしいと、こちらは将輝とのやり取りを聞いて初めて気付いた。
国防軍の技術士官である響子も当然『カーディナル・ジョージ』の名前は耳にしたことはあり、そんな天才研究者が一条の御曹司にここまで心酔しているとは思いもよらなかった。
「この街はまだ戦場だ。何が起こるか分からない。正直心配でしょうがないが、ジョージが付いていると思えば安心して戦いだけに集中できるんだ。だから、頼む」
「……わかったよ、将輝」
「任せたぞ。一色と十七夜にもよろしく伝えてくれ」
将来を嘱望される若き勇士の友情シーンに呆気に取られていた響子は、将輝が振り返るなり我へと返り、先に立つ克人へ部下の一人を示した。
「では、お二人はそちらの部下と一緒に。魔法協会関東支部へお連れします」
こうして、先の防衛戦で最前に立って敵の進行を食い止めていた二人が国際会議場を後にした。