強者
俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 をよろしくお願いしまああああすううう!!
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アリューナ率いる覇王国の艦隊は、バンフィールド家に壊滅させられた味方の艦隊を救助していた。
ただ、人命救助を行う理由は覇王国らしいものだ。
バンフィールド家の情報を少しでも得るため。
特に、これから戦う強者がどの程度の実力なのかを知りたがっていた。
それはアリューナも同じだ。
怪我が完治していない軍人を会議室に連れてきて、大勢で囲んで質問攻めにしている。
「敵の数は本当に百万に届かないだと!? 何という豪胆さよ!」
「これが他の者なら血迷ったと思えるが、リアムとクラウスだからな」
「騎士たちはリアムを狙い、将軍たちはクラウスの首を狙っておる。いっそ賞金をかけてはどうだ?」
「無粋だな。純粋な戦いには不要だ」
話題に上がるのはリアムとクラウスの話題が多い。
だが、アリューナは他の指揮官についても気になっていた。
怪我をした軍人に問う。
「リアムやクラウスの他に、警戒するべき敵はいたか?」
「遊撃として活躍する一万隻の艦隊が厄介だったと聞いております。率いているのはマリーという騎士とのことです」
「マリー? 昔に帝国にもいたな。マリー・マリアンだ。三騎士と呼ばれた女性騎士の話は、子供の頃に聞いて胸が躍ったよ」
クツクツと笑うアリューナは、幼き日に帝国にいたという女性騎士の話を思い出す。
二千年以上も昔に存在した帝国騎士で、当時の覇王国は戦う機会こそ巡ってこなかったが噂は届いていた。
帝国ではその名は忘れ去れていたが、覇王国では今でも残っている。
英雄の話が大好きなのは、覇王国の国民性だ。
他の者たちもアリューナの話題に加わり、話を盛り上げる。
「荒々しい戦い振りから、狂犬と呼ばれていた英雄ですな。一度は戦ってみたい敵ではあります」
アリューナも戦ってみたい理由は多い。
だが、マリーは過去の人間だ。
代わりに、アリューナは戦えた可能性のある騎士の名を出す。
「戦えないのが残念で仕方がない。戦えそうだった姫騎士も、宇宙海賊に敗北したと聞いてがっかりした思い出がある」
「姫騎士クリスティアナですかな? 騎士としても、将軍としても一流だった者ですな。味方の裏切りで敗れたのは残念でした」
姫騎士クリスティアナが生きていれば、アリューナも戦う機会があったかもしれない。
残念そうに呟く。
「味方に裏切られたのはそれだけの器というだけ。しかし、戦場で出会いたかったものだ」
私語が多くなる会議室で、怪我をした軍人が神妙な面持ちで口を開く。
「信じてはいただけないと思われますが――」
そう言って、信じられない話を始める。
「遊撃として活躍していた艦隊の司令官はマリー・セラ・マリアンでした。そして、小惑星トレスを攻略したのは、クリスティアナ・セラ・ローズブレイアです」
アリューナは目を細め、怪我をした軍人が自分を謀っている可能性を考える。
嘘を言っているようにも見えず、また嘘を信じ込まされている様子もない。
そうであれば、この場に連れて来られないだろう。
様々な検査を受けて、彼はこの場にいる。
「姫騎士のミドルネームはレタだったはずだが? それとも偉人の名にあやかっただけか?」
「不明です。ですが、味方が命がけで手に入れた情報なのは事実です」
全員が怪訝な表情をする中、アリューナは部下に資料を出すように命令する。
「その二人の戦闘記録を出せ」
「詳細な資料はまだ手に入っておりません。味方から聞き取りしたものを再現した程度ですが?」
「構わないから出せ!」
すぐに再現された艦隊戦が空中に映し出されると、その動きをアリューナは真剣な表情で眺めていた。
次第に破顔して、拍手をし始める。
「いいじゃないか」
「殿下?」
部下たちが困惑する中で、アリューナは席を立つ。
「こいつらが本物であるかなどどうでもいい! だが、実力が本物であるのは我が認めてやる。今からこいつらと戦うのが楽しみだ。英雄の名に恥じぬ戦いを期待しようじゃないか」
高笑いをしながらアリューナは会議室を後にした。
◇
『リアム様、このクリスティアナに全てをお任せください! 化石女よりも活躍して見せましょう』
『戯れ言を信じてはなりません、リアム様! ミンチ女は脳みそもグチャグチャにされて、正常な判断が出来ておりません。このあたくしに! あたくしに全てをお任せください! 必ずや覇王国を血祭りに上げてご覧に入れますわ』
――立体映像で俺に迫るティアとマリーを冷ややかな目で眺めていた。
覇王国との大規模な戦いが始まろうとしているのに、ティアとマリーの争いを見せつけられている。
立体映像では、クラウスの姿もある。
だが、こちらは静かに自分が発言するタイミングを待っていた。
小さなため息が出てしまう。
「はぁ――クラウス、お前が全体の指揮を執れ」
『え? よろしいのですか? 本来であれば、リアム様が総司令として指揮を執るのが望ましいと思われますが?』
「座っているだけのお飾りになれと? どうせお前が俺の補佐をして、全体の指揮を執るんだろう? それなら俺は、好きなようにやらせてもらう。ちなみに、今一番興味をそそられるのは王太子のアリューナだ。今から戦うのが楽しみだよ」
元王太子イゼルは確かに強かった。
ならば、風華や凜鳳の相手をさせるのも面白いだろう。
俺が自由にすると言えば、ティアが慌てていさめてくる。
『なりません! リアム様は総大将としてもっとも安全な場所から指揮をお執りください。さすれば、バンフィールド家は安心して戦えます』
「俺が座っているだけで安心するのか? 何ともおめでたい連中だな」
『リアム様の存在はバンフィールド家の要でございます。柱とも言える存在があってこそ、我らは戦えるのです』
言わんとする事は理解できるのだが、俺としては胡散臭く感じる。
前世で絶望を経験した俺は、働かずに指示だけ出す奴が嫌いだ。
あと――現場で自軍の動きを見て回りたい。
使える奴がいれば引き立ててもいいし、無駄に高い地位だけの奴がいれば左遷してやる。
「俺に命令するな」
ティアを睨み付けてやると、怯えた様子を見せながらも俺を見据えていた。
――有能な奴の忠言だから一応話は聞くが、これが口だけの奴なら殺していた。
マリーが妥協案を出してくる。
『そ、それでは、護衛の艦隊は最精鋭をご用意しましょう。最低でも十万は用意しなければ』
「そんなに集めたら全体に影響が出る。そうだな――いっそ俺の親衛隊から三万だけを連れて回るか。その方が色々と動きやすそうだからな」
『なっ!?』
マリーが目を見開くと、隣のティアが「余計なことを」を呟いていた。
俺が勝手に色々と決めていると、流石に黙っていられなかったのかクラウスが口を開いた。
『なりません。リアム様を失えば、実質我らの負けとなります。そうなれば、バンフィールド家は立ち直れません』
クラウスの言葉は正しいが――俺は周囲に聞き取れない声で呟いてしまう。
「仮に俺がどうなろうと、バンフィールド家は残るだろうけどな」
『何か言われましたか?』
「何でもない。だが、安心しろ。俺はそう簡単に負けることはない」
自信を見せれば、三人ともより不安な顔になる。
戦場で油断することが、命取りになると理解している顔だ。
だが、俺にはこれまでも実績があり、どう言えば納得するのかと思案している。
「それなら妥協案を出してやる。総司令官は俺ということにして、後方にいるとだけ全軍に伝えろ」
『それでは、結局好きに動き回れるというのですか!?』
驚くマリーは、俺の妥協案に納得できないらしい。
「俺は好きにする! 文句があるなら降格だぞ!」
左遷すると言うと、何故か三人ともより勢いを強めてくる。
ティアは左遷を恐れていなかった。
『降格すればお考え直しをしてくれるのですね!』
「考えるだけだ」
マリーの方がそれでも良いと言い出す。
『それならば、あたくしが降格を受け入れます。リアム様を必ず説得してみせますわ』
「出世競争をしていたんじゃないのか?」
次にクラウスだ。
バンフィールド家の筆頭騎士にまで上り詰めた男の言葉に、俺は驚いてしまう。
『お二人は今後もバンフィールド家に欠かせぬ人材です。それならば、いっそ私が降格を受け入れましょう』
「――本気か?」
『はい。今からでも平騎士に戻して頂いて構いません』
騎士として最底辺に戻ってでも、俺を出撃させないとする部下たち。
うちの騎士たちは意外と忠誠心が高いな。
他より条件がいいから、降格されても仕事が減ってラッキーと考えているとか?
ないな。ティアやマリーはともかく、クラウスだけは絶対にない。
俺は小さく両手を挙げて、降参のポーズを見せる。
「悪かった。降格の話はなしだ」
『そ、そうですか。それでは、後方で指揮をお執りになるのですね?』
何故か一瞬だけ残念そうにするクラウスが、俺が出撃を諦めたと思ったようだ。
「いや、好きにさせてもらう」
クラウスは「えぇぇ」と声を漏らしながら、俺に対して呆れを見せていた。
――お前ら、有能じゃなかったら減俸していたところだぞ。
◇
数週間後。
ティアは集結しつつあった覇王国の艦隊と戦っていた。
バンフィールド家の七十万隻。
「攻め立てろ! ここで時間をかけてしまえば、立て直しが難しくなる」
苦々しい顔で敵を見るティアは、集結した三十五万もの艦隊が予想よりも粘っている事に焦りを感じていた。
後方――帝国領からアリューナの本隊が戻ってきている。
ここで時間をかけては、バンフィールド家は挟撃されて文字通りの全滅になってもおかしくない。
ティアの第三軍は、覇王国軍に向かって攻勢を仕掛けていた。
海賊たちの恐れるバンフィールド家の猛攻だが、覇王国の艦隊は耐えている。
むしろ、敵に怯えているのはバンフィールド家の艦隊だ。
副官が味方に対して不満を吐露する。
「敵よりも味方の方が厄介ですね」
ティアは副官の言葉に同意して、シートの肘置きに拳を振り下ろす。
「臆病者共が!」
覇王国軍に対して敗北した艦隊が、敵を警戒していた。
攻勢をかけるべき時に、守勢に回って艦隊の動きに乱れが生じている。
第三軍は味方の艦隊を吸収して十万隻を超える規模にまで膨れ上がったが、その多くが敗北した艦隊だ。
思うように動かない艦隊に、ティアは歯がゆくて仕方がない。
すると、副官が敵の動きが変化したことに気付く。
急いで詳細を調べると、敵艦隊に向かって斬り込んだ二機の機動騎士がティアの近くに映し出された。
副官が報告するのは、風華と凜鳳の量産型アヴィドについてだ。
「一閃流の剣士たちです。敵陣に斬り込みました!」
「見れば分かる!」
一閃流を受け継ぐ剣士たちの活躍は、基本性能の高い量産型――【アマリリス】と名付けられた白いアヴィドは、凜鳳の乗る機体をアインと呼び、風華の乗る機体をツバイと呼んでいた。
二人のコックピット内の音声が、ブリッジに届く。
『ほらほら、逃げないと死んじゃうよぉ!』
凜鳳が敵戦艦を狙い破壊していく。
『はっ! この程度で勝ちきれないとか、兄弟子の騎士たちもたいしたことがねーな! 俺が二番目になってやろうか!』
リアムが騎士に与えるナンバー。
ナイトナンバーズなどとバンフィールド家では呼ばれている。
それはリアムが選んだ騎士に与えられる数字――リアムの信頼の証である。
筆頭騎士であるクラウスに「一」という数字が与えられたが、以降は誰も手にしていない。
クリスティアナはナイトナンバーズを軽んじる風華に怒りを覚える。
「舐めた態度を――リアム様の妹弟子でさえなければ」
副官は敵艦隊の陣形が崩れたのを幸いに、味方の立て直しに入った。
「この機に艦隊の陣形を整えます」
「臆病者たちは前方に配置しろ。逃げたら後ろから撃つと伝えておけ。――しょせんは急増の寄せ集めか」
新たに獲得した領地の住人たちは、バンフィールド家のやり方に馴染めずにいた。
凜鳳と風華の笑い声が響くブリッジは、異様な静けさに包まれる。
年齢詐称の若木( ゜∀゜)「苗木ちゃん分かっちゃた。これ実は――」
ブライアン(`・ω・´)r鹵~<≪巛;゜Д゜)ノ ウギャー
ブライアン(´・ω・`)「……俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 が好評発売中でございます。皆様の応援が我々の喜びでございます」