防衛戦?
俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 が 好評発売中です!
好評だった メロンブックス限定版 も通販分が売り切れたそうです。
残っているのは店舗にある分だけかも?
総旗艦アルゴス。
三千メートルを超える超弩級戦艦に分類される宇宙戦艦は、小さなコロニーを内部に抱えているようなものだ。
必要施設は大体揃っているし、贅沢を求めなければ生活に困る事はない。
だが、貴族は違う。
「限られたスペースすら無駄に使ってこその貴族だ」
俺のために用意された部屋には、高級ホテルかと見間違うような設備が揃っていた。
無駄なスペース。
無駄な設備。
開発者たちが僅かなスペースを確保するために、必死に設計するのをあざ笑うような行為だろう。
戦場だろうと優雅に過ごす。
これこそが悪徳領主の姿である。
そんな俺の私室に上がり込んでいるのは、仕事から戻ってきた妹弟子たちだ。
風呂上がりの下着姿同然の恰好で、俺のベッドやソファーに寝転んでいた。
凜鳳がベッドの上で仰向けになり、足をばたつかせていた。
「本当にここだけは別世界だよね。戦場にいるのを忘れちゃうよ」
ソファーにうつ伏せに寝転がり、行儀悪くお菓子を食べている風華が笑って同意する。
「兄弟子は本当にぶっ飛んでるよな」
戦場に豪華客船を持ち込むなど、正気を疑われる行為だろう。
二人とも俺の悪徳領主ぶりには、呆れを通り越して笑っていた。
だが、俺の豪華客船は軍艦としても非常に高い性能を保有している。
贅沢も性能も、両立させてこその金持ちだ。
「戦場で他が苦労しようと、貴族の俺は優雅に過ごす。――これが貴族だ」
笑みを浮かべてそう言ってやると、凜鳳と風華が顔を見合わせる。
「確かに戦場だけどさ~」
「ここって覇王国の領内だから敵地だろ? 兄弟子もよくやるぜ」
――俺たちがいるのは、覇王国との国境沿いではない。
国境を越えて、今は覇王国の領内に侵攻していた。
つまりは敵地だ。
どうして俺が帝国の領地を守るために戦わねばならないのか?
俺に任せたのだから、好きなようにやらせてもらう。
「敵地だろうと優雅に過ごすのが――」
妹弟子たちに悪徳領主の心得を語っていると、サイレンが鳴り響く。
目の前に小窓が出現すると、寝起きのユリーシアから報告がされる。
『リアム様、敵艦隊がこちらに気付いて接近しつつあります。数はおおよそ三万隻との事です』
持っていたグラスに入った酒を揺らしつつ、ユリーシアの姿にため息を吐いた。
「寝癖がついているぞ」
『し、仕方がないじゃないですか! それよりも、第一種警戒態勢です!』
軍人時代の副官であるユリーシアを伴って戦場に来たが、正直に言えば天城を側に置きたかった。
領内の事も気にかかるし、もしもを考えて残してきたが――今は敵地で領内とまともに連絡も取れていない。
「はぁ――天城に会いたい」
『何で残念そうなんですか!?』
「いや、本気で残念がっているが?」
残念そうに見える、ではない。本当に残念がっている。
そう伝えると、ユリーシアが無表情になった。
『戦闘準備を急いでください』
返事をする前に通信を切られてしまったが、これが他の奴なら厳罰物だぞ。
俺に対して無礼すぎるのではないだろうか?
くそ、俺の周りにはまともな女がいない。
グラスを置いて立ち上がると、俺は妹弟子たちに視線を向ける。
可愛い妹弟子たちだ。欲情はしないが、それでも恰好はどうにかして欲しい。
「出撃だ。それより、服ならいくらでも用意してやるから、風呂上がりに下着姿で歩き回るな」
二人は文句を言いながらも立ち上がる。
凜鳳は、毎回着替えるのが面倒らしい。
「こう出撃回数が多いと面倒なんだよね」
「だよな」
風華が立ち上がり背伸びをすると、腕に付けた端末を操作する。
一瞬でパイロットスーツが装着されるのを見て、これのどこが面倒なのか? と首をかしげた。
◇
六万隻近くの味方が、三万隻の敵に向かって攻撃を開始していた。
その様子をアヴィドに乗って眺めている俺は、近付いてきた敵の機動騎士を持っていたレーザーブレードで両断する。
残骸を蹴飛ばし、そして戦場で活躍する妹弟子たちを見ていた。
「悪くはないか」
量産型アヴィドに乗る凜鳳と風華は、どちらも白い機体を使用している。
コックピットには、二人の音声が届いていた。
凜鳳の乗った機体は長い刃の実体剣を持ち、戦艦めがけて飛び込んでいる。
『ほらほら、早く止めないと死んじゃうよ!』
一閃流の技も合わさり、量産型アヴィドに敵艦は両断されていた。
爆発が起きると、そこから凜鳳の機体が無傷で現れ次の獲物を探す。
「大物狙いの傾向が強いな。風華の方は――」
対して、風華の機体は両手にそれぞれレーザーブレードを持っていた。
こちらは機動騎士を相手に戦っている。
『強い奴を連れて来いよ! お前らじゃあ、相手にもならねーよ!』
機動騎士たちに向かって飛び込み、斬り刻みながら移動していた。
スラスターの光で軌道が線のように見えるのだが、風華の機体が通り抜けた場所は次々に爆発が起きていた。
同じ師から剣を学んだのに、随分と方向性が違うな。
集まる敵を倒しながら様子を見ていると、敵艦がアヴィドに向かってくる。
何十隻という戦艦が、アヴィドに主砲を向けていた。
敵の声をアヴィドが拾うと、どうやら俺が出撃していると知り突撃をかけたらしい。
『リアムだ! 奴の首を取ればこの戦いの勝利は確実だ! 故郷を守るためにも、奴をここで倒す。全艦、一斉射!』
「懐に入り込まれ、慌てて編制された寄せ集めの艦隊にしては威勢が良いな。――だが、俺を倒すには数が足りない」
アヴィドは敵艦から放たれるレーザーやビームを避けない。アヴィドの周囲にはフィールドが球体状に発生し、それらを弾いていた。
アヴィドが左手を敵艦隊に向けると、背後に魔法陣がいくつも出現する。
そこから出現した砲台やら様々な武器が、敵艦隊に向けられ発射される。
少し遅れて敵艦隊が次々に爆発に飲み込まれ、沈黙した。
「精鋭たちは今頃慌てて俺たちを探している頃か? まぁ、気付いたところで遅いけどな」
バンフィールド家の軍隊第一陣は、敵の侵攻軍とぶつからずに敵地に侵入して覇王国内部を荒らし回っている。
当然のように帝国の国境も荒らされるだろうが、俺が知った事ではない。
「楽しい殴り合いの時間だぁ! とことん付き合ってもらうぞ、覇王国」
◇
その頃。
帝国領内へと侵攻していた覇王国軍の艦隊は、防衛部隊の脆弱さに困惑を隠せずにいた。
王太子となったアリューナは、旗艦のブリッジで戦況報告を聞いている。
覇王国軍は連戦連勝。
損害らしい損害もないままに、帝国領内へと侵攻できていた。
だが、アリューナは眉間にしわを寄せている。
「一体どうなっている? 手に入れた情報では、バンフィールド公爵が出てくるという話ではなかったのか?」
覇王国の諜報部が入手した情報では、国境にはリアムが派遣される事になっていた。
そのため、王太子のアリューナが直々に攻め込んでいた。
この戦いはアリューナが王太子になって初の戦いだ。
国内での注目度も高く、アリューナの手腕と――武勇を誰もが期待していた。
勝利はいいが、弱い相手をいたぶっても覇王国では評価されない。
その不満が態度に表れているのだが、部下たちも同様に困惑していた。
「逃げ出したとは思えません。相手の策なのではありませんか?」
「イゼル様を打ち破ったバンフィールド家だからな。十分にあり得る」
「帝国最強の騎士クラウスも出てきているという噂だからな」
覇王国が特に欲しい首級は二つ。
一つは総大将だと思われるリアムの首だが、もう一つは帝国最強とまで呼ばれるようになったクラウスの首だ。
覇王国はクラウスに煮え湯を飲まされたと思い込んでおり、クラウスは恨まれている。
ただ、同時に強い相手には敬意を払うのが覇王国だ。
クラウスというのは、武人たちにとって極上の相手という位置付けになっていた。
アリューナがわざわざ前線に出ているのも、リアムとクラウスの首級が欲しいからだ。
「あの二人が臆病風に吹かれるとは思えない。だが、それならばどうして戦場に出てこない? 帝国領内がこれだけ蹂躙されて、黙っているような男には見えなかったが」
口元に手を当てて考え込むアリューナに、通信を受けた部下が立ち上がって発言の許可を求める。
「王太子殿下!」
「何だ?」
「後方からの緊急連絡です! バンフィールド家の艦隊が、覇王国の領内に侵攻! その数は推定五十万! イゼル様を討ったアヴィドという機動騎士の姿も確認済みです」
ブリッジがざわつき始めると、アリューナはシートから腰を浮かせる。
自分たちの後方にリアムがいると聞いて、してやられたという顔をした。
だが、すぐにその表情は笑みに変わる。
「こちらに侵攻してくるとは良い度胸だ。我も防衛戦よりも侵略の方が好きだから気持ちは理解できる」
リアムが後方にいると知り、喜んでしまうアリューナだったが――気になる事もある。
「だが、自ら袋のネズミになるつもりか? 僅か五十万では、我らが後方を突けば囲まれて終わるだけだろうに」
アリューナが率いている数は数百万。
数の上ではアリューナが優勢であり、リアムの行動はあまりにも無謀すぎるように見える。
部下たちがアリューナの命令を待つ。
「王太子殿下、これからどうされますか? このまま帝国深くに侵攻するのか、それとも引き返してバンフィールド公爵の首を狙いますか?」
進むか、それとも引き返すか。
本来ならば帝国へ侵攻するべきだが、アリューナが欲しいのはリアムとクラウスの首だ。
アリューナは即断する。
「引き返すぞ。バンフィールドと戦える機会が、次いつ来るか分からないからな。帝国などいつでも侵攻できるが、このチャンスは逃せない」
獣のような獰猛な笑みを浮かべるアリューナに対して、周囲の部下たちは期待に目を輝かせていた。
「全軍でバンフィールドの首を狙う!」
楽に切り取れる帝国領よりも、リアムの首を狙うアリューナだった。
◇
バンフィールド家から第二陣の艦隊が到着した先は、以前にリアムが代官を務めていた惑星アウグルだった。
数十年前、この惑星を治めていた領主は、領民から教育と技術を奪い星間国家とは思えない暮らしを送らせていた。
リアムが代官を務めた際に、自領から領民を移住させていたためバンフィールド家にとっては都合の良い惑星の一つだ。
大慌てでやって来た第二陣の将軍たちを宇宙港で出迎えたのは、オルグレン辺境伯の代理を務める【マリオン・セラ・オルグレン】だった。
ショートヘアーのボーイッシュな恰好をしているマリオンは、困惑するバンフィールド家の騎士や軍人たちを前に苛立っていた。
「遅い! もう少しで覇王国の艦隊がアウグルまで来るところだったじゃないか!」
代表して将軍がマリオンと話をする。
「予定よりも急いできたのですが? それよりも、リアム様はご無事なのでしょうか? まったく連絡が取れずに、本星でも困惑しております。それに戦況は? 何故、帝国から派遣された艦隊しか存在しないのですか?」
やって来た数十万の援軍を出迎えたのは、百万を超える味方艦だ。
これらは帝国から派遣された艦隊で、旧式ばかりの張り子の虎だった。
マリオンは頭を抱える。
「リアム先輩は敵地に乗り込んだよ! ちくしょう、何が簡単な仕事だよ。覇王国を前に、丸裸同然でさらされるとか、罰ゲームじゃないか。恨みますからね、リアム先輩」
涙目になるマリオンは、オルグレン辺境伯からリアムとの繋ぎ役として派遣された。
当初はリアムも無難に国境を守ると誰もが考えていたからだ。
マリオンも勝てずとも酷い負けはないと考え、リアムの側にいれば死にはしないだろうと安易に考えていた。
将軍たちが顔を見合わせる。
「どういう事だ!?」
「誰も残っていないのか? クラウス殿は? この際、クリスティアナ殿やマリー殿でもいい。誰か一人でもいれば――」
そんな将軍たちに、マリオンは涙目のまま笑い始める。
「そいつらは一人もいないよ! 全員連れて行って、覇王国に殴り込みをかけたんだからさ!」
話を聞いていた騎士が狼狽える。
「い、いかん。すぐにリアム様にお伝えしなければならないというのに」
困惑する第二陣に、マリオンはリアムからの伝言を届ける。
「それよりも、リアム先輩からの命令だよ。君たちは再編の終わった艦隊を引き連れて、覇王国の領内に侵攻しろ、とさ。援軍を引き連れて来いって」
派遣された帝国の艦隊は――現在リアムの命令で、続々と送られてくる新型艦や新型機を受領して再編が進められていた。
曖昧な命令に将軍たちが焦りを覚え、マリオンに詰め寄った。
「さ、再編? まさか、この規模を!? それよりも、詳細な命令書や、何かデータはないのですか? そもそも、数は!? どれだけの援軍を求めているのです?」
「――聞いても言わなかったよ。自分たちで判断しろってさ。もう、何なんだよ」
マリオンが顔を背けると、騎士や将軍たちが手で顔を押さえて天を仰いだ。
若木ちゃん( ゜∀゜)ノ「ハーレムよ、ハーレム! 若い女の子たちが、下着姿で周囲に侍っているからハーレムで間違いないわ。私は詳しいのよ!」
ブライアン(´・ω・`)「本当にハーレムなら大歓迎なのですけどね。はぁ――リアム様が周囲の女性に手を出さなくて辛いです」
ブライアン(`・ω・´)「そんなリアム様の活躍が増量された 俺は星間国家の悪徳領主!4巻 が好評発売中でございます! Web版を既読の読者の皆さんにもきっと楽しんでもらえるはずですぞ。是非ともお買い上げ頂きたく!」
若木ちゃん( ゜д゜)「私もこっちの書籍版に登場しようかしら? そしたら、宣伝にも身が入るかも」
ブライアン( ^ω^ )「断固拒否しますぞ」