征伐軍との決戦
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ここまで来られたのは、皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
総旗艦アルゴスのブリッジのモニターには、百八十万という規模の宇宙戦艦が陣形を整えている姿が映し出されていた。
バンフィールド家が十五万隻前後の規模なのに対して、敵は百八十万である。
一見すれば絶望的な数字にも見えるだろう。
しかし、内情は違う。
「補給と整備をまともに受けていない艦隊は憐れだな」
シートに座って誰に言うでもなく呟けば、そばにいたユリーシアが拾って会話へと繋げる。
「それでも、数はあちらの方が勝っていますよ」
「バンフィールド家と帝国では、地力が違うからな」
「また、そうやって不安になるようなことを言わないでくださいよ」
「事実だろ? だが、それでも勝つのは俺だ」
自信満々の俺に対して、ユリーシアは呆れたように小さなため息を吐く。
第三者が見れば絶望的な状況かもしれないが、内情を知っている俺たちからすれば勝敗はまだわからない――というよりも、バンフィールド家の方が優勢だった。
敵はまともに補給や整備を受けられず、敵地で孤立しているようなものだからな。
確かに数は驚異であるが、勝てない戦争でもない。
「敵に何が起きたのか知りませんが、ミスを繰り返してくれたことは幸いでしたね」
「ミスだと?」
聞き返すと、ユリーシアは征伐軍が犯したミスを挙げていく。
「艦隊規模に見合った補給線を用意できていませんでした。後から到着した敵の増援は、むしろ足手まといでしたよ。それに、敵本隊がバンフィールド家の本星を狙ったのも悪手ではありませんか?」
「そうだな」
それについては否定するつもりはない。
ユリーシアは続けて、今回のミスの原因について予想する。
「総大将のクレオ殿下が、功に焦ったという話は事実である可能性が高いですね」
まるで敵のミスに助けられて勝利した――みたいな言い方が気に入らない。
「クレオが何かしら余計なことをしたのが事実だろうと、俺の勝利は揺るがない。多少損害は増えただろうが、最後に勝つのは俺だった」
案内人の加護がある俺が負けるわけがない。
そもそも、俺はいつ帝国が牙をむいてもいいように準備をしてきた。
最初から帝国など信じていないからな。
俺は敵艦のどこかに乗っているクレオに向かい、笑みを浮かべてやった。
「今頃、お前はどんな顔をして俺と向かい合っているんだろうな? ――なぁ、クレオ」
◇
バンフィールド家の艦隊十五万隻と向かい合うクレオは、旗艦として選んだ要塞級のブリッジで緊張から冷や汗をかいていた。
(落ち着け、相手はこちらの十分の一にも満たない規模だ。それに、実際に戦える艦艇は五十万以上も存在する。いくらリアムだろうと、この数の差は覆せるはずがない)
頭の中で補給と整備という重要な問題を無視しつつ、クレオはこちらが有利な条件を並べていた。
(勝つ――勝たなければ、私に未来はない。ここまで来て、死んでたまるか!)
負ければ帝国で居場所を失う。
それは、クレオにとって死を意味していた。
(リアムに勝って、私は皇帝になる。今日、私はリアムを超えてみせる!)
数の上で優勢ながら、クレオは恐怖心を克服できずにいた。
モニターには、ハンプソン侯爵の顔が映し出される。
『皇太子殿下、こちらから仕掛けますので許可を頂きたい』
許可を求めてくるハンプソン侯爵に、クレオは眉根を寄せる。
「何故だ? この規模の戦争で不用意に仕掛けるのはまずいのだろう?」
頭の中にインストールされた知識から、不用意に仕掛けるべきではないという上方が浮かんできた。
しかし、ハンプソン侯爵は平然と答える。
『普通の状況であればそうですね。ですが、今は普通ではないのですよ。我々は数に勝り、優勢な状況にありますが――時間をかければ物資の少ない我々に不利になります。事前に伝えていたはずですが?』
「そ、そうだったな」
教えられてはいたが、実戦不足と緊張もあってクレオはまともに判断が出来なかった。
それだけ、クレオは追い詰められていた証拠である。
「許可を出す」
『――後はお任せ下さい』
ハンプソン侯爵との通信が終わった。
◇
超弩級戦艦に乗艦しているハンプソン侯爵は、通信が終わると誰にも聞こえないように悪態を吐く。
「余計な手間をかける」
先程のクレオとの会話を邪魔くさく感じていた。
そして、すぐに全軍に向けて命令を出す。
「全軍、総攻撃を開始しろ! 僅か十五万隻で我々の前に出てきたバンフィールドに、戦場に厳しさを教えてやれ!」
ハンプソン侯爵の命令と同時に、無人となった宇宙戦艦が次々に速度を上げて前進していく。
目指すのはバンフィールド家の艦隊だ。
無人艦には、敵艦に体当たりをするようにプログラムを組んでいた。
人が乗っていない宇宙戦艦は、光学兵器を放ちながら敵陣へ突撃していく。
その姿を見ながら、ハンプソン侯爵はニヤリと笑った。
「贅沢なミサイルだ。受け取れ、バンフィールド!」
◇
「敵艦隊、突撃してきます」
「数は――三十万!」
オペレーターの報告を聞きつつ、戦場を簡略化した立体映像を見る俺は目を細めていた。
「三十万もの艦艇を無人にして突撃か。思っていたよりも、帝国軍は人手不足だったのか?」
三十万隻の無人艦を用意したとなれば、そこに乗っていたクルーはどこかへと移動したことになる。
他の艦艇に乗せているのだろうか?
それだけの余力があったのなら、最初から人員が不足していた可能性が高い。
ユリーシアの方は、最新鋭の艦艇が雑な扱われ方をして嘆いていた。
「どれも安くない艦艇だと思うんですけど、敵は思い切りましたね」
「贅沢な使い方だよな」
少しだけ羨ましく思うが、艦艇を雑に扱うと天城に怒られてしまう。
――はぁ、天城に会いたい。
というか、さっさと終わらせて帰りたい。
ロゼッタとエドワードは、今頃何をしているだろうか?
ブライアンの奴は泣いていそうだけど、そっちはどうでもいいか。
「敵本隊の動きは?」
俺が敵の動きを聞けば、オペレーターが答える。
「突撃した艦隊と距離が開いていきます」
それを聞いて頷く。
「一緒に突撃はしないのか――だったら、こちらは後退しつつ突撃してくる艦隊を丁寧に撃破する。陣形を変えて、機雷をばらまくのも忘れるなよ」
全艦が陣形を変更しつつ、突撃してくる無人艦に向けて砲撃を開始した。
味方が光学兵器を発射すると、前方に向かって幾つもの光が伸びていく。
その先で爆発が起き、小さな光が幾つも瞬いていた。
「指揮を執っているのはハンプソン侯爵だったか? 俺なら無人艦を盾にして突撃していたが、相手は臆病なのか?」
首をかしげると、横にいたユリーシアが呆れかえっていた。
「そんなことをするのは、帝国ではリアム様とバンフィールド家くらいですよ」
「――いい手だと思うんだけどな」
無人艦を盾にして突撃し、敵陣に穴を開けて暴れ回る。
数の上で勝っているのだから、それくらいの力押しは可能なはずだ。
度胸がないと思っていると、アルゴスに乗っている参謀の一人が俺に話しかけてくる。
「それを可能とする練度が、今の敵艦隊にはないのかもしれません」
「攻め込む前に訓練くらいするだろ?」
「征伐軍の規模と準備期間を考えると、かなりの無理をしたはずです。正規の軍人たちはいるでしょうが、徴兵を行い訓練も短期間という軍人も少なくないはずです」
かつて帝国で軍人をしていた参謀の言葉に、俺は納得する。
「こっちが地道に頑張っている時に、羨ましい方法だな」
羨ましいと呟いた俺に、ユリーシアが答えを知りながら尋ねてくる。
「リアム様は徴兵をされないのですか?」
「募集は行うが、徴兵までするつもりはない」
大々的に軍人を募集はしているし、条件面でも優遇している。
そのおかげで志願者は多い。
というか、徴兵すると他に問題が出てくるため行えなかった。
大きく手を広げすぎてしまったのも原因だが、徴兵を行うと経済面を始め色んな場所で問題が起きてくる。
軍事力ばかりを強化しても、それを支える領内の状況が悪化すれば強力な軍隊は養えない。
無理が出来る帝国が羨ましく思えるが――同時に、俺は帝国の底が見えた気がした。
「――動きの悪い艦艇が多いと思ったら、無人艦ではなく素人の集まりか」
敵艦隊の動きに鈍い場所があったので、てっきり無人艦だと思っていた。
まぁ、どちらでもいい。
敵の弱い部分を叩くのが、戦争の基本である。
オペレーターが、状況の変化に気付いて声を張り上げる。
「敵艦隊、陣形を変更します!」
戦場を簡略化した立体映像を見れば、敵艦隊が突撃陣形を取っていた。
無人艦を叩くために、面のように広がったバンフィールド家の艦隊を貫くつもりなのだろう。
ユリーシアが僅かに焦っている。
「敵は無人艦を盾に突撃してくるようですよ。リアム様の読み通りでしたね」
「嫌みか? それよりも、ティアとマリーを呼び出せ」
オペレーターが即座に二人を呼び出すと、立体映像で俺の目の前に二人が現われた。
僅かにノイズが入っているのは、戦場で通信状況が悪化しているからだ。
「ティア、マリー、艦隊を三つに分ける。突撃してくる奴らの後ろに回り込み、そこで合流だ」
戦力を分散させると言うと、ティアが険しい表情をする。
『各個撃破の可能性が高くなりますが?』
それが出来る奴らなら、きっとハンプソンも苦労していなかっただろう。
「問題ない。それとも、不安か?」
煽るように言ってやると、マリーがうっすらと微笑んでいた。
『ご命令とあれば、あたくしはやり遂げて見せますわ』
ティアが慌てて自分も実行すると宣言する。
『っ! 了解しました。すぐに実行に移します』
二人の立体映像が消えると、俺は脚を組み、膝の上で手を組んだ。
「もっと数を減らすべきだったな、クレオ――いや、ハンプソン」
◇
無人艦を盾に突撃した征伐軍だったが、バンフィールド家が三方に分かれて目標を失ってしまう。
それを見て、ハンプソンは苦々しい表情をした。
「勘の良い奴らだ」
五万隻前後の艦隊が三つ。
征伐軍は一つを全力で叩けば、それだけで勝利に大きく近付ける。
しかし、残念なことに征伐軍は器用に動けない。
艦隊規模が大きすぎるのも原因の一つだが、無人艦や徴兵された者たちが乗る艦艇を陣形の外側に配置しているためだ。
彼らの動きが鈍いため、器用に動こうとすれば事故が発生する。
何しろ、簡単な突撃でさえ味方艦同士の衝突事故が起きている。
勝っている時は勢いや余裕もあったが、勝敗のわからない戦いを前にミスが増えていた。
オペレーターが状況を報告してくる。
「敵の艦隊が陣形の外縁艦隊を撃破しながら、我が艦隊の後方を目指しています!」
動きの鈍い味方艦に加えて、無人艦も存在しているため身動きが取れない。
(数で攻めることにこだわりすぎたな。むしろ、足手まとい共が邪魔だ。これなら、三十万隻で挑んだ方が――いや、そうなればバンフィールド家を止めきれないか)
選択を間違えたと後悔しつつ、ハンプソンは命令を出す。
「無人艦の前に出て、後方に回った敵艦隊の盾にする。全艦、全速前進!」
バンフィールド家の艦隊と距離を取るため、全力で前進する。
だが、この命令で一部の艦隊が混乱したようだ。
オペレーターが悲痛な叫び声を上げた。
「味方艦同士の衝突事故が多発しています!」
「無視しろ! 生き残った艦艇で陣形を再編する。それよりも、事故に巻き込まれないように注意して進め!」
ハンプソン侯爵の無慈悲な命令に対して、周囲は異論を述べなかった。
自分たちが巻き込まれては敵わない。
そんな思いから、超弩級戦艦は周囲の艦を避けながら前進する。
その途中、動けなくなり助けを求める味方艦を無視しながら。
若木ちゃん( ゜∀゜) 「私の宣伝効果のおかげで【モブせか アニメ二期】も決定ね! いや~、これはついに私もチヤホヤされる時代が来るかしら?」
ブライアン(´・ω・`) 「ないです。 (そうなったら良いですね) 」
若木ちゃん(; ・`д・´) 「え!?」
ブライアン(゜ω゜`) 「それよりも、アニメ二期が決定いたしました【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です】は【11巻】が【12月28日】に発売でございます! 今回はスピンオフ作品として【あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です 1巻】も同時発売でございます!! また、1~10巻までが、BOOK☆WALKER様にて20%OFFというセールも実施中でございます」
若木ちゃん(;´゜Д゜) 「他にもお得なセールが行われているみたいだから、この機会にチェックしてみてね。――ねぇ、ブライアン、あんたさっき何か言った?」
ブライアン(´゜ω゜) 「さぁ? そして【俺は星間国家の悪徳領主! 6巻】と【あたしは星間国家の英雄騎士! 1巻】は好評発売中でございます!!」
若木ちゃん( `Д´)ノ 「ねぇ、さっき何か言ったわよね? 私、悪口には人一倍敏感だから気付くんだからね!」