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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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征伐軍

俺は星間国家の悪徳領主! 5巻の発売は 【4月25日】 となっております。


コミカライズ版2巻も同時発売ですので、よろしくお願いします!!

 セリーナを首都星に送り届けたティアは、クレオに呼び出されて宮殿に来ていた。


 皇族と面会するための部屋に通されたティアを待っていたのは、武装した騎士たちに囲まれたクレオの姿だ。


 ティアを立たせたまま、クレオは椅子に座って優雅にお茶を楽しんでいる。


 その姿に、ティアは殺意のこもった瞳を向けていた。


「――もう一度お聞かせ下さい」


 皇太子になった途端にリアムを裏切ったクレオは、友人とでも話すような気安い態度でとんでもない事を口にする。


「バンフィールド家に謀反の疑いがある。しばらくすれば、正式に帝国は総力を挙げてバンフィールド家の領地に攻め込むだろう――そう言ったんだよ」


 平然と告げるクレオを見るティアは、手を握りしめた。


 ギチギチと音を立てるが、表情だけは変わらない。


 ティアも平然を装っている。


「これまで散々尽くしてきたリアム様を裏切るおつもりですか?」


 ティアの発言に、皇太子を守るため武装した騎士たちが武器を手に取った。


 だが、それをクレオが手を上げて止める。


 クレオは立ち上がると、ティアに近付いて隣に立った。


「最初から俺を利用するつもりだったのは公爵だよね? ただの善意で俺を皇太子にしたと言うつもりか?」


「全て悪意だったとでも? 帝国の皇太子殿下ともあろうお方が、何と器の小さいことでしょうね」


 その程度で自分たちを裏切ったのか? そう言うティアに、クレオは僅かに眉根を寄せた。だが、すぐに笑顔を取り戻す。


「確かに俺も君たちに無礼だったね。そうだ――クリスティアナ、いっそ君は俺の家臣にならないか? 君ほどの人材ならば、俺の右腕として帝国を采配させてやってもいいが?」


 一領主の家臣と、帝国を采配する地位では比べるまでもない条件だろう。


 それをティアは拒否する。


「あなたの右腕とリアム様の家臣なら、比べるまでもありませんね。――拒否させていただきます」


「後悔することになるぞ」


 クレオが睨み付けると、その表情にティアは気分を良くする。


「それでは失礼いたします」


 ティアがその場で振り返り、そのまま部屋を退出する。



 ――バンフィールド家に謀反の疑いあり。


 帝国は征伐のために軍を編制。


 この情報が届いたのは、セリーナを首都星に送り届けた後だった。


 首都星に派遣したティアより情報がもたらされると、帝国が次々にバンフィールド家に対して切り崩しを行ってきた。


『私たち第七兵器工場が、帝国から追放処分なんてあんまりです!』


 大型モニターに映し出されたニアス・カーリンが、泣きじゃくって酷い顔をしている。


 バンフィールド家と繋がりのある商家、そして兵器工場などが一斉に帝国との取引を中止されてしまった。


 明らかな敵対行為――なのだが、あまりに温すぎて嫌になる。


「だから、お前の所もうちに来いと言っただろうが」


『そんな簡単に言わないで下さいよ! 引っ越しをするのも大変なんですよ!』


「なら、独自でやっていけばいいだろ」


『それが無理だから相談しているんじゃないですか!』


 高い技術力を持ちながら、顧客のニーズを無視するため人気のないのが第七兵器工場の特徴だ。


 独立してやっていけるわけがない。


 というか、帝国で商売をするのは不可能だ。


 何しろ帝国から取引を中断されたのだから。


 ニアスと話し相手をしている俺の隣では、腕を組んで指をトントンと動かすユリーシアの姿もある。


 こちらも俺に対して何か言いたそうにしていた。


「リアム様、私の古巣からも苦情が届いていますよ」


 ユリーシアの古巣は第三兵器工場で、帝国でも非常に人気の高い兵器工場だ。


 そんな第三兵器工場の連中は、自分たちは帝国から捨てられることはないと高をくくっていたのだろう。


 だが、帝国はアッサリと第三兵器工場も切り捨てた。


 ソファーに座っている俺は、脚を組んでニヤニヤと笑ってやる。


「考えが甘かったな。第三にも、うちに来るなら面倒を見てやると教えてやれ」


 ユリーシアは一度大きなため息を吐くと、自分の端末を利用して古巣に俺の言葉を伝える。


 モニターのニアスだが、こちらは項垂れていた。


『こんなのって酷いわ』


 いっそ帝国以外の星間国家に逃げればいいと思うが、それをすると機密を他国に持ち出すことになる。


 そうなれば、帝国は問答無用で兵器工場を潰すだろう。


「――わざわざ敵に塩を送るのか。皇族の甘さには嫌気が差すな」


 笑みを消して不満そうに呟くと、通信を終えたユリーシアが俺を見る。


「どうかされましたか?」


「何でもない。さて、次はエリオットやパトリスと話をするか」


 ニアスとの通信を強制的に遮断すると、ユリーシアが呆れた表情を俺に向ける。


「随分と余裕ですね。帝国が本気で潰しに来るんですよ。征伐軍の規模だって、数百万は確実という話なのに」


 それだけの規模となれば、帝国もかなりの無理をするはずだ。


 こちらもかなり苦しい戦いを強いられるが、俺たちだって何もせず待っていたわけではない。


 いずれ帝国とは戦争をすると思っていたし、そのための準備だってしている。


 ただ、数の差だけはどうしても埋められない。


「相手をしてやるさ。さて、こっちも準備をするとしますか。――ユリーシア、領内に戦時体制への移行を宣言する。防衛できない惑星やコロニーは、全て破棄して住民たちを避難させろ」


「全てですか!?」


 驚くユリーシアに、俺は素っ気ない返事をする。


「当たり前だ。領内にある全ては、人間だろうと俺の財産だ」


 俺が捨てるのは構わない。


 だが、誰かが勝手に俺の財産を奪うなど許せない。


 それにこの世界は、人間さえいれば再び領内の発展が可能だ。


 今後のためにも、人的資源は一切無駄にはできない。


 ユリーシアがアゴに手を当てる。


「――自分たちの開拓した惑星から、離れたくないと言い出す領民も出てくるはずです」


 そんなの簡単だ。


「軍に命令して、強制的に連れ出せ。俺のはお願いじゃない。――領主である俺からの命令だ」


 バンフィールド家の領民が、俺に逆らうなど合ってはならないことだ。


 ユリーシアが頭を振ってから、俺の命令を各所に届けるため端末を操作する。


 俺はソファーから立ち上がって背伸びをする。


「さて、どれだけの敵が来るのかな?」



 バンフィールド家の屋敷にある地下室。


 そこには様々な資料が集められていた。


 石版に文字を刻んだ資料から、今も使われているメモリーまで揃っていた。


 それらを管理しているのは、天城を筆頭としたメイドロボたちだ。


 集めた資料を何人ものメイドロボたちが解析している。


 その中には天城の姿もあった。


 随分と古い分厚い書籍を一ページ一ページ、丁寧にめくって中身を確認していた。


 だが、お目当ての情報は記されていなかった。


「――これも違う」


 分厚い本を閉じて棚に戻そうとすると、メイドロボたちの動きが一斉に停止する。


 時間にして数秒だったが、その後すぐに資料の片付けを開始し始めた。


 メイドロボの一体が、天城に近付いてくる。


「旦那様から戦時体制のへの以降が命じられました。統括、我々は作業を中断して、本来の仕事に戻ります」


 資料集めや情報収集は、リアムの命令ではない。


 本来ならば、メイドロボたちがこんなことをするのは許されなかった。


 緊急事態なので作業を中断すると言うと、天城は視線を動かして――三体のメイドロボに命令を出す。


「却下します。三体は残って作業を続けなさい。他の者たちは通常作業に戻します」


「よろしいのですか?」


 首をかしげてくる量産型のメイドロボに、天城は視線を落とした。


「構いません。仕事は問題なくこなせます」


 天城はそう言って、三体のメイドロボを連れて資料室を出る。


 スライドしたドアが閉まると、そこにはドアなど最初からなかったような偽装が施された。


 リアムすら知らない隠し部屋である。


 メイドロボたちが、天城に情報を伝えてくる。


「帝国が正規軍と貴族たちを首都星に召集しています」

「第三、第七を除く他の兵器工場が、受注をキャンセルしています」

「帝国内で物価の上昇を確認しました」


 本気で帝国が準備を開始したという情報が続くと、天城がボソリと呟く。


「これも裏にあの存在がいるのでしょうか?」



 その頃。


 首都星の路地裏にあるゴミであふれかえった場所に、案内人の姿があった。


 ゴミ山の上に立つ案内人は、電子ペーパーを広げている。


 そして、手がワナワナと震えていた。


「いっやったぁぁぁ!!」


 電子ペーパーを引き裂きながら、歓喜の雄叫びをあげた。


 手を握りしめ、仰け反りながらリアムの不幸を喜んでいた。


「いける。今回こそいけるぞ! 帝国のほとんど全てが敵に回った今なら、いくらリアムだろうと勝てるはずがない!」


 案内人が喜びに震える。


 電子ペーパーの記事には、帝国が旧クレオ派閥への制裁を加えると書かれていた。


 リアムだけではなく、クレオを支えたリアム率いる貴族派閥を全て敵と認定していた。


 案内人はクレオを褒め称える。


「いいぞ、クレオ! かつての味方を裏切るお前も好きだが、リアムにここまでするお前が私は大好きだ!」


 リアムを裏切り、そして帝国にバンフィールド家を征伐するための軍まで出させるのだから、案内人の中でクレオの評価はストップ高を更新し続けていた。


 案内人が背筋を伸ばし、そして両手を広げると黒い霧が広がっていく。


「首都星で貯め込んだ負のエネルギーを解放してやる。私が全力でクレオをサポートしてやれば、今度こそリアムを倒せるはずだ」


 人外の領域に足を踏み入れてしまったリアムを倒すのは容易ではない。


 しかし、だ。


 リアムはまだ人間だ。


 生身で宇宙に放り出されれば死んでしまうし、戦艦の主砲が直撃すれば蒸発する。


 一対一では勝てなくとも、数百万の大軍勢ならば勝機はある。


「あの糞野郎。今度という今度こそ終わらせてやる。私とお前の因縁にけりを付けてやる」


 案内人は首都星で貯め込んだ負の感情全てを使い、クレオを支援してリアムを倒そうと計画する。


「リアム――次こそお前の終わりの時だ!」


ブライアン(´;ω;`)「裏切られたリアム様が可哀想で辛いです」


若木ちゃん(; ゜∀゜)「裏切られた本人が、何とも思っていないのが凄いわね。うちのりおんしゃんなら、容赦なく仕返しに向かうわよ」


ブライアン(´;ω;`)「俺は星間国家の悪徳領主! は 【5巻が4月25日】 に発売です。書籍版の応援もよろしくお願いしますぞ」


若木ちゃん( ゜∀゜)「私は登場しないけど、モブせか――放映中の【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です】のアニメも応援よろしくね!」

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