pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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❸魔導書物
エースは、今度こそ監督生の歩幅にあわせて歩く。背中に抱えているデュースが案外重いというのもあるが、憂鬱そうに俯いて歩く監督生に早足を強要する理由が見当たらなかった。時刻は3時を過ぎ、鏡舎への道のりはまだ暗い。
監督生は人前で泣かない。男だけしかいない学園で、いちいち泣いてはバカみたい。前に笑いながらそう言っていた。だからこそ、先程の光景がフラッシュバックするのだろうか。エースは、いまだ監督生の涙に動揺していた。
「エース」
植物園が見えた頃、監督生は眠ったグリムを抱えたままで話しかけた。エースは目線を合わせず、声だけで応える。
「なに」
「歩きながらずっと考えてたんだけど、私はさっきの本をどこかで見たことあるかも。まだ記憶が曖昧で思い出せていないんだけどね」
すぐそこまで出かかってるんだけどなあ〜。と首を傾げて言う監督生に、エースはぎょっとした。
監督生がだんまりを決め込んでいるのは、先程2人が倒れてしまったのを気に病んでのことだ。てっきりエースはそう思っていた。
実際は先ほど拾った本について考えていただけである。
ケロリとした監督生の声色に「話がちげえぞ」と思い、立ち止まった。監督生も、それにつられて歩みを止める。
なんで止まったの?と言いたげな監督生の顔をジッと見ると、先程の気迫ある表情はすっかり抜け落ちていた。なにも気にしていませんよ。悩み事なんてありませんってな顔だった。
エースは、ハァ〜〜〜と長い溜息をつく。
「落ち込んでたわけじゃねーの!?」
「落ち込みというか、ショックかな」
「立ち直りはやくないですか」
「うん。でもいつまでもメソメソしていられないでしょ?今は時間が惜しいよ」
「ハイそーですか。心配して損しました!」
「もしかして歩幅合わせてくれてたのってそのせい?だったらごめん急ご。エースここ怖いんだもんね」
「うるせー!!!」
まったく監督生の言う通りである。まだ動ける者が必死こいて解決させねば、皆戻ってこないかもしれない。もしくは全員… なんてこともあり得るのだ。
そんなプレッシャーなんて他所に、人を揶揄うほどの余裕がある監督生にムカついたエースはせかせかと足を動かし始めた。ものすごい大股で先を行くので、慌てて追いかける。全く縮まらないを距離を何とか詰めようと、監督生が小走りになった途端 エースが急ブレーキをかけた。
よって、監督生はエースが背負っているデュースの背中に頭突きをお見舞いしてしまった。
「いたっ!」
「なあ、あれってルーク先輩だよな?」
エースは魔法薬学室の方を顎で指す。額を押さえながら先を見ると、そこには確かに見慣れた麗人がいた。入口付近で片膝をつき、何かをしているようだ。が、監督生たちが居る場所からは死角でよく見えない。
正直なところ、エースと監督生はおちゃらけてはいるものの、今の状況を不安に思っていた。3年の先輩と合流できるのなら心強い。2人はどちらともなく、早足で魔法薬学室へ急いだ。
近づいていけば、視界を遮っていた障害物がなくなる。魔法薬学室の入口がよく見えた。そしてエースは、ルークが何をしていたのかを知る。薄々勘づいてはいたが、いざ目の当たりにすれば衝撃は大きい。
「やあ。足音で直ぐに分かったよ」
ルークはそう言って立ちあがり、こちらを振り返った。
魔法薬学室入口の壁際には、ヴィルが腰掛け眠っている。エペルはその横に座り込み、ヴィルの肩に頭を乗せて目を瞑っていた。全く生気の感じられないその
ルークは2人の介抱をしていた。
普段より目つきの鋭くなった瞳が、監督生、エースと順番に見る。そして「やはりね」と笑った。
「どうやら、そちらも大変だったようだね」
「ルーク先輩、2人は」
「ああ、つい先程のことだよ。実に嘆かわしい」
その声には、我慢ならない怒気が滲んでいた。矛先はもちろんこの夜である。
ポムフィオーレ寮で調合された薬はどれも完璧であったが、どうにも効き目がなかった。よって更に強力な薬を調合するため、ヴィルとエペルの2人は魔法薬学室へ材料を取りに行ったらしい。その最中ヴィルが倒れた。
ルークはエペルから連絡が来た瞬間鏡へ飛び込み、すぐにここまで来た。単独行動禁止だなんて制限、この際どうだって良い。しかしルークの到着を待たずして、エペルもダウンしていたのだった。
ルークは手袋を外して、ヴィルの首筋に手を当て脈を取った。そのまま自身のチェスターコートを脱いで、顔色の優れないエペルにかける。
寒空の下、黒のタートルネック1枚になったルークは特に寒がる様子もない。皮肉にも、髪をひとつに縛ったさっぱりなルックスが夜に似合っていた。
「しかし、連れて帰ろうにも私1人では役不足でね。そちらも満員なようだ」
「これは実体験なんですけど、意識のない人間めっちゃ重いんで。2人抱えるのは結構しんどいっすよ」
「ムシュー・ハート、お気遣い感謝するよ。しかし、私も手は打ってあるのさ」
エースは一体なんのことだと片眉を上げる。その時、監督生は視界の端に光がチラついた。目を細めると、それは人影である。暗闇のせいで識別できないが、誰かが走ってこちらに向かって来る。揺れる光はランタンだ。
エースはやって来た人の顔を見て、ヤバい。完全に忘れてた。と顔を青くした。
「
「ルーク、連絡ありがとうな。でもヴィルとエペルまでダウンしてるだなんて聞いてないぞ」
「ああ、それはすまない。急いでいたものだから、つい」
ルークが打った手とは、トレイに連絡を入れたことだった。そして彼もまた、寮を単独で飛び出してきたうちのひとりだ。
実は、植物園付近で行われた監督生とエースのやりとりは全て、ルークに筒抜けであった。
いつも3人と1匹で行動していたはずなのに、聞こえる声は2人分。おまけに足音がいつもよりずっしりとしている。おそらくダウンが出たのだろう。声の主から推察するならば、ダウンはデュースとグリム。そして、特に可愛がっていた後輩の不調とあらば、トレイやケイトが急いで駆けつけそうなものだが…それもない。つまり報告ができない状況にあるか、報告を忘れてしまっているかだ。今回は後者が正しいのだが。
ということで、ルークは早々に根回しをしていたワケである。
トレイは汗ばんだ額を拭い、前髪をかきあげる。上がった息を落ち着かせるため一度大きく深呼吸をし、エースに目線を合わせた。
「エース。俺は言ったよな?」
「…なんか起きたら、
「そうだ」
「すんません」
「……悪い、責めるために来たわけじゃ無いんだ。心配して来たんだよ」
監督生にも目線をやり、一声かける。仕方ない、監督生もエースも必死で報告どころじゃなかったのだ。自分だってリドルが倒れた際 頭が真っ白になり、隣のカリムがパニックになったおかげで冷静になれた。誰にだってそういう時はある。
トレイは、ケイトにスマホで「無事」と送る。とにかくハーツラビュルへ帰ろう。とトレイは途中まで言いかけたが、ルークがトレイの腕を掴んだことにより遮られた。
「
「な、なんだいきなり」
「私は今、猫の手も借りたい気分なんだ」
「は?」
「手伝っておくれ」
ルークはそう言いながら、チェスターコートを着なおしてヴィルを背負った。
トレイは、まさかと思う。自分とは別に、自寮の生徒を呼んでいると思っていたからである。
「トレイくんは、エペルくんを宜しく頼むよ」
「大事な後輩たちの連絡もくれたし、こんな状況だ。もちろん手伝うが… おいルーク、まさかこれも見越して呼んだのか?」
ルークは、いつものようにニンマリと笑みを深めると「さあ!鏡舎まではすぐそこだ。急ごう!」と音頭をとった。トレイはやれやれ… とランタンを片手にエペルをヒョイと抱き抱え歩き始める。大事な後輩である2人も後に続いた。
✴︎
NRC校内の図書館には膨大な数の書籍が収められている。その規模は、ツイステッドワンダーランドにある魔法学校の中でも5本の指に入るであろう。巨大な本棚には溢れんばかりの本があり、どれもが重要な役割を果たしている。
宙に浮く本を払い除け、イデアはひとりポツンとここへ来ていた。単独行動が禁止だとか、何が起きるか分からないだとか、そんなのは気にしちゃいられない。今解決せねば、スリープしたオルトはどうなる?明後日に控えた推しイベのイベランはどうなる?
薄暗い図書館に、イデアの青が良く映えた。
図書館に赴いたのは、要約すればネットが使えないからである。この厄災が「メテオーレ」のせいだというのは明らかだった。ならば天文学の書籍を漁れば何かしら得られるはず。インターネットに依存するイデアだが、アナログが嫌いなわけじゃない。むしろ本を読むのは好きだった。本は、知識を与えてくれる。
イデアは天文学のコーナーへ足を運んだ。
「な、ない…」
本棚はからっきしであった。つい先日までここにあったはずの六十数冊が忽然と消えてしまったのだ。
まいった。せっかくここまでやってきたと言うのに、目的のものはなかったのだ。最悪だ。イグニハイド寮生に「あとは拙者に任せろ…」とカッコつけて出てきた手前、情報ゼロで戻るわけにはいかないのだ。なら別の方法を探そう。と、出口へ向かおうとした。
「おや、イデアさん奇遇ですね」
「ヒョワーーーーーー!!!!!!!!!!」
イデアは、背後から近づく黒ずくめの男… ジェイドに気づかなかった。どこから出したのかわからないバカでかい奇声を発したイデアに、ジェイドはくすくすと笑う。
イデアが猫背をさらに内に巻きチラと覗き見ると、ジェイドの奥ではもうひとりが山のように積まれた本を読み漁っている。
「ジェイド。あんま離れんな」
「すみませんフロイド。目に付く光が現れたもので」
「ハ?…アハッ ホタルイカせんぱ〜い」
本から顔を上げたのはフロイドであった。彼は先程までイラつきながら本を読み漁っていたが、青が見えると表情が明るくなる。
「こっちきて読むの手伝ってよ。どうせ目的一緒でしょ」
「せっせっせせセセせっせ拙者急用が」
「ハァ?」
「読みます」
イデアはヒィン…と鳴いて顔をシワシワにしながらフロイドの横に座り、読んでないやつはこっち。と言われた山から本を取る。といっても、もうほぼ読み終わりに等しいようだが。
フロイドが用意した関係のありそうな本の山は天文学、占星学、銀河形成論、星間物理学などで構成されていた。イデアが求めていた全てはここに集っていたのだ。どうりで本棚がすっからかんだったわけである。
イデアは速読が得意であったため、ものすごいスピードでページをめくっていく。
「ホタルイカ先輩読むのはっや!どーやったらそんな読めんの?」
「ア、ア 拙者特殊な訓練を、あっ」
「へー。ジェイドも特殊な訓練受けさせてもらえば?」
イデアが冷や汗をかきながらジェイドを見る。彼は質のいいベルベッドのチェアに腰掛け、飲食禁止の図書館でコーヒーを飲みながら「キノコ図鑑」「山と生きる」「
何しに来たんだこいつ。イデアはそう思った。
「コイツ真面目な本読むとすぐ腹減んの。食いながら読ませるワケにもいかねーじゃん?マジでコスパ悪ぃ」
「仕方がありませんよ。そういう都合の良い胃袋を持って生まれてしまったので」
そもそもフロイドのように読む速さも持ち合わせていませんし。とジェイドは言い、長い足を組み替える。
フロイドは天才なので、本をパーっと斜めに読んだだけで要点を頭の中でまとめ理解することができた。なので読むのもそこそこ早い。しかしジェイドは片割れの言う通りコスパが悪いのだ。
イデアはソレらに挟まれ、なしてこがなことにッ…とヨボヨボになりながら必死で読み進めた。
数分後、最後の一冊をイデアが読み終えた。フロイドが用意した 関係がありそうな本の山はイデア参戦のおかげで無くなったのだが…
「手がかりゼロってマ?」
「まじでありえねーだろ。時間の無駄ってコト?」
「古すぎて書物に残ってないとか?笑えない冗談乙」
「1000年に1度の大流星群なんてワード、1ミクロンも出てこなかった」
「しかし妙ではありませんか?あんなに綺麗な流星群、どこかに一筆くらい書き記されていてもおかしくはないはずです」
それは間違いなくそうなのだ。ここまで情報がないのはいくらなんでもおかしい。1000年前の話とはいえ、歴史や文学だって本に記され未来に受け継がれてきた。星も宇宙も立派な歴史の一部。なのにここまで一般書籍に情報がないということは…
「行くべき場所は禁書室、だってばよ…」
✴︎
そもそも禁書室はあまり使われていない。メインの図書館にほぼ全てが揃っているからである。
それに禁書室へ入室できるのは、教員又は寮長が許可を出した者だけであった。他で入室が認められているのは、成績が極めて優秀な生徒や、副寮長のみ。勿論禁書は持ち出し厳禁で、その行為を禁ずるために 厳重な魔法がかかっている。兎も角不便なのだ。
イデアは禁書室の常連なので、コンビニ感覚で入室した。後に続くジェイドはあまり入ったことがないらしく、キョロキョロしている。真剣に読むとお腹が空くと言っていたし、本には然程興味がないのだろう。
一方フロイドは寮長からの許可なんて降りていないため、入室できずにいた。
「いや入れねえけど?」
「アズールを叩き起こせと?」
「草」
イデアは見えない壁に苛まれるフロイドの写メを撮る。ジェイドはその様子が面白かったので、写真をAirDropで共有してもらった。ついでにフロイドも送ってもらい、メッセージアプリのアイコンにした。
「これは困りましたね笑」
「てかアズールが機能してないからジェイドが寮長代理じゃね?ちょっと許可してみて」
「そんな馬鹿な。ここは禁書室ですよ?」
やってみなきゃわかんねーじゃん!とフロイドが煩いので、ジェイドはハイハイと定型文を口に出す。
「オクタヴィネル寮寮長の権限において、フロイド・リーチの入室を許可する」
「いや入れたけど?」
「前フリ完璧でワロタ」
「なんかこの部屋嫌な感じする〜」
無事入室できたフロイドは伸びをした。やれやれ、世話が焼けますな。と両手を挙げたイデアは、マップが脳内に刻まれているため2人を天文学コーナーへ案内する。
そこには、またもや先客がいた。
「カ、カリム氏ッ!?!!!」
「オワー!びっくりした!なんだ、珍しい組み合わせだな!」
カリムは天文学のコーナーで禁書を本棚に戻しているところだった。手元には天文学以外に占星学の本もある。
3人はもしや…と顔を見合わせ疑念を口に出す。
「カリムさん。つかぬことをお聞きしますが、今戻している禁書は全てお読みに?」
「おう!今読み終わったところだぜ。な〜んにもなかったけどな!」
「終わりじゃん。もうここでタコパしよ。アズールの足が具ね」
「う〜ん。せっかくのお誘いだけど、オレはジャミルの飯しか食わないから… ごめんな!」
「サイコパスヨウキャ怖い!サイコパスヨウキャ怖い!」
イデアはその辺をのたうちまわった。カリムは全ての本を戻し終え、困ったように笑う。
彼もまた、監督生と同じく大事な親友が目の前で倒れた。しかし今は時間も情報も、何もが足りていない。このままでは救えない。感情を切り替え、単独で動いていた。
単独行動してたなんてジャミルに知れたら、説教どころじゃ済まないな と思いながら。
「けどおかしいんだ。天文学から1冊と銀河形成論から2冊、本棚に抜けがある」
「ハ?禁書本が持ち出されるなんてハナシ聞いたことが…」
「だよなあ〜。けど本当にないんだよ。もし持ち出されたなら、その3冊にはメテオーレのことが書いてあったのかも」
「十中八九そうでしょうね」
この部屋の厳重な魔法を掻い潜り禁書を持ち出すとなれば、寮長クラスかそれ以上の魔法を操ることとなる。流星群が降った夜、学園に侵入者がいたのか?もしかすると禁書を持ち出した犯人は、この夜を引き起こした元凶かもしれない。ではそいつは誰だ?
ジェイドは、フロイドにピッタリとくっつきながら思考を巡らせている。
カリムはそれを見て疑念を抱いた。
「なんかお前たち近くないか?」
イデアは今まで気にも止めていなかったが、カリムの指摘を聞き確かになと思う。兄弟とはいえ、ここまで2人の距離感は近かったであろうか?
ダァ〜!と溜息なのか唸り声なのかわからない声をあげたのはフロイドだ。頭をかいて、死んだ目で語る。
「…なんかさっき、また一気に寮生たちが倒れたじゃん」
「うん」
「そんときオレもジェイドも頭痛くなってさ… で、オレよりジェイドのがヤバくて、心配して近づいたの」
「うん」
「そしたら頭痛いの消えて」
「…うん?」
「つまり僕とフロイドはすでに発症していますが、近くに居れば不思議と頭痛や眠気の症状が緩和できるということです」
「そんなことある?」
イデアは、ぷりきゅあ…?とつぶやいた。フロイドは、離れるとまた痛くなんの。オレらキモいよね…。としょげている。
本を読むわけではないのに、なぜジェイドはフロイドにくっついて来たのだろう。この破天荒な双子であれば、自分と同じく
離れたくても離れられなかったのだ。
イグニハイド寮にも双子の1年生が揃って在籍しているが、早い段階で2人ともダウンしている。彼らは2人部屋であったし、おそらく発症時も近くにいたはずだ。双子という条件がトリガーではないとするなら一体なんなのだろうか。✟宿命を背負いし双子✟?
新たに謎が生まれた。
「不思議なことばっか起きるな。もう何が起きても驚かなさそうだ!」
「ポジティブオバケかよ」
「じゃあイデアはネガティブオバケか?」
「うっ!!!!!」
「ところでどうします?我々の収穫ゼロですよ」
このままじゃ僕たちは次の寮長会議で役立たずとして吊られてしまいます。ジェイドはわざとらしく溜息をつく。
一方カリムは苦い顔をした。
やりたいことがあるけれど、それは無理だと悟っているような顔だった。イデアはその顔を見てあーね。と思う。確かにあそこなら何かが見つかるかもしれない。けど無理だ。
なんだか置いてけぼりな空気を感じ取り、フロイドが痺れを切らす。
「なんかあんの?打つ手」
「あるっちゃあるんだけど…」
「やろーよ。ヤバいこと?そもそも現状がヤベーんだし何やっても一緒だって」
「いやヤバいことではないんだ。けど条件を満たしていないから、やりたくてもできない」
「なにそれ。条件って何?」
カリムは眉を八の字にすると「こっちに来てくれ」と禁書室の奥へ誘導した。大人しく双子はそれに続く。もちろんイデアも向かった。
✴︎
禁書室の奥にはもうひとつ部屋がある。聳え立つ数多くの本棚を抜けると、突き当たりに高さ3メートルほどの両開きの扉があった。レッドブラウンの重たそうな扉は、古ぼけてはいるものの いい意味で味があり立派だ。そして、不気味さが際立っていた。
扉には鍵穴などが無く、代わりに古い施錠魔法がかかっている。そして魔法を解く条件は、教員と寮長しか知らされていない。
NRCに属する全ての者たちは、この開かずの部屋を「白昼夢」と呼ぶ。
「ここって、」
「白昼夢でござる」
「知ってるけど…。開くの?」
「無理だ。今は条件が満ちてない」
「でもここ…、絶対"答え"じゃん」
フロイドは、禁書室に入った瞬間感じた嫌な予感の正体が分かった。この部屋のせいだ。扉を目にするだけで心拍数が上がるような、呼吸がうまくできなくなるような。とてつもない力で上から押し付けられている。そんな独特のオーラがあった。
しかしなぜだか、ここに吸い寄せられるような感覚もあるのだ。恐ろしいのに、引き込まれる。まるで絶世の美女の歌声に手招きされているかのような…。
それに、ここに入れるのなら情報が手に入るだろうという確信があった。第六感がそういっている。
「条件は一体なんなんです?」
「ん〜、まあ非常時だしな。お前たちは条件を知ったところでどうにもできないし…。この部屋の前で、三人の騎士の誓いを立てるんだ」
カリムは指を3本立てて、手の甲をジェイドに向けた。
「三人の騎士の誓い?」
「
イデアはカリムの言葉に固まってしまった。そうだ。白昼夢を開けるには、寮長が3人必要なのだ。なぜ今まで気がつかなかったのか!今は"イレギュラー"が居るではないか。これは、イケる。
突然静かになったイデアを心配して、カリムが声をかける。
「大丈夫か?」
「…激アツ伏線回収展開キタコレ」
「ん?なんだって?」
カリムは言葉の意味こそ理解不能であったが、イデアの具合が悪くなったワケではないということは理解できた。
イデアは気づいてしまっただけである。
先ほどジェイドが寮長代理として禁書室に認められ、フロイドの入室を承認できた。ということは、だ。
居るではないか、三人の
「カリム氏
「寮長が3人いるなら開けるしかないだろ!いや〜何があるんだろうな!」
「よくわかりませんがやりましょう」
「ッッッシャ!!!」
イデアは不謹慎ながら
それもそのはず、白昼夢はここ数十年は開いていない。イデアに言わせれば激レアSSRなのだ。まさか自分が誓いに参加して、この重苦しい扉を開くチャンスが回ってくるだなんて。そんなこと、夢にも思わなかったのである。
寮長代理ではない双子の片割れは、何か始まるらしい。と見物客の気分で近くにあった椅子に腰掛けた。
さて、三人の騎士の誓いは至ってシンプルだ。白昼夢の前に寮長が3人集い、マジカルペンに魔力を込めながら「
後の事は全く不明である。施錠魔法を解いたあと何が起こるのかわからない。とても恐ろしく生きた心地がしないと言う者もいれば、あんなに綺麗な場所は見たことがないと言う者もいる。そんなパンドラの箱を今、開けようとしている。
3人はマジカルペンを取り出し、騎士よろしく顔の前で掲げた。
「ハァー… 気が狂っちゃいそう。拙者が言っていい?拙者が代表して言っていい?」
「いいぞ!」
「よくわかりませんが宜しくお願いします」
イデアは目を閉じ魔法石に魔力を込めた。それを見た2人も手本とする。
ああ、興奮で呼吸が震える。危ない橋でも渡りたいのだ。なにより好奇心が勝る。だって男の子だもの…
「"
それを側から見ていたフロイドは、美しい魔法だと思った。
イデアが合言葉を唱えた途端、3人のマジカルペンは眩い光を放った。すると魔法石からピクシーダストのような鱗粉が溢れ出し、扉を覆っていく。古めかしく錆びついたレッドブラウンの扉は、たちまちにして光り輝く純白の扉へと変貌した。その材質は、幻の木と言い伝えられている宝樹ユグロスだ。鬼気森然とした肌理に、言葉を失う。
まるでオーロラのように輝く扉に見惚れていると、どこからか追い風が吹いた。イデアの青い光が風に靡いて、雰囲気と重なり儚かく見える。やがて風が止むと、キィ…と音を立て、ひとりでに扉が開いた。
少し掠れた深みのある音で、ワルツが聞こえてくる。それはLa Sandungaだ。どうやら中には蓄音器があるらしい。
「ワクテカ」
「雰囲気ぶち壊し。最悪」
4人は意を決して、白昼夢へ乗り込んだ。
✴︎
白昼夢の内部は、まさに西洋の宮殿と言ったところだ。縦に長い造りの、奥行きが40メートルほどある回廊である。
全体的に白と白金を基調としており、壁の細部に至っても一級品が使われているのが分かる。高さ10メートルはありそうな天井を見上げると、ガラスでできたシャンデリアがいくつもこちらを見下ろしていた。ほんのりと紫がかった透明なガラスは、神秘が凝縮された美しさだ。
磨かれた大理石の床には、圧巻の地窓があった。所々ステンドグラスが嵌め込まれており、いくつもの光が差し込んでいる。しかし不思議なことに、窓によって見える景色や時間帯が違う。窓外は朝だったり、夜だったり、夕暮れだったりしている。
広さを考えると、禁書室の奥にこんな空間があるのはおかしい。それに図書館の構造的に、外の景色が見えるような窓を設置するのは不可能である。
この美しき回廊は、白昼夢が存在している場所は異空間ですよ。と物語っていた。
「これは、とんでもないな」
「ラッコちゃんから見てもそんなにヤべーんだ」
「アズールが居たら大変なことになっていましたね。眠っていてよかったです」
「同志たちズ〜!こっちに本がありますぞ!フヒ、拙者じゃなきゃ見逃しちゃうね」
回廊に圧倒されている3人を、テンションブチ上がりのイデアが呼びつける。
白昼夢の内部は、てっきり図書館の延長線なのかと思っていた。が、どうやら違う。絢爛豪華な調度品、耽美な美術品の数々、アール・ヌーヴォーなアンティーク。そしてこの風光明媚な回廊。これは図書館ではない。
まるで美術館や、王室が所有する宮殿の類だった。
3人がイデアの元へ到着すると、アンティークの飾り棚があった。長い年月を経て生じた使用傷さえ美しいと感じる、格式高い一点である。
そこには本が飾られているのだが、本棚のように背表紙をこちらに向けているわけではない。表紙を見せて、一冊づつ丁寧に平置きされている。それが10冊程あるだけ。
棚の横には蓄音器が置かれている。白昼夢へ入る前に聞いたワルツだ。その旋律は、お目当てのモノはここにある。と導いているようだった。
「こんな広いのに、本これしかねえんだ。贅沢だね」
「読む時間が短縮できて良いじゃないですか」
「そりゃそーだけど」
フロイドが近くにあった本を手に取る。オフホワイトに草花の刺繍が織り出された重厚な表紙だ。イデアも横から覗き込む。
最初のページを開くと、そこには見たことがない文字がびっしりと綴られていた。
「時短どころじゃねえ!読めねえ〜!」
「こいつ、ニュータイプか?」
イデアはその文字を本当に見たことがなかった。
前に、監督生に教えてもらったニホンゴでもない。辛うじて分かったのは、フロイドが開いた本は天体関係の本ではないということだ。目録と思われるページに、植物の点描画が絵描かれている。
どれかひとつでも読めるものはないかとイデアは別の本を開く。が、フロイドが最初に開いた本とはまた別の言語で記されていた。
「まさか読めない文字とは…」
「ありえね〜、ここまで期待させといてコレかよ」
フロイドは興味を失い、白昼夢の探索に出かけようとしている。イデアも同じで、もうメテオーレだなんてどうだっていい♪という風だ。
それを横目に、紺色の表紙に金で箔押が施された本をパラパラとめくったジェイドが目を細める。
「フロイド」
「なに?どうせ読めねーよ」
「一応ありますよ、天文学でしょうか」
「マ?」
その本には、星の挿絵が数多く載っていた。おそらく目録であろう最初のページにも、流星の点描画が載っている。ジェイドが徐に開いた本は、探し求めた天体に関する本だった。
変わらず文字は意味不明なのだが。
「うわ、これッ これが読めれば拙者たちは〜… おそらくゴールなのに」
「なにこれ、超ねみい日の授業中のノートの文字?」
「ミミズの這ったような字ですね」
「…おい、この文字アッギーナ・ジャハルか!?」
突然カリムが大きい声を出したので、イデアは喉から声にならない叫びが出た。
カリムはちょっとごめんな!と言いジェイドから拝借する。と、大理石の床に座り込み本に夢中になる。一方言葉を無くした3人は、座り込んだカリムを囲むようにして見下ろした。ジャパニーズ・カゴメカゴメスタイルである。
長身長の圧をモノともせず、カリムは白金のまつげに縁取られた大きな瞳をこれでもかと見開いた。目録のページの文字を丁寧に追っていく。
「! ある、1000年って読める箇所がある!」
「ラッコちゃん
「いや。正直、少しの単語しかわからない」
「にしたって
「この文字はアッギーナ・ジャハルっていってな。すげえ昔に、熱砂の国に住んでた少数民族が使ってた文字だ」
カリムは余程集中しているのか、本から目を離さず言った。そのまま、目録で見つけた1000年というワードを頼りに該当するページを開く。すると、1ページを丸ごと埋め尽くすかのような挿絵がある。
それは紛れもなく、自分たちが見た「メテオーレ」そのものだった。隣のページには解説のような文字の羅列がある。が、本が古いためか 文章は所々色褪せており、読めない部分が大半だった。
「…隣のページ、読めそう?」
「う〜ん…。ほぼわからない。でも、ちょっと待てよ。…を処決せし? あ、お。青に…、沈む?」
「処決せし、青に沈む?全く意味が分かりませんね」
「クッソ〜!やっと見つけた手がかりなのに!」
とーちゃんにもっと教わっておくんだったッ!と悔しそうに唸るカリムとは裏腹に、長身長3人組はニッコリと微笑んだ。
「とんでもない収穫ですな。0が5くらいになったのでは?」
「これで寮長会議に出席しても吊られずに済みます」
「やべー場所のやべー本にヒントありましたって報告しよ」
カリムはそれを聞きつつも、不完全燃焼な顔つきで本を元の位置に戻した。本を持ち帰りたい気持ちはあったが、それはなんだかマズい気がする。
蓄音器からは、永遠とワルツが流れ続けていた。
情報を得た4人は、飾り棚の前から立ち去ろうと歩き始める。すると、
ビリリリリ ビリリリリ
本日2度目の招集音は3つ重なり、麗しの回廊に良く響いた。
✴︎
「ちょっと〜!トレイくん!」
「はは、すまん。寮は大丈夫か?」
「ムシュー・マジカメ!非常時に寮長代理をお借りしてすまなかったね」
「も〜!大変だったんだから!」
ケイトは学園長室の前でトレイを見つけ詰め寄る。
ルークが連絡を寄越した時、ハーツラビュル寮でも体調不良者は急増。ただでさえ統一に欠けていた。にも関わらず、寮長代理であるトレイは「任せた」と言い残し寮を飛び出していったのである。
エースはやれやれといった感じで、寮長代理に声をかける。
「ポム行った後、全然帰って来ないんすもんね〜!」
「すまんすまん」
「もうけーくん疲れたから!全部終わったら詫びラーメンだから!!」
「ルーク先輩たちは何してたんですか?」
「ふふ、トリックスター。それは秘密だよ」
監督生がひとりになってしまう!と、本日限定オンボロ寮寮長補佐という程で「化物会議その2」に足を運んだエースだが、それは建前だった。実際は、トレイに嫌味のひとつでも言ってやろうと思い、ここへやってきたのだ。
それもそのはず。あの時鏡舎でトレイと別れた後、1人と1匹を抱え寮へ戻ると 酷い有様だった。けーくん大忙し地獄の極み状態である。あまりにもワンオペだった。時が経っても寮長代理は帰る気配すらなく、招集がかかる方が早いってどーいうことよ。これじゃ先輩が報われねえよッ。
トレイは申し訳なさそうにニコニコ笑っていた。
やがてケイトの怒りも落ち着き始め、皆で仲良く学園長室に入る。監督生が席に着くと、正面はまたもやクロウリーである。エースが隣へ着席した後、鞄から1回目の寮長会議で使用したものと同じメモとペンを取り出した。
折りを見て、クロウリーが円卓を爪で小突く。
「始めましょうか。今回は、お茶でもてなす余裕はありませんがね」
エースは、いつもだったらお茶が出るのか…。と思った。
まず皆が驚いたのは、マレウスの隣が"あの"リリアではなくなっていることだった。副寮長代理としてその椅子に座るのは、シルバーではなく1年生のセベクだ。彼は警戒からか、普段の倍顔つきが険しくなっている。
どうやら、リリアはシルバーと共にダウンしてしまったらしい。
「どの寮も体調不良者は増加の一方を辿っていると報告を受けています。ちなみに、在中している教員のうち健常者は私だけになってしまいました」
そもそもなぜ 金曜の夜に教員が在中していたのか。それはいうまでもなく、1000年に1度の大流星群が原因だ。賢者の島が一番の観測ポイントとされているが、職場がその島の崖の上に聳え立っているのだ。偶然にしてはラッキー、勿怪の幸いである。
それに加え生徒が夜間に授業の一環で星を見るということもあり、本日に限り生徒指導として学園に在中することを許諾していた。
よって、半数以上の教員が学園に在中するに至ったのである。
ところが、そんな教師陣も今ではクロウリーしか残っておらず。生徒達も各寮在籍数の2/3がダウンしている状況だ。
「先程の会議では現状報告しかできていませんでしたね。しかしこの夜は、我々の想像以上に一刻を争う由々しき事態です。皆さん、会議の合間になにか変わったことは?」
「はーい!けーくん質問!」
いちばんに手を挙げたのは副寮長代理のケイトだった。トレイは横で目を丸くしている。まさか、ケイトが一番に発言するとは思っていなかったのだ。
「あのさ、勘違いだったらごめんなんだけど。時間進むの早くなってるよね?」
え!と、監督生は驚きを声に出した。腕時計をジッと眺めるが分からない。言われてみれば、秒針が進む速度が上がったような…。
クロウリーはルークに目配せをした。
「どうなのですか?」
「ムシュー・マジカメの言う通りさ。時の進みはグンと加速している。今は、そうだね… 1分半で1分といったところかな」
「うわ、思ったよりも早くなってる。オレくんたちが消えちゃうのがさ〜 最初に聞いてた3分半で1分にしては、なんか早くない?と思って」
ケイトはスマホのロック画面を見る。現在時刻は4時2分。となると、タイムリミットとされる日の出まではあと3時間と少ししかない。じわじわと首を絞められているようで、心がどよめいた。
「時間がねえのは分かった。率直に聞く」
鋭い眼光はクロウリーに向かっている。レオナは気が立っているのか、いつもより語気が強めだ。隣に座るジャックも心なしか固い表情でいる。
「ディ・セルは何処だ?」
「…はて、なんのことですか?」
クロウリーは表情ひとつ変えず、レオナを見つめ返す。あからさまに嘘をついている言い方だった。
2人が何の話を始めたのか検討もつかない監督生は、顎に手をやる。ピリついた空気が流れ出し、気まずい雰囲気が部屋に充満した。冷戦である。
数秒して、張り詰めた空気を破ったのはジャックだ。眉根を寄せ すごく嫌そうな顔をしている。
「俺は昨晩セル先生に、一緒に星を観測しないか。と誘われました。あの人が学園内にいるのは確実だ」
「ウチのジャックはアイツの"お気に入り"らしい。なあ、ヤツは何処だ?」
「彼は体調不良ですよ」
「…おい、しょうもねえハッタリやめろ」
「彼は体調不良ですよ」
他に何か?と明らかに話を逸らしたクロウリーに、レオナは舌打ちをして乱暴に席を立った。時間の無駄だと判断したのか、この場から立ち去ろうとしている。確かにクロウリーがこの態度では埒があかない。
セル先生とは、メテオーレの予測をしたNRC客員教授のディ・セル先生のことだろう。
監督生は1年生なので、天文学の授業はまだ選択できない。関わる機会の少ないディ・セルの名前こそ知っているものの、顔までは思い浮かばなかった。
「
「お前に用はねえ」
「酷い言いようだな。俺たちはお前の"援軍"だよ」
狩人と騎士が微笑みながら持ちかけてきた "援軍" というワードが引っかかり、第二王子は足を止める。
普段からすれば、サイエンス部の微笑みは薄寒いものだった。しかし今は、どうにも違って見える。不本意ながら頼もしいのだ。
レオナは、ルークを見澄まし鼻先で笑う。
「期待させるぜ、兄弟」
「ウィ、応えてみせようか」
ルークはポケットから、ひとつ鍵を取り出した。
✴︎
───先刻、ポムフィオーレ寮にて。
「メルシー、トレイくん」
「困った時はお互い様だろ?」
エペルの自室へ入ると、林檎の甘い香りがふわりと香った。
トレイはベッドに片膝をつき、大きな天蓋を避けエペルを寝かせる。未だに顔色の優れない様子を見て、可哀想にと思う。自寮の寮長が目の前で倒れるだなんて、後輩には衝撃が大きかったことだろう。
部屋の入り口へ視線を向けると、ルークはドアの前に立ちこちらをジッと見ている。トレイはそれに渋い顔をした。ベッドから離れルークの正面に立つ。
「ルーク。いい加減、俺を呼んだ本当の理由を話してくれないか?」
寮生に指示を出すため、寮長代理は現場を離れるべきではない。そんなことルークは分かりきっているはずだ。彼はこの異常時に寮長代理を使い走りさせる様な、頭の回らない人間ではないのだ。
なのに、トレイにエペルを運ばせた。別にトレイでなくとも出来たことだ。いくらでも代替が利くだろうに。
つまりルークに呼ばれたのには、違う理由がある。
「…
「わっ、なんだなんだ」
「実に、トレビアンだ!」
嬉しいのか、にこにこと笑っている。薄暗い部屋に似つかわしくない、晴れやかな表情だ。トレイはさらに胸がざわついた。いったい何をさせられるのだろうか。
ルークはポケットから鍵を取り出した。それはアンティークゴールドのウォードで、持ち手の部分には五芒星が刻印されている。
「トレイくん、共に旅に出てほしい」
シンと静まり返ったNRCの廊下に、2つの足音が響く。ルークに言われるがまま走っているが、おそらく目的地は鍵の部屋だろう。
しかしなぜ鍵の部屋に向かうのだろうか。鍵の部屋が、この夜に関係しているのかどうか分かりはしないのに。
「…いちばん最初の寮長会議へ行った時、校舎の外でこの鍵を見つけたんだ。私はこれを見て、すぐにわかったよ」
ルークはこちらの内情を察したのか、走りながらにして語り始めた。ポムフィオーレ寮からかなりの距離を走ってきたが、息のひとつも乱れていないのは恐ろしく感じる。
「NRCの開かずの33の部屋はご存知かな?」
「開かずの33の部屋?」
「ふふ、選ばれた者のみ所有を許される数奇な部屋さ。それがNRCには33部屋ある。私の見たところ、主に教員が使っているね」
ルークは先程からずっと笑顔でいる。ギラギラした目は、獲物を見つけた狩人そのものだった。
「じゃあ、流れ的にその鍵は…」
「ウィ!我々は33部屋の神秘と、この夜の解明のため走っている!」
「まさかとは思うが、33部屋虱潰しに周る気じゃないよな!」
「ノン、
故に行先はひとつさ!と言い切ったルークに、トレイはなるほど。と納得した。たしかにルークならそれくらい覚えていてもおかしくはない。
この場に居たのがエースやケイトであればドン引き間違いナシだったが、トレイは慣れっこだった。
「でもこの夜と、開かずの33の部屋になんの関係があるんだ?」
「着眼点が鋭いね、トレイくん」
「気になるだろ?」
「答えは簡単さ。…おっと、到着したよ」
ルークが緩やかにペースを落とし、とある部屋の前で立ち止まった。その扉は暗いオレンジ色をしており、表面は金色の真珠の様な光沢を帯びている。廊下の燭台に灯された炎が淡く反射し、金色を跳ね返していた。
2人は不思議と、美しいとは感じなかった。
「ここは誰の部屋なんだ?」
「ディ・セル教授の研究室だよ」
「…待ってくれ。それは、その。あの天文学の先生だよな?」
「ウィ。彼がこの部屋に出入りしているのを幾度か見かけている。ここ数日は特にね。」
「ああ、それでこの夜が繋がるのか…」
トレイは頭を抱えたくなる衝動に駆られた。実を言うと、トレイはディ・セルが苦手である。
NRCでは2年から、占星学の応用として天文学を選択することが可能だ。トレイは案の如く天文学を選択したのだが、のちに後悔した。
ディ・セルはお気に入りの生徒に対して、贔屓が凄いのだ。それは贔屓というより執着に近いものだったと思う。そして、利己主義的な振る舞いをしても許される権力を持っていた。
トレイは彼のお気に入り側だったが、重すぎる好意に得体の知れない恐怖を抱き、3年に上がったと同時に選択をやめた。
そんな嫌な思い出しかない教師の研究室が今、目の前にあるのだ。
「さあ、どちらが開ける?」
「ここまで来て何だが、俺は入りたくない」
「オーララ、奇遇だね。私も気分が乗らない」
「ハハハ、だよな」
ハハハ… ふふふ… トレイとルークはその場の空気を保つため笑わずにはいられなかった。この部屋の前に立てば皆わかる。ただならぬ気配がするのだ。けれど入らないわけにもいかない。
微笑むトレイが拳を用意すると、ルークもニコリとこちらに拳を向ける。
サイエンス部名物、厄介事押し付けジャンケンの始まりである。
「1回勝負だ」
「受けて立とう!」
「「ジャンケン、ポン!!」」
トレイは崩れ落ちそうになった膝を支え、ルークから鍵を受け取った。
ルークがチョキ、トレイがパーである。
「ぐ…」
「実はね
「クソッ…、卑怯だ」
「実力のうちさ」
ルークは優しい眼差しで扉から二歩下がった。嫌気がさしたトレイだが、負けたものは仕方ない。
意を決して施錠を解き、扉を開けた。
そして中をチラと覗き…、そのまま閉めた。
「トレイくん!なぜ!」
「これはまずい。ルークは多分入れない」
「獲物は目の前!冒険心は止められないよ」
「あっ こら!」
トレイの抑止を掻い潜り、ルークは扉を思い切り開けた。
まず感じるのは匂いだ。むせかえる様な湿度の高い蜂蜜と、アルコールの匂いがする。あまりにも強烈に混ざり合い、甘さもここまで煮詰めれば凶器になるのだと知る。
次に、色が視界をいっぱいにした。部屋の中央にある大釜には溢れんばかりの黄金。大変純度の高い蜂蜜酒を精製している釜は、魔法により全自動化されているらしい。故に無人でも永久に精製され、それは床にまで流れ出ていた。
ルークは咄嗟に、自身の鼻を手で覆った。鼻で呼吸するのをやめる。
「シバリエ、中に入ろう」
「ハハハ!言えてないぞ!」
「数分で済ませよう。長居はできない」
普段お菓子作りをしているトレイは、甘い香りに慣れているので余裕そうだ。しかし、人より五感が鋭いルークは 口呼吸に切り替えても香る甘さに鼻をキツく摘みなおした。
部屋に入ると、さほど広くないことがわかる。
周囲は壁紙が見えないほど大きな本棚で覆い尽くされており、どれもが神経質そうに収納されていた。天井までギッチリと詰め込まれているのは、天体や宇宙に関するものばかり。奥にはコンソールテーブルが置かれており、デスク代わりにしている様だった。
中央では、大釜がぐつぐつと音を出し続けている。そこから溢れ出る蜂蜜色の液体は、トレイ曰く蜂蜜酒らしい。ルークも蜂蜜酒は知っているが、こんなにも色や匂いは強烈だったろうか。
その匂いは、この部屋の全てにずっしりと染み付いている様な気がして、胸焼けを起こしそうだった。
「トレイくん。この蜂蜜酒を採取してくれるかな」
ルークは大釜に歩み寄り、腰に携帯していたポーチから小瓶を取り出しトレイに渡した。
「ああ、10mlくらい入れておくか」
「メルシー!私はデスクを見てくるよ」
大釜の近くには材料らしきものが散らばっているが、どれも希少なものだった。ルリダインの幼葉、ラヒタ族の宝玉の粉末、ウミハナバチの蜜。そしてピクシーダスト。数えきれない材料があり、中には所持を許されない激物もある。一体どこでこんなものを。
トレイは大釜から溢れ出た蜂蜜酒を小瓶に入れた。
「デスクはどうだ?」
「気味の悪いほど整頓されているよ」
「だろうな。こっちはもう終わるぞ」
「お互い素晴らしい収穫のようだ」
心なしかルークの声色は弾んでいた。そちらに視線を飛ばすと、空いた片手に本を3冊抱えているのが見える。そのままこちらにやってきて、同じく見つけたらしい走り書きのメモを見せてきた。
メモを見たトレイは、いよいよ文字通り頭を抱える。
"今夜、ようやく「夜」が来る。
どれだけこの日を待ち望んだことか。
彼らは皆、黄金の生贄となるのだ。"
✴︎
「このメモの筆跡は間違いなくディ・セル教授のものだ。彼は我々が窮地に陥る未来を知っていたのさ」
そう言うと、ルークはメモを円卓の上に滑らせる。メモはクロウリーの目の前でピタリと止まった。クロウリーはひどく憂鬱そうな顔をして、円卓の上で両手の指を合わせる。
したり顔で訴えかけるルークを尻目に、レオナは椅子へ座りなおした。
「彼が怪しいのは薄々感づいてはいました。それにキングスカラーくんの仰る通り、ディ・セル教授は体調不良者ではありません」
「ハッ、やっぱり嘘じゃねえか」
「嘘もつきたくなります!何故か彼だけが行方不明なんです!」
クロウリーが誤魔化していた理由は、裏を知っているだとか、そういうのではなかった。
だってディ・セルといえば、最近は大流星群のせいでメディアにも引っ張りだこ。元々認知度の高い天文学者であったが、それに拍車をかけていた。
そんな彼がNRCで失踪。しかも事件の犯人候補。夜明けまでにマルっと解決せねば、クロウリーは全てを失う勢いだった。
「学園内であんな有名人が失踪したとなれば、大問題です!ただでさえ生徒が目覚めないというのに… もうNRCはおしまいです!」
「失踪した理由も分からねえのか」
「逆に教えていただきたいくらいですね」
レオナは拍子抜けしてしまい、チェスターフィールドの背もたれに頭を預けた。
ディ・セルを締め上げ全て白状させるのが、解決にいちばん近い手順だった。犯人がわざわざ自分までダウンさせるとは思えない。何か目的があるからこそ、こういう馬鹿なことを引き起こすのだ。
が、まさか当人が行方不明とは。
頑丈な蓋を開けたのに、中身は空だったような感覚だ。
「…ハァ。しかし黒はイカれジジイで違いねえな」
「ウィ、論より証拠とは言ったものだね」
「ルークが見つけたこの3冊も、禁書部屋から無断で持ち出されたものっぽいしな」
「"彼らは生贄"ねえ。眠ったら連れていかれるってか?」
トレイはレオナの恐ろしい発言に顔が引き攣った。その横でルークが、蜂蜜酒の部屋から持ってきた3冊を円卓に広げる。天文学が1冊と、銀河形成論が2冊。全て持ち出し厳禁の禁書である。
それを見て、フロイドがあっと声を上げた。
「ねえねえ、あれ無くなってたヤツじゃね?」
「え、本当だ!!!」
「カ、カリム氏!声がデカ過ぎィ」
「イデア!!!あの本だ!!!」
「シッ!静かにッ。この
「え?組み合わせ珍しすぎない!?」
イデアは無邪気に大声を出すカリムを必死に止めた。今だけは、ジャミルのオギャみを思い知った。そんな2人の千載一遇な掛け合いに、ケイトは思わず首を突っ込んでしまう。知らぬ間に仲良くなっていたとしても 類を見ない組み合わせだった。
イデアの両脇には、カリムとフロイドが座っている。しかし、イデアの姿勢は普段のように怯えた猫背ではなかった。うまいこと馴染んでいる。白昼夢による興奮は冷めらやず、ヨウキャに溶け込めるほどランナーズハイは持続していた。
「図書館に行ったのか?」
「いや拙者らが行ったのは白昼夢だが笑」
「ヤバい部屋でミミズの本見つけてさ〜」
「寮長代理の身分で誓いに参加できたので、あの部屋のセキュリティはB-くらいですよ」
監督生は白昼夢が何なのかサッパリ分からなかったが、皆が驚いた顔をしているのを見て「七不思議みたいなものかな」と思うことにした。現状が怪奇現象みたいなものだし、そんな感じのニュアンスだろう。
見かねたエースが、ヤバい奴が行く部屋のことだ。と教えてくれた。
話を聞くと、彼らは白昼夢へ行き 天体に関する本を1冊見つけたらしい。それはアッギーナ・ジャハルという言語で記されており、誰もが読めないと匙を投げたが… カリムだけが辛うじて解読に成功したとのこと。
監督生は、先輩たちの冒険譚を聞き黒目が大きくなる。
「本にはなんて書いてあったんですか?」
「それがオレの勉強不足で、ナニかを"処決せし"ってのと"青に沈む"ってワードしか解読できなかったんだ」
「なるほど、両方難しい言葉ですね」
「だろ?本も結構ボロボロで、他の読めそうだったところもサッパリでさ…」
監督生は聞きながらメモを取る。今の言葉に引っかかるものはないかと、メモを最初から見返していく。が、まだゴールには遠いようだ。
そういえば、持ってきた黄金の書を皆に見せよう!上級生やクロウリーなら何か知っていて、新しい発見があるかもしれない。監督生は鞄を開いた。
が、本を出すより先にマレウスが口を開く。
「それは"金は
「え!ツノ太郎も白昼夢へ行ったの?」
「いいや。これはリリアが眠る直前、口にしていた言葉だ」
リリアがどこで知ったのかは不明だが、カリムが解読した言葉にぴったり当てはまる。しかし難解だった。ヒントのようでヒントではない。重要だというのは分かるのに、まだ手が届かない。
監督生は、いよいよ黄金の書はとても重要なアイテムなのでは?と考えた。星も黄金、蜂蜜酒も黄金。リリアの言葉によれば、生贄も黄金らしい。ならば監督生が手にしているこの本は、何のために何処からやってきた?
それを横目にエースが手を挙げる。
「監督生から話がありまーす」
思いがけない名指しにどきりとした。けれどその名指しはファインプレーだ。
マレウスの一声があってから、深まる謎と近づくタイムリミットを踏まえ この後どうするのか
「どうしました、監督生くん」
「あの、オンボロ寮の裏手でコレを見つけて」
ポケットからお菓子を取り出すような気軽さで、名も知れぬ黄金の書を円卓に置く。明るいところで見ると、ますます目に優しくない眩しさだ。
クロウリーとマレウスは、目を見張った。円卓に置かれたそれは、御伽噺のようなもので。まさか現物が目の前に現れるだなんて誰が想像できただろうか。
2人とも、声が出ないほど驚いたのは久しぶりだった。
そんなこと知る由もない監督生は続ける。
「この本グリムが見つけたんです。よく分からないんですけど、何故か私だけ触れるんですよね。コレを拾った時「何かに似てる」って思って…。ずっと思い出せずにいましたが、やっと思い出しました!
この本は、私のいたセカイに在った "ネクロノミコン" に似ています」
監督生はその名前を出した途端、学園長室の空気が澱むのを感じた。足元に、ひんやりとした空気が流れていく。瞬間、シャンデリアの灯が全て消えた。ビックリして情けない声が飛び出てしまう。
大きな音がする。監督生の後にある扉が、音を立てて揺れている。揺れは学園長室全体に連鎖していった。続けて コツ、コツ。と骨を当てているかのようなノックが響き始める。イデアは非常にまずい。と察してマジカルペンを握りしめた。しかし魔法石に光は宿らない。
数人は耳に違和感がある。耳鳴りのようなひどい音が脳にこびりついている。落雷のような音もしていたかもしれない。全ての音がひっくり返ったみたいに、不協和音で酔いそうだった。
空気がジットリと湿度を帯び始める。呼吸が重い。背後から、ナニカがこちらを凝視している。音が近づいてくる。
「煩いですね」
クロウリーは、床に杖をついた。
✴︎
クロウリーが指を鳴らすとシャンデリアに再び火が灯る。杖で魔法を使ったクロウリーのおかげで、ポルターガイストのようなものは収まった。が、とても恐ろしいものを経験してしまった。
「監督生くん」
「はい」
「本来その名を呼び、ましてや多数の生徒に知らしめるなど。決して、あってはならないことです。この中の誰か1人でも、向こう側に引き込まれる可能性があるのですから」
クロウリーがそう言い、伏せていた目線を監督生の方にやる。と、監督生もまたこちらを見ていた。まっすぐな瞳には、不安と緊張が滲んでいた。
口に出してしまった魔導書の名前。クロウリーのこの反応。先程の異様な現象。間違いない。
ネクロノミコンはこの世界に、本物の魔導書として実在する。そして、今起きている騒動がネクロノミコンに関係しているなら。事態は自分が想定していた最悪の遥か上だ。
監督生は顔色を青くした。
「…全く。貴方が悪い訳ではありませんよ」
「でも学園長。あの、皆さんも。すみませんでした」
「謝んなくて良くない?知らなかったんだろ。悪くねーじゃん」
エースが監督生を小突いて、口を挟む。
「ううん、私が考えなしだった。この世界は魔法があるんだもん。ネク…、いや。えーっと、アレが存在してもおかしくはないよ」
監督生にとってネクロノミコンは、元いたセカイの小説の中で登場するアイテムだ。言わば冒涜的な魔導書。シンデレラのガラスの靴だとか、そういう類の物である。
知らなかったとはいえ、ツイステッドワンダーランドと元いたセカイでリンクするものは多いのだ。少し考えれば分かることだった。まさか、名前を出すのすらタブーだったとは。
「あの本が人を狂わすのはどの世界も共通なのでしょうか?聞きたいことは山ほどありますが、今は緊急事態ですからね」
監督生が周りの反応を見ると、何人かはネクロノミコンを知っている様子であった。マレウスはもちろん、レオナやカリムも知っている風だ。エースは、カリムがあんなに険しい表情をするところを初めて見た。
一方、置いてけぼりの生徒も居た。しかし先程のポルターガイスト4DXを体験したので、ネクロノミコンがヤバイモノだということは分かった。
「さて、監督生くん。しかしながら、それとこれは少し違うのですよ」
クロウリーは置かれた本を指差す。全ての視線が、黄金を見た。
「この本がここにあるということは、終着点が見えてきましたね。答えはすぐそこの様です」
クロウリーのいつになく真剣な声に、思わず姿勢を正す。背筋がすっと伸びるような、ハッキリで上品な声だ。
クロウリーは再び杖を床につき、部屋に魔法をかけた。そして、今から言うのは 門外不出ですよ。と続けた。
「監督生くんが仰ったのは、この世界で最も危険とされている魔導書のことです。ネクロノミコンは、その邪悪極まりない内容と 秘められた強大な力の拡散を防ぐため禁書扱いの代物。まあ、写本など出回ったとも聞きますが…。とにかく皆さんとは無縁なモノですよ。何人もの魔導士が狂気に陥り、自らの命を落とした。廃人になった。存在が消えてしまった。そんなことばかりを耳にしてきました。
──しかし、その禁書の話には続きがあるのですよ。あまり語られていませんがね。対となるもう1冊が存在します。開けてはならない魔導書。そもそも、魔導書なのかすら定かではありません。どうしてか、誰も開けることができないのです。中身を見た者は、後にも先にもいないでしょう。それが皆さんの目の前にあるこの黄金の書。ネクロノミコンの対となる、」
監督生は、金色の眩さに目を細めた。
「名を、ファンタジア」
続く
以下あらすじと注意書。
✴︎②のあらすじ
オンボロ寮の裏手で謎の本を手に入れた監督生はエースと共に、倒れたデュースとグリムを抱えハーツラビュル寮へと急いでいた。道中、ルークと合流し近況を報告し合う。原因不明の体調不良者は増加の一方で、未だに対処法は見つからない。一方その頃イデアは地獄を見ていた。悪魔のような"例の双子"と図書館に3人きり。とんでもないスピードで本を読み進めるイデア、ちょっかいをかけるフロイド、微笑んでいるジェイド。何も起きないはずがなく───。
✴︎注意書
・捏造に捏造を重ねた捏造です。
・女監督生が出ます。名前はデフォルト名のユウを使用しています。
・腐、CP要素は無いものとして書いています。が、そう見えることもあるかもしれません。
・ゲームプレイ済。
パーソナルストーリー等回収しきれていないものもあります。本編と矛盾等ある場合があります。ご了承ください。
・オールキャラとして書いていますが、話の関係上あまり出番を任せられなかったキャラがいます。
・誤字脱字等見つかりましたら、コメントにてご指摘くださると助かります。
どうぞ宜しくお願いします🍕
✴︎2022.1.13 魂
✴︎追記
更新地獄の遅さで申し訳ないです🥲🥲
5月中には載せますのでッ…!!!!
何卒ッ…!!!!