2004年からラノベの研究をしているうっぴーです。40人以上のプロ作家、新人賞の下読み、編集者に取材しました。『ライトノベル創作教室』といった5つのラノベ関連書籍を刊行し、大手出版社の編集者と一緒に小説家オンラインサロン「エンタメノベルラボ」を運営しています。
- 小説ってどうやって書くの?
- どうすれば人気になれるの?多くの人に読んでもらえるの?
- 書籍化や新人賞を受賞するにはどうすれば良いの?
と疑問を抱えている創作初心者の悩みを解決できる記事になっています。
なぜなら、これから紹介する内容は、40人以上のプロに取材して得た小説の書き方の集大成的なものだからです。
実際に当サイトで紹介するノウハウを実践して、プロデビューした方が確認しているだけでも30名以上います。
記事前半では『小説を書くための最初の3つのステップ』を紹介します。その後、『ストーリーの書き方』『キャラの書き方』『文章の書き方』の3つを解説します。
この記事を読み終えることで、『おもしろい小説の書き方』が、たった一日で理解できるようになります。あなたもこれで人気作家を目指しましょう!
- 小説の書き方講座。小説を書くための最初の3つのステップ
- 小説の書き方講座。ストーリーの作り方
- おもしろいストーリーを書く最大のコツ。挫折は最初の一回だけ。それ以後、主人公は常に勝利し成長し続ける!
- 一番大事なのは主人公に共感してもらうこと!
- 小説とは主人公の活躍を描いた物。他のキャラの活躍を書くと大失敗します!
- 物語とは主人公が目的を達成する過程を描いた物
- SAVE THE CATの法則。物語の最初の方で主人公は弱い者を助ける!
- 小説の冒頭をおもしろくする6つのポイント
- ストレス制御の重要性。物語の山を作りながらも読者にストレスを与えない!
- 一行で表せる明確なコンセプトがあるか? 小説を確実におもしろくする秘訣!
- おもしろくない小説の特徴とは?「万人受けを狙った物」
- 小説のあらすじを800文字以内にまとめる
- ラストから逆算して物語を作る
- 時限爆弾テクニック。危機とタイムリミットを作る!
- 100年経っても変わらない読者を感動させる方法!
- 物語は原則的に出来事の起きた順番通りに並べて作ってください
- オリジナティとは、ありがちなネタを「他人とは角度を変えて描く」こと
- 自分が面白いと感じるなら臆面もなく、徹底的にやりきること
- 設定はシンプルな方が良い!要点は「いかに人間ドラマを盛り上げられるか?」
- なろう系ラノベの世界観作りと設定の解説のコツ
- ラブコメの作り方。主人公にとっては迷惑だが読者にとってはおいしいシチュエーション
- エンタメの本質は読者を楽しませること。あなたの好きなことにテンプレを被せる!
- 小説のおもしろさとは「いかに読者の欲求を満たせるか?」
- なろう、ラノベでウケない5つのジャンル
- なろう(Web小説)の1話は2~3千文字くらいが適正
- 小説の書き方。初心者が陥りがちなミス7つ
- 小説の書き方講座。キャラクターの作り方
- 小説の書き方講座。文章の書き方
- 小説を書くのに役立つ最強の無料アプリ
- 小説の書き方講座:9つのアイディア発想法。人気作家の創作方法
- 人気作が書けるようになる方法
- パクリと言われない小説の書き方。著作権のポイント
- スランプ/挫折。小説を書きたくないを防ぐ6つのコツ
小説の書き方講座。小説を書くための最初の3つのステップ
- 一日一行を書くことを目標にする
- 最初は掌編小説(2000文字以下)を書く。
次に短編小説(約6000~1万6千文字)を書く。
自信がついたら長編小説(約10万文字)に挑戦する - 25%の完成度で良いのでとにかく完結させる
最初は「1日1行を書くこと」を目標にすると良いです。
最初のステップはとにかく簡単にクリアできることにします。最初から「1日3000文字書くぞ!」などと高い目標を立てると、挫折しやすいです。
何かを習慣化するには約66日かかりますが、1日1行を書くことを続けて、執筆を習慣化させてしまえば根性を出さなくても書けるようになれます。
1行書けたら、もう1行書いてみたくなり、気がついたら波に乗って2000文字くらい書けていたりします。しかし、最初の1行を書くまでが、とにかく大変なので1行書けたら「今日は大成功!」と、自分自身を褒めてあげましょう。
最初は、難しいことは考えず、書きたい話を好きなように書くのでOKです。
小説は完結させて初めて経験値が手に入ります。これは多くのプロ作家が口をそろえて言う、真理の1つです。
最初は2000文字以内の掌編小説、次に6000文字くらいの短編小説を25%の完成度で良いので書き上げることを目標にすると良いです。
いきなり長編小説(1巻約10万文字)に挑戦すると挫折しやすいです。
最初はうまく書けなくてOKです。最初から傑作を作ろうとしないことが、挫折をしないうえで大事です。
結果を出すことよりも、まずは楽しんで小説を書いてください!
最初は掌編小説を書こう!長編小説を完結させるのはプロでも大変
つまり、長編小説を完結させることができた人は100万人に一人の才能の持ち主だ!
オーバーな表現かもしれませんが、以上は、私が主催した小説勉強会で、創作講義をしてくれたプロ作家さんの言葉です。
長編小説を完結させるのは、とても大変なことで、これができるだけでもプロ作家の才能があるそうです。
初心者が小説の執筆に挫折する原因の1つは、いきなり長編小説を書こうとしてしまうことです。
実際に小説投稿サイト「小説家になろう」で書籍化される小説の基準は「3万ポイント以上の得点で、かつ10万文字を超えている物」というのがあるそうです(2019年6月現在)。
10万文字とは、小説1巻分の文量です。
3万ポイントを超えていても、5万文字の小説なら、作者が本当に1巻分をちゃんと書き上げてくれるのか出版社は不安になるので、声がかかりにくいそうです(すでに書籍化実績があるなら別)。
初心者が長編小説を書くというのは、運動をしたことがない人が、いきなりフルマラソンに挑戦するようなものです。まず簡単な掌編からはじめて、小説を書くための基礎体力をつけるのが、挫折しないための正しいステップアップです。
最初は500~800文字以内の掌編小説を書いてみることをオススメします。
掌編小説を書くことのメリット
- 自分は小説が書ける!という自信がつく
- 限られた字数、2000文字以内で起承転結を作ることで、構成の勉強になる
- アイディア出しの練習になる。良い掌編を書ける人は長編の名人である場合が多い
小説は完結させて始めて経験値が入ります。掌編小説をたくさん書き上げることは、ゲームで言えば、雑魚モンスターを倒してレベルアップする期間です。
長編小説は、ボス級モンスターだと思ってください。いきなりボスに挑めば死にます。
掌編小説を書くのは、初心者のトレーニングとして最適であると、ラノベ最大手の電撃文庫編集部も認めています。 参考文献・書籍「城ヶ崎奈央と電撃文庫作家になるための10のメソッド」(2014/1 刊行:電撃文庫)
掌編小説の書き方。6つのコツ
- オチを最初に決めて、そこに落とし込むようにストーリーを考える(掌編はオチが重要)
- 夢オチは避けるべし
- 描写は必要最低限に
- 登場人物の数は多くても3人。(2人で十分)
- お題を決める
- タイマーを使って40分以内に書き上げる、などと時間制限を作る。
最大のコツは、お題を決めることです。
ばくぜんと、なにか書きたいことを書いてください、と言われてもアイディアは出てきません。
しかし、例えば「海」「少女」という2つのキーワードを入れて掌編を書いてください。とお題を与えられれば、海を舞台にしたラブコメや、海を舞台にしたホラー小説が頭に浮かぶと思います。
さらに、タイマーアプリを使って、とにかく40分以内に書き上げると決めると、最初の一行が書けます。
(500~800文字くらいのショートストーリーが最初は良いです。普通の人が40分で書けるのはこの範囲)
小説は最初の一行を書くのがとにかく大変です。良い物を書こうとするあまり、永遠に書けなくなる罠にはまります。
しかし、最初の一行を書いてさえしまえば、次の一行も書けて、物語が頭から出てくるようになります。
そうやって40分以内に書き上げた小説が気に入らなかったら、改稿しましょう。
小説は改稿を加えるたびに品質がアップします。最初から完璧なものをアウトプットする必要はないのです。
プロ作家の場合、長編小説を平均5回は改稿するそうです。
500万部以上を売り上げた人気作『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2008/8 刊行)の第1話は、十回以上修正が加えられたそうです(2話と3話も同じくらい修正したそうです)。
とりあえず、てきとうでも良いので書いてみて、あとから改善する。
これがベストな小説の書き方です。
掌編、短編小説のお題は、『即興小説トレーニング』『三題噺スイッチ改訂版』というサイトを使えば出してもらえます。試してみてください。
物語の基本テンプレ
どうしても掌編小説のストーリーが思いつかない! という方のために物語の基本テンプレを紹介します。
主人公が何か達成したい願望、目的を持っており、これを妨害する状況や敵と戦って、目的を達成するのが物語の基本テンプレです。
物語を思いつかない場合は、以下の2点を決めれば、自然と話が作れます。
- 主人公に何か達成したい願望、目的を持たせる。
- これを妨害する状況や敵を作る。
小説をあまり読んだことがなくても大丈夫! あなたが子供の頃に読んだ童話や絵本が参考になります。
例えば、アンデルセン童話の『人魚姫』では、
主人公の人魚姫は人間の王子に恋をするが、種族が違うので恋人になれない。
(目的とこれを妨害する状況)
人魚姫は、魔女に人間に変身させてもらうが、代償として声が出せなくなる。
(目的達成のために行動するが、目的をはばむ新たな問題が発生)
さらに、隣国の姫と王子の縁談が持ち上がるなど、次々に問題が降りかかります。
恋愛物語なら、好きな相手がいるが何らかの理由で結ばれることができず、これをクリアするために主人公が行動するのが基本テンプレになります。
人魚姫の物語の骨組みを応用して、現代を舞台にした物語を試しに作ってみましょう。
(目的とこれを妨害する状況)
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太っている原因は父親がパティシエで新作ケーキの味見をさせられるからだ。父と喧嘩し、必死にダイエットして半年で50キロ痩せる。痩せたら意外と美人だったようで、周囲の男性からの人気が急上昇する。
(目的を達成するべく行動する)
⬇
自信を持って告白したら、実は彼は太った女性が好みで、半年前のキミが理想の女性だったと言われる。
⬇
主人公は彼と付き合いながら、今度は太る努力をする。今までがまんして食べられなかった大好きなケーキを頬張って終わる。
(オチ)
主人公の恋愛を妨害する状況を変えたり、その状況をどうやって解決するかで、千差万別の物語を作ることが可能です。ぜひ、試してみてください!
長編小説とは、実は短編小説の集合体。短編小説を書いてみよう!
掌編小説を書けるようになったら、次は短編小説を書くことに挑戦しましょう!
長編小説とは、実は短編小説の集合体です。
例えば、大ヒット作『ビブリア古書堂の事件手帖』(2011/3 刊行)を元祖とするキャラ文芸は、一話完結の短編集でありながらも、それぞれがストーリー的に連続しており、短編が組み合わさって長編小説となっています。
それ以外のジャンルの小説も区切りのない長話をしているのではなく、それぞれの章は、起承転結をそなえた短編小説の構成になっています。
『黒い家』『悪の教典』で有名なミステリー作家、貴志祐介さんは、その著書『エンタテインメントの作り方』で以下のように述べています。
長編小説の原点は連作短編集のかたちにあると思っている。それぞれの章が、独立した短編小説としても通用する構成を意識し、そのつど読者に十分な満足感をあたえられるような作品つくりを目指せば、自ずと質の高い長編が書けるようになろうだろう。
短編小説を書くことができるようになれば、それを積み重ねて、長編小説を書くことができるようになります。
掌編小説が書けるようになったら、次のステップとして短編小説を書いてみましょう!
短編小説の書き方。7つのポイント
- 主人公が何か達成したい願望や問題、悩みを抱えており、これを解決しようとする(ストーリーとは問題解決の過程)
- メインキャラクターは3人以内。不必要な登場人物は出さない
- 結末と書きたいクライマックスシーン(最後に盛り上がるところ)を決める。
- どんな人が読んでおもしろいと感じるのか? 読者を想定して彼らにウケるように書く
- 主人公を助けてくれる人物を登場させる。お助けキャラ(物語の案内人)
- 予想を裏切る意外な展開を入れられるとグット(味方と思っていた人物が実は敵だった。敵だと思っていた人物が味方だったなど。主人公にとって意外な展開)
- ラストは主人公が問題を解決する。主人公の心理状態がプラスになって終わるハッピーエンドが基本(文芸ではバットエンドで終わる場合もある)
短編小説は一般的に文字数6000文字以上、1万6千文字以下の長さの小説を指します。
ストーリー作りのコツは、主人公が何か達成したい願望や問題、悩みを抱えていて、これを解決する過程を書くことです。
主人公の抱える問題とは、仕事を失った、嫌いな異性に付きまとわれている、好きな人がいるなど、読者が共感しやすいものが良いです。
ネタが浮かばない時は、あなたが、今までの人生で経験してきて嫌だったことを、主人公の問題にしてみましょう。自分の体験からネタを起こすのは、王道の1つです。
また、主人公を助けてくれる『お助けキャラ』を出すと、ストーリーを動かしやすくなります。
お助けキャラの役割とは、物語の案内人です。問題を抱えた主人公と会話し、解決に必要な知識を与え、行動をうながします。具体的には、以下の『時をかける少女』のストーリー構成で解説します。
短編小説の超名作『時をかける少女』のストーリー構成
例として、短編小説として最も高い評価を受けている作品の1つ筒井康隆の『時をかける少女』(1967年刊行)のストーリー構成を紹介します。(古い作品ですが、何度も映像化されている超ロングセラーです)
- 主人公の中学3年生の少女・和子は、理科実験室で謎の人影を見て、ラベンダーの匂いを嗅いだ後、意識を失う。
- これをきっかけとして、過去に戻るタイムリープの能力が彼女に宿り、同じ一日をもう一度繰り返すことになる。
- 和子は、友人の一夫にこのことを相談し、能力を使って友人の吾朗の命を救うが、他の人たちからふつうの人間ではないと思われるのが嫌で、力を捨てたいと思う。(主人公の目的・問題)(お助けキャラ・一夫)
(お助けキャラ一夫の役割は、ヒロインの悩みを受け止めること。恋愛の伏線にもなっている)
- 理科の先生に相談し、和子が能力を得たきっかけとなった4日前の理科実験室にタイムリープを使って戻り、彼女に能力を授けた謎の人物に会えば、問題が解決すると言われる。(お助けキャラ・理科の先生)
(お助けキャラ先生の役割は、ヒロインにタイムリープの科学的知識と問題解決の方法を授けて、行動をうながすこと)
- 4日前の理科実験室に戻った和子の元に現れたのは、彼女の力になってくれていた友人の一夫だった。
(意外な展開) - 一夫は未来人であり、タイムリープの薬を作って過去にやってきたが、薬が未完成で、未来に帰れなくなったこと。薬を作るために理科実験室にいたところ、薬をひっくり返して、誤って和子にタイムリープの能力を与えてしまったことを伝える。
- 一夫は、和子のことが好きだと告白するが、未来に帰る前に、タイムリープの秘密を守るため、彼女や今まで関わった人の記憶をすべて消さなくてはならなくなる。そして、いつか再び、和子の前に現れると約束する。
(和子のタイムリープの能力は薬の効き目がなくなることで消滅する。問題の解決) - 和子は、心の底に残るいつか再び自分の前に現れると約束した誰かを待ち続けるのだった。
(主人公の心理状態がプラスになって終わる)
『時をかける少女』は、タイムリープの能力を偶然手に入れてしまった少女が、そのことに悩み、力を捨てたいと願って、力を授けた謎の人物に会いに行く物語です。
主人公に問題が発生し、その問題を解決するために行動することがストーリーであることがわかります。
『中学三年コース』(学習研究社)の1965年11月号に掲載された短編小説であり、中学生の女子が読んでおもしろく感じるように、恋愛要素を入れています。
和子(ヒロイン)、一夫、吾朗の三角関係の物語でもあります(メインキャラクター3人)。
ヒロイン(読者)のことを愛してくれる誰かと、将来必ずめぐりあうという希望を与えてハッピーエンドにしているため、当時の女子中学生の心に深く刺さりました。
ターゲットとなる読者を決めて、彼らにウケるように書くと、ターゲット以外の層にもウケて波及することがあります。
逆に、ターゲットを決めないでなんとなく書いたものは、誰にも刺さらないので、人気になりません。
小説を書く場合は、「この物語は仕事に疲れた30代の男性が読んだらおもしろい!」「ゲームが好きな人なら楽しめるはず!」などとターゲットを決めて書いた方が良いのですね。
また、起承転結の「転」にあたる部分で、和子にタイムリープの能力を与えたのは、彼女の友人だった一夫であるという意外な展開が入っています。
和子は、能力を授けた人物のことを自分に不幸をもたらした得体の知れない「敵」だと思っていました。
「味方と思っていた人物が実は敵だった。敵だと思っていた人物が味方だった」というのは、人気漫画『名探偵コナン』でも使われている王道的な意外な展開です。
こういう意外な展開があると、おもしろさが増します。
長編小説の書き方。プロットのテンプレート
短編小説を書けたら、いよいよ長編小説を書くことに挑戦しましょう。長編を書く場合は、最初に物語の設計図となるプロットを書くと良いです。
以下はベテラン作家さんに教えてもらったプロットのテンプレートです。
以下の項目を埋める形で書いてください。A4用紙1~2枚におさまるくらいの長さにすると、ちょうど良いです。
- タイトル (タイトルで人気の9割が決まる。読者が一目で作品の面白さを想像できるタイトル、人気ジャンルだとわかるタイトルが良いです)
- あらすじ (必ず800文字以内にまとめてください。結末まで書きます)
- キャラクター( 主人公やヒロインなどのメインキャラクターの役割、魅力、行動原理。キャラクターの個性が伝わるセリフを書いてください)
- ログライン(誰が何をする話か一行以内でまとめてください。例 SAO→主人公が負けると現実でも死ぬゲーム世界に閉じ込められ脱出を目指す話)
- 一行コンセプト(一言でその作品の売りを語ってください。商業小説の帯を参考にしてください。)
- 読者に読んでもらったとき、なにを感じてもらいたいのか。 (読者が読んだときに感じてもらいたい感情を書いてください)
- 想定読者 (女性か男性か、あるいは双方か、対象年齢も明記してください)
- 想定送付新人賞・小説投稿サイト (投稿先を書いてください。応募先にはそれぞれカラーがあり、応募先に合った作品を投稿する必要があります)
- 参考作品 (この企画を書くに当たってインスピレーションを受けた作品をすべて列挙してください)
ストーリーの作り方は、冒頭、結末(最終的にどうなるか?)、クライマックス(最後に盛り上がるところ)の3つを最初に決めます。
その後、これらの間を埋めるように、あらすじを書いてみてください。ラストから逆算してストーリーを作ると、整合性の取れた話になりやすいです。
キャラクターとストーリーは同時に作るのがおすすめです。
キャラクターが変わるとストーリーに影響がでます。逆にストーリーを変更すると、キャラクターの性格を変えざるをえなくなることがあります。
キャラクターを作る際は、行動原理、なぜそのような性格になったのか? 生い立ちをある程度、決めておくと良いです。
また、キャラクターを象徴するセリフを書くと、イメージが固まりやすくなります。
実際に小説を書く時は、プロットで決めたことにこだわりすぎず、もし途中でストーリーを変えたくなったら、変更してしまってOKです。ラストさえ決まっていれば、物語が迷走しなくてすみます。
また、冒頭から順番に書く必要はなく、書きたいシーンから書いてしまって良いです。
世界で5億部売れた超ヒット作『ハリー・ポッター』の作者J・K・ローリングは、全7巻として構成したこの小説の第7巻の最終章から書き始めたそうです。
このように、もっともテンションが上がるクライマックスから書き始める作家さんはとても多いです。あなたが楽しく書けるやり方をすればよいのですね。
以下のページでは、30人以上のプロ作家の方々に「どのようにプロットを書かれていますか?」とインタビューしたことをまとめてあります。
人によってプロットの書き方は異なります。あなたに合ったやり方を参考にしてみてください。
長編小説を書くコツはプロットを作ること!ラノベ作家・餅月望さん
私は長編をたくさん書いて実力を上げました。
つまり、「一から長編を書き上げること」こそが一番実力を高める方法だったと思います。いくら長く書けても途中ではだめです。
きちんと起承転結をつけて、最後の一行まで書き上げること。それを見直し推敲すること。
一本の作品を作る工程を何度も体験することによって、頭の使い方を学ぶ、それが私がした唯一のトレーニングだと思います。
でも、長編を一本書き上げること自体が結構ハードルが高いので、それをトレーニングとして成立させる、つまり長編を何本も書き上げるために、最も役に立った技術は、プロット(物語の設計図)を作ることでした。
プロットを事前に書くようになってから、私は長編小説を書き上げることができるようになりました。
掌編、短編、長編小説の特徴。まとめ
2000文字以内。
初心者でも簡単に書ける。最初は掌編小説を書くのがオススメ。
書き上げた時に手に入る経験値1。
6000文字以上、1万6千文字以下。
初心者でもがんばれば書けるが、ちょっとしんどい。
書き上げた時に手に入る経験値10。ゲームで言えば中ボス。
1巻、約10万文字。
プロでも完結させるのがしんどい。完結させることができただけで、作家の才能がある。初心者がいきなり挑むと、挫折する危険が高い。
書き上げた時に手に入る経験値100。ゲームで言えばボス級。
小説の腕は、書けば書くほどレベルアップします。でも完結させないと経験値が手に入りません。まずは、掌編、短編を書いて練習してみてください。
小説を書き上げるコツ。初稿は25%の完成度でOK!
25%の完成度で良いので最後まで作品を仕上げてから、改稿して全体の完成度を上げる(プロ作家のやり方)。
第一章を何度も改稿し続け、途中で飽きて、挫折!(初心者が挫折するパターン)
Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグは「完璧を目指すよりも、まずは終わらせろ」を会社の方針にしています。
これは小説の執筆にも言えることです。
「作家が自分自身に物語を言い聞かせているのが、初稿というものなんだ」
by 5500万部を達成したベストセラー作家テリー・プラチェット
初稿とはあなたの物語を発見するために書くものです。
初稿のことを「発見稿」と呼ぶ場合もあります。初稿が完璧である必要はないのですね。
完璧にこだわって一作も書かなければ、腕は上がりません。
また完成させなければ発表もできませんから、ヒットする可能性は永遠に0です。
失敗に終わっても良いので、とにかく小説を書き上げましょう!
挫折の要因その1。途中で何度も作品を読み直すのはNG!
小説を書き上げられない最大の要因は、完成させる途中で何度も読み直して、修正をすることです。
これをすると自分の小説に飽きます。
どんな名作であっても10回も読み直せば、飽きてつまらなくなります。これは自分の小説であっても同じです。
熱を保ったまま一気に最後まで書き上げてから、気になる部分を改善してください。
書き上げるのに時間がかかると、もしかして私の小説って、おもしろくなくない? と不安になって挫折しがちになります。
2ヶ月くらいで、一気に最初のクライマックスまで書いてしまった方が良いです。
挫折の要因その2。最初から傑作を書こうとする
私が運営している『小説の創作相談掲示板』で、もっとも多い悩み相談の1つが「傑作を書こうと意気込みすぎるあまり一行も書けません!」というものです。
対策は以下の3つです。
- 駄作を作る勇気!
- 自分の才能(価値)を証明することにこだわらない。
- 小説を書くことを楽しむ
プロ作家になった人に話を聞くと、だいたい長編小説を7~10作仕上げたくらいのタイミングでデビューしています。
最初から傑作を書けた人はほとんどいません。
初めて書いた小説でラノベ新人賞を受賞した方に話を聞いたことがありますが、実力がともなわないままデビューすると、次の作品が出せずに苦労するそうです。
小説の執筆とは、実はダーツの的当てに似ています。
ダーツは実力者になっても、狙った的に的中させるのは簡単ではありません。
逆に実力不足でも、運が良ければ、狙った的にヒットさせることが可能です。
しかし、実力がともなわないまま運でデビューしてしまうと、的中率が低いので、次の企画が通らない、書いても書いても書籍化されないとなって、心が折れてしまいます。
作家に一発屋が多いのは、実はこれが原因です。
焦らず、ゆっくりと実力を高めた方が良いのです。
文豪・夏目漱石は、小説家の弟子たちに対して、次のような言葉を送っています。
「どうぞえらくなってください。しかし、あせってはいけません。牛のようにずうずうしくすすんでいくことがだいじです。
(中略)
根気です。世の中は根気の前には頭をさげますが、火花は一瞬で忘れてしまうでしょう」
最重要。楽しく小説を書きましょう!結果ではなく過程を楽しむ
ベテラン作家さんによると、自分の小説をつまらないと思って書くと100%おもしろくない作品になるそうです。
逆に、「俺の小説は超サイコー! おもしれー! 俺って天才!」と思って書くと、誰かからおもしろいと言ってもらえるそうです。
脳科学的にも「これ好き!」「おもしろい!」という内発的動機付けによって行動すると、おもしろいアイディアを閃きやすいことがわかっています。
作家デビューした人が一発屋で終わる原因の一つは、次に書く小説も必ず書籍化されなくてはならない、というプレッシャーがあるからです。
アメリカで行われた実験によると「人は成果を求める欲求が強まると、失敗を恐れて創造性が減る傾向にある」ことがわかっています。
結果にこだわりすぎると、楽しくなくなり、楽しくないから、結果がでなくなるという悪循環になります。
ラノベ作家・黒九いなさんは、プロになれた理由を『小説を書くことを続けた』のが最大の要因だと語っています。
続けるコツは小説を書くことを楽しむことです。
小説家にとって最も大切なのは書き続けること。書き続けるのに必要なのは、楽しむことです。
ミニコラム。小説を書くのに学歴や年齢。動機は関係ありません!
小説を書くのに年齢は関係ありません。70歳でも大丈夫です!
夏目漱石は38歳の時、初めて小説を書きました。
ドストエフスキーは最高傑作と言われる『カラマーゾフの兄弟』を60歳の時に書いています。
村上春樹は、70歳になっても現役の小説家です。
創作は歳をとってもできるのが魅力です。
また、小説を書くのに学歴も関係ありません。
芥川賞受賞作家の西村 賢太は中卒です。
永山則夫は定時制高校を中退しており、読み書きもまともにできない人でしたが、殺人を犯して投獄された後、独学で小説を書いて第19回新日本文学賞を受賞し、6冊も小説を出版しています。
小説を書くのに、年齢も学歴も関係ないのです。
さらに、立派な動機や志がなくてもOKですし、性格も関係ありません。
名作「人間失格」で有名な作家、太宰治は、第1回芥川賞に落選したことに腹を立て、選考委員の川端康成を雑誌の上で「大悪党だと思った」と批判して大炎上。
それでも芥川賞が欲しくてたまらず、次のチャンスには川端や他の選考委員に「くださいよ~」と手紙を送り、結局、受賞できなかったそうです。まさに人間失格!
太宰治がこれほど芥川賞が欲しかったのは、病気の治療代としてお金が欲しかったからだそうです。
お金のために小説を書くのはけしからん! 小説家は立派な人格者でなければいかん! と思う人がいるかも知れませんが、太宰治の例にように、小説を書く動機や作家の性格は、作品の質になんら影響しないのです。
ただし、あまりにもハチャメチャな性格だと編集者とうまくいかないので、プロ作家を続けるのは難しくなります。
小説の書き方講座。ストーリーの作り方
おもしろいストーリーを書く最大のコツ。挫折は最初の一回だけ。それ以後、主人公は常に勝利し成長し続ける!
「主人公は最初は挫折するなどマイナスな状態からスタートするが、その後は常に勝利し続け、成長し続け、敵もそれに合わせて強大になっていく」
これがエンターテイメントのストーリーの黄金則です。
逆にストーリーを作る上で避けるべきは、主人公が負けるなどのマイナス状態に陥ることです。
読者の心理状態もマイナスになるので人気に悪影響が出ます。
ジャンプの大ヒット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』作者、荒木飛呂彦さんによると漫画はどの回も勝って終わるプラスで締めくくるのがベストだそうです。
大手小説投稿サイト「小説家になろう」の運営も認めている話ですが、なろうでウケる小説の特徴の1つはストレスフリー。主人公が挫折をしないことです。
「主人公=読者」なので、主人公が負けたり、恋に破れたりすると読者は不快感を感じてしまいます。
主人公がマイナスの状態に陥るのは、漫画、ラノベともに危険ということです。
「転生したらスライムだった件」 (2014/5 刊行)は累計1,000万部以上を売り上げた大ヒットラノベです。この小説は、例に上げたエンターテイメントの黄金則の教科書的な内容です。
会社員だった主人公は、通り魔に刺されて殺されます(最初の挫折)。
主人公は異世界でスライムに転生します。「捕食者」「大賢者」という強力な能力を持って生まれ、これらを使って、どんどんパワーアップ。
ゴブリンの村落を助けたことをきっかけに、多くの魔物たちを支配下において、やがてジュラの森を拠点とした多民族国家「ジュラ・テンペスト連邦国」の盟主となります。
主人公は能力的にどんどん強くなり、主人公をトップとした村も国に発展し、魔王たちとも渡り合えるほど、主人公も国も強くなっていきます。
このプラスを積み重ねていく快感が、『転スラ』の最大の魅力です。
主人公が最初に挫折した方が良い理由は2つあります。
1つは、この主人公は自分と同じ人間なんだ!と読者に共感してもらうためです。なんの問題も抱えていない勝ち組リア充であるより、無職だったり、ゲーム廃人だったり、通り魔に殺されたりした方が、ラノベ読者に共感してもらえます。
2つ目は、マイナスからスタートしたほうが、その後、プラスを積み重ねていくのに好都合だからです。
主人公の成長に合わせて敵が強大になっていった方が良いのは、以前より弱い敵に勝利しても、快感が薄くなってしまうからです。
魔王に匹敵するほど強くなった主人公が、いまさら雑魚モンスターを相手にしても盛り上がりません。
主人公は最初は挫折するなどマイナスな状態からスタートするが、その後は常に勝利し続け、成長し続け、敵もそれに合わせて強大になっていく。
というストーリーの黄金法則をぜひ、あなたの小説に取り入れてみてください。
一番大事なのは主人公に共感してもらうこと!
小説を書く上で一番大事なのは、読者を主人公に共感させることです。
小説の読者は主人公になりきって、物語を楽しみます。
主人公になりきってもらうためには、この主人公の気持ちがわかる! この主人公は俺と同じだ! と、主人公に共感してもらうことが何より重要です。
小説のおもしろさの正体とは?
主人公に共感できる要素を作り、読者に主人公になりきってもらった上で、主人公を大活躍させることによって、読者は自分が活躍しているような楽しい気分になれます。
これが小説のおもしろさの正体です。
主人公への共感を生む2つのポイント
- 読者に近い境遇や価値観を持つ
- 欠点やダメな部分がある
例えば、長らく大手小説投稿サイト『小説家になろう』で総合1位を取っていた『無職転生』は、34歳で職歴なしの引きこもり青年が主人公です。
彼は高校時代にいじめられたのが原因で、ひきこもりとなり、兄弟たちから家を追い出されて、異世界に転生します。
彼の持つ願望「人生をやり直したい!」という気持ちが大きな共感を生みました。
これは誰もが一度は考えたことがあることでしょう(読者に近い境遇や価値観を持つ)。
「………やりなおせればな」
思わずそんな言葉が溢れる。
俺だって、生まれた時からクズ人間だったわけじゃないのだ。
引用「無職転生 - 異世界行ったら本気だす」プロローグより
人気のポイントはもう1つ。性欲旺盛なひきこもり、という主人公のダメな部分をプロローグで全面的に出しているところです。
欠点がある人間に、人は親しみを感じます。誰しもが自分の欠点に悩んでいるので、ダメな部分があると、大きな共感ポイントとなるのです。
なろうが異世界転生ばかりになった理由。共感を生む最強のテンプレだから
例えば、家族を魔王に殺された少年騎士の復讐譚などだと、小説ではヒットする可能性が低くなります。
家族を殺されたことがある人はレアなので、この主人公の気持ちがわかる! と共感するのが難しくなるのです。
実際に復讐譚系で、ヒットした作品はラノベではあまり例がありません。
また、騎士という職業についている人も現代ではいないので、その内面を想像するのが難しくなります。
なろうが異世界転生ばかりになったのは、共感を生む上で、これ以上無いほど最適なテンプレだからです
異世界人よりも、日本人でブラック企業に勤めていたり、ゲームオタクだったりする主人公の方が、その内面を理解しやすいので、主人公になりきって物語を楽しむことが、よりカンタンになるのです。
小説とは主人公の活躍を描いた物。他のキャラの活躍を書くと大失敗します!
創作初心者が犯しがちが失敗として、主人公以外のキャラを書きたがるというのがあります。
主人公以外のキャラに焦点を当てると人気が出ないです。せめて30万字以上(3巻以上)書いてから、他のキャラの活躍を書きましょう。
ラノベ、特になろう小説は壮大な物語を書いた群像劇ではなく、主人公の活躍を描いた「俺すげぇー!」が本質です。
読者は主人公になりきって物語を楽しみます。「主人公=読者」なのです。
ラノベとは自分自身が物語世界で活躍して、周りの人々からスゴイ!スゴイ!と褒められて、感謝されるからこそ、おもしろいのです。
(これはラノベに限らず、世界で5億部売れた小説『ハリー・ポッター』もまったく同じ構造です。小説の王道的な型です)
むしろ、三国志のような群像劇の方が、エンタメ小説では異端なのですが、なぜか初心者の方は群像劇が大好きです。
これは「小説とは壮大な物語を書いた物」という誤解があるからだと思います。
主人公以外のキャラを書きたくなってしまう3つの原因
- 主人公を書くのに飽きる
- 主人公を書き続けるネタに詰まる
- 漫画では魅力的なライバルや仲間が登場し、主人公より目立つことがあるから
1と2を克服しようとして、主人公以外のキャラを話の中心に持ってきて、なんとか話を持たせよう、飽きを克服しようとして、話がぐちゃぐちゃになり、人気が出なくなって大失敗。
というパターンが多いように思われます。対策として、例え、苦しくても
主人公の活躍を書き続ける。
という、基本中の基本を守るのが一番です。
人気作品は、例え、他のキャラの活躍を書いたとしても、最初から最後まで、主人公が話の中心にいます。
3については、実は、どんな漫画も連載当初は主人公の活躍を書き続けています。
長期連載となり約10巻以上になってから、初めて他のキャラを中心としたエピソードが出てきます。
例えば、少年ジャンプの人気漫画『HUNTER×HUNTER』では、9巻から主人公の仲間クラピカを中心としたストーリーが展開されますが、それまでは、ずっと主人公ゴンの活躍を書いてきました。
まずは、徹底的に主人公の活躍を書くのが正解なのです。
物語とは主人公が目的を達成する過程を描いた物
主人公が現状に不満があったり、何かを達成したい、手に入れたいという欲求があり、これを成し遂げるために、目的を妨げる要因と戦っていく道筋が、すなわちストーリーとなります。
有名な日本昔話の桃太郎を例に挙げてみましょう。
桃太郎は、自分を拾って育ててくれたおじいさん、おばあさんに恩返しをするために、彼らを苦しめる鬼を退治することを決意し、旅立ちます。
旅の過程で、犬、猿、キジにきび団子を渡してお供に加え、彼らと力を合わせて、鬼を退治します。
鬼を退治することが主人公の目的であり、桃太郎のストーリーとはその過程です。
「陰の実力者になりたくて!」(2018/11/5刊行)は、「小説家になろう」から書籍化された人気作です。
タイトルそのまま主人公の目的は、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す「陰の実力者」になることです。
彼が「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく、ふざけて暗躍していたら、本当に闇の教団が存在していて、彼の妄想は世界の真実だったことがわかるというコメディ作品です。
主人公は、本当に陰の実力者になっていきます。
つまり、主人公が目的を達成する過程が、ストーリーです。
主人公が何をする物語なのか? その目的、主人公のやりたいことを決めておくと、ストーリーを考えやすくなります。
SAVE THE CATの法則。物語の最初の方で主人公は弱い者を助ける!
“物語創作メソッドの権威”「SAVE THE CATの法則」というのがあります。
名前の由来は「物語の最初の方で、主人公は猫を助けろ!」というものです。
弱い者を助けてあげるエピソードを最初に入れたら、どんな性格の悪い主人公でも、読者の好感を得られます。
小説やラノベでも使える技です。
大ヒット作「転生したらスライムだった件」の主人公は、冒頭で会社の後輩を守って通り魔に刺されて死亡。
スライムに転生したら、魔物に襲われて困っているゴブリンの村を助けてあげます。
累計発行部数800万部以上の大ヒット作「オーバーロード」の主人公アインズは、隣国の騎士に襲われている村を助けています(Web版7話)。
アインズは、まさに殺されそうになっている少女(かわいい猫)を間一髪で救います。
ラノベにおいても「SAVE THE CATの法則」を取り入れているヒット作は多いです。
「小説家になろう」累計総合ランキング(2019年10月段階)
2位・無職転生
3位・ありふれ
1、2は、主人公が他人を守って死んで異世界に転生。
3も、弱くても主人公が他人を守るエピソードを5話に入れてます。
この法則の有効性がわかります。
小説の冒頭をおもしろくする6つのポイント
冒頭は小説の最重要部分です。
小説の冒頭、Web小説なら約8話(2万文字くらい)くらいまでに、読者を引きつけることができないと、残念ながら、それ以上読んでもらえません。
以下は、冒頭のエピソードで、これは押えておいた方が良いという6つのポイントです。(すべてを入れる必要はありません)
- 主人公の目的。やりたい事を提示
- ラブコメ要素があるなら、ヒロインは早めに登場させる
- 弱い者を助ける。SAVE THE CATの法則
- 主人公が天才、または最強であることを示す(ラノベの場合。読者の承認欲求を満たす)
- 主人公が仲間や家族から愛されている(ラノベの場合)
- 最初の挫折(マイナスからスタート)。その後のストーリーは勝利と成長を積み重ねる
冒頭で世界観の設定をたくさん説明したりするのは、読者に嫌がれるのでやってはいません。読者は説明を嫌うので、必要最小限に。
また、主人公はなるべく早めに登場させてください。
以上のポイントに沿って、シリーズ累計1200万部発行の大ヒット作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(2013/1 刊行)のプロローグと第一章の構造を分析します。
ダンまち。プロローグの構造
- 主人公のベルは、ダンジョンでモンスターに襲われて逃げ回る(最初の挫折)(p4)
- 【剣姫】アインズ・ヴァレンシュタインに助けられて、彼女のことが好きになる。(ヒロインの登場)(p7)
ダンまち。第一章の構造
- アインズに認められるために強くなることを目指す(主人公の目的を提示)(p20)
- ベルのことが大好きで徹底的に応援してくれる家族(妹、母)のような存在、女神ヘスティアの登場(仲間や家族から愛されている)(ヒロインの登場)(p26)
- ベルがユニークスキル【憧憬一途】を持っていることが判明。(主人公が天才であることを示す)(p44)
これで第一章が終了しています。
(ページはp4からが小説本文です)
「弱い者を助ける」以外のポイントはすべて押えていることがわかります。
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』の序章分析
250万部突破の大ヒット作『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』(2014年7月刊行)の序章、11ページを分析します。(p5からが小説の本文です)
序章タイトル 無職(ニート)な僕が魔術の非常勤講師になったワケ
- 主人公のグレンは、外見年齢20歳くらいの美女セリカの貴族屋敷に、1年ほど働かずに居候しており、彼女に「働いたら負けだ!」と言って、魔術でぶっ飛ばされる。
(仲間や家族から愛されている)(最初の挫折・マイナスからスタート)(p5) - セリカは魔術学院の上級講師である立場から、グレンに臨時講師の仕事を斡旋しようとする。
グレンの能力ならできること、グレンの力はセリカを凌駕しかねないことが匂わされる。(主人公が天才、または最強であることを示す)(p9) - グレンは魔術が大嫌いだから、魔術学院の臨時講師などやりたくないと断って、セリカに「養ってください!」と土下座するが、魔術でぶっ飛ばされて、強制的に再就職させられることになる。(主人公の目的を提示)(p14)
これで序章が終了しています。計11ページ。第一章(p17)から、物語に大きく関わるヒロイン2人が登場します。
計17ページ以内で、主要キャラクターがすべて揃います。
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』は、主人公グレンが「働きたくない! 養ってください!」と保護者である美女セリカに、自分のダメな欲求をストレートにぶつけるところから始まります。
これは現代人が誰でも思っている欲求であり、主人公に大きく共感することができます。
序章(プロローグ)で主人公に大きな共感ポイントを作っています。
セリカは、グレンの母親のような存在で、彼を叱りながらも一年間も居候させてあげており、仕事まで紹介してくれるほどグレンを愛しています。
セリカの役割は『ダンまち』の女神ヘスティアと同じ、挫折した主人公を応援してくれる家族、母親です。でも母親とすると、読者にとってはうれしくないので、外見は若い女性になっています。
セリカはグレンを魔術講師に導く『物語の案内人』でもあります。
『暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士(パラディン)をめざします』プロローグの構造分析
『暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士(パラディン)をめざします』(2018/4 刊行)のプロローグの構造分析。p3からが小説の本文です。
- 主人公の自己紹介。暗黒騎士であり、暗黒騎士の地位を向上させたいと考えている。(p3)
- 魔物に襲われている馬車を助ける(弱い者を助ける)(p6)
- 馬車に載っていたのは神聖アステリア王国の王女でり、非常に感謝される(ヒロイン登場)(p11)
- 最強を目指すため、王国での暗黒騎士の扱いを変えるため、王女に後見人になってらい、神聖職業訓練校に入学して、王宮聖騎士になることを目指す(主人公の目的の提示)(p17)
- 暗黒ジョブのエリート一家の両親に王宮聖騎士になる夢を語って応援してもらう。兄が大好きな妹は、同じ学校に通えなくて怒る(仲間や家族から愛されている)(p19)
これでプロローグが終わります。
その後、主人公は、王女と共に学校に入学し、彼が王国最強の暗黒騎士であることが判明します。しかし、王宮聖騎士になるために見習い騎士からやり直すことになります。
(主人公が天才、または最強であることを示す)(p33)
これによって、最強でありながら、どんどん成長していくというプラスの快感を得ることができる構造になっています。
余談ですが、ラブコメ要素を入れる場合のきっかけは、古来から、主人公がヒロインを助けるというやり方が王道です。恋愛関係に持っていきやすくなります。(『ダンまち』はこれを逆転させて意外性を出している)
アニメ化された大ヒット作『賢者の孫』(2015/7 刊行)でも使われています。
また、主人公に好感を持ってもらうためのテクニック「弱い者を助ける。SAVE THE CATの法則」は、主人公が暗黒騎士や魔物など、悪役っぽい属性であった場合に、より効果を発揮します(主人公は良い人であることが一発でわかる)。
ラノベの冒頭はテンプレが基本!
ラノベ読者とは「過去3年くらいほどの前例しか覚えていない、超前例主義の国家公務員」のような人たちだと思ってくだい。
例えば、大手小説投稿サイト「小説家になろう」に集まってくる読者は、なろうから書籍化されて人気になった小説と、同じような物語を求めています。
最近読んでおもしろかった物語と同じような、自分の好みに合う物語以外は探していません。
なので、小説の最初の1万ページくらいは、現在のランキング上位作品と似たような内容にして、読者の興味を引いてください。
あなたの小説は読んでもらうためには、まず読者の興味を引く話をする必要があります。
冒頭はテンプレが基本です!
テンプレとは、人気作に共通する設定、要素、展開のことです。
(例えば、冒頭で主人公が異世界に転生するなど)
テンプレから入って読者の興味を引いてから、徐々にあなたがやりたい方向に物語を持っていきましょう!
テンプレを制する者はラノベを制す。と覚えておいてください。
ストレス制御の重要性。物語の山を作りながらも読者にストレスを与えない!
2012年に刊行された書籍『売れる作家の全技術』では、
主人公を残酷な目にあわせろ!
といったことが書かれています。
「主人公をどれだけ苦しめるか、苦労させるか、泣かせるかで、物語のおもしろさが決まる」
主人公に試練を与えて、これを乗り越えさせることで、快感が生まれるのです。
これは確かにその通りなのですが、現代人、特にラノベ読者はストレスフリーの物語を求めているので、これをうのみにするのは危険です。
ラノベ読者は、主人公になりきって物語を楽しみます。そこで現実と同じような辛く苦しい目に合わされると、嫌になって読むのをやめてしまうのです。
楽しい気分になりたいから、読者はラノベを読むのです。
そこで重要になってくるのが、ストレス制御です。
主人公をピンチにおとしいれながらも、読者に不快感やストレスを与えない
という高度な技が求められます。
大ヒット作品は、このストレス制御がうまいのが特徴です。
『ハリー・ポッターと賢者の石』分析
世界で5億部以上売れたJ・K・ローリングのハリー・ポッターシリーズの第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』(1997年英語版刊行)を例にあげて解説します。
最初に読者に大きな快感を与え、主人公の成功を約束するから、続くストレス展開に読者がついてきてくれる構成になっています。
- 物語の冒頭で、魔法の世界を恐怖におとしいれた闇の魔法使いヴォルデモートによって、ハリー・ポッターの両親が殺されるも、まだ赤ん坊だったハリーにヴォルデモートの力はなぜか通用せず、ハリーの額に稲妻型の傷をつけるだけで退散したエピソードが語られます。
(主人公が天才、または最強であることを示す) - 両親を失ったハリー・ポッターは叔父の家に預けられるも、そこで虐待に近い扱いを受け、従兄弟からはいじめられます。
ハリー・ポッターの周りで不思議な現象がおこることを、叔父夫婦は非常に嫌います。
(最初の挫折。マイナスからスタート。共感ポイント)
ハリー・ポッターの導入部分が優れているのは、主人公が闇の魔法使いヴォルデモートを撃退するほどの才能を秘めた、魔法世界の救世主であることが最初に示され、その後、叔父の家でのひさんな生活がはじまるところです。
叔父夫婦は、ハリーのまわりで不思議な現象が起きることを非常に嫌っており、彼につらくあたります。
(読者にハリー・ポッターに共感してもらうためのエピソード)
しかし、これはハリーが魔法の天才であるからで、魔法の世界にやがて招かれ、救世主として扱われることは、冒頭のエピソードから明らかです。
このため、彼がいじめられているエピソードのストレスが緩和され、はやく自分が活躍できる魔法の世界に招かれないかな! というワクワク感に繋がっています。このように、
ストレスとなる物語の山がワクワクに繋がるようにする!
というのが理想です。
叔父や従兄弟からのいじめのストレスを緩和するために、ハリー・ポッターがいかに特別な存在であるか、赤ん坊のハリーが叔父夫婦に預けられる前に、魔法学校の教師マクゴナガルとダンブルドアが語ります。
「連中は絶対にあの子のことを理解しやしません! あの子は有名人です――伝説の人です―今日のこの日が、いつかハリー・ポッター記念日になるかもしれない――ハリーに関する本が書かれるでしょう――私たちの世界でハリーの名を知らない子供は一人もいなくなるでしょう!」
あまりにもハリー・ポッターが魔法世界で有名すぎて、魔法世界で育つと教育に悪いので、物心つくまでは、ふつうの家で暮らした方が良いという理由で、ハリーは叔父夫婦に預けられます。
1997年にイギリスで刊行された小説ですが、なろう系ラノベかと思うほど、主人公をもちあげて褒めちぎっています。
最初に読者に大きな快感を与え、主人公の成功を約束するから、続くストレス展開に読者がついてきてくれる構成になっています。
『オーバーロード』の分析。ストレスをサブキャラに負わせる
2010年5月から小説投稿サイト「Arcadia」にて連載開始され、書籍化されて累計発行部数800万部を突破した『オーバーロード』のストレス制御の手法を解説します。
この作品では、主人公のアインズは最強の存在なので、ピンチに陥ることがありません。
その代わりに、サブキャラが自分よりはるかに強大な敵に立ち向かっていき、そこで敗北を経験して、精神的、能力的に成長する場面が繰り返しえがかれます。
これは主人公が敗北や挫折を経験すると、読者の自尊心が傷つくので、サブキャラにやらせて物語を形成しているのです。
以前、ラノベ新人賞の下読みさんが繰り返し言っていたのですが、物語には成長要素が不可欠です。
敗北は、これまでの自分を壊し、成長するための切っ掛けになります。
しかし、最強の主人公を敗北させると、読者の自尊心を傷つけることになるので、従来の物語では、主人公が担うはずだった敗北と成長をサブキャラに行わせて、成長物語を作っています。
主人公アインズはサブキャラが死ぬ寸前まで追い詰められてから、その窮地を救うために現れて、大きく感謝されます。
主人公は苦しみを負わず、逆転する快感、感謝される快感だけを得られるような構造になっています。
これはオーバーロード特有の構造ではなく、古くは時代劇の『水戸黄門』でも使われていたストレスフリーの手法です。
悪代官に苦しめられるのは力のない町人で、最強の存在である水戸黄門は、それを安全な立場から眺めていて、最後に介入して悪代官を懲らしめて、町人に感謝されて終わります。
主人公が必ずしも、苦しんだり、悲しんだりする必要はなく、それらのストレスをサブキャラに負わせてしまっても良いのです。
主人公は敵をスカッと倒す快感と感謝を得る、おいしいところだけ持っていくのでもOKです。
『主人公=読者』。主人公に強いストレスを与える場合は、読者に嫌われないか? という視点が必要です。
ハリー・ポッターのように、やがて苦しい生活が終わって輝かしい成功の人生がはじまることを最初に約束する。
というように、ストレスの逃げ道を作ってあげるのが理想です。
読者の罪悪感を消すための工夫
ラノベ読者が好きなのは、奴隷、配下、妹など、自分より立場が弱く、絶対に裏切らない女性キャラです。
なろう系ラノベでは、ヒロインは主人公の奴隷であることが多いです。
しかし、嫌がる女性を無理やり奴隷にするのは読者に罪悪感を与えてしまいます。罪悪感とは読書意欲を損なうストレスです。
そこでヒット作品は、この罪悪感を消すための工夫をしています。
『異世界支配のスキルテイカー ~ゼロから始める奴隷ハーレム~』 (2015/6/2刊行)なろうから書籍化された35万部超えのヒット作です。
この作品ではヒロインの方から、主人公の奴隷にして欲しいとお願いしてきます。
読者の承認欲求が満たされる上に、女性を奴隷にする罪悪感もなくせる素晴らしい構造です。
以下、ヒロインの名台詞を抜粋します。
「も、申し訳ございません! 私のような若輩者が、ふてぶてしくもユウトさんの奴隷になりたいだなんて……頭が高いにも程がありましたよね! ごめんなさい! 調子に乗りました! 今の発言は忘れて下さい!」
「ご主人様は素晴らしいお方です! 肉体や精神的な強さはもちろんのこと! 誰にでも分け隔てなく接することのできる大きな器を持っています! 断言します! 私の人生における最大の幸福は、ご主人様の奴隷になれたことです!」
大ヒット作『盾の勇者の成り上がり』(2013/8/20刊行)では、主人公は仲間の女性に裏切られて犯罪者にされ、財産を奪われます。
攻撃力を持たない主人公は、パーティの攻撃要員として病弱な奴隷の少女を買います。
少女を奴隷にするのは、現代の倫理観では完全にアウトです。
そこで奴隷少女ラフタリアは、ガリガリに痩せていて健康状態が悪く、夜にパニックを起こす。しかも奴隷商人の元では、騒いだら罰を与えられるなど劣悪な環境にいるので、主人公が買ってあげた方が幸せだ、という設定にしています。
実際にラフタリアは主人公の奴隷になったおかげで、飢えることもムチで打たれることもなくなって美しく成長し、主人公に大変な恩義を感じます。
そして、奴隷から解放されるチャンスが来たとき、主人公の奴隷でいたいと言うのです。
以下は、ラフタリアのセリフです。
「……アナタは小汚い、病を患ったボロボロの奴隷に手を差し伸べたりしますか?」
「え?」
「ナオフミ様は私の為に様々な事をしてくださいました。食べたいと思った物を食べさしてくださいました。咳で苦しむ私に身を切る思いで貴重な薬を分け与えてくださいました。アナタにそれができますか?」
『異世界支配のスキルテイカー』のヒロインと同じく、主人公の奴隷であることに幸せを感じてくれるので、女性を奴隷にする罪悪感を消せる上に、読者の承認欲求を強く満たすことができるように工夫されています。
一行で表せる明確なコンセプトがあるか? 小説を確実におもしろくする秘訣!
ストーリーを考える際は、この作品のコンセプトは何か? 一言で言うとどこがおもしろいのか? 明確に言えるようにしましょう。
これが小説を書く上で、最初に考えるべき最重要ポイントです。これができている作品は確実におもしろくなります!
その小説のどこがおもしろいの? といういじわるな質問に対する答えはラノベの最大手レーベル電撃文庫では『一行コンセプト』と言われています。
どんな物語なのか? おもしろい部分はどこなのか? この2つが把握できれば、自然とキャラクターやストーリーの方向性も見えてきます。
例えば、アニメ化されたシリーズ累計300万部超の『はたらく魔王さま!』(2011年2月刊行)は、「世界征服寸前まで行った魔王が勇者に敗れて現代日本にやってきて、ファーストフード店で働きながら生計を立てる」という、これを聞くだけで笑ってしまうような明確なコンセプト、売りがあります。
おもしろい作品とは、必ずここがおもしろい! と一言で言えるような明確なコンセプトを持っているのです。
例えば『ゼロの使い魔』なら、
小説家になろうの累計総合ランキング1位を取った『無職転生』なら、
『薬屋のひとりごと』なら、
1行コンセプトを作品のタイトルにする!
コンセプトはそのまま作品タイトルに使われることも多いです。
例えば、以下は「小説家になろう」から書籍化された人気作です。
『魔王学院の不適合者。史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う』
タイトルでこの作品の何がおもしろいのか?1行で表しています。
1行コンセプトさえ固まれば、ストーリーもキャラクターもタイトルもすべて決まるのですね。
コンセプトを守ってストーリーを書くのが大事!
以下は第32回ファンタジア大賞・金賞を受賞した永松洸志さんに「ストーリーを考える際に重視していること、気をつけていることがありましたら教えてください」と質問した際の答えです。
ちゃんと作品コンセプトに合ったストーリーかどうかを重視しています。
例えば、コンセプトだけを見たらめちゃくちゃギャグなのに、いざストーリーを読むとドシリアスなら、矛盾しているので、そうならないように、ストーリーを考えるときは常にコンセプトを確認しています。
だいぶ前にプロット作成途中で自分が暴走して、好き勝手好きなシーンを突っ込んだ結果、コンセプトと真逆のストーリーができてしまった……ということがあったので、今は常に確認しています。
コンセプトを決めたら徹頭徹尾、これを守ってストーリーを書くことが大切なのです! これができれば必ず良い作品になります!
おもしろくない小説の特徴とは?「万人受けを狙った物」
おもしろくない小説とは「万人受けを狙った物」です。
10人中10人に好かれようとしても、人は性別や年齢によって、大きく好みや価値観が異なるため、それぞれの人に深く刺さらず、誰からも支持してもらえないものになります。
エンターテイメントには、必ずターゲット層が存在します。
例えば、アンパンマンは幼稚園くらいの小さな子どもをターゲットにしたアニメです。
大人で、見ておもしろいと思う人はあんまりいないでしょう。
時代小説は、高齢者向けの小説です。
20代の若者が読んでも、あまりおもしろいとは思えませんが、高齢者は数が多いので、実は100万部以上売れている作品がたくさんある人気ジャンルです。
BL小説は腐女子のお姉さんをターゲットにしていますし、妹ラブコメ小説は、妹萌えなオタク男性をターゲットにしています。
それ以外の人から支持されなくても、ターゲット層に支持されればそれで商売として成り立つのです。
物語は、10人中1人の読者から支持されれば大ヒットです!
逆に言えば、9割の人はターゲット層とは異なるので、まず支持してもらえません。
そこで、残り1割のターゲットとなる人を徹底的に楽しませるべく特化する必要があります。
創作は恋愛と同じ。ねらった相手にだけ好かれれば、それでOKなのです!
ただ恋愛と同じでこれが難しく、ターゲットの好みを理解する必要があります。
主な小説ジャンルごとのターゲットは以下のようになっています。
- キャラ文芸の読者は10~40代の女性。知的でオシャレなものが好き。
- ラノベの読者は10~20代のオタク男性。ゲーム、漫画、アニメと親和性が高い。
- なろう系ラノベの読者は30~40代のオタク男性。仕事で疲れている。
- 時代小説は高齢者がメインターゲットです。
ターゲットとなる人たちが読んで楽しいものであるか?
彼(彼女)らになんらかのメリット(得)を提供する内容であるかチェックしましょう。
特になろう系ラノベにおいては、いかに読者の承認欲求を満たすかで人気が決まります。
ラノベは文学作品ではなく、エンターテイメント消費のためのものです。ラノベ作家は偉い作家先生ではなく、オタクコンテンツ製作者です。
あなたが書きたい話より、読者が読んで楽しいかどうかに意識を向けてください。
小説のあらすじを800文字以内にまとめる
短くまとめることで、物語のポイントや山場を可視化させることができます。
設定やキャラクターをどんどん追加するのではなく、余計なものをどんどん削ぎ落として、おもしろい部分だけを残す、というやり方で作るのが良いです。
贅肉を削ぎ落として、本当に大事な骨格を浮き彫りにするイメージです。すると、あなたが本当に書きたいものが見えてきて、ストーリーが具体的になります。
あらすじが長くなってしまうのは、どのような道筋をたどって、クライマックスにたどり着くのか、作者の中で本当に書きたいものが固まっていないためです。
これを固めるためにも、あらすじを800文字以内にまとめるという制約が有効になります。
ラストから逆算して物語を作る
ラストから逆算して物語を作ると、伏線を張りやすくなり、物語が迷走するのを防ぐことができます。
ラストさえ固まっていれば、途中で、もっとおもしろくなるアイディアを閃いて、ストーリーを変更したくなっても大丈夫。感動的なラストを決めて、そこに到達できれば良いのです。
物語の最初と最後を決めて、その中間を埋めていくように、ストーリーを考案すると良いです。
また、ストーリーの流れが自然であるか? 強引ではないか? 何が理由となってその状況が引き起こされたのか? キャラクターの行動が不自然ではないか? 考えなら、ストーリーを書いてください。
ストーリー展開に説得力がないと、読者は冷めてしまいます。
時限爆弾テクニック。危機とタイムリミットを作る!
- あと10分以内に爆弾を解除しないと、爆発してみんな死ぬという状況。
(危機とタイムリミットの設定) - 主人公は、解除ボタンを持ったラスボスと必死のバトル。
- あるいは、10分以内に施設から逃げ出さなくてはならない。
というように、時限爆弾テクニックとは、迫りくる危機を設定し、主人公を追い詰めて行動の強い動機づけをするための手法です。
冒険やバトル、恋愛を盛り上げるために良く使われています。
例えば、累計260万部突破の大ヒット小説『君の膵臓をたべたい』(2015/6 刊行)では、ヒロインは主人公と出会った時、膵臓の病気のため余命1年となっていました。
ヒロインの病気のことを知る唯一のクラスメイトとなった主人公は、彼女の「死ぬ前にやりたいこと」に付き合うことになるという話です。
ヒロインが膵臓の病気で1年以内に死ぬという「危機」と「タイムリミット」の設定。
これによって彼女と過ごす何気ない日常が貴重なものとなり、輝くことになります。危機が迫ってくるからこそ、二人の仲の進展も早まると同時に盛り上がることになります。
累計発行部数2000万部以上の大ヒット作『ソードアート・オンライン』は、ゲームの世界で死ぬと、現実でも脳を焼かれて死ぬというデスゲームに囚われてしまった主人公が、現実に帰還するためにゲームクリアを目指す物語です。
この作品でも、主人公を追い詰めるために時限爆弾テクニックが使われています。
ゲーム世界で死ぬと現実でも死ぬなら、攻略に挑戦せず過ごすのが一番かしこいことになります。
それを主人公にさせないために、ヒロインのアスナが、ゲームを何年もクリアできないでいれば、お金が無い人から病院のベットの生命維持装置を外されてしまうので、やがてみんな死ぬことになる「ゲームクリアのタイムリミット」が存在することを話します。
恋人アスナと一緒に、ゲームの世界でずっと暮らしていきたいと考えていた主人公は、これで考え直し、ゲームクリアを再び固く誓います。
主人公に命がけの行動をさせるためには、命をかけるに足りる強い動機付けが必要です。
これがないと、ストーリーが強引で不自然なものになってしまうからです。
タイムリミットが来れば、恋人も含めみんな死んでしまうという危機的状況は、主人公を動かすための強い動機付けになります。
また、読者にも理解、共感してもらいやすいです。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』 (2015/8 刊行)。こちらはアニメ化された女性向けなろう系ラノベの大ヒット作です。
主人公は、乙女ゲーム世界の公爵令嬢に転生します。
彼女は王子から婚約を申し込まれますが、前世の知識から、未来では、王子に殺されるか、犯罪者として国外追放されるしかないことに気づきます。
婚約を破棄できない主人公は、破滅を回避するための対策を打たなければならなくなります。
この作品も何もしなければ、やがて婚約者に殺される。という「危機」と「タイムリミット」を設定しています。
危機が迫ってくるから、主人公は、考えうるあらゆる手段を講じなければならなくなり、それがうまくいくか、読者はワクワクしながら読むことができます。
文芸作品でも、名作と言われる乙一の短編小説「陽だまりの詩」(2002年発表)で、時限爆弾テクニックが使われています。
主人公はロボットの女性です。人類は謎の病原菌のまんえんで滅亡しており、だた一人生き残った男性に主人公は作られました。
主人公は男性から「自分も病原菌に感染していて、あと二ヶ月以内で死ぬので、自分を正しく埋葬して欲しい。そのためにキミには死を理解して欲しい」と言われます。
創造主の男性を看取るためにロボットの主人公は二ヶ月以内に「死」を理解しなくてはならない。という危機とタイムリミットが課されます。
これも『君の膵臓をたべたい』と同じで、男性が二ヶ月しか生きられないことから、男性と主人公(ヒロイン)が過ごす時間が貴重なものとなり、二人の仲が急速に進展して、クライマックスが盛り上がることになります。
これは恋愛物語の王道テンプレの1つと言えるでしょう。
「私は、あなたが好きです。それなのに、あなたの遺体を埋葬しなければならないのは、辛いです。こんなに胸が苦しくなるのなら、心なんて必要ないのに。私を作る段階で、心を組み込んだあなたを恨みます……」
引用:乙一の短編小説「陽だまりの詩」より
ロボットの女性が愛を理解し、このような感動的なセリフが出てくるのも、時限爆弾テクニックによって、彼女が追い詰められ、タイムリミットまでに答えを出さなければならないからです。
時限爆弾テクニックは、あらゆるジャンルの物語を盛り上げることに使えますので、ぜひ活用してください。
100年経っても変わらない読者を感動させる方法!
物語で読者の心を揺さぶるには、特定の感情を募らせておいてから、その対極となる感情をぶつけることです。
喜びのようなプラス方面でも怒りのようなマイナス方面でも良いので、特定の感情を抱くようなエピソードを提示し、そこから対局の感情に振れるようなエピソードを持ってくれると、プラスとマイナスの落差によって、心が大きく揺らぐのです。
ただ、うれしい、悲しいより、悲しかった後にうれしい、うれしかった後に悲しい方が、人間の心はより深くうれしさや悲しさを感じるようにできています。
死亡フラグ。感動の構造
- 「この戦争が終わったら彼女と結婚するんだ」と話す兵士は必ず死ぬ。
- 非道な悪役が正義や愛に目覚めると、悪の組織に裏切り者として殺される。
- 怪しい物音がしたので調べてみると、猫だった。「なんだ~」と、安心した直後に殺される。
以上のような物語に共通するパターンがあり、死亡フラグと呼ばれています。
この死亡フラグを分析すると、感情をプラスの極からマイナスの極へと、振っていることに気づくと思います。
1の場合は、「幸せな未来」を予感させておいて「破滅」へ。
2は「わかりあえること」を予感させておいて「破滅」へ。
3は「安心」から「破滅」へ。
このように、プラスの極に持ち上げておいてから、不幸のどん底に突き落とすと、悲劇性が増し、読者は心を激しく揺さぶられるのです。
『ソードアート・オンライン』感動の構造
累計発行部数2000万部以上の大ヒット作『ソードアート・オンライン』(2009/4 刊行)第1巻のクライマックスシーンでも、特定の感情を募らせておいてから、その対極となる感情をぶつけています。
以下は、ネタバレになりますので、ご注意ください。
この作品は、ゲームの世界で死ぬと、現実でも脳を焼かれて死ぬというデスゲームに囚われてしまった主人公たちが、現実に帰還するためにゲームクリアを目指す物語です。
ラスボスの茅場晶彦と主人公キリトの一騎打ちで、キリトは致命的なミスをして、殺されそうになります。
そこに動けないはずだったキリトの恋人アスナが飛び込んできて、彼をかばって身代わりに殺されます。
キリトは茅場晶彦に致命傷を負わされながらも彼を打ち倒し、相打ちの形でゲームをクリアします。
キリトは自分が死んだと思いましたが、生きて現実に帰還することができました。
そのことから、アスナも生還している可能性に気づき、彼女を求めて動き出すところで、1巻が終わります。
このクライマックスシーンも、読者に感動を与えるために、恋人アスナが死んだという絶望を主人公に味あわせておいてから、実はアスナは生きているかもしれないという希望を与えています。
実際にアスナが生きているかは、第2巻を読まないとわからないので、2巻を買いたくなってしまうという実に上手な引きで終わっています。
「ヒロインや仲間が死んだと思わせて、実は生きていた」という展開は、死亡フラグと同様、非常によく使われる感動エピソードです。
絶望を味わってから希望という真逆の感情をぶつけられることで、人は感動してしまうのです。
芥川龍之介の短編小説『蜜柑』。感動の構造
「特定の感情を募らせておいてから、その対極となる感情をぶつける手法」は、人間の不変の心理を利用したものなので、時代が経過しても通用するものです。
その証拠に100年前に書かれた、文豪、芥川龍之介の短編小説『蜜柑』(1919年刊行)でも、使われています。
『蜜柑』のあらすじを簡単に説明します。
- 主人公の二等兵が横須賀線の汽車に乗ると、薄汚い格好をした娘が入って来ます。主人公は、その子を見て、嫌だなと思いました。彼女は汽車がトンネルに入る前に窓を開けて、車内を煤煙だけらにしてしまい、主人公は内心、非常に怒ります。
- しかし、トンネルを抜けると、三人の幼い男の子たちが手を上げ、声を張り上げており、娘はその子たちに向かって、5つか6つくらいの蜜柑を投げます。
- それを見て主人公は、おそらくこれから奉公先に上がろうとする娘が、自分を見送りに来た弟たちの労をねぎらうために蜜柑を投げたのだと知って、朗らかな気分になれた、というものです。
娘に対する「嫌な気分」を募らせておいてから、それとは対局の好感を与える「姉弟愛」が伝わるシーンを持ってくることによって、感動を与えています。
物語は原則的に出来事の起きた順番通りに並べて作ってください
漫画やアニメ、映画などではよく回想シーンが入ります。
現在から過去へ戻り、現在のシーンの補足や説明をするという手法です。
実は、これには大きなデメリットがあります。
物語の流れが一続きではなくなり、内容を理解しにくくなってしまうことです。
小説は文章だけしか読者に物語を伝える手段がありません。
文章だけで、あなたの頭の中で考えたストーリーを他人に伝えるというのは、ものすごく難しいことなのです。
そのため、少しでも内容が読者に良く伝わるように、理解しやすい構成にすることが大切です。
例えば、『現在⇒10年前⇒現在⇒15年前⇒現在⇒5年前』のように、話の時系列がバラバラ過ぎると、一体今がいつなのか? 話が進行しているのか? 意味不明になりやすくなります。
物語は原則的に出来事の起きた順番通りに並べて作ってください。わかりやすい構成になります。
オリジナティとは、ありがちなネタを「他人とは角度を変えて描く」こと
いつも榊一郎氏を引き合いに出してしまうのですが、氏の『アウトブレイク・カンパニー』(講談社ラノベ文庫・2011年12月2日刊行)は、支倉凍砂氏の『狼と香辛料』が切り開いたファンタジー+商売という図式に「オタク」を混ぜ込み、しかも普通ならこちらの世界での商品として扱われるだろうファンタジー世界の住人を「客」とし、オタク文化を売り込むという角度の変えっぷりを実現しています。
ここで大事なのは、独自性とは「ただ斬新なもの」ではないということです。
「すでに存在する要素」に「今までなかった要素」を少し加え、読者に理解しやすい演出をしたものこそが独自性だと考えてください。
以上は、ライトノベル新人賞の下読みをされているジジさんの言葉です。
ただし、小説にオリジナティは必ずしも必要ではありません。
ラノベ読者は、今まで読んだ小説と同じような内容の小説を好むので、オリジナティより「テンプレ」の方が重要です。
新人賞に挑戦する際は、オリジナティが重要な評価基準になってきますが、Web小説においては、さほど重要視されない要素です。
自分が面白いと感じるなら臆面もなく、徹底的にやりきること
ラノベ作家、餅月望さんは、「小説家になるためには、どんな能力が一番必要だと思われますか?」という質問に対して、以下のように答えています。
≪面白さのためならば恥ずかしさを捨てることができる、ある種の鈍感さ≫が大事なんじゃないかと思います。
自分が面白いと感じるなら臆面もなく、徹底的にやりきることが個性や作風を作るのだと思います。
逆に言うと、羞恥心に妨げられて、いろいろな部分を抑えて勝てるほど、既存作、現役プロ作家の壁は低くはないと思います。
例えば「小学星のプリンセス」という小説を書いたとしてです。それを八十歳を過ぎた祖母に臆面もなく差し出したりとか。それを読んだ従妹に「ちょっぴり心配になった……」と言われてもなお、次の小説のヒロインを堂々とロリヒロインにできるような……。
それでもなおこれが面白いんだと胸を張れるような……そういう鈍感さがどうしても必要になってくるように思います。
設定はシンプルな方が良い!要点は「いかに人間ドラマを盛り上げられるか?」
アニメ化されたヒット作『六花の勇者』(2011/8 刊行)のストーリーを紹介します。
「魔神が復活するたびに6人の勇者が現れて、これを倒してきたが、今回、現れた勇者は7人だった!1人は魔神側が送り込んだ敵である。疑心暗鬼に陥った勇者たちはお互いに殺し合いをはじめる」という物語です。
根幹にある設定は、魔神を倒すために6人の勇者が集うというオーソドックスな英雄譚です。
誰が本当の敵であるのか知るために、勇者たちが智謀の限りをつくすミステリー要素が濃い作品ですが、根底にある設定がシンプルであるため、話がわかりやすくなっています。
累計発行部数780万部突破のヒット作『盾の勇者の成り上がり』(2013/11 刊行)では、異世界に4人の勇者が召喚されます。
主人公の岩谷尚文は、盾の勇者として呼ばれましたが、攻撃力を持たない最弱の勇者であったため軽んじられ、他の勇者に罠にはめられて財産を奪われたあげく、犯罪者にされてしまいます。
主人公は生き抜くため、パーティーの攻撃役として奴隷少女ラフタリアを買い、2人で旅を始めます。
この物語も、六花の勇者と同じく、根幹にある設定は非常にシンプルです。
「盾の勇者だから攻撃力を持たない。だから、あなどられる」
という理解しやすく、共感しやすい設定になっています。
両者に共通していのは、「設定はシンプルでかつ、人間ドラマを盛り上げられるような仕組み(対立や協力が起きやすい)」になっているところです。
六花の勇者では、人間と魔物のハーフの少女が勇者の一人として登場し、彼女が最初にニセ勇者だと疑われます。しかし、主人公が彼女をかばったことから、主人公が今度は偽物だと疑われるというように、根幹の設定が、対立と協力を生み出すために機能しています。
逆に初心者の小説は、オリジナリティを出そうとするために、人間ドラマに無関係な設定を盛り込みすぎる傾向があります。
設定を盛り込みすぎると、専門用語が増えて、それを説明しなくてはならなくなり、複雑で理解しがたい話になります。
こうなると読者に嫌がられます。
設定が複雑になるのは、例に上げた作品のようにシンプルな部分で勝負できないためです。
シリーズ累計発行部数130万部以上の人気作『薬屋のひとりごと』(2014/8 刊行)は、古代中国風の帝国の後宮を舞台にした小説です。
宮廷の女狩りにあって後宮に入ったヒロインが、薬の知識を使って難事件を解決していきます。
この物語がすごいのは、ラノベにも関わらず、魔法や魔物などの超常的な要素が一切入っていないことです。
薬や毒物の知識も、現代人なら苦もなくわかるようなアレルギー体質や燃やす物によって炎の色が変わるなど、ごくごく簡単なものです。
複雑な設定や難しい知識を使わなくても大ヒットは可能。むしろ、その方がストーリーが理解しやすくなって良いのです。
創作とは要素を盛っていくのではなく、不要な要素を削っていく作業です。
設定が複雑になりすぎたり、序盤からキャラが多く登場しすぎると、小説の内容が理解しにくくなります。
ヒットしている作品は、設定がシンプルでわかりやすいものが多いです。
累計発行部数1100万部突破の大ヒット作『フルメタル・パニック』の作者、賀東招二さんは書籍『物語工学論 入門篇』(2009/8 刊行)の新城カズマさんとの対談において以下のように述べています。
賀東招二「奇抜な方向で見せようとする人って、たいてい、筋の通っている骨組みのところで勝負できないからそういうことをやっちゃっているのかもしれません」
引用:書籍『物語工学論 入門篇 キャラクターをつくる』新城 カズマ/著
ストーリーとはキャラクターの行動そのものです。
奇抜なことをする必要はなく、基本となる設定を使って「いかにキャラクター同士の人間ドラマを盛り上げられるか?」が重要です。
設定はなるべくシンプルに。
かつ人間ドラマを盛り上げられるような(対立や協力が起きやすい)ものにできると最高です。
作者は設定が書きたい。
読者は設定は読みたくない。
というジレンマがあります。
設定はエピソードの進行に合わせて、必要最小限に説明するのがコツです。
なろう系ラノベの世界観作りと設定の解説のコツ
- 読者に馴染みが深い、ゲームっぽい世界観にする。
キャラのステータスが表示されるなど - 理解しやすいように設定はなるべくシンプルにする。ありきたりでOK!
読者は独自の世界観や設定にほとんど興味がない。 - 設定の説明は必要に応じて最小限にする
長々とした解説は読み飛ばされる
なろう系ラノベはゲーム的な設定の世界観が基本です。登場人物のスキルやステータスが表示されたり、レベルアップしたりします。
これはゲームで遊んでいる読者に馴染みが深いものなので、理解しやすく、説明も最小限ですみます。
読者は独自の世界観などにはあまり興味がないので、なろうやラノベを書く場合は、ゲーム的な世界観を基本にしましょう。
世界観や設定は、ありきたりでOKです。
読者が最も興味があるのは、主人公がいかに活躍するかです。
主人公とは読者の分身です。読者は主人公になりきって物語を楽しみます。
これに関係ない設定に凝るのは逆効果です。
小説の完成度を高めるのに必要なのは、不必要な情報を削ることです。
設定はなるべくシンプルにわかりやすくしましょう。
また、説明は必要に応じてエピソードに絡めながら最小限にしていくのがコツです。
例えば、長らく大手小説投稿サイト『小説家になろう』で総合1位を取っていた『無職転生』では、師匠から魔法を教えてもらう修行を通して、魔法の設定を解説しています。
このようにエピソードに関係ある設定を小出しにしていくのがコツです。
現在のエピソードに無関係な設定を、教科書の歴史年表のように出すと、読者に即、さようならをされてしまうので気をつけましょう。
読者は受験勉強のように、自分に興味のない知識を覚えるのを嫌います。
また、Web小説はスマホで流し読みするのが基本です。無料で読めるモノは真剣に読まれません。
スマホを使えば、小説以外にもSNSや動画、ゲームなど、おもしろいコンテンツがすぐに楽しめるので、読者は極めて集中力が低下した状態であなたの小説を読んでいます。
当然、長々とした解説は、読み飛ばされてしまいます。
真剣に読まないため、読者は3話くらい前までのことしか覚えていません。
このため、設定の説明は必要に応じて最小限に行うのがコツです。
ラブコメの作り方。主人公にとっては迷惑だが読者にとってはおいしいシチュエーション
例えば、「3人の妹から結婚して欲しい」と迫られるなど。
主人公にとっては困った状況ですが、読者にとってはおいしいシチュエーションです。以下の妹ラブコメ小説が、まさにこのシチュエーションを使っています。妹ラブコメ小説の王道は、このパターンです。
それ以外にも『突然ですが、お兄ちゃんと結婚しますっ! そうか、布団なら敷いてあるぞ。 』( 2017/3/25 刊行)では、主人公の実の妹がお兄ちゃんと結婚したいと言い出して、お金の力で法律を変えてまでこれを実現しようとします。
ラノベのヒロインはキチ●イと言われるゆえんです。
これも主人公にとっては困った話ですが、読者にとっては美少女から熱烈にアプローチされるので、嬉しい状況となります。
累計発行部数が1200万部を突破した大ヒットラブコメ漫画『ニセコイ』(2011年連載開始)も、同じ手法を使っています。
主人公はヤクザの親分の息子、ヒロインの美少女はマフィアのボスの娘で、お互いの組織は敵対しており、抗争を収めるために、好きでもないのに恋人同士を演じることになります。
主人公にとっては迷惑ですが、美少女と付き合えるのは読者にとってはおいしいシチュエーションです。
男性向けのラブコメだけでなく、女性向けのラブコメでも同じ手法が使われています。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』 (2015/8 刊行)。こちらはアニメ化された女性向けなろう系ラノベの大ヒット作です。
主人公は、ゲーム大好きなオタク女子高生でしたが、事故にあって死亡し、異世界の公爵令嬢に転生します。
彼女は王子様に王宮の庭園を案内されている最中に、岩に頭をぶつけて前世の記憶を思い出し、ここが自分が死ぬ前にプレイしていた乙女ゲームの世界であることに気づきます。
公爵令嬢の額に傷を作ってしまったイケメン王子は、責任を感じて主人公と婚約したいと申し出ます。
しかし、主人公は王子と婚約すると、未来では、王子に殺されるか、犯罪者として国外追放されるしかないことを思い出します。婚約を破棄できない彼女は、これを回避するために行動していくという話です。
これも主人公にとっては迷惑ですが、読者にとってはおいしいシチュエーションです。
女性向けラノベでウケる要素は昔から「姫、嫁、巫女」と言われており、お姫様になって、イケメンの王子や皇帝に嫁がされるというのは王道のパターンです。
女性読者は、お姫様になってイケメンの王子様から結婚して欲しいと言われたいのです。
しかし、王子と婚約すれば破滅の未来が待っているので、主人公にとっては危機的な状況です。
まさに、主人公にとっては迷惑ですが、読者にとってはおいしいシチュエーションを作り出しています。
これがラブコメの王道です。
エンタメの本質は読者を楽しませること。あなたの好きなことにテンプレを被せる!
「あなたの好きなことを書いたほうが良い」と勧めるプロ作家さんは多いです。
これには以下のような注意点があります。
✕「好きなことを書いて自分が楽しむ」
実は売れている作家さんは、人格者で礼儀正しく「コミュ力が高い」人が多いです。
コミュ力の本質とは
「どうしたらこの人は喜んでくれるのか?」
と考えて実行するサービス精神です。
小説とは読者とのコミュニケーションでもあるのです。
最も嫌われるコミュニケーションは、自分が楽しみたいだけの自慢話や愚痴です。
大手小説投稿サイト「小説家になろう」では、作者が自分語りをはじめると、読者が逃げていくといいます。
これは「好きなことを書いて自分が楽しむ」からで、ストーリーが、あなたの上司の自慢話や愚痴と同じものになっているからです。
作者の悩みを理解してあげたいなどと考える読者はいません。
創作の本質とは、実は『アラビアンナイト』から変わっていないと思います。
『アラビアンナイト』は、もし話がつまらなかったら殺されるという条件の中、主人公の王妃シェヘラザードが、毎晩、王におもしろい物語を語るという話です。
王は話を聞きたくて彼女を生かし続けるうちに子供が3人生まれ、仲の良い夫婦となります。
物語は他者を楽しまるもので、これが作者の利益となるのです。
読者(王)は自分の興味のある話しか聞きたくないので、作者(シェヘラザード)はホステス役に徹し、読者が喜ぶ話をしてあげる必要があります。
しかし、それだと作者のやる気が続かず、話に熱もこもらないので、
読者が読みたい話と、あなたが興味がある話が重なる部分を探す必要があります。
これが
「あなたが好きなことを書いたほうが良い」ということです。
例えば、シリーズ累計発行部数は1100万部の大ヒットラノベ『フルメタル・パニック』(1998年刊行)は、企画が通らず3年も日の目を見なかったそうです。
それもそのはず、作者の賀東招二さんは、当初、20代のエリート傭兵が主人公で、ヒロインは高校教師、外人ばかり出てくるミリタリー物でロボットが登場するという、中高生向けのラノベでは、絶対にウケないような内容の小説を構想していたからです。
軍オタが、自分の好きなことをしゃべっても中高生読者は見向きもしてくれないのは、編集者にはわかりきっていたのです。
そこで、主人公はエリート傭兵でありながら高校生で、女子高生のヒロインを救い出すというボーイミーツガールの物語にしたところ、企画が通って大ヒットしました。
中高生読者にウケるために、主人公とヒロインを高校生に変えて、当時の流行だった学園物にしたわけです。
このように、読者が読みたい話とあなたが好きな話をすり合わせる、現在の流行やテンプレをあなたの書きたい話に被せるのは、絶対に必要なことなのです。
こういうと作者は読者の奴隷ではない!と怒る人もいるのですが、もし多くの読者を楽しませることができたら、ばくだいな名声とお金が手に入るので、リターンは十分以上にあります。
いつの時代も他人の欲求をより多く満たした人が「豊か=お金持ち」になっています。
「あなたが相手を喜ばせたら、お金を払ってもらえる」
経済活動は1つの例外もなくこの法則で動いています。
また、いくら好きなことを書いていても読者に支持してもらえないと、モチベーションがダウンするので、
「あなたが好きなことを書いて読者を楽しませる」のが正解です。
エンターテイメントの本質は読者を楽しませることです!
テンプレとは先人たちが築き上げた「おもしろさの最適解」
テンプレとは、先人たちが長い年月をかけて試行錯誤して築き上げた、「物語をおもしろくするための最適解」です。
小説を書くのは将棋に似ています。
将棋というゲームには、定石と呼ばれる「この状況ではこうしたら100%勝てる!」最適戦法があって、これをいかにたくさん知っているかが勝敗を分けます。
小説の場合も「この状況ではこうしたらおもしろくなる!」最適の答えがあって、これをたくさん知るために漫画や小説を読みます。
テンプレとは、つまらなく平凡な物語の雛形ではなく、「物語をおもしろくするための最適解」なのです。
私が代表を務めている小説オンラインサロン「エンタメノベルラボ」のオーナーの一人、編集者YさんはDMMの取材にたいして、以下のように答えています。
ー出版業界でプロとして活躍されている方が勉強会に参加し、実際に意見をもらえるとは驚きました。
私は出版社においてラノベや漫画雑誌等の編集を横断的に担当しています。長らくヒット作品を追いかけてきたので、数10通りの「売れるエンタメ作品のパターン」を知っているつもりです。
いわば将棋の定石みたいなものですね。今回のような勉強会やガチ批評会では、その方法論を作家さんのテイストに合わせて伝えています。
売れるエンタメ作品にはパターンがあり、それを作家の個性や状況に合わせて使い分けることで、優れた作品が生まれるのです。
特にラノベ読者は、今までに読んだ作品と同じような作品を求めるので、テンプレが非常に重要になってきます。
例えるなら、大手小説投稿サイト「小説家になろう」とは「サイゼリヤ」であり、なろう系ラノベとは「ミラノ風ドリア」です。
現代人は、よく知った定番の料理を好みます。
なぜなら、定番の料理、「ミラノ風ドリア」やマクドナルドの「ハンバーガー」は、長い年月をかけて日本人の口に合うように最適化された料理だからです。
逆に日常的に食べていない物、魚料理などはそもそも食べたいと思いません。
よくわからない物に手を出すのは、コスパが悪いからです。
これはラノベであってもまったく同じです。
このため、小説投稿サイトに小説をアップする場合、読者に「この作品はあなたの好物ですよ」と伝えるため、タイトルやタグに人気のキーワード『最強』『転生』『チート』を入れるなどする工夫が必要になります。
よくわからない物、読んだことがないジャンルに、そもそも読者は手を伸ばさないのです。
また、「小説家になろう」出身の大人気作家さんにお会いして、人気を出すための秘訣を聞いたことがあります。その方は、
オリジナリティは必要ない。100番煎じでOK!
と言い切っていました。
それほどまでにテンプレとは重要なものなのです。
オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンス
実は、オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンスから生まれます。
累計260万部突破の大ヒット小説『君の膵臓をたべたい』(2015/6 刊行)を例にあげて解説します。
あらすじは、ヒロインが膵臓の病気で死ぬことが冒頭で示されます。
主人公は、ヒロインが秘密にしていた膵臓の病気のことを知ってしまい、そのことで、ヒロインの遊びに強引に付き合わされるという内容です。
友達がおらず他人にも興味がないダメな受け身主人公が、人気者の女子に強引に誘われて遊ぶというのは、涼宮ハルヒ的な学園物ラノベのテンプレート。
最初から、ヒロインが主人公が大好きで、彼を褒めて全肯定するのは、なろう系ラノベヒロインのテンプレートです。
ダメな男が主人公というのは一般文芸の伝統で、森鴎外の舞姫の主人公は、ヒロインを妊娠させておきながら、出世のために彼女を捨てます。
このような一般文芸ダメ主人公テンプレートと、ラノベの受け身主人公テンプレートを組み合わせ、文芸っぽく見せています。
また、難病になったヒロインと恋愛するというのは2000年代に流行したケータイ小説のテンプレートです。
ケータイ小説テンプレ+学園物ラノベテンプレ+一般文芸+なろう系承認=「君の膵臓をたべたい」
オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンスなのです。
小説のおもしろさとは「いかに読者の欲求を満たせるか?」
人が小説を読むのは、希少資源である「時間」を引き換えにするだけの価値があるからです。
小説の価値とは「現実で体験できないことを、物語で体験して快感を得る」こと。要するに、読者が潜在的に持っている欲を満たせるかどうかです。
例えば、大ヒットラノベ「転生したらスライムだった件」 (2014/5 刊行)は、「強い支配者となって自分を尊敬してくれる配下や仲間から、すごい!すごい!と褒められる」ことを通して、読者の承認欲求を満たすという価値を提供しています。
その証拠に、この小説では、主人公のリーダーとしての苦悩は、まったく描かれていません。
それは支配者となって尊敬される快感を壊しかねない、真逆の要素だからです。
物語とはラノベに限らず、古来から「現実で体験できないことを、物語で体験して快感を得る」こと。人の欲求を擬似的に満たすこと目的にしてきました。
例えばギリシャ神話の『オルフェウスの冥界下り』は、死んだ妻を生き返らせるために主人公が冥界の神ハーディスに会いに行く物語です。
愛する者を取り戻したいと願うのは、愛というオブラートに包んでいますが、欲望に他なりません。
人間が持つ普遍的な欲求を叶える物語だったからこそ、世界中で人気になり、現代まで残っています。
『オルフェウスの冥界下り』は妻を生き返らせるために最終的には失敗してしまうため、「死んだ者は生き返らない」「愛する者の死を乗り越えなければならない」という教訓を伝える物語でもあります。
現代のエンターテイメントは、このような物語の教訓的側面を取り除き、読者の欲求を叶えることに特化してきています。(なろう系ラノベは特に)
読者の持つ欲求、承認欲求を満たしたい、素敵な恋人が欲しい、ドキドキ・ハラハラしたい、などをいかに満たせるかが小説の価値を決めます。
補足。真におもしろい物語とは『読者の欲求を満たせそうで満たせないもの』
真におもしろい物語とは『読者の欲求を満たせそうで満たせないもの』という説があります。
例に上げたギリシャ神話の『オルフェウスの冥界下り』では、主人公があと一歩のところで、死んだ妻を生き返らせることに失敗してしまいます。もし、妻が生き返って、主人公と幸せに暮らしたら、考えさせる余地や余韻が残らないので、名作として現代まで残らなかったでしょう。
また、男性向けのラブコメでは、主人公とヒロインがくっつきそうで、くっつかないを繰り返します。
もし、恋が実ってしまったら、恋愛物語はそこで終了だからです。
『転生したらスライムだった件』 (2014/5 刊行)のような承認欲求を満たす系の物語の場合、承認欲求とは、そもそも満たせそうで満たせないものです。
承認欲求とは「あなたはスゴイ!」と他者から賞賛されるから満たされるのではなく「自分は他人に貢献していなくても価値ある存在なんだ!」と思えて、はじめて満たされる性質のものです。
小説で承認欲求を満たそうとしても海水を飲んでるのと同じで、すぐに乾きがやってきて、依存状態になってしまう構造になっています。
なろう系ラノベも承認欲求を満たせそうで満たせないから、人気があるのです。
ジャンルを問わず読者にウケる手法。主人公を褒める!
なろう系ラノベの特徴の1つは、仲間や配下が、主人公のことをすごい!すごい!と、ことあるごとに褒めてくれることです。
読者は主人公になりきって物語を楽しみます。「主人公=読者」であるため、主人公を賞賛すれば、読者は心地よい気分になれます。
現代人が小説に求めるおもしろさの1つに、この「賞賛してもらえる心地よさ」があります。自分は価値ある存在なのだと認識する承認欲求の充足こそ、老若男女問わず、現代人が最も求めているものだからです。
これは時代小説でも同じです。
時代小説は高齢者向けの小説ですが、ライトノベルとの共通点が多く、おじいちゃんラノベと言われることもあります。
「江戸の雷神」(2018/11 刊行)という時代小説を例にあげてみます。
主人公は剣の達人で、火盗改の頭です。今で言う警察署長ですね。
町民や配下から慕われており「江戸の雷神」と呼ばれています。
必殺技は「秘剣。土竜(もぐら)」。
主人公は自分の命を狙う強敵から、
「うぬは強いな」
「歴代の火盗改の頭で最も強いのではないか」
「こんなときでなければ、俺はうぬに惚れたかもしれぬ」
などと、べた褒めされます。
現実では、死闘の最中、またはこれから剣を交える前に敵からこんなことを言われることは、まずあり得ないと思いますが、このように褒められるということは、それが読者の求めているものだからです。
また、主人公は配下や目下の者からは尊敬され、ことあるごとに褒められます。以下のセリフは、p213からの引用です。
「それがしは火盗改のお頭を務められたお方を何人も存じておりますが、これまで伊香さまのようなお方は一人もおられませんでした。このようなときは、では俺たちが賊を捕らえてやろうと、前に出られるお方ばかりでしたので……」
つまり、おじいちゃんも褒められたいのです。
次に累計260万部突破の大ヒット小説『君の膵臓をたべたい』(2015/6 刊行)を例にあげます。
これはキャラ文芸、あるいは文芸に分類される恋愛小説です。
あらすじは、ヒロインが膵臓の病気で死ぬことが冒頭で示されます。
主人公は、ヒロインが秘密にしていた膵臓の病気のことを知ってしまい、そのことで、クラスの人気者であるヒロインの遊びに強引に付き合わされるという内容です。
「君の膵臓をたべたい」とは、ヒロインなりの主人公への遠回しな愛の告白です。
最初は、このように回りくどい好意の示し方をしていましたが、どんどんヒロインの主人公好き好き大好きアピールが加速し、露骨になっていきます!
「そうだよ。その子はね、どうやら一般的に見て外見も可愛かったみたいで、クラスにいた明るくてかっこいい人気者な男の子が持って行っちゃった」
「へえ、人を見る目がないね」
「どういう意味?」
引用:『君の膵臓をたべたい』p68
これは主人公が、ヒロインから「好きな子はいたの?」と質問された際のやりとりです。
主人公の失恋に対して、ヒロインは「相手の子は人を見る目がない」と、あからさまに主人公に好意を伝え、褒めています。
(好意を伝えられるのは最高の賞賛)
それに対して、主人公はヒロインの好意に気づかないような、とぼけた返答をします。
こういったやりとりが繰り返されます。
ダメな受け身主人公が人気者の美少女に強引に誘われて遊ぶというのは、涼宮ハルヒ的な学園物ラノベのテンプレート。
最初から、ヒロインが理由もなく主人公が大好きで、彼を全肯定するのは、ラノベヒロインのテンプレートです。
どちらもラノベが読者の承認欲求を満たすために作り出したテンプレであり、これを文芸に持ち込んでいます。
文芸読者も、人気者の美少女のような価値ある存在から「褒められて承認されたい!」という願望を持っているということです。
ラノベ、キャラ文芸、時代小説、ジャンルを問わず、主人公を他の登場人物が褒めて肯定するのは、人気を出すための有効な方法と言えるでしょう。
恥ずかしがらずに思いっきり主人公を褒めましょう!
なろう、ラノベでウケない5つのジャンル
本格ミステリー以外の4つは、ヒットした作品もありますが、ラノベとは相性が悪いジャンルです。
ラノベは、何でも有りだと思われてきましたが、実は制約が大きいジャンルです。
読者にウケるゾーンは狭く、その中で戦わなくてはなりません。
【SF×ファンタジー】も、3000万部以上売り上げた「とあるシリーズ」という超ヒット作があるため、ウケると誤解されますが、実際は話が複雑になるというデメリットが大きく、とある以降はヒット作が出ていない避けるべきジャンルです。
「とある」もベースは、【SF×学園物】です。超科学と魔法を融合させた世界観ではありません。
また、ラノベ主人公とは【陰キャラでリア充】なのが本質であり、共感ポイントです。
なろう系ラノベの主人公には魔法使いが多いですが、剣士はほとんどいません。
これは肉体を鍛えて最強になるという体育会系的価値観をラノベ読者が嫌っているためです。
不良が主人公になることも、野球少年が主人公になることもまずないです。
逆に、ゲーム大好き、オタク、無職、魔王、などといったキャラが主人公として好まれます。
スポーツ物がウケないのもここに理由があります。
スポーツマンは基本的に「陽キャラで体育会系」だからです。
なろう(Web小説)の1話は2~3千文字くらいが適正
「小説家になろう」に投稿する小説の1話の文字数は、2000~3000文字くらいが適正だと言われています。
日本人が1分間に読める文字数の平均は400~600字。
つまり、だいたい5分程度で読める程度の文量です。
なろうの読者は、お昼休みや通勤時間にスマホから、小説を読んでいます。
その目的は、いわゆるちょっとした「暇つぶし」であり、仕事で疲れた状態でもサクッと読める程度の文量が良いのです。
特に電車内で読む場合は、2駅程度の移動距離で、1話読めるくらいの文量が、望ましいと言えます。
主人公が負けて終わるとブックマークが外される!
ただし、主人公が不利な状況に追い込まれる、敵にやられるなどして一話が終わると、読者の心理状態がマイナスになるので、ブックマークが外されてしまう傾向があります。
読者は主人公になりきって物語を楽しむので「なんだよ、これ……」という気持ちになります。
ストーリー展開上、主人公が不利になる回があったら、3000文字を超える文量にしてもOKなので、主人公が勝って終わるようにした方が良いです。
読者の心理状態がプラスになって終わるので、次回も読んでみようという気持ちになります。
この点において、Web小説は、週刊連載漫画と非常によく似ています。
少年ジャンプの人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」作者、荒木飛呂彦さんによると漫画はどの回も勝って終わるプラスで締めくくるのがベストだそうです。
主人公がやられて終わると、読者の人気が出ないそうです。
次も読んでみたいと思わせるためには、読者の心理状態をプラスにする。主人公(読者の分身)が勝利して、気分爽快になってもらう必要があります。
- Web小説の1話の文量は2000~3000文字くらいが適正。
- 一話の終わりは主人公(読者の分身)が勝利する、褒められる、優勢になるなど、読者の心理状態をプラスにして締めくくる。主人公が負けて終わるとブックマークが外される!
小説の書き方。初心者が陥りがちなミス7つ
以下は、私が小説勉強会など、アマチュア作家さんの小説を批評させていただく機会を通して気づいた、よく陥りがちな7つのミスです。
キャラの行動が不自然。ストーリーが強引になってしまう
例えば、いじめられっ子の主人公が、出会ったばかりのヒロインに対して、強気の態度を取るなど。
この性格で、このような行動は取らないだろう、ということをストーリーの都合上、やらせてしまうことが非常に良くあります。
キャラクターとは、首尾一貫した行動原理を持つものです。
設定の説明をしない
雰囲気で小説を読んでもらいたいと思って、設定(専門用語)の説明をしないままストーリーを進めてしまう人がいます。
わからない設定が増えてくると理解不能になります。
設定が多くて複雑
創作とは要素を盛っていくのではなく、不要な要素を削っていく作業です。
設定が複雑になりすぎたり、序盤からキャラが多く登場しすぎると、小説の内容が理解しにくくなります。
(設定を理解するだけで一苦労)
ヒットしている作品は、設定がシンプルでわかりやすいものが多いです。
例えば、大ヒット漫画『デスノート』は、「デスノートに名前を書かれた人間は死ぬ」という非常にシンプルな設定を元に、物語が展開します。
ストーリーが進むにつれて「死の間際の人間の行動を操れる」など、新しい設定が開示されていきますが、最初のシンプルな設定を応用、深めていく形なので、理解しやすくなっています。
ストーリーに関係してこない無意味なキャラ設定
初心者の小説で多い失敗が、例えば主人公の趣味が絵を描くことで、絵を描いているシーンから始まったのに、絵がまったくストーリーに関係してこないといったことです。
この場合は、主人公が絵を描いているシーン、絵を描くことが好きだという情報は、まったく無意味となってしまいます。
ざっくり削ってしまった方が良いです。
最初に絵を描いているシーンから始まったら、読者はきっとこれが後の伏線になっているだろうと、期待して読みます。
なのに、ぜんぜん関係してこなかったら、がっくりしてしまいます。
2019年段階のMF文庫Jライトノベル新人賞の評価シート項目の1つに
「題材、キャラクター、設定が物語に活かされているか」
というのがあります。
キャラクターや設定は、ストーリーを盛り上げるために活用されていなければならないのです。
需要のない小説を書いてしまう(安易なテンプレの否定)
例えば、異世界に転生した主人公が、貧しい農村に生まれて苦労するなど。
今までにないリアルな異世界転生を書きたいと思って、読者にとって需要のない物語にしてしまうことがよくあります。
異世界転生のおもしろさの本質は、「オレつえええ! 世界よえええ!」生まれ変わって異世界でヒーローとしてもてはやされることです。
転生して苦労する話は、ストレスしか感じないので需要がありません。
ラノベなのか文芸なのかわからない(ターゲットがあいまい)
キャラクターはラノベなのに、ストーリーは文芸というチグハグな小説を書いてしまう場合があります。
例えば、ヒロインの妹が主人公の兄を否定するような辛辣な言葉を浴びせる。
ヒロインが主人公以外の男を好きになるなど。
こんなリアリティあふれる展開は、ラノベではノーサンキューです。
現実で間に合っています
ラノベは読者の承認欲求を満たすのが目的のジャンルなので、ヒロインは主人公のホステス役であるのが基本です。
ヒロインは主人公が大好きで、その気持は永遠に変わらない! というテンプレを守るようにしましょう! テンプレから外れると、ラノベ読者から嫌がられます。
主人公が誰であるかわからない
例えば、プロローグと一章と二章で、視点人物を変えていたりすると、誰が主人公であるのかわからなくなります。
(大ヒット作品ではまず行われていないのですが、初心者の作品にはよく見られる構成です)
小説の読者は主人公になりきって物語を楽しみます。
主人公がすぐに登場しなかったり、序盤に章ごとに視点人物を変えていたりすると、誰になりきって物語を楽しんでよいかわからず、即さようならをされる原因になります。
- 主人公はなるべく早く登場させる
- 序盤は視点人物を固定する
の2つを守っておけばOKです。
小説の書き方講座。キャラクターの作り方
魅力的なキャラとは極端な個性を持っていて共感ができる存在
キャラクターは現実にはいないような、ぶっ飛んだ極端な個性を持った者だと良いです。
ふつうの人が出てきて、意外性の欠片もない、当たり前の行動をしたのではおもしろくないからです。
ライトノベルでは、全世界2000万部を突破した大ヒット作『涼宮ハルヒの憂鬱』(2003年6月刊行)のこの
「ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
ヒロイン・ハルヒによる高校入学直後の有名すぎる宣言が良い例です。
入学直後というのはクラス内の見えない力関係、スクールカーストの構成時期なので、ふつの人は空気を読んで、慎重に行動します。
それが今後の高校生活を快適に過ごせるか否かに、重大な影響を及ぼすからです。
なのに、ハルヒはそんな常識を覆して、こんなキ●ガイ発言をしてしまったのです。
さらに、この発言には、常識の元に抑圧されている私たちの願望が反映されています。ふつうの人なら馬鹿にされるのが怖くて言えないこと、やりたくてもできないことを平然とやってしまうハルヒに、読み手は拍手喝さいしてしまうのです。
極端な個性を持っており、かつ共感ができる存在だと、キャラクターは人気になります。
キャラクターはギャップで魅せる。○○なのに□□なキャラ
例えば、500万部万部以上を売り上げた人気作『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2008/8/ 刊行)のヒロイン、高坂桐乃は、美少女なのに妹物のエロゲーが大好きです。
この物語は、同じ家に住んでいるのにまともに会話をしない、といった現実的な兄妹関係を描いており、魔法などのファンタジー要素が一切ない、現実志向のラノベです。
ただ、一点、妹が「重度の妹萌えオタク」であることを除いては……
桐乃は、学校の人気者で、モデルもこなす美少女なのに、その圧倒的なオタク知識で、兄である主人公をドン引きさせます。
このあり得ないギャップが、彼女の魅力になっています。
同じ作者、伏見つかささんの大ヒット作『エロマンガ先生』(2013/12 刊行)のヒロイン紗霧は、12歳の美少女なのにエロい美少女イラストを描くのが得意な凄腕絵師で、エロマンガ先生と呼ばれています。
こちらも美少女なのに、エロい美少女イラストを描くのが好きな凄腕絵師というギャップがキャラの魅力になっています。
ラノベ編集者の伊藤さんによると、ヒットするキャラクター作りのコツとして、「○○なのに、□□なキャラ」というのがあるそうです。
簡単に言うと、相反する2つの属性を併せ持っている、ということです。
通常では有り得ないギャップが生まれるので、キャラの個性と印象が強くなります。また相反する属性が、トラブルを呼びこむ原因になるので、ストーリーを転がしやすくもなります。
例えば、累計発行部数920万部以上のヒット作『魔法科高校の劣等生』(2011年7月刊行)の主人公、司波達也は、劣等生クラスに所属しているのに実は異端の天才児です。
このようなキャラは、優等生や既存の権威者からは疎ましがられるし、否が応でも周りの注目を集めるので、トラブルを起こしやすくなります。
ストーリーとは要するに問題解決の過程なので、こういった騒動の中心にいつもいる人物こそ、主人公やヒロインに相応しいのです。
悪の属性にある人間が善を行う。あるいはその逆
時代小説には「江戸の街を騒がす大盗賊が寺の住職で、親を失った子供たちを養うために盗みを働いている」といったキャラクターが出てきます。
盗賊という悪い属性の人間が、良いことを行っています。
逆のパターンとして、漫画などでは「警察の幹部がその立場を利用し、犯罪組織やマフィアと手を組んで、悪いことをしてお金を儲けている」といったキャラクターが出てきます。
警察という善の属性の人間が、悪いことを行っています。
このように、
悪の属性にある人間が、善を行う。
善の属性にある人間が、悪を行う。
と、ギャップにより、そのキャラクターの人間性が際立ちます。
前者は、時代小説では義賊として主人公の仲間になって活躍したりします。
属性は悪なのに中身は善だと、善の部分が際立つわけです。
後者は、ラスボス級の悪として、主人公の前にたちはだかります。
属性は善なのに中身は悪だと、悪の部分が際立つわけです。
主人公は読者に共感してもらいやすい存在でなければならない
小説、特にラノベ読者は、主人公になりきって物語を楽しみます。
「主人公=自分」なのです。
主人公が自分に近しい属性を備えた人物であると、主人公に自分を重ねやすくなり、物語に入っていきやすくなります。
例えば、大ヒット作『ソードアート・オンライン』(2009/4 刊行)の主人公であるキリトは、ネットゲームとパソコン操作技術に長けた少年です。
ラノベはオタク男性が読むものなので、ゲームが大好きな主人公というのは読者に受け入れてもらいやすくなります。
『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』( 2014/3/ 刊行)は、デスマーチ真っ只中のプログラマーの主人公が異世界に放り出され、最強レベルの力を手に入れるというものです。
こちらはブラック企業に勤めている20、30代の男性に共感を集めて人気になったと言えます。
小説の主人公はターゲットととなる読者に近くて、共感してもらいやすいキャラにする必要があります。
ラノベ主人公とは「陰キャラのままリア充になった人間」です。
精神は、いくらモテて勝利を積み重ねても陰キャラです。
漫画主人公は、陽キャラのリア充です。
既存のキャラをモチーフにオリジナルキャラを作る方法
キャラクターを作る際は、既存のキャラをモチーフにするのが良いです。
生い立ちの設定を変えたり、新しい要素(妹、魔王、奴隷)などを追加したり削除したり、物語に合わせて性格や口調を変えれば、まったく別のキャラになります。
0から新しいキャラを考えるのは、まず不可能ですし、そのようなやり方は、魅力的でないキャラを生み出してしまう危険性が高いです。
漫画家の久世みずきさんは、その著書『人気漫画家が教える!まんがのかき方 2 背景・キャラクター応用編』(2016/11 刊行)で、オリジナリティのあるキャラの作り方を解説しています。
それは既存のキャラに自分の考えた新しい要素を足したり、2つのキャラを混ぜてまったく違うキャラを作ることです。
これは小説でもまったく同じです。
ラノベ作家、小鈴危一さんは「キャラクターをどのように考案、作成されていますか?」という質問に対して、以下のように答えています。
それでも、設定を付け足していくうちにある程度は独自性が出てくれます。
私が複数のプロ作家さんに教えてもらったオリジナルキャラを作るコツは、そのキャラの生い立ち、人生を想像することです。
キャラは物語の中で生きていて、18歳で登場させたとしても、それまでに歩んできた人生があります。
「なぜこのキャラはこういう性格なのか?」生い立ちを想像して決めると、キャラクターに独自の個性が出てきます。
主人公に必要な4つの要素
- 読者が共感できる点がある。弱点、欠点がある。
- 基本は善人。悪をなしても良いが、根っからの悪人であってはならない。人は悪には共感できない。応援もできない。
- 有能でなくてはならない。無能はダメ。
- 終始一貫している。ブレない。
1500万部を超えるベストセラー小説『銀河英雄伝説』(1982年刊行)の主人公、ヤン・ウェンリーは「不敗の魔術師」と呼ばれるほどの軍略家ですが、チェスが苦手、メカに弱い、物覚えが悪いという欠点があります。
以下はヤンの名台詞です。
「私はものおぼえが悪いし、メカにも弱いし、有能な副官が必要なんだ」
このような欠点があると、完璧超人ではなく、自分と同じ人間なんだと読者に共感してもらいやすくなります。
現実の人間ですが、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツはマクドナルドのハンバーガーが大好きで、わざわざ列に並んで買います。
世界一の大金持ちが、自分たちと同じハンバーガーを食べているということで、日本人に大いに人気があります。
自分たちと同じ要素があると、人は共感を覚えます。
『すごい人なのに自分たちと同じ』これが共感ポイントです。
男性向けラノベで女性主人公を書くのは難易度が高い!
男性向けラノベで女性主人公を書くのは、難易度が高いです。
以下の2つの問題をクリアする必要があります。
- 男性は女性の内面を描くのが難しい(作者の問題)
- 男性読者は女性に共感しにくい(読者の問題)
小説の読者は主人公になりきって、物語を楽しみます。
主人公になりきってもらうためには、この主人公の気持ちがわかる! この主人公は俺と同じだ! と、主人公に共感してもらうことが何より重要となります。
女性主人公の場合、男性読者に、この主人公は自分と同じ人間だ! 自分自身だ! と感じてもらうことが、非常に難しいのが最大の問題です。
男性向けラノベで女性主人公を書くために必要な3つ工夫
男性は女性読者には共感しにくい! この問題をいかにクリアして、主人公を好きになってもらうか? ページを読み進めてもらうかが、女性主人公を選択した場合に問われます。
- 女性主人公といっても、力で問題を直接的に解決するなど思考は男性的にする。
女性向けラノベの女性主人公は、力ではなく、知恵で間接的に問題を解決します。 - 恋愛要素は省く。男と恋愛しても、男性読者はおもしろくありません。百合(女性同士の同性愛的要素)を推奨。
- 女性ですが魔法や武力に優れるなど、男性が憧れる、好きになってもらえるタイプにする。男性は最強主人公が大好きです。
3回もアニメ化されたラノベの古典的名作「スレイヤーズ」(1990/1 刊行 全シリーズ累計2000万部以上)では、主人公のリナは女性ですが、頭の中身は完全に男性です。作中で最強の魔法使いであり、ふりかかる問題を力で解決します。
恋愛要素もなく、男性が感情移入しやすいように工夫されています。
ただ、生理が来ると魔力が衰えるなど、女性的な要素も入れています。
思考は男性的といっても、このような女性らしい要素も入れなくてはならず、この微妙なさじ加減が難しいのが女性主人公の特徴です。
女性主人公だと思わせずにページを読み進めてもらう
GAで大賞を取った「処刑少女の生きる道」(2019/7/12 刊行)では、冒頭で主人公っぽい少年を登場させてミスリード的に話を進めてから、彼を本当の主人公の少女メノウに殺させるというアクロバティックな方法を取っています。
これは読み進めてもらうための工夫です。
女性には感情移入しにくいから、読者が感情移入できる対象を置くことで、とにかくページを読み進ませて、メノウを好きになってもらおうという狙いです。
他にも女性主人公のなろう小説では、中性的な名前、男の子っぽい思考にして、Webで4話くらい経ってから、初めて主人公が女の子であることを明かす、という手法を取っている作品もあります。
「処刑少女」とも共通しますが、主人公を好きになってもらう前に、読者に離脱されないように工夫がされています。
女性主人公は避けるのが基本!
人気を出したい、書籍化を目指したいのであれば、男性向けラノベで女性主人公を選択するべきではありません。
東大合格を指南する受験漫画『ドラゴン桜』では「東大には入りやすい学部と、入るのが難しい学部がある。ねらうなら絶対に入りやすい学部をねらえ!」と教えています。
東大卒という肩書を手にするのが目的なら、カンタンな学部を選んだ方が、圧倒的に成功率が高いからです。
同じように、人気を出したい、書籍化したいのであれば、わざわざ難しい道を選ぶことはありません。
難しい道は避ける! それが一番です。
年代が異なってもウケる主人公のテンプレ
「燃えよ剣」のような時代小説を「おじいちゃんラノベ」と言うそうです。主人公の新選組副局長、土方歳三は以下のような特徴を持っています。
- 最強の剣士。
- 女の子にモテモテ。
- どんどん出世。
- すごい!すごい!と褒められる
これはいわるゆる、ラノベでウケるテンプレと同じです。
人間がエンタメに求める物は年代を問わず変わらないのですね。
ラノベ読者が求めているヒロイン。4つの要素
- 奴隷、配下、妹といった主人公より立場が弱く、絶対に主人公を裏切らない女性。
- 処女で年下。姉ヒロインは受けない。
- 最初から主人公が大好きか、出会ってすぐに大好きになり、その気持ちは永遠に変わらない。
- 主人公のことを徹底的に応援し、すごい、すごいと褒めてくれる。
その通り、本能全開です! そして、それがウケるのです!
例えば、大ヒット作『魔法科高校の劣等生』(2011年7月刊行)のヒロイン、司波深雪は、劣等生クラスに所属している兄(主人公)のことが大好きで、「お兄様はすごい!」と、ことあるごとに褒めてくれます。
彼女の名台詞「さすがはお兄様です」を略して、この作品は「さすおに」と呼ばれています。司波深雪は、ラノベヒロインのお手本です。
ラノベヒロインの役割とは、主人公(読者)のホステスです。この役割をしっかり守っていればOK
女性にウケる女性キャラの特徴。強く自立していて男性に頼らない
例えば、
- 『スレイヤーズ』のリナ・インバース
- 『ソードアート・オンライン』のアスナ
- 『Fate』のアルトリア
彼女たちは、女性からの人気が高いです。
その秘密は、強く自立していて男性に頼らないカッコよさです。
ラノベの元祖『スレイヤーズ』(1990/1 刊行 全シリーズ累計2000万部以上)の主人公リナ・インバースは、性別は女性ですが、中身は強く自由に生きる男性そのもので、第一巻では男たちを従えて魔王を倒しています。
スレイヤーズでは恋愛要素はほとんどなく、リナが精神的に男性に頼るようなシーンはありません。
逆に女性が嫌いなのは、男に媚びる女性らしい女性キャラです。
『ソードアート・オンライン』のアスナは主人公キリトとラブラブになってから、好きではなくなったという女性の意見が多いです。
それでも最初は、最強のギルド「血盟騎士団」の副団長であり「閃光」とあだ名されるなど、強く自立していて男性に頼らないカッコいい女性として登場したので、女性ファンがつきました。
ただ、女性向け主人公で注意しなければならないのは「どんなに強くても男性に愛され守られている、周囲から大切にされているヒロイン」という描写が必要になってくる点です。
女性は本質的に愛されたい性であり、強く自立しているけれど愛されてもいる女性主人公が好きな傾向があります。
男性が好きなのは、奴隷、配下、妹など、自分より立場が弱く、絶対に裏切らない女性キャラです。
『Fate』のアルトリアは、強く自立したカッコいい女性でありながら、主人公のサーヴァント(使い魔)という立場で、主人公に魔法で服従させられていたので、男女双方に人気が出ました。
キャラ設定はストーリーとリンクさせる
キャラ設定はストーリーとリンクさせるようにしましょう。
累計発行部数150万部の大ヒット作『エロマンガ先生』(2013/12 刊行)を例にあげて解説します。
主人公は、高校生のライトノベル作家です。
彼の目的は「引きこもりの妹に部屋から出てきてもらって家族で仲良く暮らすこと」。
主人公は、自分の小説のイラストを担当する凄腕絵師のエロマンガ先生の生放送動画を見たことから、尊敬するエロマンガ先生の正体が、実は妹であることに気づきます。
エロマンガ先生がWebカメラを切り忘れて服を脱ぎだしたので、慌てて妹の部屋に行って、動画放送が続いていることを教えて彼女を救ったことから、一年ぶりの再会を果たします。
主人公のキャラ設定であるラノベ作家。妹のキャラ設定である凄腕絵師が、主人公の目的である「引きこもりの妹に部屋から出てきてもらって家族で仲良く暮らすこと」に、ちゃんと繋がる構造になっています。
MF文庫Jライトノベル新人賞の評価シート項目の1つに
「題材、キャラクター、設定が物語に活かされているか」
というのがあります。
キャラクターや設定は、ストーリーを盛り上げるために活用されていなければならないのです。
他にも例として、世界で累計3000万部以上売れたアニメ化作品『グイン・サーガ』 (1979/9 刊行)を上げます。作者の死後も他の作家によって2019年7月現在も連載が続いてる世界一長い大河ファンタジー小説です。
この小説の主人公・グインは豹の頭に人間の体を持った半獣のような存在です。
彼は記憶を失った状態で、突然、世界に現れ、聖王国パロの王子と王女を救います。
グインは、なぜ自分が豹の頭を持った人間なのか? 自分は何者でどこから来たのか? を知るために各地を放浪し、やがて世界最強の軍事国家の王に上り詰めるという物語です。
主人公の特徴である豹の頭を持っていることが、ストーリーの根幹である自分が何者か解き明かす、という謎に直結しています。
ただ記憶を失っているだけではなく、明らかに異常な身体の特徴を持っていることで、自分を知りたいという主人公の動機が強くなっています。
この手法は文芸作品でも使われています。
小田雅久仁の短編小説「髪禍」を例に上げます。(『短篇ベストコレクション: 現代の小説2018』に収録)
この小説の女性主人公は、子供の頃から髪の毛に嫌悪感を抱いていました。
そんな彼女が、貧困状態に陥ってお金を得るために「髪は神なり」を宗旨とするうさんくさい新興宗教の儀式に、サクラとして参加するはめになります。
これはホラーに属する作品であり、主人公が最初から髪に嫌悪感を抱いているので、恐怖体験に繋げやすくなっています。なにより、主人公ともっとも相性の悪い組織に参加させられることで、組織との対立軸を作りやすくなっています。
物語とは極論すれば、個人vs個人、個人vs組織、組織vs組織、といった対決を描いたものです。
人は誰かと誰かが対立してバトルしている状況が大好きなのです!
このため、対立やトラブルが起きやすい設定を作ってあげることが、物語作りの1つのコツになります。
(グイン・サーガの場合でも、主人公が異形ということから、トラブルが起きやすくなっています)
逆に、初心者の小説で多い失敗が、例えば主人公の趣味が絵を描くことで、絵を描いているシーンから始まったのに、絵がまったくストーリーに関係してこないといったことです。
この場合は、主人公が絵を描いているシーン、絵を描くことが好きだという情報は、まったく無意味となってしまいます。ざっくり削ってしまった方が良いです。
最初に絵を描いているシーンから始まったら、読者はきっとこれが後の伏線になっているだろうと、期待して読みます。なのに、ぜんぜん関係してこなかったら、がっくりしてしまいます。
キャラ設定はストーリーとリンクさせるようにしましょう!
創作で最もやっていけないことは「キャラがブレる」こと!
ストーリーが破綻するよりも悪い創作で最もしてはいけないことは、キャラがブレることです。
なぜなら、人間は首尾一貫した性質の物を好む傾向があるからです。
ドラゴンボールの孫悟空が修行をやめて就職活動を始めたりしたら、それはもう悟空ではありません。
キャラクターとは特定の行動パターンを繰り返す物です。
次の行動が予測できる、二次創作しやすいキャラが良いキャラです。
例えば、クレヨンしんちゃんならキレイなお姉さんに会ったら必ずナンパするなどです。
ただ、無意識のうちにキャラがブレてしまうことはよくあります。
例えば魔物使いの主人公が、ラスボスとの最終決戦でその能力を一切使わずに、拳で殴り合って勝利してしまったりすることです。
これは魔物使いというキャラ付けに合わない展開なので、キャラがブレていることになります。
魔物使いという能力を決めたら、最初から最後まで、これを使って戦うようにしなければなりません。
小説の書き方講座。文章の書き方
誰でも簡単に良い文章が書ける3つのコツ
- 一文を短くする(約40文字が目安)
- 改行や空白を多めにする(ページに3割くらいの空白を)
- 難しい言葉や漢字を使わない(漢字使用率は20%以下に)
良い文章とは、わかりやすい文章です。
わかりやすい文章とは、かんたんな言葉で書かれた一文が短い文章です。
逆に悪い文章とは、一文が3行以上も続く。
改行、空白が少なく、文章がぎっしり詰まっている。
難しい漢字や専門用語が多い文章です。
こういう文章は読んでもらえません。
一文を短くする(約40文字を目安に)
一文の長さは、文章術の本を読むと約40文字程度を目安にした方が良いと出ています。
プロのラノベ作家の文章は、一文の長さが二行以内に収められています(ほぼ一行)。
三行以上になるような長い文は稀、例外です。
一文が短くなると、主語と述語の関係が明白になり、伝えたいことが誤解なく伝わるようになります。
コツとして、ほとんどの文章は「が」で2つに分けられます。
「遊ぶことは大切ですが、勉強もおろそかにはできません」
↓
「遊ぶことは大切です。
しかし、勉強もおろそかにはできません」
一文が長くなったら、「が」で2つに分けることができないか考えてみましょう。
改行を多めにする(ページに3割くらいの余白を)
人は文章がぎっしり詰まっているのを見ると、読む気が失せます。
改行を多めにして画面に空白を作りましょう。
ページを開いた時、3割くらいの空白があった方が、読者は抵抗なく読めます。
昔からラノベは、改行が多くて、本の下半分はメモ帳として使える、などと言われてきました。
これは読んでもらうための正しい工夫です。
例文として、ヒット作『陰の実力者になりたくて!』3話(2018/01/なろうに投稿)の文章を引用します。
「ブシン流って最近王都で流行ってるらしいね。見せてほしいな」
「くそが、見せてやるよおらぁ!」
ボスAの攻撃。
いや、うん、余裕。一生懸命剣を振ってるけど、僕は剣を構える必要すらない。ボディワークとかステップワークで余裕余裕。
このようにセリフや段落ごとに空白の行を加えて、読みやすくしています。
また一文が非常に短いのが特徴です。人気作は、読みやすさにとても気を使っているのがわかります。
難しい言葉や漢字は使わない(漢字使用率は20%以下に)
2000年代まで、ラノベは主に中高生がターゲットだったので、中学1年生でも楽に読める文章が理想とされてきました。
現在(2018年ごろから)では、なろう系ラノベは構造がシンプルであるため、小学生の間でも人気になっていると言われており、小学5,6年生でも読めるくらいの簡単な文章がオススメです。
また、ベストセラーの漢字使用率は20%以下というデータがあります。
2014年の調査ではFacebookでもっとも「いいね!」される記事の漢字割合は「10%~30%」と出ています。
漢字率10~20%に押さえるくらいが、読んでもらいやすい文章です。
これはラノベに限った話ではなく、『黒い家』『悪の教典』で有名なミステリー作家、貴志祐介さんも、あまり重要でない言葉については、なるべくひらがなを使うように配慮しているそうです。
漢字を使いすぎると、読む人にストレスを与えるからです。
良い文章とは、かんたんな言葉で書かれた一文が短い文章です。
小学5年生に読めない漢字はひらがなで書こう!
この漢字は、小学5年生には読めないかな? 音読みするか訓読みするかわからないので誤読しそうかな? と思われるモノは、ひらがなやカタカナで書きましょう。
例えば、「薔薇」「恭しい」「一人」などです。
「バラ」「うやうやしい」「ひとり」と書き換えましょう。
特に、「一人」「二人」は、「ひとり」「ふたり」か、「いちにん」「ににん」か、パッと見、わかりません。
ひらがなで書いた方が、読者を迷わせずにすみます。
説明や描写は最低限に。文章力より「読みやすさ」
説明や描写が多いと、読みにくくなって読者に嫌われます。
読者が興味があるのは、キャラクターのセリフや行動です。
説明や描写は最低限にしましょう。たくさんの説明をしても、読者は覚えていません。
特にWeb小説は、電車での通勤時間や、昼休みのちょっとした隙間時間にスマホから読まれているので、読者はじっくり読んでおらず、3日前に読んだ説明など忘れています。
必要に応じて、主人公の行動や巻き込まれる事件などのイベントを通して、説明する形が望ましいです。
また、設定はなるべく複雑にせず、シンプルにしておくと、読者に理解してもらいやすいです。
重要なのは文章力より「読みやすさ」です。名文を書く必要はありません。描写もあまり必要ないです。
文章が下手な人は「そして」「……」「――」を多用する!
ベテラン作家さんに教えてもらった「誰でも簡単に上手な文章を書くコツ」。
以下の3つを多用しないようにする。
- 三点リーダー「……」
- ダッシュ「――」
- 接続詞の「そして」
特に文章が下手な人は「そして」を多用する。
「そして」は、文章の前後の脈絡が繋がっていなくても、文章が繋げられてしまう魔法の言葉で、多用すると意味不明な文章になりやすいのです。
「そして」をなるべく使わずに文章を書くようにすると、意味がわかりやすい文章が書けるようになります。
「……」や「――」などの記号を使い過ぎてたらマイナスとかはありますか?
●ラノベ新人賞の下読みジジさんの回答
文章力のチェック欄にマイナスがつきます。
普通に読みにくいですし、できれば文章表現力を見せていただきたいこともありますので、記号による便利な余韻に頼りすぎることなく、言葉で表現できる部分はぜひ言葉で表現してください。
上級者向け。小説の世界観に合った言葉を使おう!
良い文章を書くためのコツとして「難しい言葉や漢字を使わない」ことをご紹介しました。
これには例外があります。
古代中国の宮廷物など、時代がかった難しい言葉が合う世界観の場合は、作品世界を表現するために「下賜」「傾国」「卑賤」といった、その世界に合った言葉を使った方が良いです。
シリーズ累計発行部数は130万部以上の人気作『薬屋のひとりごと』(2014/8 刊行)は、古代中国風の帝国の後宮を舞台にした小説です。
後宮のただれた美しさを文体で表現するために、「下賜」「傾国」「卑賤」など、わたしたちの日常生活ではまず使わない、時代がかった難しい言葉を使っています。
また可可树にカカオ、巧克力にチョコレートとルビを振るなど、古代中国の文化を表現するために言葉を選んでいます。
これによって、物語の架空世界にすっと入っていくことができるようになっています。
以下は、クリエーター専門学校AMGの小説・シナリオ学科で文章の講師をされている作家、餅月望さんへの質問と回答です。
サボらないこと、手を抜かないことではないかと思います。
私の中で最も評価が低い文章というのは、定型文のような描写をしていながら、その描写が適切でないときです。
例えば「雪のように白い肌」というのは、結構使い古された表現だと思います。美しい表現だからこそ頻発するし、私もよく使いますが、雪がない世界観のファンタジー世界でこれを使うのはいかがでしょうか?
使い古された定型文を思考停止気味に当てはめてしまい、自分なりの表現をする努力を怠ってしまうと、そこには成長がないのではないかと思います。
小説の文章というのは、物語世界に合った物を選ばなくてはならないのです。
例えば、ハイファンタジーで「核兵器のような威力の魔法」などと書いたら、核兵器などその世界には存在しないので、ハイファンタジーの世界を壊しかねません。
逆に異世界転生物なら、主人公が核兵器の知識を持っているので「核兵器のような威力の魔法」と書いてもOKです。
文体の言葉選びは、物語の雰囲気、シリアスなのかコメディなのかによっても変わってきますし、世界観を伝えることよりも、わかりやすさを重視した方が良い場合もあります。
『薬屋のひとりごと』では、主人公の猫猫を次のように紹介している文章があります。
時代と場所が違えばきっとこう呼ばれていることだろう、『狂科学者(マッドサイエンティスト)』と。
マッドサイエンティストとは、古代中国風の世界観に合わない言葉ですが、ライトノベルですので、わかりやすさを重視するためにあえて使っているのだと考えられます。
また、狂科学者という漢字にルビを振ることで、中華っぽさを演出し、違和感を最小化しています。
実力がある作家さんは、言葉選びに気を使っているのですね。
一人称と三人称一視点。小説の語り方
小説の文章は、一人称か三人称一視点で書くのが一般的です。
「みろよ」
俺の目の前に差し出されたのは一丁の拳銃だった。
どうしてこんなものをコイツが……?
「みろよ」
太郎の目の前に差し出されたのは一丁の拳銃だった。
どうしてこんなものをコイツが……と太郎はいぶかしんだ。
一人称小説の書き方
- 主人公視点で物語が進んでいく。主人公(視点人物)が物語を語る。主人公が見たこと、思ったことで地の文が構成される。セリフは主人公の話したことか聞いたこと。
- メリットは、主人公により感情移入してもらいやすくなること。
- デメリットは、視点となる人物以外の心情や視点となる人物が知りえないことは書けないこと。これを解消するため、章が変わったら主人公以外の人物に視点が移ることもあります。1話は主人公視点、2話はヒロイン視点になるなどです。
例文として、ヒット作『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』一話(2014/07 なろうに投稿)の文章を引用します。
「こんにちわ、お加減はいかがですか?クラエス嬢」
第三王子ことジオルド王子様がその天使のように美しい顔を曇らせ私に声をかけてくれた。
あぁ、なんて可愛らしいお顔なのでしょう.
このように物語の視点となる主人公の「見たこと」「思ったこと」で書かれている、主人公の体験記が一人称小説です。
文章に主人公の性格がモロに反映されるため、主人公の個性が際立ち、読者はより主人公に感情移入しやすくなります。
「俺は○○に行った」「私は返事をしなかった」と主人公の一人称で書かれているため一人称小説と呼ばれます。
ネットで読める一人称の人気作
ラノベでは一人称小説が多いです。
一人称は初心者でも簡単に書くことができますが、奥が深く、極めるのが難しい書き方です。
小説の初心者、及び超上級者にオススメ。
三人称一視点小説の書き方
- 物語の語り手が、主人公に密着して、主人公の見た光景を中心に物語を語るという形式。映画に例えると、カメラ(視点)が主人公のちょっと後ろくらいにある感じ。
- メリットは、主人公が直接目にしていない物や主人公が知らない情報も書けること。
- 注意点として、主人公(視点をさだめたキャラ)以外の人物の思ったことは書いてはいけない。これをやると読みにくくなる。「視点がブレる」という状態になる。
章が変わったら主人公以外の人物にカメラ(視点)が移ることもある。
1話は主人公視点、2話はヒロイン視点になるなど。
例文として、人気作『リビルドワールド』一話(2017/02 なろうに投稿)の文章を引用します。
少年もここが自分を殺すに足る非常に危険な場所だと知っている。表情の険しさがそれを示している。それでも自分の意思で、死の危険を覚悟して足を踏み入れたのは、その危険に見合うものがここにあるからだ。少なくとも、スラム街の子供という自身の安値の命よりは遥かに高額なものが。少年はそれを求めてここに来た。
少年の名は、アキラといった。
アキラが溜め息を吐いて呟く。
「……碌な物がねえな。命懸けでここまで来たっていうのに。……もっと奥まで行かないと駄目か?」
このように物語の視点となる語り部が主人公に密着して、その様子を語るのが三人称一視点小説です。
語り部は視点を定めた人物(主人公)の内面も語りますが、視点を定めた人物以外の内面は語りません。主人公以外の人物の内面を語る場合は、場面転換などして、別の人物に視点(カメラ)を定めます。
一人称とは異なり、主人公が直接目にしていない物も書ける自由度の高さがあります。
ネットで読める三人称一視点の人気作
三人称一視点はやや難易度が高い、中級者、及び上級者向けの書き方です。最初は、一人称を書くこととをオススメします。
一人称と三人称一視点が同じ作品内で混在している小説もあります。基本的に、どちらか一方の書き方で統一するのが良いです。
また、両方とも書けるようになると執筆できる作品の幅が広がります。
文章の推敲(見直し)の6つのコツ。環境を変えて読む
推敲とは書いた文章を見直して、荒を探してよりよいものに書き直すことです。
プロのラノベ作家は、平均5回は作品を見直して改稿するそうです。最初から完璧なものを作る必要はなく、推敲を繰り替えして質をあげていけば良いのですね。
小説をどこかに投稿する場合は、最低でも1回は、推敲しましょう!確実に文章の質が上がります。
推敲のコツは「環境を変えて読む」ことです。新しい視点から読めて、荒に気づきやすくなります。以下、推敲の6つのコツです。
- 最重要。一日以上、時間を開けてから読み直す。一日経つと、より客観的に読者に近い立場から自分の小説を読むことができます。
- PCで書いた小説をスマホで読む。(小説はスマホで読むのが一般的なので、ぜひ!)
- 横書きの文章を縦書きで読む。(日本語は横書きにすると、なぜか安っぽく見える性質があります。縦書きにすると、まったく違った印象になります)
- アナログで読む。PCで書いた小説をA4用紙に印刷して読む。
- 場所を変える。家で書いた小説をファミレスで読む。
- 時間を変える。夜に書いた文章を朝に見直す。
最強の校正法。簡単に誤字脱字が0になる!無料の文章読み上げソフトを使う
文章読み上げソフトを使って、文章を読み上げさせると100%誤字脱字やおかしな表現に気づくことができます。
私もブログの内容をYouTubeの動画にするために、ボイスロイドで読み上げさせていますが、音読させると100%誤字脱字に気づけます。
プロ作家も使っている方法なので、おすすめです。
誤字脱字だけは、何度、推敲をしても出てきてしまうものなので、オススメです。
無料でダウンロードできる棒読みソフトを使えば十分です。
以下は、無料で使えるPC用文章読み上げソフトです。テキストファイルだけでなく、Word文書も読み上げてくれるので、書いた小説を音読で聞きたい場合にオススメです。
小説を書くのに役立つ最強の無料アプリ
Googleドキュメント。何もしなくても文章を自動保存!
小説を書くためのソフトはMicrosoftのWordを使うのが一般的です。プロ作家はほぼWordを使っています。(出版社に送る原稿の形式はWordが一般的なため。2019年現在)
ただ、Wordは1万円以上もする高価なソフトです。
お金をかけたくない方、スマホで小説を書く方は「Googleドキュメント」を使うことをオススメします。以下、おすすめの理由です。
- 無料で使える
- 何もしなくても自動で文章を保存してくれる!PCの不具合でデータが保存できなくなる、データが吹っ飛ぶといった悲劇が防げます。
- 使い方はWordとほぼ同じ。機能は劣ります。
- PC、スマホ、タブレットでデータを共有できる。どこでも小説が書けます。
- Word文書の共有、編集も可能。Wordと組み合わせて使うことができます。
「Googleドキュメント」は、無料で使えて、何もしなくても自動で文章を保存してくれます。
作成したデータは、クラウド上に保存され、PC、スマホ、タブレットで共有できます。使い方はWordとほぼ同じです。
小説を書くためのアプリとしては、これが最強じゃないかと思います。
Word文書の共有、編集も可能なので、Wordと組み合わせて使うのもオススメです。
Google日本語入力で小説を書こう!時間の圧倒的な節約!
PCで小説を書く場合は、無料でダウンロードできる日本語入力システム「Google日本語入力」をインストールしておくのがオススメです。
数文字タイピングするだけで、文章の変換候補が表示されるようになり、より早く小説を書くことができるようになります。
Windowsパソコンには最初から「Microsoft IME」という日本語入力システムが入っていますが、これは文章変換の精度が低く、使いづらくでダメです。
「Google日本語入力」は、Google検索により培われた変換知識を用いたサジェスト機能(予測変換)によって、スマホで文章を書く時のような予測変換ができるようになっています。
時間の大幅な節約になり、イライラせずに小説を書けるようになります。
小説の書き方講座:9つのアイディア発想法。人気作家の創作方法
上から効果的な順に並んでいます。
- アイディアとは既存の知識の組み合わせから生まれる。たくさんの小説、漫画、映画、ゲームシナリオに触れて、ネタの引き出しを増やしておきましょう。
(インプットが最重要) - 散歩しながらアイディアを練る。壁にぶつかったら散歩して話を考えるプロ作家さんは非常に多い。様々な大学の研究でも散歩が創造性を高めるのに効果的なことが科学的に証明されています。
- 風呂、シャワーを浴びながらアイディアを練る。リラックス状態にある時に良いアイディアが浮かびやすいことがわかっています。風呂に入りながらアイディアを練る作家さんも多いです。
- メモを取る。アイディアはメモを取らないと忘れてしまうので、スマホでメモを取る習慣をつけましょう。こういったメモ書きから話を作る作家さんも多いです。
- 一日7時間は寝る。日本を代表する小説家の村上春樹は一日7時間は寝るそうです。ハーバード大学の研究でも偉大な功績を残した人は、一日約7時間は寝ていたことがわかっています。逆に6時間以下しか寝ないと、脳機能が著しく低下し精神疾患のリスクも上がります。
- アイディアがわかなかったら、とりあえず何でも良いので書いてみる。思考、アイディアは言葉にすることで連想ゲーム的に広がります。考えてから書くのではなく、書いてから考えるのが合っている人も多いです。
- たくさんの良い作品に触れて感動する!最初の項目と被りますが、自分もこんなおもしろい作品が書きたい!という気持ちが創作の原動力となります。長くプロ作家を続けている人は、感動し続けることを大事にしています。
- 失敗を恐れない!結果を求めすぎない!アメリカで行われた研究で「人は成果を求める欲求が強まると、失敗を恐れて創造性が減る傾向にある」ことがわかっています。
- 締切を作る。自分を追い込むと人間は思わぬ力を発揮します。藤子不二雄がドラえもんのアイディアを思いついたのは締め切りの朝でした。朝バタバタしていて娘さんの人形を踏んづけたことがヒントになったそうです。
黒歴史ノートは宝の山!初心者時代のアイディアに大ヒットのヒントがある
250万部突破の大ヒットラノベ『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』(2014年7月刊行)の作者、羊太郎さんは3巻のあとがきで、主人公グレンを、母親が倉庫から探し出してきた黒歴史ノートから見つけたと語っています。
この『ロクでなし』の主人公のグレンというキャラクター、実は私にとっては因縁が深いというか、付き合いが長いというか、元々は私が小説を書き始めの初期、習作で書いていた小説の『脇役』でした。
(中略)
「なんだこいつ。スレイヤーズの劣化レプリカなこの黒本の主人公より、こいつの方がよっぽどキャラ立ってんじゃん」
引用『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』3巻のあとがきより
ジャンプで連載されていた漫画家漫画『バクマン。』(2008年発表)では、少年ジャンプの人気漫画家が、小学生の時に描いていたキャラを人気漫画の主人公にしているエピソードが出てきます。
これを知った『バクマン。』の主人公、真城は黒歴史ノートをあさり、小学生の時に作った一番好きだったキャラを主人公にして、ジャンプの連載を勝ち取ります。
未熟な時に作った話やキャラというのは、実はアイディアの宝庫であり、捨てないで取っておいた方が良いのですね。
初心者の時に本当に楽しみながら作った物語には、強い情熱が宿っており、これを成長してから身につけたスキルで磨き上げると、良作が生まれるのです。
黒歴史ノートは処分せずにとっておきましょう。かつてのアイディアが生きる時が来ます!
体験を小説のネタに昇華する! 太宰治の『走れメロス』
太宰治が書いた短編小説『走れメロス』は、子供の道徳心を育てる目的で、中学校の国語の教科書に載っているほどの名作です。
以下は、あらすじです。
彼は死刑になる前に、妹の結婚式に出たいと申し出て、身代わりに友人をおいて村まで往復します。
友人を救うために処刑場に現れたメロスに王は感動し、改心して悪政をやめます。
実はこれは借金癖のあった太宰治が、ツケのたまった熱海の旅館に友人を人質に残し、東京にいる師匠の元に金を無心しに行った体験を元に書いています。
ちなみに太宰はその時、熱海に戻っていません。まさに人間失格!
- メロスは、太宰治。
- 身代わりの友人は、そのまま。
- メロスの妹は、師匠。
- 悪の王は、旅館の主人。
というように、自分が体験したことを元に、登場人物を置き換えて物語を物語を作っているのですね。
ダメな体験談が、子供の道徳心を育てる教材に化けるとは、なんともおもしろいです。
このように作者の体験から、小説のネタを考えるのも王道の一つです。
なにか、あなたの体験をアレンジして、物語ができないか考えてみましょう。
リラックス状態の時にアディアをひらめきやすい!
メンタリストDaiGoは精神が安定していてリラックス状態にある人は、良いアイディアを見つけやすと語っています。
例えば、文豪ヘミングウェイは作品作りの合間に旅行などの大きな遊びをしていました。思い切った息抜きは、心身の緊張を解いて良いアイディアを生みます。
映画監督のデヴィッド・リンチは朝と夕方に必ず瞑想を行っているそうです。
彼は瞑想の効果について「第一にアイディアをとらえる能力が高まった。第二に不安や恐れ、怒りや緊張することが減り、人生が楽しいものになった」と語っています。
瞑想とは、雑念を捨てて脳をリラックスさせる行為です。
発明王エジソンと自動車王ヘンリー・フォードは、家族ぐるみで付き合った仲の良い友達で、フォードはエジソンの家に遊びに行く際に、必ず新しいジョークを用意していったそうです。
そうして、二人はお互いにジョークをひろうしあい、夜中まで笑い合っていました。
実は笑いほど、精神をリラックスさせるものはありません。
瞑想や旅行、お笑い動画など、なにかあなたがリラックスできる遊びや習慣を日々の中に取り入れると、良いアイディアが浮かびやすくなります。
アイディアが最もひらめきやすい場所。お風呂
以下は、優れた映画監督であり小説家でもあったウディ・アレンの言葉です。
「ストーリーに行き詰まった時に役立つのは、二階へ行ってシャワーを浴びること。それですべてが打開されることもある。だから僕は、ときどき余分にシャワーを浴びるんだ」
彼は1時間近く、シャワーの下に立ちっぱなしだったこともあります。
東洋経済オンラインの記事によると、シャワーヘッドの世界シェア率ナンバーワンを誇るハンスグローエ社の行った研究では、世界中の72%の人が、シャワーを浴びているときに新しいアイデアが浮かんだ経験があるそうです。
人気漫画『テニスの王子様』の作者、許斐剛さんはお風呂に入っている時にストーリーを考えるそうです。
ラノベ作家・浅岡旭さんは「小説のアイディアが浮かぶのはどんな時ですか?」という質問に対して、以下のように答えています。
お風呂に入っているときです。
それとこれは癖ですが、行き詰った時は家の中を歩き回りながら思考をします。その方が考えやすいです。
このように、インタビューさせていただいた中で、「お風呂に入っている時に、アイディアが浮かぶ」と答えた作家さんは、とても多かったです。
ストーリーに行き詰まったら、ウディ・アレンのように長くシャワーを浴びたり、長風呂してみるのもオススメです!
散歩しながらアイデアを練るプロ作家は非常に多い!散歩のすすめ
散歩をすると良いアイディアが浮かぶことは、いろいろな研究でわかっています。
書籍「ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法」(2018年3月刊行)によると、クリエイティブな発想をしたいなら『8の字形を繰り返し指で描く動きをしながら、野外を散歩するのが最も良い』そうです。
バルチモア大学の研究によって、創造性を高める3つの行動が明らかになっています。
効果が高い順に
- 1位・笑う
- 2位・散歩する
- 3位・甘い物を食べる
これらをした直後にアイディアを練ったり、考えをまとめたりすると効果的です。
ラノベ作家・黒九いなさんは「小説のアイディアが浮かぶのはどんな時ですか?」という質問に対して、以下のように答えています。
入浴中、あるいは散歩中が多いです。
息が上がらない程度に血の巡りがいい時が、アイディア出しにはちょうどいいようですね。
プロ作家の桑島かおりさんも、小説のアイディアを出すために図書館を散歩するそうです。
「アイディアがなにも出ないときは、図書館の中を散歩しながら本の背表紙を見てキーワードを探してみたり、辞書をめくって言葉と言葉をかけ合わせたりして、面白い設定やシーンを考えたりします。
大体一つの設定や、書きたいと思うシーンから膨らませていくことが多いです」
実は古今東西の多くの作家や学者にとって、散歩はインスピレーションの源でした。
19世紀のイギリスの小説家ディケンズも散歩が好きでした。午後2時から3時間。約30キロも歩いたといいます。
小説の執筆に行き詰まったら散歩をしてみましょう!
天才物理学者アインシュタインは、研究に行き詰まると、友達の物理学者の元まで、用もなく遊びに出かけたそうです。
歩いている途中で「これだ!」とアイディアを閃いては、慌てて家に帰って研究を続けたという逸話があります。
小説を書くのは早朝がオススメ!創造性が最も高まる時間帯
脳のクリエイティブな能力が最も高まるのは、朝起きてから2時間の間だということがわかっています。
睡眠から目覚めて、心身の疲労が回復している午前中は、一日のうちでもっとも脳の能力が発揮される時間帯なのです。
逆に夜は、脳の性能が低下するので、仕事をしないほうが良いです。
南オーストラリア大学のドルドーソン氏の研究によると、朝に行うと15分でできる作業が、昼にやると30分かかり、夜になると2時間もかかるそうです。
人間は原始時代、日の出とともに起きて、昼に活動し、日が落ちたら寝る生活をしていたので、このような身体と脳のリズムを持っています。これをサーカディアンリズムと言います。
たまに夜中に元気になる夜型人間の方もいますが、これは例外で、人間の本能は、朝から活動開始して、日が落ちたら寝るようにできています。
日本を代表する小説家の村上春樹は毎日、午後9時から午前4時までたっぷり7時間寝るそうです。完全な朝方ですね。
大ヒット漫画家の細川貂々さんの仕事時間は、午前8時から午後5時くらいまで。よほど忙しくない限り、夜には仕事をしないそうです。
作家の石和仙衣さんは、アマチュア時代、午前3:00頃に起きて、会社に出勤する7:00頃まで小説を書き続けたそうです。
このやり方で、講談社X文庫ホワイトハート新人賞を受賞しています。
プロの作家さんに話を聞くと、朝早起きして小説を書いて、夜は仕事をせずに休むタイプの人が多いです。その方が仕事の生産性があがるからです。
締切を作る。自分を追い込むと良いアイディアが浮かぶ
甲賀忍法帖などで知られる作家の山田 風太郎は、「発想の最大原動力は締め切りである」と語っています。
「とにかく約束した以上は書かなければならない。その切迫感だけで、ほかにはなんのたねもしかけもなく、アイディアがころがり出してくるのである。出てくるアイディアそのものより、このからくりの方が、われながらよっぽど、まかふしぎである」
文豪ドストエフスキーは、莫大な借金を背負い、出版社から報酬3000ルーブルを前借りして返済するも、残ったお金を賭博で全部使い果たします。このデタラメで追い詰められた状況で、傑作『罪と罰』(1866年)を執筆し、26日で仕上げています。
締切に追い詰められると人間は、限界以上の力を発揮して、思わぬ傑作を生み出します。
Web小説を書いている場合には「毎日必ず一話を更新します!」とTwitterなどで読者に宣言してしまうのがオススメです。
信頼できる仲間に小説のアイディアを話す。意見をもらう。大作家スティーヴン・キング誕生秘話
脳科学者の中野信子さんによると、アイディアを次から次へと出すために有効なのは、「アイディアを人に話すこと」だそうです。
何か小説のネタを思いついたら、家族や友達に話すようにすると、アイディアがマシンガンのように出やすい脳になります。
海外小説では謝辞で、作者が家族や仲間に意見やアイデアをありがとう、といったことが書いてあります。
例えば大作家スティーヴン・キングは、女性を書くのが苦手で、超能力を使う少女を主人公にした大ヒット作『キャリー』(1974年刊行)を書く際、妻から女性について教えてもらい、女性キャラを作るのに協力してもらいました。
キングは『キャリー』でデビューし、大ベストセラー作家の道を歩むことになります。
文豪・夏目漱石は、デビュー作となった「吾輩は猫である」(1905年発表)を、俳句友達に見せて意見をもらい、何度も改稿しています。
タイトルも最初は「猫伝」にする予定でしたが、友達の高浜虚子が、もっと良い物を考えてくれました。
「小説は一人で執筆する物」というのは、実は割と固定観念です。プロ作家は編集者と一緒に作品を作ります。
信頼できる友人や作家仲間にアイディアを話す。原稿を読んでもらってアドバイスしてもらうことは、大いにプラスになります。
人気作が書けるようになる方法
- 海外ドラマ、映画をたくさん見る!(あらゆるジャンルの小説を書くのに役立つ)
- 毎日、5000文字は小説を書く。量をこなせば質の向上がおこる!
- 現在人気の小説を読んで、どんな要素がウケているのか研究、分析して作品に取り入れる。(プロでこれをやっていない人はいない)
- 実力がある人からのアドバイスは受け入れる!(意見を聞かない人は伸びない)
- 俺の小説は超サイコー! おもしれー! 俺って天才! と思いながら書く(作家に必要なのは根拠のない自信)
- 苦手だと思いこんでいるジャンルの小説も書いてみる。(好きなことと得意なことがイコールではない場合もある)
毎日、この2つをすれば7割の人がプロデビューできる
毎年、10冊以上の小説を商業出版しているベテラン作家さん(ラノベ、キャラ文芸。両方書いている人)が、これをすれば7割の人が作家デビューできると言っている方法があります。ご自身も、実力が伸び悩んだ時、この方法で突破したそうです。
- 毎日、5000~一万文字小説を書く。ネタがなくても無理やり書く。内容はダメダメでも、下手でも良い。量をこなせば、質的な向上が必ず起きる。
- 毎日、一本映画を見る。
映画、海外ドラマを見ることはシナリオの勉強になります。
海外では脚本家に莫大な報酬を支払うためシナリオの質が高いのです。
これらのシナリオが、どういった構造になっているか分析して小説に取り入れると質の高いストーリーが書けます。
小説を書くことと並行して、映画を見れば、どんなジャンルの小説を書くのにも役立ちます。
ベテラン作家さんによると、この2つを毎日行えば7割の人はプロになれるが、このアドバイスをすると9割の人から嫌われるので、言いたくないそうです。プロになりたい人は、ぜひどうぞ。
人気作を書くコツ。人気がある小説を徹底的に研究、マネする
ヨーロッパ最高の作家と言われるシェイクスピアは、他人の物語をアレンジして、より良い作品を作る達人でした。
このため「我々から奪った羽で着飾ったカラス」と同時代の作家から叩かれました。
実力のある作家ほど、優れた物を研究してる証拠です。
特にラノベの場合、物語の中身は、裁判所並に前例主義になります。ラノベの教科書はラノベです。
プロになるためには、現在の売れ筋を30冊は最低でも読んで、物語のテンプレを理解する必要があります。
「小説家になろう」で人気の小説を書くためには、現在のランキング上位作品を毎日、3万文字は読み続けて、現在の流行を理解する必要があります。
「テンプレ」と「流行」を理解することが、人気作を書くための必須条件です。
オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンスです。
作品Aから40%、作品Bから30%、作品Cから20%、作品Dから10%と、人気の要素を拝借し、自分の書きたい要素を織り込んで書くのが最も良いです。
創作とは大学受験の過去問分析!新人賞対策もなろうからの書籍化も基本は同じ
・応募先の過去の受賞作を読みこんで傾向をつかむ。
・受賞作発表の際の選評を読む。審査員がどんな要素を重視しているかわかる。
・ランキング上位作品を徹底的に読み込んでテンプレを理解し、マネして書く。テンプレと流行がすべて
新人賞対策については、ミステリー作家、貴志祐介さんの書籍「エンタテインメントの作り方」を参照。他、実際にラノベ新人賞の審査員をしていた編集者さんから聞いた内容ですので、間違い有りません。
ラノベ、文芸ともに小説新人賞対策として最も有効なやり方となります。
なろうからの書籍化を狙う場合は、テンプレと流行がすべてです。これはなろうからの書籍化作家にとっては常識です。
つまり、創作とは受験勉強に近いものなのです! 才能ではなく、いかに過去の事例を研究したか? 知っているか? で作品の質が決まります。
「小説家になろう」から書籍化されるための5つのコツ
- 新作を投稿するときは、何十話も書き溜めておいて、それを毎日1話ずつ投稿していく。毎日更新。
- タイトルで人気の9割が決まる。読者が一目で作品の面白さを想像できるタイトル。「小説家になろう」で人気ジャンルの小説だと、タイトルを見ただけで読者に理解してもらえるようにする。
- 約10話。2万文字程度を投稿しても日刊ランキングに載らなかったら、連載を打ち切る。この損切りが重要。
- 現在のランキング上位作品を読み込んで真似をする。テンプレと流行が最重要。
- ランキングに乗るまでは「運」で、1位を取るのは「実力」。おもしろければ必ずランキングに載るわけではない。何度も挑戦すること。
ラノベ新人賞の20の評価項目(MF文庫J)
以下は、2019年段階のMF文庫Jライトノベル新人賞の評価シートの項目です。
この新人賞はそれぞれの項目を5段階評価し、審査員のアドバイスが入った評価シートを応募者全員にわたしてくれます。
このため、何を審査基準としているのか明確にわかっています。
キャラクター
- 読者にとってキャラクターは魅力的か
- 掛け合いが魅力的に書けているか
- 共感したくなる主人公か
- 適切なキャラの配置・書き分けができているか
ストーリー
- 物語の方向性がはっきりしているか
- 読者を楽しませるストーリーをつくれているか
- 読者の予想を上回ろうとしているか
- 題材、キャラクター、設定が物語に活かされているか
世界観・アイデア
- 読者の興味・関心を引きつけられる題材か
- 新規性のあるアイデアか
- 世界観や設定に矛盾は無いか
- 作品世界にリアリティがあるか
構成力
- 物語の導入からおもしろいか
- 起承転結のメリハリがあるか
- テンポよく読み進められるか
- 終盤がしっかりと盛り上がっているか
文章力
- 読みやすく、書きこなれた文章か
- 文体は魅力的か
- 用字用語に誤りがなく適切か
- 過不足ない状況描写ができているか
MF文庫Jのように評価シートを返してくれる新人賞は、何を改善したら良いのかわかるのでオススメです。
小説新人賞対策
- 応募先新人賞の過去の受賞作を読みこんで傾向をつかむ。大学受験の過去問分析と同じ。
- 受賞作発表の際の選評を読む。審査員がどんな要素を重視しているかわかる。
- 評価シートをもらえる新人賞を選ぶ。落選した場合、どこがダメだったか教えてもらえるので、次に活かせる。
- 落選した作品を別の新人賞に送るのも有り。小説の評価は人によって異なるので、別の新人賞では受賞できる可能性もある。ただし、一次落ちした作品の場合、全面的に改稿しないと落選する可能性が高い。
「小説家になろう」などのWeb小説投稿サイトでランキング上位を取るためには、現在のランキング上位作品をいくつも読んで、サイトに集まっている読者がどんな小説を好むのかつかみ、読者の好む小説を書くのが近道です。
同様に新人賞を攻略するためには、新人賞の審査員がどのような小説を高く評価するのか、過去の受賞作を読んで研究し、審査員が好む小説を書いて送ると良いです。どちらにも共通するのは、
評価してくれる人が好む小説を書くこと。
7~10本長編小説を書き上げたくらいでプロデビューする人が多い
小説の執筆とはゲームの攻略に似ています。
ゲームはモンスターを倒して初めて経験値が手に入ります。モンスターにダメージを与えたことはなぜか経験に加算されません。
小説の場合も完結させて初めて経験値が手に入ると、多くのプロが口を揃えて言います。これは真理の一つです。
どれだけ小説を書いたらプロになれるかというと、私が聞いた限りでは、だいたい7~10本あたり長編小説を書き上げたくらいでプロ作家デビューしている人が多いようです。
漫画の世界でも同じで、漫画家支援のトキワ荘プロジェクトの代表を務めていた山本茂さんは「10本漫画を完成させたらプロになれるよ」と語っています。
ただ、これには落とし穴があって「常に前作を超えるように意識して書く」ことが大事です。
ただ漠然と書きまくる人がたまにいますが、勉強しないでテストだけ受け続けているのと同じで、レベルは上がりにくいです。
作家の森奈津子さんは「私は自分の作品に満足してしまったら、そこで作家としての成長が止まるにちがいない。だから、決して自作に満足してはならない。むしろ自作の粗探しをしろ」といった思いで、小説を書き続けているそうです。
アニメ化されたラノベ作家さんにお会いしたことがあるのですが、その人は「ようやく魅力的なキャラの作り方がわかってきました。次はもっと良い作品が書けます」とおっしゃっていました。
アニメになっただけで満足せず、常にもっと良い小説を書くための探求を続けているところが凄かったです。
実力のあるプロ作家のアドバイスを受ける。弟子入りする
ノーベル文学賞作家・大江健三郎さんは「小説の書き方を聞かれたら、どうアドバイスしますか?」という質問に対して、その人の書いた作品に対して、「ここはこうすべきである」と具体的に指導することしかできない、と答えています。
実力がある人に指導してもらうことこそ、最高の修行方法です。
「なろう」からデビューした岸馬きらくさんは、
”実力を高めるために最も役立ったトレーニング方法はなんでしょうか? その方法をどのようにして知りましたか?”
という質問に対して、以下のように答えています。
「プロと創作論を話すこと。
もっと言えば自分の技術を素人にも教えられるプロと話すことだと思います。公募で三桁くらいは一次落ちした僕がデビューできたのもプロの方々と話すようになったからだと思います。知人から『ラ研のオフ会にはプロの人がいるんだから話聞きに行ったら?』と言われて、ハッとなって始めました。
正直なところ、何度も公募落ちてる人はこれしないと無理なんじゃないかなと思います」
ラノベ作家デビューする人の中には、岸馬きらくさんのようにプロ作家に弟子入りして、教えを請うた人が、意外と多くいます。
私が知る限りでは6人ほどです。
私の運営する小説オンラインサロン「エンタメノベルラボ」では、プロ作家や編集者から、作品の批評をガチで受けることができます。プロ作家や編集者による、この無料記事よりさらに深い内容のコンテンツが集積されていますので、本気でプロ作家になりたい方は、ぜひどうぞ。
プロ作家になれる人の共通点。アドバイスを素直に聞く
以前、大手出版社の編集者さんがプロ作家になれる人の共通点として
「アドバイスを素直に聞く」
ということを上げていました。
こうしたら良くなるというアドバイスを素直に実践する人は伸びるそうです。
逆に自分の考えにこだわりすぎる人は、うまくいかないそうです。
読者の意見をうのみにする必要はありませんが、実力がある作家、編集者などからアドバイスされたら、受け入れた方が良いです。
プロになれた理由は「素直だったから」。作家:蛙田あめこさん
プロになれた理由をあえて挙げるなら、「素直だったこと」だと思います。
色々な方のアドバイスを、とにかく早くデビューしたいという気持ちで何でも取り入れました。
投稿サイト「小説家になろう」様を経由してのデビューですが、2年前に一念発起したときには、いわゆるなろう系を自分が書くなんて思っていませんでした。
実は、「なろうで書いてみては」というのも師匠や仲間からのアドバイスでした。
壁にぶつかったら原点となる物語(バイブル)に戻ろう!
少女漫画家の萩尾望都さんは、手塚治虫の漫画『新選組』を読んで感動が爆発したことから、漫画家を目指したそうです。
実は、このように大好きな作品に出会って感動したことをきっかけとして、小説家や漫画家を目指してプロになった人がたくさんいます。あなたにも小説を書くきっかけとなった大好きな作品がありませんか?
原動力となった大好きな作品は『聖書(バイブル)』と呼ばれ、壁にぶつかった時、道に迷った時に、あなたの行き先を照らしてくれる原点となります。
萩尾望都さんは、以下のように述べています。
あまりにもボツが続くとさすがに自分が揺らいできます。そのときに『新選組』に戻っていくんです。あの感動、あの心に響いたものはウソじゃない。私が「これだ」と思ったもの、「おもしろい」と思ったものはたしかなものなんだ、と。だから編集者が「おもしろくない」と言うのは私の表現力がないから、そう思ったから迷わずにやってこれました。
by少女漫画家、萩尾望都
引用:書籍『学校に行きたくない君へ 大先輩たちが語る生き方のヒント。』 2018年8月刊行
ラノベ作家の岩柄イズカさんは、プロになれた理由を「心から感動できる作品と出会えたから」だと答えています。
以下、岩柄イズカさんのインタビューより引用します。
Q18: 最後に、小説家を目指して頑張っている方達にアドバイスをいただけますか?
デビューしたての新人なのであまり偉そうなことは言えませんが、せっかくなので。
たぶん、小説家を目指している皆さんには、その原点とも言うべき作品があると思います。
その作品を読んだ時の感動は、ぜひとも大切にしてください。
精神論的な面でもそうですが、その作品に感動できたということはその作品の面白さをそれだけ理解できたということです。
それをじっくり解析していけば、きっとあなたの強力な武器になってくれることでしょう。
少女漫画家の萩尾望都さんと、まったく同じことをおっしゃっていますね。
壁にぶつかったら、あなたが小説を書くきっかけとなった原点となった物語と向き合い、なにに感動したのか? じっくり分析してみることで、道が開けるでしょう。
執筆中はスマホやPCの通知をオフにする。集中力の維持
小説家の村上春樹は、小説家にとって才能の次に必要なのは集中力と持続力(小説を集中して毎日3,4時間続けて書く力)だと言っています。
彼は、自分は才能にめぐまれていないので、小説を集中して毎日3,4時間続けて書く力を維持するために毎日10キロ近くマラソンしていると言っています。
(村上春樹によると、集中力を維持するためには健康な肉体と体力が必要。運動した直後は、集中力が高まるという研究もある)
つまり、いかに執筆に集中できるかが小説の質に重大な影響を与えるのです。
執筆中の集中力を維持するのに最も良いのは、PCやスマホの通知機能をオフにしてしまうことです。
ロンドン大学の研究によると、PCやスマホを使ったマルチタスクを行うと、マリファナを吸った以上にIQが低下し、8歳児レベルにまで落ち込むそうです。
マルチタスクというのは、小説を書きながら、友達からのLINEに返信して、TwitterやInstagramの「いいね!」に一喜一憂するようなことです。
脳科学者の中野信子さんによると、一つのことに集中するためには、SNSの通知が入ってくるような環境ではダメだそうです。
集中して小説を書くことを邪魔をするものは、なるべく排除しましょう!
PCやスマホではなく、文章作成に特化した「ポメラ」を使って小説を書くのも良い手です。
PCで作業していると、いつの間にゲーム実況動画が再生されていたりします。万能機器の弱点です。
嫌いなジャンルが得意なことがある!
クリエーター専門学校では、生徒の好きなジャンル以外の物語も書かせるそうです。
なぜ、そんなことをさせるかというと、嫌いだと思い込んでいるジャンルが、あなたが得意なジャンルである場合もあるからです。
例えば、作家の佐伯 泰英は、スペインや闘牛を題材にした小説を執筆していましたが、まったく売れませんでした。
1998年頃、編集者から廃業勧告として「時代小説か官能小説、どちらかを書け!」と言われて、しぶしぶ時代小説を書いたところ、大ヒット!超人気作家になりました。
「SF御三家」と称されるSF作家、筒井 康隆は、ラノベの元祖とも言われる超ヒット作『時をかける少女』(1967年発表)を、生活のためイヤイヤ書いたそうです。
中高生向けの恋愛小説など書きたくなかったそうですが、あまりにも人気が出すぎて、筒井 康隆の代表作となっています。
好きなことと得意なことが異なっていることがあるのです!
好きな物がマイナーだったら成功しない!
あなたの好きな物が、世の中にとっては需要がない物であるケースもあります。
作家の佐伯 泰英が好きだった闘牛やスペインを題材にした小説は、日本では超マイナージャンルです。
一方で、時代小説は「おじいちゃんラノベ」とも言われるくらい高齢者に人気があって、100万部以上のヒット作がごろごろあります。
彼は好きだった闘牛小説をあきらめ、時代小説という人気ジャンルに転向して、成功しました。
例えば、なろう系ラノベを嫌いな人は多いですが、今現在(2019年)、実際に売れているのはなろう系ラノベです。
この場合は、なろうを研究してなろう系ラノベを書いた方が、ヒット率が高くなります。
今人気のジャンルを書くことはとても大事です
作家にとって最も大切なのは「根拠のない自信」。自分はできる!
プロ作家になった人は、素人だった時、プロの小説を読んで「自分のほうがおもしろい物を書けそうだ!」と思ったそうです。(実際に10人くらいに話しを聞きました)
実は歌手でも同じで、プロの歌を聞いて「自分の方が歌唱力がイケている!」と思った人がプロになるそうです。
漫画家漫画『バクマン。』によると才能がなくても成功する漫画家の条件は
- うぬぼれ
- 努力
- 運
だそうです。
人間は勘違いでも良いので、自分はできる!才能があると思い込むと、その分野に強くなります。
逆に自分は大したことがない人間だと思い込むと、努力しても無意味と考えて、本当に大したことない人間になってしまうことが心理学的にわかっています。
自己卑下するくらいなら、自分は天才だ!と思い込んだ方が100倍良いのです!
ラノベ新人賞で三次選考まで行った人
本屋さんに並んでいる作品を見ると、自分がこの中に入って行って勝負できるか不安になります
ベテラン作家さん
俺の方がおもしろいぜ!くらいに自信満々に思っている方が良いよ
私が主催した小説勉強会で、実際にあったやりとりです。
ベテラン作家さんによると、自分の小説をつまらないと思って書くと100%おもしろくない作品になるそうです。
逆に、俺の小説は超サイコー! おもしれー! 俺って天才! と思って書くと、誰かからおもしろいと言ってもらえるそうです。
作家にとって大切なのは「根拠のない自信」。自分はできる!という思いです。
褒めてくれる人がいると才能が開花する!
「根拠のない自信」を持つのが難しい場合は、褒めてくれる人がいると強いです。
文豪・夏目漱石は芥川龍之介ら、たくさんの有名な作家を育てていますが、そのコツは弟子を褒めまくることでした。
自分には才能がある!とみんな勘違いしてがんばるので、実際にスゴイ小説家になってしまう人が続出しました。
世界的大ベストセラーである『ハリー・ポッター』は、12社から出版を断られたそうです。
作者のj・k・ローリングさんは、貧困状態になってうつ病をわずらい、生活保護を受けながら、この小説を書き続けました。
心の支えとなったのは、妹さんが、いつもおもしろと絶賛してくれたからだそうです。
直木賞作家の山本一力さんは、デビュー前、事業に失敗し、2億円以上もの借金を背負います。
借金を返すために小説を書こうと思いたち、周囲が呆れる中、小説を書き続けて、7年後に直木賞を受賞しました。
奥さんはこの無茶な挑戦に対して、「あなたならできる!」と励まし続けたそうです。
実際に作家を志してプロになった人に話を聞くと、成功の理由は「兄弟から小説を褒められたから」「作品を褒めてくれる人がそばにいたから」と答える人が何人かいました。
可能であれば、欠点を批判するだけでなく、あなたの長所を褒めてくれる人がいるコミュニテイに所属すると良いでしょう。
私が主催する小説オンラインサロン「エンタメノベルラボ」では、このことから、小説の批評をする場合は、必ず長所も指摘するようにしています。作者の心を折るだけの批評は、作者のためにならないからです。
逆に他人の欠点を批判してばかりいる人からは早めに逃げましょう。
あなたのモチベーションが落ちるだけです。
「才能がない!」という言葉には何の根拠もない。
ウォルト・ディズニーは、高校と美術学校を退学した後、新聞社で漫画を描く仕事をしますが「想像力が欠けるキミには、漫画の才能はない!」とクビになります。
天下のディズニーが、想像力が欠けるなどと否定されていたとは驚きですね。
20世紀初頭、モンゴメリは小説を書き上げ、いくつかの出版社に持ち込みましたが、すべて断られました。
黒歴史として原稿を物置に封印したけれど、数年後に読み返して「やっぱり、私の小説はおもしろい!」と感じ、再度、出版社にアタック。
世界的大ベストセラー「赤毛のアン」が生まれました。
このように出版社の人間でも、作家の才能を見誤ることがあります。
「あなたには才能がない!」という言葉には何の根拠もないのです。
「たとえ100人の専門家が『あなたには才能がない』と言ったとしても、その人たち全員が間違っているかもしれないじゃないですか」
by女優マリリン・モンロー
最初うまくいかないからといって、才能がないとは限らない。
天才とは最初から傑作が作れる人だという思い込みがありますが、これは間違いです。
ノーベル文学賞を受賞した小説家でもあるイギリスの首相チャーチルは、小学校の成績は最下位。もちろん、国語の成績もダメダメだったそうです。
「せめて文章くらいは書けるようになれ!」
と国語の授業ばかり受けさせられ、そこで文章力が鍛えられたことで、後にノーベル文学賞を受賞しています。
漫画家の細川貂々さんは、高校時代は漫画研究会の友達から「漫画の才能がない」と言われ、デビュー作は人気投票で最下位。
そこで編集者から「短編漫画を描いたら?」と言われて短編を描き始め、他の漫画家から「エッセイ漫画が向いているかも」と言われ、これを描いたところ『ツレうつ』で大ヒットしました。
このように偉大な作家、ヒット漫画家も、最初は、文章が苦手だったり、人気が最下位だったりしているのです。
最初うまくいかないからといって、才能がないとは限らないのですね。
「みんな自分の才能を疑いすぎるのです。自分を疑っていは最善は尽くせません。自分が信じなかったら、誰が自分を信じるのでしょうか?」
byマイケル・ジャクソン
失敗は当たり前!1勝14敗でOK!
「我々の世界は大相撲と違って1勝14敗でもやっていける。肝心なのは1勝できるかどうかだ」
by任天堂の3代目社長、山内 溥
これはポケモン、マリオを生み出した日本を代表するゲームメーカーである任天堂の社長、山内 溥さんの言葉です。
日本最高のクリエーター集団でも1勝14敗が当たり前だそうです。
私がお会いした「小説家になろう」出身の大人気作家さんは、どんなに流行とテンプレを研究し、これはイケる!と自信を持って書いた小説でも、実際に書籍化されるは3本に1つだとおっしゃっていました。
うまくいかなと、自分は才能がないのじゃないか?と不安になりますが、実は天才でも失敗するのが当たり前なのです。
才能がある人は、14回負けても、次のチャレンジができる人なのです。
アンパンマンの作者やなせたかしさんは、漫画家の西原理恵子との対談の中で、次のように述べています。
僕は漫画がずーっと売れなくてね。「アンパンマン」も50歳過ぎてからですから。それでも、ずっと書いていました。家に閉じこもって、何の目的もなく書いていた。ダメになる人を見ていると、書いていない。書かずに理屈ばかり言っている。
売れなくても時間があれば、そのぶん書けるじゃない。だから「仕事が来たら書く」というのはダメなんだ。来なくても書いていなきゃ。byアンパンマンの作者やなせたかしさん
引用・毎日かあさん 3 背脂編 西原 理恵子/著 2006年4月刊行
批判とは賞賛の裏返し!批判への対処法
「不当な非難は、しばしば偽装された賛辞であることを忘れてはならない」
byデール・カーネギー
小説を書いて発表していれば、アンチから叩かれたり、批判されたりすることがあります。
見知らぬ人から悪意をぶつけられれば、作品を発表するのが怖くなったり、自信を失って、創作意欲が殺されてしまうこともあるでしょう。
しかし、実は、人気があるから、目立つから、嫉妬のために批判されることも多いのです。
アンチがつくほど、人気者になったと前向きに捉えましょう!
それでも気持ちが収まらない時は、
「もっと人気になって悔しがらせてやる!」と怒りましょう。
実は飛行機が飛ぶコトができるのは、逆風という強い向かい風があるからです。
その逆風がなければ、飛行機は飛び立つこともできません。
あなたをバカにする人は、夢に向かって飛び立つための逆風であり、怒りという燃料を供給してくれる味方だと考えましょう。
メンタリストのDAIGOは、その著書で「悔しいからがんばる」といった怒りのエネルギーは、目標達成や問題解決の原動力になると述べています。
それが集中力を高め、難しいと感じていた課題や高いハードルをクリアする助けとなるのです。
怒りを感じるのは良いことなのですね。
アンチは、夢を実現するための怒り燃料を供給してくれる味方と考え、その怒りをすべて創作のエネルギーに変えましょう。
アンチは逆風、ファンは追い風。どちらもあなたが夢に向かって飛ぶために必要な原動力になってくれます!
やっぱりネットでボロカスに言われると、腹立つじゃない?
悔しくなるだろうし、ことによるとやる気もなくなりそう。腹が立ったなら、新作で殴り倒せばいい。
悔しかったら、新作で驚かせればいい。引用・「労働者のための漫画の描き方教室」
パクリと言われない小説の書き方。著作権のポイント
- 「神話」「歴史・事実」「著作権切れの作品」からアイディアやネタをもらえば100%著作権侵害にならない。これらには著作権が存在しない。日本の著作権の有効期限は作者の死後50年。
- 他人の小説から文章をコピペしてくるのは盗作。
2010年、第16回電撃小説大賞・最終選考作の『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』が大ヒット作『バカとテストと召喚獣』2巻の文章を何ページにもわたって盗用していたとして、絶版・回収になっています。 - 著作権法は偶然似ている作品を盗作とはしない。パクリと叩かれたら頑張って「何もしない」が最高の対応です。
- アイデアに著作権は存在しない。異世界転生、時間移動、身体の入れ替え、といった要素レベルのものをパクって自分の作品に使うのはOKです。
- 作者のネタの引き出しが少ないと著作権侵害が起こりやすい。1つの作品から影響を受けすぎるためです。たくさんの小説、漫画、映画、ゲームシナリオに触れて、引き出しを増やしておきましょう。
- ストーリー、キャラ、世界観の3つの要素のうち2つが被ると、パクリと叩かれやすくなる。
- 二次創作は著作権侵害だが、ファン活動として作者、出版社から大目に見られている。
しかし、ドラえもんの最終回を勝手に作って販売するなど、目に余る行為があった場合は、著作権侵害で訴えられます(ドラえもん最終話同人誌問題。2005年)。
「他の作品に似ている!」は褒め言葉
「他の作品に似ている!」は褒め言葉です。
これはあなたの小説が、既存のヒット作と同じ要素を含んでいるということです。
逆に、あなたの小説が既存の作品のどれにも似ていなかったら、それは読者に理解してもらえない失敗作である可能性が99.9999%以上です。
既存の物語を参考にしていない物語は、この世に存在しません!
例えば、大作家スティーブン・キングのデビュー作『キャリー』は、シンデレラを換骨奪胎した小説だと言われています。
漫画の神様・手塚治虫は自伝の中で「ディズニーに傾倒してからは、ぬいぐるみスタイルを必死になって模写し、習得して、とうとう今の画風になってしまった」と語っています。
ディズニーも手塚治虫の『ジャングル大帝』を参考にして『ライオンキング』を作ったと言われています。
優れた人は、優れた作品から学んでいるのです。
●●に似ている! という言葉を必要以上に恐れないようにしましょう!
神話・伝説からアイディアをもらう
神話や伝説には著作権が存在しないので、内容をいくらでもパクってOKです!
例えばゲーム『fateシリーズ』(2004年発売)は、スマホゲーム『FGO』をやっている人はよくご存知でしょうが、神話や歴史上の英雄をサーヴァント(使い魔)として呼び出して戦わせるゲームです。
キャラのモチーフや、そのバックグラウンドに神話や歴史上の人物を使っているのですね。
神話からアイディアをもらうのはオススメです。
村上春樹の『ノルウェイの森』は、ギリシャ神話を下敷きにしていると言われています。
大ヒットした漫画『美少女戦士セーラームーン』もギリシャ神話が元になっています。
歴史・事実からアイディアをもらう
歴史や事実にも著作権がないので、歴史上の人物や事実からアイディアをもらうのもオススメです。
アニメ化された人気作『織田信奈の野望』(2009年刊行)は、織田信長などの戦国武将を美少女化したラノベです。
日本の戦国時代を下敷きにしており、ストーリーも実際の歴史にある程度、沿っています。
事実をモチーフにするのも良いです。
例えば、東京で1968年12月に発生した『三億円事件』などは、迷宮入りしたため、その真相が想像力をかきたて、多くの小説や漫画の題材になっています。
ただし、事実をネタにする場合は、関係者に迷惑がかからないようにする配慮が必要です。
著作権切れの作品からアイディアをもらう
著作権切れの作品内容からネタをいただくのもオススメです。
ただ、法的には何の問題もないのですが、大ヒットしたラノベ「文学少女シリーズ」(2006年刊行)は太宰治の『人間失格』などの内容をかなり多く引用して、一部の人から叩かれました。
ファンが多い近代の作品から引用する場合は、やや注意が必要です。
パクリ叩きの9割は嫉妬!無視してOK
人間心理として、人気が出た人を見ると、嫉妬から叩きたくなります。
叩く理由として、パクリというのは非常によく使われる大義名分です。
なぜなら、他の作品に似ていない作品など、この世に存在しないからです!
パクリと叩かれたら「ああっ、嫉妬で叩いているだな」と思って、放置しましょう。
叩かれると人気や売り上げが落ちるのでは? と不安になるかもしれませんが、実はAmazonのレビューと小説の売り上げにはあまり関係がないことがわかっています。
レビューがぜんぜんついていない小説が100万部だったり、平均☆5の作品が打ち切られたり、炎上してアンチが大量に低評価をつけている作品が売れていたりします。
表に出てくる目立つ評価に一喜一憂しない方が良いのです。
また、著作権法は偶然似ている作品を盗作とはしません。
著作権は文化を発展させるために存在しています。
偶然似ている作品まで著作権侵害として潰していたら、作家は萎縮して新しい物を作り出せなくなります。これでは文化が発展できませんよね。
著作権侵害が成立するためには、盗作疑惑をかけられた人が、パクリ元を見ているかが問われます。しかし、そんなことはまず立証不可能です。
このため、多くの場合、盗作疑惑は「疑惑で終わる」ことがほとんどです。
盗作疑惑で炎上した場合の最良の対応は「積極的放置」。がんばって何もしないことです。
人間の怒りなどの感情は長続きしないので、燃料投下をしなければ、やがて消えます。
ノルウェーの劇作家ヘンリック・イブセンは、以下のように述べています。
「あなたに対する扇動、嘘、中傷などには、堂々としていることです。
堂々たる落ち着きが、そういうことには唯一の武器です」
盗作疑惑については、反論しても良い結果になることはまずないです。
『三銃士』で知られる19世紀の大作家デュマは、250冊以上もの小説を書きました。
これだけたくさんの作品を出せば、中には他人と似た作品もあったようで、真偽の程は不明ですが、盗作常習犯と叩かれました。
(『三銃士』は大ヒットラノベ『ゼロの使い魔』のモチーフにもなっている超名作)
「僕が他人から取ってくるのは、盗むのじゃない。征服したんだ、併合したんだ!」
盗作疑惑について、デュマがこのように反論したところ炎上し、『併合』『征服』という言葉が19世紀のパリで流行って、『盗む』のかわりに大いに使われたそうです。
下手に反論しても良いことはないということですね。
そもそも盗作疑惑をかけられた人が、パクリ元作品を見ていないと証明するなど、いわゆる悪魔の証明で、まず不可能です。やましいところがないのでしたら、嫉妬で叩いているんだなと思って、がんばって何もしないでおきましょう。
嫉妬で叩いている人は、別の対象を見つければ、今度はそっちを叩き出すので、何もしないのが最も良いです。
スランプ/挫折。小説を書きたくないを防ぐ6つのコツ
なんとなく今日は小説を書きたくないという状態が続くと、挫折することになります。それを防ぐための6つのコツです。
- 一日一行書くことを目標にする
- セリフの途中など執筆をキリの悪いところで中断する(ツァイガルニク効果)
- 小説を書く際に特定の音楽をかける(脳の条件付け)
- 書きたいシーンから書いてつなぎ合わせる
- たまにはファミレスで執筆する
- あなたがおもしろくないと思った作品は、実はおもしろい可能性がある
一日一行書くことを目標にする
東大教授である池谷裕二さんは、その著書の中で「何事も始めたら半分は終了」と述べています。
例えば、人が寝るのは眠くなるからではなく、「寝室に入って灯りを消して布団を被るから」睡魔がやってくるのです。
「やる気」も同様で、作業を開始するから気分が乗ってきて、物事を成し遂げられます。
小説の場合も、PCの電源を入れ、机に座り、最初の一行を書くことで、脳が執筆モードに入って、どんどん文章を書くことができます。
この最初の一行を書くまでが、とにかく大変なので、毎日の目標は「一行だけ書くこと」に設定しておくと良いのですね。
気づいたら3000文字以上書けていたりします。
セリフの途中など執筆をキリの悪いところで中断する
あるテレビ番組で、受験に成功した大学生に彼らの勉強法を聞いてみたところ、多くの人が、勉強をやめるときは、問題集の途中などキリの悪い中途半端なところでやめていたことがわかりました。
こうすることで、続きが気になってしまうので、ごく自然にまた勉強を再開することができるのです。
小説の場合も、執筆をセリフの途中など、あえてキリの悪いところで中断することで、続きが書きたくて、たまらなくなります!
これはツァイガルニク効果と呼ばれ、実際にプロの作家さんの中にも、このやり方をしている人がいます。
実は、キリのいいところで作業を中断すると、そこで集中力がプッツリ切れてしまいがちなことが、脳科学の研究でわかっています。
ラノベ作家・小鈴危一さんへの質問。
「 執筆のモチベーションを保つために、どのような工夫をされていますか?」
小手先の技術としては、常に中途半端なところで筆を置くというのがあります。
そうすると次の日などに作業を再開する際スムーズに始められます。ただ、私はわかっていてもキリの良いところまで書いてしまうことが多いです(笑)
小説を書く際に特定の音楽をかける(脳の条件付け)
作家さんの中には、小説を書く前に、特定の音楽をかける人がいます。
特定の音楽を聞くことで、今から小説を書かねば!と脳にスイッチが入るように条件付けするためです。
他にも、○時から毎日執筆するようにすると、○時になると自然と執筆しなくてはいけない気持ちになるので、オススメです。
書きたいシーンから書いてつなぎ合わせる
書きたいシーンから書いちゃえ!
小説は冒頭から順番に書く必要はなく、書きたいシーンから書いてしまってOKです。
世界で5億部売れた超ヒット作『ハリー・ポッター』の作者J・K・ローリングは、全7巻として構成したこの小説の第7巻の最終章から書き始めたそうです。
このように、もっともテンションが上がるクライマックスから書き始める作家さんはとても多いです。
なんとなく次のシーンが書きたくないなと感じたら、そこは飛ばして書きたいシーンから書いてしまい、その後、シーン同士をつなぎ合わせるというパズル的なやり方で、完成させても良いのです。
あなたが楽しく書けるやり方をすればよいのですね。
ファミレスで小説を書く5つの利点
ファミレスで小説を書いているプロ作家さんは多いです。以下のような利点があります。
- 誰かに邪魔されない環境である
- 人間は適度な雑音があった方が集中力が上がる
- 一人で入った場合、小説を書くこと以外、特にやることがない!
- お金を払ったのだから、その分、がんばらねば!という気持ちになる
- 場所を変えることで気分転換になる。
仕事から帰ってくると、疲れてしまって、とても小説の執筆ができません。どうしたら良いですか?
仕事帰りにファミレスやカフェによって一時間だけ書くようにすると良いです。家に帰ると意識がお休みモードになります。
以上の二人のやり取りは、実際に会社員をしながらプロ作家を兼業でしている方に聞いた話です。
仕事が終わって家に帰ると休みたくなるので、仕事帰りにファミレスに寄って1、2時間、小説を書くということを続けているそうです。
あなたが、おもしろくないと思った小説は本当にダメなのか?
小説を書いていると、この作品はおもしろくないのじゃないか? 書いても無駄じゃないかと不安になる時があります。
でも、できれば最後まで書いて、どこかに投稿してみることをオススメします!
ベストセラー作家スティーヴン・キングは、売れなかった時代、超能力を使う少女の物語を書きますが、つまらないと思って3ページでゴミ箱に捨ててしまいました。
が、妻から「これおもしろいわよ!」と言われて思い直し、大ヒット作キャリーを書きました。
このように、自分ではダメだと思った作品が、他人から見たらおもしろくて、大ヒットになることがあるのです!
また、例え誰かから酷評されても、めげずに小説を発表してください。
世界的大ベストセラーである『ハリー・ポッター』は、12社から出版を断られたそうです。
目が肥えているはずの出版社の人間でも、小説の評価を見誤ることがあるのです。
小説の評価とは、読む人によって異なるので、1人からおもしろくないと酷評されても、他の誰かから絶賛されることがあります。
この小説の書き方講座の最後に、あなたに元気になる言葉を贈ります。
小説を書くのは孤独な作業、不安との戦いです。
でも、最後まで書ききれば、必ずレベルアップします!
そして、必ずあなたのファンになってくれる人が現れます!
物語には人の心を救う力があります。
あなたが小説を書き続けることで、救われる人がきっといます。
執筆に疲れたら数年休んでもプロになれます!
プロ作家になった人には、仕事が忙しくて3年くらい小説を書いていない時期があった。という方が何人もいます。
ブランクがあっても意外と大丈夫なんですね。
ラノベ作家、小鈴危一さんは、壁にぶつかって小説が書けなくなり、数年かけて新作プロットを作ったそうです。
ただそれでもいつかは作家になりたいという思いがあったので、数年かけてなんとか新作のプロットを立て、再開した感じです。
byラノベ作家、小鈴危一さん
ラノベ作家、蛙田あめこさんは「スランプになった、もしくは作家になることを諦めようと思ったことはありますか?」という質問に対して、以下のように答えています。
28歳になってはじめて、「あれっ。このまま小説を書かないでいると、どうやら作家にはなれないぞ?」と気付いたので(笑)、それからはとにかく小説を書くようになりました。
byラノベ作家、蛙田あめこさん
あなたの性格にもよると思いますが、創作は「何か書きたい!」とテンションがあがった時に、ガッとやるのも良いような気がします。
ラノベ作家のお魚1号さんも、一度小説を書くことに挫折して、10年くらいブランクがあった後、もう一度、夢を追ってデビューしたそうです。
なにか自分の中で歯車が合う時期というのがある気がします。
会社が倒産したのをきっかけに、昔の夢をもう一度追いかけようと思いまして、ライトノベル作法研究所のページに辿り着きました。
byラノベ作家、お魚1号さん
もし、どうしても執筆に疲れたら、一度、休んでみるのも良いです。
無理をしないでいきましょう!