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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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人を信じぬ心

既に店頭に並んでいるかもしれませんが、ついに明日【12月25日】は


【俺は星間国家の悪徳領主! 6巻】

【あたしは星間国家の英雄騎士! 1巻】


の発売日!!


特典SSは10本以上は書いた気がしますが、どこでどのSSが出るのか自分でも把握しておりません。


気になる読者さんは、オーバーラップ文庫さんのホームページで確認してね。

「好き勝手に命令しやがって、あの糞ミンチ女が!」


 宇宙戦艦のブリッジにて、用意されたサンドバッグ――という名の金属の塊を蹴ってボコボコにしているのは、マリーだった。


 憤り、興奮を抑えるためにサンドバッグで憂さ晴らしをしている。


 ブリッジクルーもそんなマリーに慣れているため、無視して自分たちの仕事をしていた。


 隣に立つ副官の騎士が、荒れているマリーを宥める。


「トライド子爵を討てなかったのは残念でしたね」


 副官の苦笑する顔を睨み付けるマリーは、ミンチ女――ティアからの命令を不満に思っていた。


「あと少しで、あいつらの息の根を止められた!」


 口調が荒いままであるが、本来のマリーであるとも言える。


 似非お嬢様口調こそ、副官からすれば取り繕っているようにしか聞こえない。


 戦場で気が立っており、素の口調が出ているだけだ。


「逃して様子をうかがえとの命令ですからね。それに、リアム様から戦場ではミンチ女の命令に従うように、と念を押されたのでは?」


「ぐっ!? ――ちくしょうが!!」


 リアムの名前を出されては、流石のマリーも黙って従うしかない。


 開戦前、リアムはマリーに「ティアの命令に従え」と釘を刺していた。


 これは征伐軍を相手にするため、統率能力に優れているティアの判断を優先するというリアムの考えだ。


 金属の塊を拳で殴り、くの字に変形させると、マリーは息を切らしながらも落ち着きを取り戻していく。


 汗ばんだ額に紫色の髪の毛が張り付くのが気持ち悪くて、手で髪を持ち上げて後ろへと流す。


「有力貴族共の逃げた先を追うわよ。その間、部下たちに休息を取らせなさい」


「了解です」


 副官が周囲に命令を出している間、マリーは呼吸を整える。


(確かに追い回すよりも、集めたところを一網打尽にする方が何かと面倒は少ないけどね。だけど、いくら減らしたとしても敵の数はこちらよりも多い。集結した敵と戦うとなれば、こちらも覚悟がいる、か)


 ティアが何を考えて命令を出したのか、マリーも読み取っていた。


 そして、このままぶつかれば味方にも被害が出るというのも理解する。


 だから、マリーは独自に命令を出すため、副官に顔を向けた。


「少数の敵艦隊を別働隊に追撃させなさい。それから、補給艦隊を発見したら、最優先で叩くように厳命するわ」


 長い付き合いの副官は、マリーの命令に従う。


「了解です。そういえば――」


「何よ?」


 余計な話をするのでマリーが睨み付けるが、副官はヘラヘラしていた。


「リアム様も同じように動いているそうですよ」


 それを聞いて、マリーはプルプルと体を震わせる。


 頬を赤くしながら。


「流石はリアム様! あたくしよりも早く、ミンチ女の考えに至ったのね!」



 一方のティアだが、リアムが少数の敵艦隊を撃破して回っているという知らせを聞いて、口元を押さえていた。


 驚いているのではなく、ニヤつく顔を周囲に見せないためだ。


 ブリッジで報告を受けたティアは、リアムの行動を褒め称える。


「――私が敵を集結させる前に、リアム様は既にこうなると読まれていたのね」


 副官の女性騎士が、どういう意味なのか尋ねる。


「リアム様がクリスティアナ様の作戦を読んでいた、と?」


「違うわよ。こうなると先読みして、少数の艦隊と補給艦隊を優先して叩いておられるのよ。相談もないまま、私はリアム様と同じ結論に至った――これこそ、化石女にはない私とリアム様の絆なのよ!」


 リアムの考えに自分が追いついたことを喜び、何の相談もないまま二人は最適な行動を取っていたわけだ。


 ティアにとって目には見えない深い絆で結ばれている! という根拠になっていた。


 副官も深く同意する。


「騎士団の中で、一番関係が深いのはクリスティアナ様ですからね。特別な主従の絆があってもおかしくはありません」


「そうよね! ね!!」


 嬉しそうにキャーキャー騒いでいる二人の姿は、外見年齢もあって学生が楽しそうに話しているようにしか見えない。


 騎士服を着用していなければ、ただ騒がしいだけと思われるだろう。


 だが、そんな二人の会話内容は酷い。


「このまま敵を殲滅すれば、きっとリアム様は褒めて下さるわ。本星防衛を成功させたクラウスに勝つためには、これくらいの功績がないとね」


「えぇ、敵は全て一網打尽です! ここが奴らの墓場です!!」


 楽しそうに話している二人に対して、報告を持ってきたオペレーターが近付く。


「あ、あの」


 そんなオペ―レータに、上機嫌のティアは微笑みを向ける。


「何かしら?」


「実は、マリー閣下もリアム様と同様の行動を――ひっ!?」


 ただ、オペレーターがマリーの名前を出し、リアムと同じ行動を取っていると知らせるとティアは無表情になった。


「その情報はいらないわ。あの化石女については、命令通りに動いているかどうかだけ教えてくれるかしら?」


「は、はい!」


 オペレーターは無表情のティアに怯えて、慌てて自分の席に戻っていく。


 そして、ティアの方は手を組んで祈るような仕草をする。


「リアム様、吉報をお待ち下さい」



 総旗艦アルゴスのブリッジに、ユリーシアが慌てて駆け込んできた。


 その理由は、アルゴスに到着した伝令から直接報告を聞いたためだ。


「リアム様! クリスティアナ中将が――」


 慌ただしいユリーシアの方に顔だけを向ける俺は、小さくため息を吐きながら既に報告は受けたと話す。


「艦内通信で報告は受けた。敵をまとめて叩くつもりなんだろ?」


「私に直接聞くように言いながら、その態度はおかしくありませんか!?」


「俺は伝令から色々と聞き出せと言っただけだ」


 立場が上がるほどに、下からの報告の精度が落ちてくる。


 自ら調べなければ、詳細など知りようがない。


 俺の不興を買うような報告は、誰だってしたくないだろう。


 だが、ユリーシアは別だ。


 この女、どこかで俺を侮っている。


 気に入らないが、俺の不興を買っても何とも思わないという点においてユリーシアは貴重な存在だ。


「それで? 何か面白い話は聞けたか?」


 俺のそばに戻ってくるユリーシアが、不満そうな顔をしながら伝令たちから聞き出した日常会話を俺に教えてくる。


「相変わらずですよ。クリスティアナ閣下は、リアム様と同じ考えに至ったと興奮気味だったそうです」


 ティアの奴、敵を一網打尽にするためわざと集結させているらしい。


 本当によくやるよ。


 俺の方は目に付いた敵を叩いているだけなのだが、何をどう考えれば同じ結論に至ったと考えるのだろうか?


「本当に相変わらずだな。それで、マリーの方の伝令は?」


「最近は金属の塊をサンドバッグ代わりに叩いて、ストレスを発散しているそうです。クリスティアナ閣下の下に付けたのは間違いでしたね」


 俺に堂々と間違いを指摘してきやがる。


「マリーを野放しにすると連携が取れないだろうが。あいつにはしばらく我慢してもらう」


 人間関係的な意味でティアもマリーも相性は最悪だが、能力面では悪くない相性だ。


 むしろ、相性は良い。


 前線指揮官向きのマリーに、後方で全体の指揮を執れるティア。


 どちらもタイプは違うだけで、指揮官としても有能だ。


 どちらを総司令官に置いたとしても、勝利は揺るがなかっただろう。


 ユリーシアは俺の考えを肯定できないのか、もっと違う方法があったはずと言ってくる。


「素直にクラウス閣下で指揮系統を統一すれば良かったのでは?」


「あいつには本星の守りも任せたからな。あまり仕事を増やしてやるのも酷だろ?」


「リアム様はクラウス閣下に甘いのでは?」


「有能な部下は大好きだ」


 やっぱりクラウスって優秀だわ。


 ティアとマリーと比べても安定感が違う。


 二人も有能だが、クラウスを押し退けて総司令官に据える程ではない。


「まぁ、実際に敵の本隊から本星を守り切ったからな。戦争が終わったら、何を褒美にすればいいのか悩んでいる」


 ユリーシアも、クラウスの実力は疑っていないらしい。


「本星を見事に守り切りましたからね。被害らしい被害もありませんし、まさに帝国最強の騎士ですね。よくバンフィールド家に仕えてくれましたよ」


 ユリーシアの言葉を聞いて、周囲の軍人たちがハラハラしていた。


 いつ俺が、ユリーシアの無礼な態度に激怒するか心配している。


 ユリーシア、お前はもっと周りを見たらどうだ?


「俺としては、あいつが出世も出来ずに平騎士の扱いをされていた方が謎だけどな」


 バンフィールド家に来た理由が、仕えていた主君の家が滅亡したから。


 クラウスがいて、滅亡する理由が意味不明すぎる。


 どうやら重用されていなかったらしく、平騎士のままだったそうだが――謎すぎる。


 ユリーシアが小さくため息を吐く。


「実力が高すぎて、危険視されていた可能性がありますね」


「そのパターンか」


「リアム様も気を付ける場面では? あまり優遇しては、裏切られて酷い目に遭いますよ」


 前世の頃、俺は後輩から似たような話を聞いたことがある。


 建国の際に活躍した忠臣たちを次々に処罰し、冷遇した皇帝がいたそうだ。


 その話を聞いて、俺は最初に「何て酷い」と思ったよ。


 だが、上に立ってみれば理解できる。


 裏切られる際に一番怖いのは、平凡や無能な者よりも有能な奴らだ。


 有能な奴こそ一番警戒するべきなのだ。


 しかし、俺の場合は違う。


「クラウスの裏切りで俺が死ぬなら、そこまでの男だったというだけだ」


 俺の言葉にブリッジに緊張が走ったが、空気を読まないユリーシアが話を続ける。


「相変わらず豪胆ですね。怖くないんですか?」


 俺は裏切られる苦しみを知っている。


 だから、そもそも人など最初から信じていない。


 クラウスを重用するのも、結果を出しているからだ。


「俺は最初から誰も信頼していないからな」


 うっすらと笑みを作ってそう言うと、ブリッジの雰囲気は更に悪くなった。


 悪徳領主――悪の道を歩むと決めた時から、俺は人を信じないと決めている。


 信用しても信頼しない。


 これこそが、悪徳領主という生き物だ。


 場の空気が悪くなったので、俺はシートから立ち上がって自分の部屋へと戻る。


「今日は休む。何かあったら呼べ」


 それだけ言うと、ブリッジクルーたちが一斉に敬礼をして俺を見送った。



(可哀想な人)


 ユリーシアはリアムに同情していた。


 普段の口は悪いが、その行いは名君と呼んで間違いないリアムの抱えた闇を見た気分だった。


 第三兵器工場の販売員としてリアムと関わってから、随分と長い時間が過ぎている。


 そばにいるようになってからは、リアムという人間を知る機会が増えた。


(知れば知るほど、闇を抱えているのよね。そうなってもおかしくない環境で育っているけれど、よくまともに育ったものだわ)


 リアムの闇――それは、幼い頃に両親に捨てられ、莫大な借金と一緒に地位と領地を押しつけられた事から始まる。


 ユリーシアはリアムが出て行ったドアを見ていると、軍人の一人が近付いてくる。


「秘書官殿の発言には肝が冷えます。あそこまでリアム様に物を言えるのは、領内でも数名のみですよ」


「意外と楽しんでいましたよ」


 リアムが自分との会話を楽しんでいたと言うと、軍人たちが頬を引きつらせていた。


「我々では冗談でも言えませんよ」


ブライアン(´;ω;`)「リアム様の心の闇が重くてつら――辛いかな? まぁ、とにかく、リアム様が可哀想で辛いです」


ブライアン( *¯ ꒳¯*)「そして、ついに【俺は星間国家の悪徳領主! 6巻】と【あたしは星間国家の英雄騎士! 1巻】が 明日【12月25日】 発売でございます。我々からのプレゼントは、リアム様の活躍でございます。書籍版で大増量したリアム様の活躍をお楽しみ下さい」


若木ちゃんヽ(*´∇`)ノ「モブせかだって凄いプレゼントがあるのよ! 【12月28日】発売だけど、何と今回は【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 11巻】に加えて、マリエルートとして有名だったIF

ルートを書籍化!! 【あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です 1巻】が発売になるわ」


若木ちゃん(; ・`д・´)「それにしても、アンケート用に書いた特典SSが書籍化って何なの? 私もアンケート特典に書かれたら、主役として書籍化できるの?」


ブライアン(´・ω・`;)「――それだけは絶対にないと思います」


若木ちゃん(o゜Д゜)=◯)`3゜)∵

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