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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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可哀想

【朗報】俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 


ご好評につき メロンブックス限定版 の 追加生産が決定しました!


メロンブックス限定版では、特典SS2本とA4タペストリーが手に入ります。


売り切れたとか凄いですね(^_^;)

 惑星アウグル。


 かつて帝国から派遣された代官により、酷い扱いを受けていた惑星は大きな発展を遂げていた。


 覇王国との戦争で重要拠点となり、莫大な予算が投じられて開発が進められている。


 資源衛星が運び込まれ、採掘同時に基地化が進められていた。


 宇宙港は拡大を続け、帝国中から商人たちが集まっている。


 覇王国と戦う帝国軍のために、せっせと商品を集めてくれる。


 人、金、物と三つが揃えば、嫌でも発展するからな。


 宇宙港に用意された会議室。


 そこで俺は報告を受けていた。


「我が軍の数は半数にまで激減しております」


 代表してクラウスが報告をしているが、その両隣にいるティアとマリーは顔面蒼白だ。


 何しろ、結果だけを見ればバンフィールド家の敗北だ。


「覇王国にもかなりの被害を出させましたから、全体を見れば痛み分けになります。しかし、バンフィールド家の被害は大きすぎます」


 俺を責めるクラウスの言葉はもっともだ。


「理解している。この件で俺はお前たちを責めるつもりはない」


 クラウスが今後について話をする。


「我が軍はしばらく動けません。再編に時間がかかります」


「お前とティアに任せる。俺は領地に戻るからな」


「は?」


 最高司令官が領地に戻ると言いだして、クラウスは面食らっていた。


「戻ると言った。葬儀が終わり次第、俺は領地に戻る。アルゴスは整備と補給が必要だから、マリーの艦隊を使う。負傷者も連れ帰るとするか。――お前は俺の代わりをしろ」


「は、はっ」


 最高司令官代理をクラウスに押しつけ、俺は席を立つ。


 困惑する三人を前に、俺は少しだけ気が重くなった。


「――間に合わなかったな」


 小さくため息を吐くと、クラウスが少し離れて場所に立つ二人を見る。


 凜鳳と風華は、俺に平手打ちされて頬を赤くしている。


「リアム様、お二人は連れて戻られないのですか?」


 話題を振られて身構える二人に、俺は鋭い視線を向けた。


「怠惰な奴らには、師匠と会う資格がない。――二人はここの守りを任せる。クラウス、好きに使っていいぞ。文句を言ったら俺に報告しろ。俺の手で思い知らせてやる」


 怒気を込めた言葉に、凜鳳も風華も僅かに震えていた。


 一閃流は勝って当たり前。


 アリューナの操るアラクネに善戦したらしいが、勝ちきれなかった二人は一閃流の面汚しである。


 二人に近付くと、どちらも悔しそうに俯いていた。


「次の戦いでは師匠に恥をかかせるな」


 それだけ告げて、俺は二人に背を向けた。



 バンフィールド家の本星に帰還したマリーは、リアムと屋敷の廊下を移動していた。


 オープンカーのような乗り物で、二人は病院などの施設が集中している場所を目指す。


 マリーは不思議に思っていた。


「リアム様、こちらには何用でしょうか?」


「ん? ロゼッタだ」


「ロゼッタ様? ロゼッタ様の身に何か!?」


 リアムが戦争中にも関わらず領地に戻る程の出来事が、屋敷で起きていると知ってマリーは青ざめる。


 ロゼッタの身に何か起きたのではないか? そんな不安が的中した。


「そうだな」


 平然としているリアムは、ロゼッタの身を案じているようには見えない。


 貴族として、人の上に立つ人間としては正しい姿なのかもしれない。


 しかし、それがマリーには辛かった。


 マリーはロゼッタから、リアムに対する想いを聞いている。


 そこには政略結婚ではなく、本物の愛があった。


 もう少しだけ心配して欲しいと思うのが、マリーの正直な感想だ。


 二人がロゼッタのいる部屋へと到着して乗り物から降りると、待機していたブライアンが駆け寄ってくる。


 そして、リアムの前で泣きながら膝から崩れ落ちる。


「どうして――どうしてもっと早くに――」


 普段からよく泣いているブライアンだったが、今日の様子は普段とは違った。


 それがマリーの不安を煽る。


 普段は口を挟まないのだが、今日のマリーは違う。


「ブライアン殿、一体何が起きたのですか?」


「ロゼッタ様が――ロゼッタ様が!」


 ロゼッタの名前を口にするブライアンに、マリーは冷や汗が出てくる。


 最悪の想像をしていると、リアムはブライアンの横を通り過ぎた。


 少し呆れたその表情に、マリーはすがりつく。


「リアム様、どうして――どうしてそんなにも平然としていられるのですか? リアム様にとってロゼッタ様はその程度の存在なのですか!?」


 リアムが目を細め、マリーを振りほどいた。


「――放せ」


 振りほどかれたマリーが床に座り込み、涙を流そうとすると――ドアが開いた。


 そこにいたのはロゼッタだ。


「ダーリンお帰りなさい! あ、あら? マリーはどうして泣いているの?」


「え!?」


 寝間着姿のロゼッタは、元気な姿をマリーに見せる。


 リアムの方は首をかしげていた。


「知らん。それよりも、その――」


 言いよどむリアムに、ロゼッタが微笑むと部屋の中に招く。


 マリーはその光景に理解ができず、泣いているブライアンを見る。


「ブライアン殿? ロゼッタ様は元気そうですが?」


「ロゼッタ様が不調などと、このブライアンは言っておりませんが? このブライアン、今日という日をどれだけ待ち望んでいたことかぁぁぁ!!」


 また泣き出すブライアン。


 その声を聞いてか、部屋の中から鳴き声が聞こえてくる。


 赤ん坊の泣き声だ。


「ふひゃおやぁぁああぁぁ!!」


 あまりの驚きにとんでもない悲鳴を上げるマリーは、跳び上がって部屋へと駆け込む。



 ロゼッタの部屋の中。


 大きなベッドの横には、小さなベッドが用意されている。


 メイドの他には看護師数名の姿。


 姿は見せないが、暗部であるククリの部下たちも配置されていた。


 そして、天城の姿もある。


 俺を見ると目を閉じて頭を少しだけ下げたが、上げた時に少しだけ優しく微笑んでいたように見えた。


 ロゼッタが小さなベッドに向かうと、赤ん坊を抱きかかえる。


「ダーリン、わたくしたちの子よ」


 母性に目覚めたロゼッタが、子を抱きかかえて嬉しそうに微笑む。


 抱きかかえられた赤ん坊の顔をのぞき込めば、泣き止んでいた。


 前世では感動で涙を流したが――最初に浮かんだ感想は、本当に俺の子か? という疑問だった。


 帝国一の大貴族にまで上り詰めた俺の子だ。


 そこに間男が入り込む余地は一切ない。


 それは理解しているが、この時ばかりは不安しかなかった。


 ロゼッタが俺に赤ん坊を抱くように促す。


「ほら、ダーリン」


「ん」


 受け取って抱きかかえると、眠そうに俺を見ている。


「嫌がらないな」


「安心しているのよ。それよりもダーリンは、赤ん坊を抱きかかえ慣れているわね」


「ん? そうだな」


 前世の経験を活かせる場面が出てくるとは思わなかった。


 俺が赤ん坊を抱いていると、マリーが遠くから羨ましそうに見ている。


 そして、俺たちの様子をブライアンが撮影していた。


「リアム様、もっと笑顔をください」


「断る」


 そう言って赤ん坊をロゼッタに渡す。


 ロゼッタが赤ん坊を抱きかかえる姿が、前世の嫁と重なった。


 いや、元嫁だな。


 ――ここまで上り詰め、帝国すら滅ぼそうとしているのに前世の嫌な思い出に心が乱されている。


 自分でも情けない限りだ。


「しばらく休め。仕事は俺の方で引き受ける。マリー、ロゼッタの相手をしろ」


 そう言うと、マリーが素早くロゼッタの側に近付く。


「お任せくださいまし! ロゼッタ様、本当によくご無事で」


「マリーは大げさね」


 リアムはロゼッタと赤ん坊に背を向けて、そのまま歩き出す。



 俺の背中をロゼッタが寂しそうに見ているが、無視して部屋を出ようとすると天城が側に寄ってくる。


「旦那様、今の態度はいかがなものかと」


「――憐れな子だな」


 部屋を出てロゼッタに会話が聞こえない場所まで来て、俺は天城に自分の気持ちを打ち明けた。


「どういう意味でしょうか?」


「可哀想な子供と言った」


「若君は公爵家に生まれ、一般人よりも恵まれた生活を送られるでしょう。人はこれを幸運と呼ぶのではありませんか?」


「父親が俺でなければ、勝ち組だっただろうな」


「旦那様?」


「俺は大悪党だぞ」


 生まれた家が帝国一の公爵家。


 そして、母親はロゼッタ。


 ここまではいいだろうが、残念なのが帝国一の悪党である父親の俺だ。


 悪徳領主の家に生まれた可哀想な我が子。


 いっそ他人の子供だった方が、同情しなくてすんだ。


 可哀想に、あの子は俺の子供というだけで父親の悪行をいずれ背負うことになる。


 天城が黙って俺を見ている。


 その表情はどこか悲しそうだったが、俺は言わずにはいられなかった。


「――あの子には同情するが、俺の子として生まれたのが運の尽きだ」



 リアムと天城が去った部屋の中。


 赤ん坊を抱きかかえるロゼッタに、マリーが嬉し涙を流して喜んでいた。


 ただ、ロゼッタは寂しそうにしている。


「ダーリンは、この子の誕生が嬉しくないのかしら?」


 マリーはそんなロゼッタの不安を取り除くため、リアムがこの場にいるのがどれだけあり得ないかを教える。


「そんなことはありませんわ! 今は覇王国との戦争中です。本来であれば、リアム様がお戻りになれるのは、戦後になります。無理をして戻られたのですから」


「そうかしら?」


 落ち込むロゼッタに、撮影を終えたブライアンが話しかける。


「リアム様も我が子に戸惑っているのです」


「そうなの?」


「はい。――リアム様は、ご両親と過ごされた時間があまりにも短かったですからね。小さい頃から大人びた態度を見せ、領主として振る舞われていました。頼もしくはありましたが、今にして思えば大変申し訳なく思います」


 リアムが五歳になると首都星に移住した両親。


 それまでも、リアムの相手をすることはほとんどなかった。


 ブライアンは寂しそうに微笑む。


「そんなリアム様にも、若君が生まれました。このブライアン、本当に――本当に――」


 手で顔を隠して泣き出すブライアン。


 ロゼッタは赤ん坊に顔を近付ける。


 その様子を部屋の隅で見守っていたのは、犬の霊だった。


 案内人が悪さをしないように、ずっとロゼッタと赤ん坊を見守っていた。


 本来――リアムに精神的なダメージを与えるならば、今が最高の好機だった。


 ロゼッタや赤ん坊の身に何かあれば、リアムは精神的なダメージを負っただろう。


 犬の霊が役目は終わったと、部屋の中から姿を消す。



 半年後。


 帝国とは王国の戦争は、一時的に落ち着いていた。


 その理由は、両陣営が少なくない被害を出したためだ。


 バンフィールド家の艦隊が半数にまで減ってしまったが、覇王国はリアムにより領内を荒らされている。


 覇王国も帝国領内を荒らしているが、リアムにとっては痛くも痒くもない。


 結果、睨み合いが続いていた。


 そして、惑星アウグルにリアムが艦隊を連れて戻ってきた。


「半年前に半数の艦隊を失ったが、それだけの価値があったな」


 幹部を集めての会議の場。


 リアムが堂々と言い切るのは、バンフィールド家の軍隊についてだ。


「軍拡を急ぎすぎて、不要な連中を抱え込みすぎた。今回の戦争で、無駄な奴らを一掃できたのは幸いだ」


 覇王国との戦争をふるい分け扱いするリアムに、幹部たちも渋い表情をする。


 その中で平然としているのは、クラウスをはじめとして大幹部たちだ。


 ティアやマリーは、むしろうっすらと笑みすら浮かべていた。


「リアム様の言う通りかと。私とクラウス殿で再編した艦隊は、精鋭と呼んで間違いありません」


 実戦を経験して顔つきが変わったと報告するティアは、バンフィールド家の軍隊が精強さを取り戻したと喜んでいる。


 マリーは有象無象が消えたと発言する。


「無能が消えたのは好都合でしたわね」


 味方が大勢死んでこの台詞だ。


 納得できない者たちも多い中、クラウスがリアムに忠言する。


「ふるいにかけるにしては、やり過ぎたと言わざるを得ません」


 クラウスの言葉に、リアムは不敵に笑みを浮かべていた。


「俺だって平時ならしないが、時間がない。皇帝陛下や皇太子殿下には困ったものだな」


 リアムが椅子から立ち上がると、表情が真剣なものに変わる。


 リアムの覇気に幹部たちも息をのんだ。


「――領地を長期間不在にするのは好ましくない状況になった。時間をかけている暇がない。今度は出し惜しみなしだ」


「リアム様、それは」


 クラウスが止めようとすると、リアムが有無を言わさぬ雰囲気を出す。


「出撃だ」


ブライアン(´;ω;`)「リアムさまあああ!! おめでとうございます!! このブライアンは、心からお喜び申し上げますぞ!」


若木ちゃん( ゜Д゜)「はいはい、おめでとう。おめでとう。それより、しっかり宣伝するわよ」


ブライアン(´・ω・`) (……もう復活した。辛いです)


若木ちゃん(゜Д゜)「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 9巻 の予約が開始されたわ。書籍狙いの読者さんは、是非とも予約してね!」


ブライアン(´;ω;`)ノシ「皆様のおかげで 4巻のメロンブックス限定版 が追加生産されることになりました。大変ありがとうございます」

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