挿絵表示切替ボタン
▼配色






▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
187/243

スーパーアヴィド

【新刊情報】


【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 9巻】【11月30日発売!!】


書籍版の予約が開始されております。

紙で読まれる読者さんは、予約して頂けると大変嬉しいので是非ともお願いします。

 帝国軍動く。


 その知らせをアリューナが受けた時には、最前線で帝国軍百万が侵攻を開始していた。


「百万? まだ戦力を温存していたのか?」


 総旗艦のブリッジで参謀たちと話をするアリューナは、帝国軍の数に疑問を持っていた。


 それだけの数があるならば、どうして最初から投入しなかったのか?


 参謀の一人が手に入れた情報から推測する。


「敵はバンフィールド家の軍隊ではなく、帝国軍が大半であると予想します」


「――本来の帝国軍を投入してきたか」


 バンフィールド家のみで攻め込んできたリアムがおかしいのであって、本来は帝国軍と協力して戦うのが普通だ。


「前回の戦いで随分と数を減らしていたからな。公爵とはいえ、数十万隻を失うのはかなりの痛手だろう」


 帝国軍を頼って侵攻してきたリアムに、アリューナは呆れてしまう。


「だが、それでも百万だ。我々はその三倍の数で迎え撃てる」


 覇王国も大損害を出しているが、それでも地元で防衛する利を有していた。


 アリューナが険しい表情をする。


「戦場で我を無視した恨みは忘れんぞ」


 そんなアリューナのもとに、信じられない報告が届いた。


「王太子殿下!」


「何事か?」


「て、帝国軍が――我が艦隊を次々に撃破し、首都星を目指しております! その勢い、止められません!」


「なっ!?」


 百万の艦隊が一直線に首都星を目指していると聞いて、アリューナは理解できなかった。


 敵の首都を狙うのは理にかなってはいるが、何の準備もなく行うのは愚行だ。


 補給や整備の問題も出てくるし、何よりも敵地で孤立しているようなものだ。


 普通はもっと重要拠点を制圧しながら、ゆっくりと戦争を進めるものだ。


「我らを見くびったか」


 リアムの行動が理解できないアリューナだった。


 だが、帝国軍の勢いが止まらないという話を聞いて、アリューナは不安を抱く。


「――全軍を集結させよ。これ以上の各個撃破を許すな!」



 覇王国宙域。


 アヴィドに乗り込む俺は、操縦桿を軽く握って人差し指をトントンと動かす。


 モニターに映し出される周囲の景色は、デブリ――宇宙ゴミに変わり果てた覇王国の艦隊だ。


「確かに強いが、覇王国もこの程度か」


 刀を持ったアヴィドの両隣には、アマリリスのアインとツヴァイの姿がある。


 ツヴァイの左腕は、応急修理で現地改修された物になっている。


 表向きは護衛機として連れて来た二機だが、本音は戦場での立ち回りを教えるためだ。


 つまり、修行の一環だ。


 アヴィドに二機と距離を作らせて、振り返えさせる。


 視界に味方の艦隊が入る。


 再編された艦隊は、以前よりもまとまりがあった。


 理想には遠いが、それでもこの前よりもマシだろう。


「覇王国はいい相手になってくれる。お前たちもそう思うだろ?」


 威圧しながら妹弟子たちに問えば、以前と違って気の引き締まった顔を見せている。


 モニターに二人の顔が映し出されるのだが、僅かにあった甘えが消えていた。


 出会った頃のギラギラした瞳をしている。


 ――剣士の目だ。


『そうだね。でも、アリューナは俺が殺すよ』


 風華が決意を語ると、それは許さないと凜鳳が口を挟む。


『僕の獲物だって言っているだろう? お前から殺すよ』


 普段通りの会話の中に殺気を感じる。


 師匠のもとから引き離されたことで、本来の強さを取り戻せたらしい。


 本当ならば、師匠に関係なく強さを発揮できなければならない。


「あいつはお前らの手に余る。それに、俺が相手をしてやると言ったからな。今回は我慢しろ」


『兄弟子!?』『どうしてさ!!』


 俺の命令に反抗する二人をモニター越しに睨み付けると、アヴィドが彼方を手放してアマリリス二機の首に手を伸ばした。


 宇宙に漂う刀が、出現した魔法陣の中に消えていく。


 アマリリス二機が、アヴィドに必死に抵抗していた。


 どうやら、アヴィドも苛立っているらしい。


「時間がないと教えただろう? さっさと終わらせて俺は本星に戻るつもりだ」


 風華と凜鳳が、俯いて悔しそうにする。


 そこに、ティアから通信が入る。


『リアム様! 偵察艦より報告が入りました。覇王国軍が首都星付近で集結しています。その数、約三百万隻です』


 首都星を目指す俺たちのために、アリューナが舞台を用意してくれたらしい。


「アリューナは気が利くな。俺たちも向かうとするか」


 アヴィドが巨大な魔法陣を背中に展開すると、そこから巨大戦艦の艦首が姿を見せる。


 徐々に全体が姿を見せると、巨大戦艦が変形を開始する。


「イゼルは楽しませてくれたが、アリューナはどうだろうな?」



 帝国軍を待ち構えていた覇王国軍。


 アリューナはアラクネの親機に乗り込み、戦場を数百機の子機から多角的に見ていた。


 数百機の子機全てが、アリューナの目である。


 一機で戦場全てを把握できる規格外の機動騎士。


 しかし、アリューナは信じられない光景を目にしていた。


「化け物が」


 帝国軍が戦場に持ち込んだのは、戦艦よりも巨大な人型兵器だ。


 その人型兵器の指先一つ一つから、小型艦ならば飲み込まれるほどの光学兵器が放たれる。


 覇王国の戦艦がビームに貫かれ爆発し、子機の一機も巻き込まれて視界の一つが潰れる。


 経験がフィードバックされるが、これでは何の意味もない。


『王太子殿下! アレは元王太子であるイゼル殿下に倒された巨大人型兵器です!』


 部下からの言葉を聞いて、アリューナは奥歯を噛みしめる。


 イゼルが倒せたのだから、最強を名乗るアリューナならば問題ないだろう?


 そのように言われた気持ちになるが、巨大人型兵器にアリューナは苦戦を強いられていた。


(イゼルが倒した時よりも性能を上げてきたか)


 子機たちが巨大人型兵器に接近するが、迎撃用の兵器が増えている。


 また、巨大人型兵器の周りを飛び回っている二機の機体が厄介だった。


 アラクネの子機が、もう六十機以上も撃破されていた。


『死ねよ!』


 二刀流の白い機体に、また一機の子機が破壊される。


『てめぇのせいで兄弟子に叱られたじゃないか。――僕の前から消えろ』


 太刀を持つ白い機体にまた一機が破壊され、アリューナは舌打ちをする。


「前回よりも強くなったか。厄介だな」


 どちらか一方なら対処もできたが、巨大人型兵器と一閃流の剣士二人を相手に苦戦していた。


 ただ、アリューナも負けるつもりはない。


「――ならば、次はこれでいこう」


 子機が二機ずつ、背中合わせになると全周囲をカバーできる状態にする。


 そうして、巨大人型兵器と一閃流の剣士二人以外を狙い始めた。


「お前たちは強いが、戦争は一人ではできないぞ。さぁ、どうするよ、リアム?」


 アリューナは、先にリアムの味方を減らす作戦に切り替える。



 ――つまらない。


 それが素直な感想だった。


「俺を倒すのを諦めて、どちらが先に雑魚を潰し終えるかの消耗戦に切り替えたか」


 互いに決定打に欠ける戦いを続けてやったが、アリューナの方は俺よりも周囲を狙い始めた。


 その間に、巨大人型兵器――長い名前もあるのだが、俺は【グリフィン】と呼んでいる。


 グリフィンが覇王国の艦艇を次々に撃破していく。


 互いに雑魚を撃破し続け、消耗し続けている。


 無駄。全くの無駄な戦いだ。


 アリューナの判断は正しいかもしれないが、俺にとっては面白さに欠ける。


 だが、戦争で強いのはアリューナだろう。


 イゼルは武人気質が強すぎた。


「軍隊で強いタイプだな。個人としての強さはイゼルの方が――」


 感想を述べていると、グリフィンが収集した情報に面白い物が見られた。


 モニターに表示すると、アリューナの乗る古代兵器の子機と戦う味方が見えた。


 機動騎士同士の戦いだが、アリューナの操る子機が優勢だ。


 性能面でも、パイロットの腕も一般的な騎士よりも数段上。


 数で対抗する部隊もいれば、戦艦の主砲を集中させている艦隊もいる。


 そんな中で、一般の機動騎士が子機を破壊していた。


「――何だ、意外と頑張るじゃないか」


 バンフィールド家で有能な騎士たちは、ほとんどが余所から流れてきた者たちだ。


 だが、戦場で成果を出している騎士の中には、バンフィールド家生え抜きの者たちがいた。


 俺が騎士団を用意してから百年になろうとしているが、ようやく才能を開花させた騎士たちが現れ始めた。


 バンフィールド家生粋のエースたちの誕生である。


「半数を失った価値はあったか」


 艦隊の半数を捧げた結果、新たな実力者たちが味方から出現した。


「騎士団も揃いつつあるか」


 数だけではなく、質の面でも揃いつつあった。


「アリューナには感謝しないといけないな! 礼だ――俺自らが相手をしてやる」


 グリフィンのハッチが開き、格納されていたアヴィドが外へと出る。


 グリフィンが動きを止めると、アヴィドをアリューナの気配がする方向へと向かわせた。


 すれ違う敵機――古代兵器の子機すら斬り捨てて前に進むと、アリューナの乗り込む古代兵器が見えてきた。


 アリューナを守るために戦艦が割り込んでくるが、無手のアヴィドが近付くと両断される。


 両断された戦艦が左右に裂けて作られたスペースを通り抜け、アリューナの前に出ると驚いたのか強引に距離を作っていた。


 逆噴射で後退するアリューナに接近しながら、近付く覇王国の敵機動騎士を破壊していく。


『何だ。何をした!?』


 アリューナには、俺が何をしているのか理解できないらしい。


 周囲の味方が次々に破壊される光景に、理解が及ばないのも仕方がない。


 何しろアヴィドは武器を所持していない。


 アリューナから見れば、勝手に味方が破壊されているようにしか見えないだろう。


「妹弟子たちの一閃を見抜いていたな? お前の才能は本物だよ」


『ふざけるな! お前は何もしていないだろうが!』


 才能があり、実戦経験も豊富なアリューナは強敵だ。


 凜鳳と風華が勝ちきれなかったのも頷ける。


 生身でなら勝てただろうが――二人も手傷を負った可能性があるな。


 ただ、そんなアリューナを持ってしても俺の一閃は見抜けない。


 何しろ俺もアヴィドも武器を使っていない。


「これが本物の一閃だ。中途半端な妹弟子たちを相手にして安心したか? それなら申し訳なかったな。俺は個人的にお前に感謝しているから、本物の一閃を見せてやろう」


 見せる――嘘だ。


 奥義というのは見られてはいけない。


 見た奴は殺す! それが奥義だ。


 しかし――過去に師匠が言っていた。


 完成された一閃は、見られようが意味がない、と。


 何しろ見えないのだから。


 古代兵器が下半身をパージすると、アリューナの気配がある機動騎士から八本の腕が出現する。


『時間をかけすぎたな!』


 周囲を見れば、数百機の子機たちがアヴィドを囲んでいた。


 それぞれが持つ八本の腕からは、攻撃が放たれようとしている。


 数で圧倒するという発想は悪くない。


 戦いは数だ。


 しかし、圧倒的な強さを持つ俺に対しては少なすぎる。


 降り注ぐ攻撃は、アヴィドのフィールドに弾かれる。


「せめて万単位は用意してから俺に挑むべきだったな。この程度なら、イゼルの方が強かったぞ」


 アヴィドとは、コストパフォーマンスを捨てた浪漫機体だ。


 古代兵器だろうと関係ない。


『くっ!』


 アヴィドを破壊できないアリューナに、ゆっくりと近付いて教えてやる。


「面白いことを教えてやる。イゼルと戦った際にアヴィドを改修したんだが、その際に何を使用したと思う?」


『まさか!?』


 イゼルが乗っていた八本腕の古代兵器。


 アリューナと違うのは、個としての強さを追い求めた機体だ。


 最終的に破壊すると液体になってしまったが、手に入れて解析させた。


「イゼルの機体は役に立った。お前は俺に何をくれるかな?」


 古代兵器の解析を行い、アヴィドとグリフィンは改修が行われた。


 性能の向上に大いに貢献したと伝えると、アリューナが斬りかかってくる。


 それは激情からの一撃ではなく、歓喜だ。


『いいぞ! お前は最高だ、リアム! 敗者は強者の糧。我を食らってお前が強くなるならば、それは誉れ。存分に食らうがいい!!』


 本気で斬りかかってくるアリューナの機体は、八本の腕でビームソードを出現させている。


 群を優先してイゼルの機体よりも劣るが、こいつの優れた点は他にある。


 それに、個人としても好ましい。


 俺の遺伝子を求めてくる奴だが、潔さはクレオに学ばせたいくらいだ。


「お前は生かしておくとしよう」


 直後、古代兵器の全ての腕を斬り飛ばした。


 宇宙に漂う古代兵器からは、アリューナの苦々しい声がする。


『どういうつもりだ?』


 敵を殺さない俺に不満を持ったらしいが、こいつは使える奴だ。


 俺のために死ぬまで働かせてやる。


「覇王国もお前も、今日からは俺が全てを支配する」

若木ちゃん( ・∀・)ノ「モブせかこと 乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 第9巻 が今月30日に発売されるわ。みんなチェックしてね!」


ブライアン(´;ω;`)「辛いです。ついにリアム様が、戦場で舐めプをはじめて――辛いです」


ブライアン(`・ω・´)「それはそれとして、好調な 俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 もよろしくお願いいたします!」


若木ちゃん(#゜Д゜)「てめぇこの野郎! モブせかの宣伝に専念しろって裏で教えただろうが!」


ブライアン(´;ω;`)「ひえっ!?」

  • ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいねをするにはログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。