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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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両軍集結

メリークリスマス!!


……今年も小説を書いてクリスマスを過ごしました(涙)

 トライド子爵が本隊と合流した。


 その頃には、ハンプソン侯爵が艦隊の再編を終えていた。


 終えたと言っても、生き残った艦艇を強引にまとめ上げただけだ。


 艦艇の質は良くても、戦場で臨時編成された艦隊はまとまりが悪そうだった。


 その様子を見た後、トライド子爵は旗艦となる要塞級へとやって来た。


 クレオが使用していた総旗艦の要塞級ではなく、征伐軍が保有していた一隻だ。


 既に総旗艦はバンフィールド家に撃破され、宇宙ゴミと成り果てているだろう。


 トライド子爵は、主立った面々が会議をしている場にやって来ると入室する前に深呼吸をした。


 少しでも心を落ち着けないと、クレオを殴ってしまいそうだからだ。


「――失礼いたします」


 トライド子爵が入室してくると、最初に動いたのはハンプソン侯爵だった。


「よく合流してくれた。それで、そちらはどれだけの戦力が残っている?」


 挨拶もすぐに切り上げて本題を切り出すハンプソン侯爵を見て、トライド子爵は本隊がどれだけ追い詰められているのかを察した。


「合流できたのは当初の半分。ただ、まともに戦える艦艇は三割も残っていません」


「そうか。だが、子爵が生き残ってくれたのは幸いだ」


「何度も危うい目に遭いましたよ」


 トライド子爵が、ハンプソン侯爵に促されて席に着くとクレオが声をかけてくる。


 僅かに緊張しているように見えるのは、きっと罪悪感があるからだろう。


「無事に合流できたことを嬉しく思う」


 それが、トライド子爵の気に障る。


 表情は変えなかったが、トライド子爵は内心でクレオに激しい怒りを抱いていた。


「――皇太子殿下もご無事で何よりです」


(無能な働き者の典型ではないか。よく、これを担いで皇太子にしたものだ。バンフィールド公爵は想像以上に有能だったな)


 ここに来て、クレオの無能さとリアムの有能さを痛いほど理解することになった。


 だが、まだ何も終わってはいない。


 先に席に着いていたダスティンが、今後についてハンプソン侯爵に尋ねる。


「それで、我々の戦力はどうなっている?」


 ハンプソン侯爵は、ダスティンを見ると忌々しそうに鼻を鳴らした。


「艦艇の数だけならば二百万は揃っているが、補給と整備の問題からまともに動かせるのは六十万隻程度だ」


 六百万隻もの大艦隊が、その数を六十万隻にまで減らしていた。


 トライド子爵は苦々しい表情をする。


「――それで、バンフィールド家の戦力予想はどうなっているのですか?」


 征伐軍はその数を大きく減らしたが、それはバンフィールド家も同じである。


 疲弊したバンフィールド家に、どれだけの余力が残っているのか?


 不安なトライド子爵に、ハンプソンが笑みを見せる。


「多くても二十万隻という予想が出ているが、十万隻が精々だろう」


 トライド子爵は、その話を聞いて少しばかり緊張から解放された。


「六倍差ですか」


 しかし、ダスティンは難しい表情をしたままだった。


「普段なら安心できる数字だが、相手はその程度の戦力差を何度も覆してきたバンフィールド家だ。しかも、奴らはわしらと違って補給に問題を抱えていない。更に言えば、この軍の士気が問題だな」


 勝てる戦争で敗北した軍人たちは、戦意が削がれていた。


 ハンプソン侯爵も士気について悩んでいた。


「本当にバンフィールド家は厄介な連中だ。まるで、覇王国を相手にしているかと思ったぞ」


 戦争が大好きな覇王国と同じ臭いがする。


 ハンプソン侯爵の意見に、周囲も微妙な顔をして頷いていた。



 バンフィールド家が所有する要塞級。


 球体の形をした戦艦だが、その名の通り動く要塞でもある。


 内部には艦艇を整備するためのドッグも保有しており、簡易基地としての機能も備えていた。


 そんな要塞級が戦場に出てきており、主立った者たちの乗艦を受け入れて補給と整備を行っている。


 ユリーシアを伴って要塞級の会議室に来ると、俺を出迎えたのはティアとマリーの二人だった。


 膝をついて頭を垂れる二人。


「お待ちしておりました、リアム様」


「凄まじいご活躍に、あたくしたち一同は感動に打ち震えております」


 他の騎士や軍人たちも敬礼を行っているが、右手を挙げて座るように指示する。


「世辞はいい。さっさと会議を始めるぞ」


 わざわざ俺たちが顔を合わせる理由は、無事であるのを示すためだ。


 科学と魔法が進みすぎた世界では、死んだ人間を生きているように見せる術はいくらでも存在する。


 画面を通して会話をしていた相手が、実はとっくに死んでいた――何てことは簡単にできてしまう。


 生前の姿や声をモニターに映し、その裏に他の人間がいて喋っているだけだった、とかな。


 俺の存在が建材であると示すためにも、こうして姿を見せる必要があった。


 俺のために用意された一番豪華な椅子に座ると、両隣にティアとマリーが立った。


 ユリーシアは少し離れた場所に移動したが、小さい声で「私の場所」と二人を責めるように見ている。


 ――まぁ、こいつは放置でいいとして、それよりも大事なのは今後だ。


「あれだけの規模の艦隊をよく押し返してくれた。お前たちの働きには感謝している」


 帝国軍を押し返した部下たちに礼を言いつつ、俺は話を続ける。


「敵艦隊を集結させたのもいい。ゴミはまとめて掃除をするに限るからな。それで、こちらの艦隊規模は?」


 生き残った帝国軍の艦隊を集めたのはいいが、問題はこちらの数だ。


 これについてはティアが即答する。


「現時点で十五万隻が集結しています。本星にてクラウス殿が艦隊を再編していますが、ナンバースリーとフォーの艦隊は補給と整備を受けています」


「間に合うのか?」


 再編した艦隊と、ナンバーズ入りを許した二人の艦隊は合流できるのか?


 その問いにはマリーが答える。


「既に敵は再編を済ませています。合流できたとしても、それは開戦後になるかと。急がせますか?」


「――いや、クラウスの判断に任せる。それで、敵の規模は?」


 会議室の中央に立体映像が投影されると、自軍と敵軍のデフォルメされた艦隊規模が投影された。


 敵軍の規模は二百万――三分の一まで削ったが、まだ敵の方が数の上では優勢だ。


 しかし、この場にいる誰もが、これを正しい数字とは認識していない。


 ティアが現時点の予測を話す。


「補給と整備に問題を抱えており、大半が無人の艦艇となっていると予想されます。自動操縦で動かすでしょうが、我々の敵ではありません」


 この世界の人々は、人工知能に対して忌避感――いや、危機感を抱いている。


 無人の戦艦や機動騎士が、まともに動かないのも人工知能を使いたくないからだ。


 どれだけ効率が悪くとも、人を乗せて運用するのはこのためだ。


 続きをマリーが話す。


「まともに動く艦艇は三十万から五十万程度と予想しますが、補給に問題を抱えているため奴らは短期決戦しか挑めませんわ」


 敵地で補給がまともに届かない中、決戦を挑まなければならない。


 逆の立場だと想像すると、本当に嫌になるな。


「それでも敵の方が数は多い。油断はするなよ」


 釘を刺しておくと、ティアとマリーが表情を引き締めていた。


 ――どこまで効果があるのか不明だが、浮き足立たれては困る。


 浮き足立つのは勝ってからだ。


「クラウスは間に合いそうにないな。この場は俺が指揮を執る。ティア、マリー、お前たちは俺の副将として支えろ」


 実質的に指揮官はティアとマリーになるが、名目上の大将は俺だ。


 というか、俺が総司令官になるしかない。


 副将に命じられた二人が、騎士礼で応える。


「リアム様に勝利を!」


「お任せ下さい!」


 俺は目の前に浮かんだ立体映像を見ながら、口角を上げて笑った。


「散々暴れ回ってくれたお前らは、ジワジワといたぶってやるよ」


 う~ん、今日も実に悪徳領主らしい振る舞いだ。


 我ながら惚れ惚れする。



 会議が終わると、参加していた将官たちが三人で集まり話をしていた。


「リアム様が随分とお怒りだな」

「領地を荒らされれば無理もないさ」

「それにしても、帝国軍は慈悲がないな。元は帝国領だろうに、略奪して星を焼くとは宇宙海賊だ」


 リアムが会議にて敵をいたぶると宣言したが、それも仕方がないというのが全員の意見だった。


「強引に領民たちを移住させたが、やはり正解だったな」

「今後を考えると頭が痛いけどな」

「文官連中は頭を抱えているだろうさ」


 戦後を考えると、軍人も官僚も忙しいのは同じである。


 それでも、バンフィールド家にはまだ軍人たちが笑顔を見せる余裕があった。


「まぁ、戦後の話は勝った後だ。今回もリアム様が参戦するから気を引き締めておけ」

「ここまで来て死にたくないから気を付けるさ」

「――お互い、生きて酒を飲めるよう祈っておこうか」


 将官たちは気を引き締めると、自分の乗艦へと戻っていく。



「――リアム様が参戦しているだと?」


「はっ! 自ら指揮を執り、帝国軍を撃ち破ると宣言されました。リアム様の参戦を聞き、将兵たちの士気も高まっております!」


「そうか」


(何でぇぇぇ!! どうして戻ってきてくれないのぉぉぉ!!)


 一方、本星で艦隊の再編を進めているクラウスは、リアムが征伐軍との決戦に挑むと聞いて胃が悲鳴を上げていた。


 総大将のリアムが、集結した征伐軍を相手に決戦を挑もうとしていた。


 クラウスからしてみれば、そこは参加させたら駄目だろ! と言いたい。


 しかし、リアムが参戦すると言ったなら、それを止められる者がいないのも知っていた。


(急いで増援を送らないと駄目だよな。だが、戦力の逐次投入も避けたい)


 悩ましいクラウスだが、リアムが参戦するとなれば多少の無茶は覚悟する。


「ナンバースリーとフォーの艦隊を最優先で補給と整備を行え」


「急がせていますが?」


「大至急だ。それと、二人はどうなっている?」


「エレン様に戦場まで送ってもらうと言って、既に合流しています。高速艦を用意させますか?」


 凜鳳と風華だが、現在は本星に帰還していた。


 風華は量産型のグリフィンを失ったが、凜鳳とエレンの機体は無事だ。


 エレンは負傷者と損傷した艦艇の護衛として本星に戻ってきており、ナンバーフォーであるエマも任務を終えて補給と整備のために帰還していた。


「――そのままでいい。二人の艦隊を先行させるが、一緒に補給艦隊も出撃させる」


 リアムが戦場で困らないように、フォローするクラウスだった。


 部下が困惑している。


「再編している艦隊に影響が出ますが?」


 補給と整備の段取りを変更すれば、当然ながら他にしわ寄せが行く。


 しかし、クラウスの決断は変わらなかった。


「構わない。それと、私も出撃する」


「閣下!?」


 部下が驚いているが、クラウスからすれば当然の話である。


(リアム様を戦わせて、私一人が後ろにいるのは駄目だろ。それに、優秀な部下たちは本星に残すから、私が残っていても出来る事は少ないからな)


 自由気ままな主君を持ったクラウスは、慌ててフォローに回るのだった。


クリスマス仕様の若木ちゃん( *゜∀゜)「メリークリスマス!! みんな、私へのプレゼントはちゃんと用意してくれ――」


ブライアン(´;ω;`)r鹵~<≪巛;゜Д゜)ノ ウギャーy


ブライアン(´;ω;`)「プレゼントを狙う悪い植物がいて辛いです。それはそれとして――」


ブライアン(`・ω・´)「ついに【俺は星間国家の悪徳領主! 6巻】と【あたしは星間国家の悪徳領主! 1巻】が発売となりました。皆様、書籍でも電子書籍も構いませんので、是非とも購入してお楽しみ下さい」


ブライアン( *¯ ꒳¯*)「そして【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 11巻】と【あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です 1巻】は【12月28日】に発売でございます。このブライアンの一押しは表紙のミレーヌ殿でございますが、ドレス姿のマリエ殿も可愛らしいですな」


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