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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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魔王降臨

皆様のおかげで


【あたしは星間国家の英雄騎士! 1巻】


が【重版決定】いたしました!!


……発売して二日目で重版は、自分も驚きましたよ。

 宇宙空間で激突するバンフィールド家の艦隊と、征伐軍の艦隊。


 両者の宇宙戦艦が、光学兵器や実弾兵器を駆使して戦闘を繰り広げていた。


 三方に分かれた後、敵艦隊の後方にて合流を果たそうとするマリー率いる艦隊は敵陣外縁部の艦艇と戦闘を行っていた。


 ブリッジにて、マリーは指揮下の五万隻に命令を出す。


「すれ違い様に削れるだけ削れ!!」


 興奮から似非お嬢様言葉が消え去り、荒々しい口調で叫んだ。


 ただ、興奮している理由は怒りではない。


(ようやく、帝国を叩けるチャンスが巡ってきたのよ!)


 マリーには重い過去がある。


 それは、友人の助命のため従い続けた二千年前の皇帝に、裏切られて石化され封印されたことだ。


 裏切りは絶対に許せない。


 友人を過酷な惑星に追いやり、その後も追い詰めたのも我慢ならない。


 自分たちを石に変えた皇帝――帝国には、恨みしかなかった。


「リアム様の敵、そしてあたくしたちの敵は――全員、ぶっ潰す」


 静かに決意を口にすると、艦隊はマリーの意志に呼応するかのように敵艦隊を激しく攻撃し始めた。


 タイミング的な問題だろうが、味方艦から発射される光学兵器や実弾兵器が敵艦隊を破壊していく。


 マリーの艦隊が通り抜けた場所は、敵艦の爆発が連なって道になっていた。


 副官が敵艦隊を見て目を細めている。


 憐れんでいるのではなく、敵艦隊の動きに引いていた。


「敵さんは随分と士気が低いですね」


 数で勝っている帝国軍だったが、物資不足などの原因により士気を落としていた。


 戦いぶりにも影響が出ており、我先に逃げだそうとしている。


 そのため、味方同士で接触事故が起きていた。


 マリーはその光景に、何の感情も抱かない。


「弾薬とエネルギーの節約になるわね。それよりも、リアム様とミンチ女の艦隊は?」


 マリーが気にしているのは、別艦隊である。


 リアムは無事なのか? ティアの艦隊はどうでもいいが、無事に合流できるのかを気にかけていた。


 副官が状況を確認すると、口笛を吹く。


「リアム様の艦隊は凄い戦果ですよ。ティア殿の方は――まぁ、この程度は問題ないでしょうね。むしろ、我々より敵を減らしています」


 副官の報告を聞いて、マリーは舌打ちをする。


「ちっ! 艦隊の指揮は流石ね」


「指揮下の艦隊の尻を蹴飛ばしますか?」


「――合流を優先しなさい。ここで下手に数を減らしては、リアム様に顔向けできないわ」


 もっと戦果を! という気持ちはあるが、無理をする必要はなかった。


 マリーは目を弓なりにしながら笑う。


「それに、ジワジワと削ってやるのも楽しそうよね?」



 三方に分かれた艦隊が、帝国軍後方にて合流を果たした。


 その様子をアルゴスのブリッジから眺める俺は、脚を組みながら余裕を見せる。


 激戦の中だろうと、アルゴスに乗っていれば安全だ。


 何しろ、全てがレアメタルで建造された鉄壁の戦艦だ。


 全ての面において他の艦より勝っており、戦場の中にいても安心できる場所となっている。


「ティアもマリーも、無事に合流できたな」


 陣形を整える味方の艦隊を見ながら発言すれば、ユリーシアが敵艦隊の様子を報告してくる。


「敵艦隊は無人艦を盾に、こちらと距離を取りました。現在、陣形を整えていると思われます」


 デフォルメされた戦場の様子を立体映像で確認しながら、俺は敵艦隊の動きの鈍さに呆れてしまう。


「足手まといと合流するから、艦隊の動きが鈍くなる」


「敵が領内で散り散りに動いていたら、今頃面倒になっていましたけどね」


「その時は、各個撃破をするだけだ」


 どのみち、帝国軍にはここから勝利を得る方法などない――と思っていたのだが、俺は何か嫌な気配を感じた。


 雰囲気の変わった俺を見て、ユリーシアも僅かに緊張する。


「どうかされましたか?」


「――嫌な感じがする。邪魔が入ったな」


「え?」


 理解していないユリーシアは、首をかしげていた。


 俺はシートから立ち上がると、ユリーシアに命令する。


「俺の刀を持ってこい。お気に入りの奴だ」


「は、はい」


 要領を得ないユリーシアだったが、俺の命令に従って刀を取りに向かう。


 俺は目の前に広がる光景――敵艦隊が右往左往している姿を見ながら、嫌な気配を放つ存在に向かって呟く。


「さて、問題は師匠に剣を置かせた奴かどうかだな。――師匠の仇なら、弟子として仇討ちをしたいところではあるが――」



「――こ、これは!?」


 リアムが邪悪な気配を感じ取っている頃。


 帝国軍を見守っていた案内人も、異世界からやって来る存在を感知していた。


 混乱する帝国軍の直情に出現したのは、宇宙空間では確認し難い黒い渦だ。


 そこから現われるのは、銀色の装甲に包まれた隙間から生命体が脈打っている巨大な宇宙戦艦だった。


 ドクロや骨をあしらった装飾が特徴的だった。


 案内人は、現われた存在が自分よりも格上であると確信する。


「あのタコなど目ではない! 異世界から私と同じ存在が、わざわざ現われた――そうか、そういうことか!」


 案内人は一人何度も頷きながら、この状況に納得する。


「これだけの規模の戦争ともなれば、生み出される負のエネルギーは莫大だ。それが、より強力な負の存在を導いた――ふは――ふはははっ!!」


 案内人は、僅かに痛むお腹を右手で押さえながら大笑いをする。


「リアム! お前らは頑張りすぎた! お前たちの頑張りが、より強大な悪をこの世界に導いたのだ!!」


 大規模な戦争により発生した負のエネルギーが、案内人よりも強大な負の存在を呼び出してしまった。


 案内人は勝利を確信する。


「勝てる。勝てるぞ。私の手で殺せないのは残念だが、これだけの邪悪な存在に目を付けられたとなれば、リアムに待っているのは死よりも恐ろしい未来だ。ぐふ、ぐふふふ――リアム、今日でお前も終わりだ」


 妙にお腹がズキズキと痛みを増すが、案内人はリアムの敗北を確信しておりそれどころではなかった。


「さて、私は少し離れた場所から戦いの様子を見物させてもらおうか。もしも、邪魔を嫌う存在であれば、私も消滅の危機だからな」


 現われた存在の怒りに触れる前に、案内人はこの場から去って行く。


「さらばだ、リアム。もう二度と会うこともないだろう」


 宇宙空間を浮かびながら、笑ってどこかへと去って行く案内人だった。



「ちょ、直上に所属不明の艦隊が出現しました!?」


 騒がしいブリッジ内に、オペレーターの困惑する大声が響いた。


 それを聞いたハンプソン侯爵が、舌打ちをしつつ確認を急がせる。


「直上を警戒しつつ、所属を確認しろ!」


 この状況で味方の増援が来るとは思えなかった。


 多分、敵だろうと思いつつも、念のために所属を確認しようとした。


 敵であれば即座に迎撃するつもりだったが、オペレーターは困惑したままだ。


「こちらからの通信に応えません」


「ならば敵だろうが!」


 オペレーターが何を困惑しているのかわからず、ハンプソン侯爵は怒鳴ってしまった。


「モニターに映します!」


 しかし、オペレーターがモニターに状況を映すと、ハンプソン侯爵の表情が強ばる。


「何だ!?」


 征伐軍の直上に出現したのは、帝国の艦艇とは設計思想が異なっている宇宙戦艦だった。


 一言で言うならば悪趣味。


 まるで宇宙海賊たちが好みそうな骸骨をあしらったデザインで、不気味さがある。


 そんな謎の艦隊が、ハンプソン侯爵率いる征伐軍に近付いてきた。


「体当たりをするつもりか!? 避けろ!」


「駄目です! 味方艦に進路を妨害されて――接触します!!」


 操舵手が接触を回避できないと言うので、ハンプソン侯爵はシートに深く座って衝撃に備えた。


 超弩級戦艦が激しく揺れると、謎の艦艇がハンプソン侯爵の乗艦を押さえつけていた。


 敵に乗られて良い気分はしないハンプソン侯爵は、謎の艦隊を敵と認定する。


「バンフィールド家の新しい艦艇か? 舐めた真似をしてくれる!! 騎士と陸戦隊を用意しろ。敵はすぐに乗り込んでくるぞ」


 敵が接触してきた理由を考えれば、こちら側に乗り込む以外はない。


 そうでなければ、わざわざ接触する理由がないからだ。


 オペレーターが叫ぶ。


「て、敵が侵入してきました!」


「迎撃させろ。一人も生かして返すな」


 戦艦には、乗り込まれた際に戦闘が発生することを想定されている。


 迎撃のための装置も用意されており、目的次第だが侵入する側の方が不利だった。


 だが、すぐに異変が起きる。


「陸戦隊からの応答がありません!?」


「やられたのか? 映像を出せ」


 陸戦隊からの通信が途絶え、不思議に思ったハンプソン侯爵がモニターに状況を映すと目をむいた。


 あまりに光景に、数十秒も唖然としてから出た言葉は――。


「アンデッドだと!?」


 ――だった。


 モニターに映し出されているのは、古代の戦士や魔法使いたちだ。


 彼らとパワードスーツを着用した陸戦隊が戦っているのだが、敵は手足が吹き飛ばされても止まらない。


 頭を吹き飛ばされても、すぐに再生して起き上がっていた。


 モニターの中で、騎士が叫んでいた。


『どうしてアンデッド用の装備が効果を発揮しない!?』


 現場指揮官たちは、アンデッドが乗り込んできた段階で対処する装備を用意していた。


 聖水、銀の銃弾、他にも色々と用意したのだが――侵入してくるアンデッドたちには効果を発揮しなかった。


 そうして、次々に味方が倒れて――再び起き上がると、敵の戦列に加わる。


 あまりに光景に、ハンプソン侯爵は震えていた。


「ここま――ここまでするのか、バンフィールド!!」


 敵が禁術を使用して、自分たちを殺しに来た! ――そう判断したのだが、答えは以外にも後ろから聞こえてくる。


「いや、これは我の仕業よ」


「なっ!?」


 ハンプソン侯爵が振り返ると同時に、護衛の騎士たちが少し遅れて武器を手に取って侵入者に斬りかかった。


 その数は六人だった。


「侯爵様をお守りしろ!」


 騎士たちが一瞬で間合いを詰めて斬りかかってくる光景を見た全身鎧の大男は、嬉しそうな声色で告げる。


「実にいい騎士たちを揃えているが――前座としては物足りぬ」


 大男がその手に持っていた大剣を振るうと、六人の騎士たちが斬り裂かれて床に落ちた。


 ハンプソン侯爵は、シートから飛び退くと拳銃を構える。


「化け物が!? お前は何だ!?」


 大男は、銃を向けられても気にせず余裕を持って答える。


「我はファラバル! 異界の王――貴様たちにとっては、魔王と名乗った方が理解しやすかろう」


「ま、魔王? 馬鹿にしているのか!?」


 物語に出てくる魔王を名乗った存在に向かって、ハンプソン侯爵が引き金を引く。


 光学兵器が魔王を貫こうとするが、鎧を赤く染めるだけだった。


 魔王――ファラバルは笑っている。


「実はお前たちに頼みがある。リアムと艦隊戦を楽しみたいので、お前たちを不死の軍団に加えることにした」


「化け物が何を――ぬおっ!?」


 返事をする前に、ファラバルはハンプソン侯爵との距離を詰めて頭部を握っていた。


「光栄に思うがいい。貴様らは永劫――栄光ある不死の軍団として働くのだ」


「や、やめろぉぉぉ!!」


 直感でこのままではまずいと判断したハンプソン侯爵だったが、ファラバルから逃げることが出来ず――不死者になってしまった。


 そして、ファラバルの家臣たちがブリッジになだれ込み、クルーたちを押さえ込む。


 ファラバルは剣を床に突き刺し、両手を広げた。


「うむ! これでリアムと戦う準備が出来た! さぁ、我を楽しませてくれよ、リアム・セラ・バンフィールド――でなければ、この世界に死を振りまいて滅ぼしてしまうぞ」


ブライアン(´;ω;`) 「リアム様が心配で辛いです」


若木ちゃん(*´艸`) 「それより朗報よ。【あたしは星間国家の英雄騎士! 1巻】の重版が決定したわ。【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です】のアニメ化決定に続いて嬉しいお知らせよね。明日発売予定の【あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です 1巻】も私がこの勢いで売ってみせる」


ブライアン(*´・ω・`) 「【モブせか】の応援もよろしくお願いいたします。発売日は明日【12月28日】となっております」

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