pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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ちゃ〜らちゃらららっちゃら〜♪
軽妙な音楽と共に、画面中央に居座るタイトルロゴ。蛍光カラーの眩しいスタジオセットでは、年若い女性が一人にこやかに佇んでいる。
だがしかし、油断してはならない。
彼女こそがこの番組の支配者。またの名を、処刑人。その柔らかな笑顔に絆された時点で、負けは確定しているのである。
「こんにちは! 今日も始まりました、《突撃☆エゴイスト》! 司会はわたくし、喜安田亜子が務めさせて頂きます!」
簡易的な説明を終えた喜安からカメラが移される。次に画面が捉えたのはホワイトのソファーに座る二人の男性。どちらも容姿は整っているが、態度は真逆だ。一人は分かりやすく愛嬌を振り撒き、もう一人はだらんと背もたれに体重を預けている。この差よ。
「今回のゲストは、女性人気の高いこのお二方! まず一人目は、御影コーポレーションの一人息子で且つサッカー選手として活躍している御影玲王選手!」
「どうもー」
テンション高めの喜安に合わせてカメラ目線で手を振ったのは、紫の髪を一纏めにした男性。大きな紫色の瞳はキラキラと照明の光を取り込みながらこちらを覗いている。
「そして二人目! 御影選手と同じクラブチームに所属しておりトラップの天才と呼ばれる、凪誠士郎選手!」
そのすぐ横で置物のような格好で動かないのは、体格のいい白髪の男性。わざわざ指摘するほどでもないが、眠たそうだ。時折ゆらゆらと頭を揺らしており…あれ? こいつ寝てない??
「この番組は、今話題のエゴイスト達に密着し、ルーツや魅力を紹介していく番組です。また放送中はゲストさんへの質問も募集していますので、『#突撃☆エゴイスト』をつけて呟いてくださいね!」
ここまでが前置き。ここからが本番である。
「わぁ、始まって間もないのにコメントの方じゃんじゃん着てますね! ペンネーム:缶詰のパイナップルさん『ヤッホー! 今回はゲストの方からオファーがあったらしいけどホント〜?』とのことですけど…はい、実はその通りなんです!」
「そうそう。俺が興味あって、番組側に直接交渉したんだよな」
軽やかに会話に加わったのは、ファンサの鬼として名高い御影玲王。未だかつて類を見ない司会進行のスムーズっぷりである。ディレクターは密かに泣いた。
「いや〜、こちら側もまさか『出たい』って言ってくれる人がいるとは思ってなくて、ビックリしましたよ。ところで御影選手はいつからこの番組のことご存知で…?」
「俺は仲間の口コミから。面白いテレビがあるって紹介されて、そこからちょくちょく見てるって感じっすね」
「では、凪選手の方は?」
あははうふふ、と優雅に営業スマイルを交わす二人。こうしてみると一般的なインタビューのようである。話を振られた方の凪はだるーんと身体を伸ばして一言。
「えー……めんどくさーい。レオがやってよ」
お前は何しにここに来たんだ??
「まあそう面倒くさがるなって、凪。お前が欲しがってた新作のゲーム買ってやるから」
「んー…レオがそう言うなら」
玲王が凪の肩に腕を回し体重をかけ、ニカッと笑いかける。凪は口をばってんにしたものの、ソファーにもたれていた背をゆっくりと起こした。それを眺めつつ仕方がなさそうに微笑む玲王。母親か。
「なんだか御影選手、凪選手のお母さんみたいですね!」
言っちゃった。言っちゃったよこのキャスター!
「俺が凪の母親? …ハハハ、そうなんですよ。この子ったら本当に手間のかかる子で」
「レオ、悪ノリやめて」
ペシっと玲王の腕をはたく凪。なんかあの一帯だけ空気感が違う。こしょこしょと互いに耳打ちする姿は学生時代から変わらない仲の良さだ。背景に薔薇のエフェクトが見える。
ちなみに喜安はこの間、二人の会話そっちのけで音響トラブルの確認をしていた。ゲストを放置って、ちょっと斬新な番組すぎやしませんかね??
「いてっ! …凪、割と本気で叩いただろ」
「当然でしょ、レオは俺の母親じゃないし。レオは俺の——」
「分かってるって。凪は俺の——」
「相方だから」「相棒だもんな!」
「「えっ」」
空気が凍る。
笑顔のまま硬化する玲王。瞳孔ガン開きの凪。なお、今回に限っては喜安は何も悪くない。埋まっていた特大地雷が勝手に爆発しただけだ。
やがてチェックが終わった喜安が駆け寄って来て、首を傾げる。さっきの会話は彼女に聞こえていなかったらしい。
「すみませんバタバタしまして…あれ、なんかお二人ともぎこちなくないですか?」
「あ、そ、そうか?」
「…別に」
言葉少なに視線を逸らす二人。表面上は通常運転だが、内心は大荒れである。
「(相方…? 相方ってどういう立ち位置だ? 俺以外に相棒がいるってことか…!? また俺は捨てられ……凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪凪)」
「(相棒ってよくわかんないけど…俺が相方として相応しくなればいいってことだよね。何したらいいんだろう…レオがされたら喜ぶこと……)」
玲王は
かくして、『チキチキ☆超絶怒涛のアンジャッシュ劇場』が幕を開けた。
「えーっと、じゃあまず定番の質問からですね。お二人の出会いについて…」
「サッカー」
「へっ?」
「サッカー」
先陣を切ったのは凪。薄墨色の瞳は怖いくらいに真剣な光を宿している。が、凪は『レオがされて喜ぶこと』を考えているだけであって、喜安の質問に答えているわけではない。つまり、必然的に——
「俺がシュートをトラップして…レオは勝つのが好きだったから、(レオが雷市の)喉にエルボーとか喰らわせて(※一次選考)」
「エッ、(凪選手が)初対面で(御影選手に)エルボー!?」
「あと、甘える」
「(初手暴力振るった相手に)甘える!?!?」
こうなる。
凪はひたすら無表情で「おんぶに手料理も作ってくれたし」などと思案しているが…気づけ。お前顔の良いDV男疑惑かけられてんぞ。
えぇ…まさかこの癒し系っぽい人がヤバい人だったなんて……と若干引き気味の喜安の横でガタンと音がする。
「ハッ、くだんねぇ…!!」
ここで立ち上がったのは稀代の
「そうやって何でもない顔して、また俺を置いていくんだろ…いや、俺はあの時(※二次選考)の俺とは違う!!」
「レオ…」
手で顔半分を覆いつつ陰のある表情をする玲王。縋るように名を呼ぶ凪。
昼ドラかな???
「レオはもう俺とサッカーしたくない?(機嫌損ねた…? 甘えすぎたのかな。それともプレーがつまんなかった?)」
「したくないのはお前の方だろ。俺じゃない相手に媚売りやがって。所詮俺のことなんてどうだっていいんだろ(俺ばっかりお前に必死で、凪には応えた様子もなくて………いつだ? いつ何処の馬の骨が俺の宝物を誑かした??)」
「…約束、忘れちゃったの?(最後まで一緒にいるって、言ったのに)」
「その話、今持ち出すんだな(お前にはもう、新しい相棒がいるくせに)」
「修羅場ですか?(修羅場ですか?)」
心の声を隠せばあら不思議、氷点下ギッスギス地獄の完成である。
リノリウムの床が真っ白い光を反射する。本音と建前が一緒なのが喜安だけというのが何よりの恐怖だ。こいつらディスコミュニケーションしか取れないのか。
「……意味わかんない。めんどくさいよレオ、何拗ねてるわけ?(先に約束したのはそっちじゃんか)」
「拗ねてなんかねぇよ。そんな駄々こねる幼稚園児みたいなことできるわけないだろ(俺以外の相棒なんて許してたまるかよ…!)」
「え、凪選手って幼稚園児だったんです?」
喜安、お前話聞いてなかったろ???
「でもまあ、分からないことはないですね。凪選手ぼーっとしてるときは大きな白熊のぬいぐるみみたいですし、チームメイトに世話焼かれてる姿もよく見ますから。授業とか真面目に受けずに寝てそう。朝食も誰かに起こされないと食べ損ねてそうですよね。決して起きれないわけではないけど、一人で食べに行くのが面倒というか」
ピシリと固まる凪。
始まった。これぞ《突撃☆エゴイスト》名物、喜安キャスターの長文語りである。
「逆に御影選手は相手に尽くして尽くして尽くしまくりそうですよね。献身というか投資。全力で取り組む分、飽きたら早そうでもありますね。でも本気で好きな人ができたときは凄いんじゃないでしょうか? 相手の言うこと何でも聞いてあげる、みたいな…なんとなくヤンデレの風味を感じるの私だけですかね? 金銭感覚狂わせてきたり外堀から埋めてきたりしそうっていう偏見があります」
今日も絶好調で観察眼に優れたコメントを残す喜安。だがしかし、白宝コンビこの二人も負けてはいない。何しろ、出会った瞬間からすれ違いまくってここにいるタッグである。並の長台詞に気圧されるほど柔な神経していないのだ。全然誇れることではないが。
「そうか? …それで俺は2回も見捨てられたけどな」
「ええっと……(捨てられたって…御影選手だいぶ気にしてるみたいだし、凪選手と付き合ってたのかな? うーん、でも御影選手は凪選手のこと宝物って…あれ?)」
軽はずみに発言に触れたせいで深淵を覗いてしまう喜安。番組の残りはあと30分。果たして収集はつくのだろうか、これ。
「どういうこと? 捨てたって」
「(うぇ? 凪選手は知らないパターン?)」
「忘れたとは言わせねぇぞ。一度目の時(※二次選考)、お前が『約束忘れてるのはお前の方じゃん』『めんどくさいよレオ、もう知らない』って、だから、だから俺は…!」
「…別に捨ててなんかなくない? むしろレオの方が(現在進行形で)俺を捨ててるんじゃないの?」
「(あわ、あわわ…! 火花が!!)」
加速する勘違い。どうしてここまで噛み合わないのか、もうそういう星の下に生まれたのか。険悪な空気の流れるスタジオで、喜安は考えに考え…辿り着いてしまった。
「(私は当て馬ポジ、ってコト!?)」
※違います。
「(あの二人はもともと付き合ってたけど何かの拍子に大きな衝突をして別れてしまった。プライベートでは友達として適切な距離を保っていたけど、それは久々の二人一緒のインタビューで壊れてしまう。たぶん私が離れている間にどっちかが不用意な発言を怒ったんだろう。例えば今の自分たちの関係を聞くとか。で、その別れた原因について争ってるのが現在の状況。傍聴する限りでは御影選手と凪選手の間では認識がズレにズレてるように思える。約束がどうのとは言ってるし、時系列的にブルロ時代の話らしいから、サッカー絡みではありそう。つまり両選手が「自分は捨てられた…!」と錯覚してまともな話し合いをしていない可能性が大! こういうのは一回拗れると全部ぐちゃぐちゃになり出すのが鉄板。なら、私がやるべきことは、さりげなくフォローに回りつつ、適度に当て馬になって二人の仲を修復すること……!!)」
こ れ は ひ ど い 。
盛大な風評被害である。二人はそんな甘酸っぱい関係ではないし、今お前がやるべきはインタビューであって当て馬ではない。頼むから使命感に燃えないでくれ。そして要所要所の予想は合っているのがタチ悪い。
「(当て馬って何するんだっけ? 確か前に読んだ少女漫画では時折電波な発言をして登場人物たちを引かせていたはず…)」
「何で俺がお前を捨てるってことに……」
「御影選手って歯ブラシ毟ってそうな顔してますよね」
「は?」
何故その話題で行った。
「ああいや、悪口じゃないですよ? ただ御影選手は怒りが自分に向くタイプっぽいですし、納得いかないことを無理矢理消化するルーティーンみたいなのがありそうだと思って。歯ブラシ占い〜とかどうでしょう? 花占いの歯ブラシ版。これなら各ご家庭にもありますしお手軽だと考えまして(どうだ! これはかなりわけがわからないだろう!!)」
当て馬上等! とばかりに鼻息を荒くする彼女だが、気づいていない。実際にそれを玲王がやっていたなんて。
「なーんて、冗談ですよ。流石に毎日使うものを消耗品みたく扱うことなんてできませんよ。しかも気を毟るってとんだゴリラですし。まあ御影選手も凪選手もそんなことしないでしょうけど…」
「当たり前でしょ。誰がするのそんなこと」
心底呆れたといった凪の声色が玲王の心にクリティカルヒットする。何も知らない人からの無垢な感想が一番キツいこともあるのだ。
「凪、俺を殺してくれ…!」
「何があったの!?」
状況がいまいち理解できていない凪にさらなる嵐が襲来する。
「凪選手は無機物と友達になってそうですよね」
「なんて?」
ナギセイシロウ(22):無機物がお友達。
「友達できなくても困らないけど話し相手に無機物選んでそう。いや、無機物限定じゃなくてもいいかな。喋らなければ何でも。人形とか、猫とか、あとサボテン。こういう人こそ平和主義者を気取って森の優しき巨人みたいな格好になるんですけど、案外喧嘩早いんですよね。『自分、滅多に怒らないんだよね』なんてほざきようものなら、自己分析もできないのかと張り倒したくなりますね」
にこにこと微笑む喜安。静まり返るスタジオ。190センチの高身長がふらりと倒れる。
「レオ…俺、今まで間違ってたのかな……?」
「意識を強く持て凪! お前にはまだやることがあるはずだ!!」
先ほどとは打って変わって失神しそうになった凪を、玲王が必死で励ます。あっれれ〜この二人仲直りしてない??
「そもそも最近のサッカー選手はすれ違ってる奴が多すぎるんですよ。何なんですか? 技術と引き換えにコミュ力を犠牲にしてきたんですか?? やれ『最後まで一緒に』だの『別の人とサッカーしてみたい』だの、説明が粗雑にも程があるんですよ。そんでもって言葉は足りないし話最後まで聞かないから、結果的に一波乱起きる羽目になる。悪循環すぎません? コレ。どいつもこいつも自分の考えてることを口に出さなすぎなんですよ。『お前とやってた時の方が楽しかった』とか『置いてかれるのが怖い』とか第三者じゃなくて相手に言いましょうよ対話能力がマンボウより脆弱。どうせ降り積もった不安がきっかけで『アイツに復讐してやる!』みたいな展開が入るんでしょう? 知ってる知ってる。最後に感動的BGMが流れて蟠りは浄化されるけど、それ根本の問題解決にはなってませんからね? 良い雰囲気で誤魔化してますけど、ここで解決されてないってことはまた同じこと繰り返しますからね? 課題へのアプローチ下手くそか、ひらがなの書き方から学び直せ。……あ、途中から暴走してただの不満暴露大会になってしまいました。本当にすみませ…どうしたんですお二人とも」
ハッと喜安が意識を取り戻した時には、目の前においおい泣く成人男性二人組がいた。
「凪、俺ずっとお前のこと勘違いしてた! 凪は俺を捨てたつもりなんてなかったんだな…」
「レオ、ごめん。こっちもカッとなって強く言いすぎちゃって。でも俺、また傷つけるかもしれないけど、レオと一緒にいたいんだ。他ならないレオが俺を見つけてくれたから」
「別に構わねぇよ。何てったって俺たちは」
「「
目に涙を浮かべた彼らがガッシリと抱擁する。すれ違い合っていた二人の数年越しの和解。しみじみとしたクラシックが流れそうな空間で、一人端っこにいた喜安は半分ほどしか頭に入っていない会話を反芻し、ぽつりと呟いた。
「つまり、ソフトSMってことですか??」
台無しである。
────────────────────────
いつものサッカー練習後。ロッカールームに戻った糸師冴は、スマートフォンに届いた大量の通知に眉を潜めていた。
こうして持っている間にも鳴り止まないメール。試しに数個ほど開いて読んでいく。眺めていくと、どのメッセージにも共通しているのは、最後に貼られたURL。
「何なんだ一体…」
十中八九、見ろと言うことだろう。
世界中のトッププレイヤーが揃って視聴を勧めてくる動画。余程感動するスーパープレイでもあったのだろうか。怪訝に思いながらもタップして…
『ジャッジャッジャジャジャ!「俺とクソ兄貴は」ビタンビタンビタン「ナイス筋肉!!」「パワー!!」チチチチ「うわああああ!!」ビタンビタン「クソクソクソあに」チチチチチ「ヤー!!」「ヤー!!」ドンガラガッシャーン「健全なる肉体にこそ」ビタンビタン「パワー!」「は宿る!」チチチ「うわああああ!!」ビタンビタン』
「……………は?」
——その日、冴の鼓膜と情緒は一度死んだ。
「…夢か」
ゆるりと意識が浮上する。どうやら寝ていたようだ。長めのフライトのせいで疲れが取れていないらしい。未だ鈍さが残る頭を振って冴は椅子から立ち上がり…すぐに眉を潜めた。
「お、冴ちゃんじゃ〜ん♡」
「……士道」
楽屋の廊下からカツカツと靴音を響かせやって来たのは、悪魔の如き笑みを見せる長身の男性。日本人には珍しい浅黒い肌、ショッキングピンクの瞳を煌めかせた彼に、冴は溜息を吐く。
「冴ちゃんがこういう番組に参加するって珍しいでちゅね〜! 協会にでもせっつかれたんでちゅか?」
「うるさい」
「ちなみに俺は〜、気づいたらマネちゃんに入れられてた!!」
そう。糸師冴は今、とある番組のゲストとして呼ばれていた。
もともと冴としては受ける気など1ミリもなかったインタビュー。しかし支援者の堪忍袋の緒が切れ、また「これをやるなら今シーズン他の取材は受けなくてもいい」とマネージャーから言質をとったこともあり、冴は遥々生まれ故郷である日本に飛んできたのだ。まあ、着いた時に「インタビューは士道と一緒」と聞かされたのは驚いたが。
わきわきと楽しそうに手を動かす士道に、冴はぽつりと独りごちる。
「…お前、番組出られたんだな」
「冴ちゃんすっごい失礼だね???」
こんな口を開けば放送禁止ワード乱発する人間を、よく番組に呼ぼうと思ったな。
「そりゃ〜俺だって出たくない取材とかもあるけどさ〜、いつもゲッソリしてるマネちゃんが今までないくらいご機嫌だったからさぁ。サムズアップして『士道さん、頑張ってくださいね!』って送り出してくるくらいだし」
「…そうか」
「俺が参加するのめちゃめちゃ嬉しかったみたい。オファーが来た時はタンスの角に小指ぶつけて、泣きながら歓びのコサックダンス踊ってた」
「大丈夫か、ソイツ?」
何かヤバいのキメてないか?
士道のマネージャーへ形容しがたい不安を抱く。ソイツが不味いのか番組が酷いのか。どうせ量産型のスポーツバラエティだろうと真面目に説明を読まなかったことが悔やまれる。
すると、ここで士道の声が1トーン下がった。
「でもさぁ〜、俺、なんか嫌な予感がするんだわ」
背を走るのはサッカーをしている時と同じ緊張感。士道の瞳孔が縦に裂け、口角が攻撃的に吊り上がる。ざわり、心の底をあえかに撫でられた気分だった。
「…嫌な予感?」
「んー、野生の勘ってヤツ? 冴ちゃんだって身に覚えがあるんじゃない?」
そう言われてふと思い出したのは、先ほど見た夢。
随分前に流行ったカオスすぎる音MAD。素材には確か、凛の番組インタビューも使われていた筈だが、詳細は覚えていない。なんせサッカー馬鹿なので。
「…気のせいだろ」
それが今更、何だと言うのだ。
務めて冷静に目を逸らした冴に、士道が訝しげにまつげをバサバサと上下に振る。アイラインのバチバチに決まった瞳が、冴の顔を覗き込んだ。
「本当に?」
「ああ」
「……ふーん。ま、別にいいけど」
意外にも士道はあっさりと引いた。傾けた上半身を元に戻すと、スタジオの方へ歩いて行く。冴も同様にスタジオへ向かうと、パッと眩しいライトが辺りを照らした。
……何かを忘れている気がする。
「…?」
「おーい、冴ちゃん??」
ブルーとレモンイエローの爽やかな色が並ぶセット。丸みを帯びたホワイトのソファー。小さめの司会台に、奥に設置された140インチの最新型モニター。何の変哲もない、どこにでもありそうなスタジオなのに。
何なのだろう、この違和感は。
この既視感は。
「本番3分前になりまーす! 各キャストさん達は定位置に着いてくださーい」
ADがスケッチブック片手に大声で叫ぶ。冴と士道もソファーに着席した。
何故か悪寒が止まらなかった。
ちゃ〜らちゃらららっちゃら〜♪
「こんにちは! 今日も始まりました、《突撃☆エゴイスト》! 司会はわたくし、喜安田亜子が務めさせて頂きます! そして今回のゲストは、サッカー界で有名なこのお二方!!」
ぬりぃな。それが冴が開始5分で抱いた感想だった。
「…この番組は、今話題のエゴイスト達に密着し、ルーツや魅力を紹介していく番組です。また放送中はゲストさんへの質問も募集していますので、『#突撃☆エゴイスト』をつけて呟いてくださいね! では早速——」
にこにこと微笑む人好きのする女性。プロサッカー選手二人に対して欠片も隙を見せないのは肝が据わっていると言えるだろう。が、それだけだ。冴の障害にはなり得ない。
「で、えっと何キャスターちゃんだっけ? 俺の中のサッカーは【ピー】が【ピー】で【ピー】なんだけど」
「わ、すごい! モールス信号出来そうですね!」
…と、思っていた。つい先ほどまでは。
何コイツ、ヤバい。冴は無表情ながらドン引いていた。
「士道選手って独特の価値観ありますよね。爆発とか生命…え? 流石にテレビじゃ放映できない? 確かにそうですね。じゃあ何か別の名前つけません? 士道選手だって自分の伝えたいこと毎回全カットされるのは心折れるでしょう。言葉遣いを柔らかくすれば士道選手に憧れる子供も増えるかもしれませんよ! 例えば、『フィールド駆けるは愛ある調べ。脳天に叩き込め! ラブリーチャーミーマジカルシュート♡』みたいな。…プリキュアですかね?」
一瞬冴の脳内にピンクのフリフリドレスを着た士道が浮かんだ。冴の意識は飛んだ。
「うん、方向性はいい感じじゃないでしょうか。士道選手って強いですし。プリキュアに必要なものって個人的に、強さ(精神)と強さ(物理)と思い悩める心だと思うんですよ。その点、士道選手は全部ピッタリですからね。なれますよ、プリキュア」
「…俺、他二つはまだしも、思い悩める心は心当たりないんだけど?」
「そうですか? 凶暴性は思春期の代表的な特徴ですよ」
大して気にした様子もなく言葉を紡ぐ喜安。それでいいのか。その男、監獄時代には誰彼構わず暴力振るってたせいで別室に縛り付けられてた男だぞ。そんな可愛らしい『思春期』とやらで括っていいのか。
「プリキュア、いいですよね〜。子供の頃はもちろんですけど、最近は大人も楽しめるものが増えてきてて。困難に直面しても成長して乗り越えてるんですよ。士道さんも経験あるんじゃないですか? 誰にも共感されず、周りは自分を疎むばかり。そんな中、自分を欲しいと言ってくれる人に出会う。完全な味方というわけじゃない。だけどその人は自分を望んでくれた。自分が一番欲しいものをくれた。その人は告げる。『魔法をかけてやる』と。…数多の敵が並び立つコート、目の前にはボール。力一杯叩き込んだそれは、ゴールネットを揺らして…」
「——俺は、プリキュアだった……?」
喜安の台詞に頭を抱え、茫然と呟く士道。
ヤメロ、正気に戻れ。
「あくまで私の一案なのでもっといいネーミングもあると思うんですけど。ほら、『光ん力だアアアアああ!! ぎゃああああアア!!』みたいな」
自爆してんじゃねえか。
士道はこの十数分の間に常識を粉々に破壊し尽くされたのか「俺は…プリキュア? 俺が…プリキュア…!?」とぶつぶつ繰り返している。端的に言って怖い。
「あ、コメントの方も集まってますね〜! ペンネーム:かっぱえびせんさん『プリキュアもいいですけど、魔法少女もオススメですよ』確かに! その発想もありますね!」
ねえよ。
ほのぼのした雰囲気でコメントとにらめっこする彼女だが、忘れてはならない。彼女は今さっき屍を作り上げたばかりである。そればかりか「魔法少女ってあれですよね? えっと、頭部が破損するやつ!」とか口走っている。何だこの女、修羅か??
ふいに彼女がぐりんと顔をこちらに向けた。びくっと身体が跳ねる。
「そういえば、冴選手と凛選手って仲悪いんです??」
「は、」
思わず息が漏れた。どうしてその名前を。
『糸師兄弟に片割れの話を振ってはいけない』というのはサッカー界の暗黙の了解だ。ある程度和解して昔より穏やかになったものの、依然として仲は悪い。じゃなきゃ冴は凛のことを愚弟と呼ばないし、凛は冴殺すを徹底していないだろう。
それなのに、堂々と禁忌を破ってきた。彼女は照れくさそうにぽりぽりと頬をかく。
「いやー、以前凛選手にインタビューした時に『仲良しですね!』ってはしゃいじゃったんですけど、答え聞けてなかったんですよね。私ばかり喋っちゃったせいで」
ふいに冴はあのイカれた音MADを思い出した。確かあれの大本になったのは凛が参加したとある番組インタビュー…
——お前か!!!!!!
何故気づかなかったのだろう。コイツがあの惨状を引き起こした張本人である。冴の警戒度が100上がった。しかしここは
「ええっと、凛選手と何話したんでしたっけ……あ、そうだ、すれ違いの話だ。雪降る夜の悲劇的ストーリー。でものちのち考えてみると弟も弟だし兄も兄って感じですよね、これ。どっちも悪いところそっくり」
あ、なんか始まった。
冴は冷や汗を垂らした。必ず、この邪智暴虐のキャスターを倒さねばならぬと決意した。冴には彼女というものが分からぬ。冴は、サッカー選手である。生まれてすぐにサッカーにのめり込み、暇さえあればボールを蹴っていた。けれども身に迫る危機に対しては、人一倍に敏感であった。
「圧倒的に二人の間に会話が足りないんですよ。あなた達それでも文明人ですか? ってくらい言語というものを行使していないんですよ。口に出さないでも俺たちは伝わり合えるとでも思ってるんですか?? そんな物語の世界じゃないんですから。言わなくても分かってもらえるは甘えですよ。なんかこの話の兄、もう一悶着くらい起こしてそうですよね。『お前の本能を呼び起こし日本のサッカーを変えるのはアイツなのかもしれない』とか何とか言って、弟が拗らせる羽目になりそう」
どうしよう。心当たりがある。すごく心当たりがある。冴の膝がガッタガタ震え出した。
「うーん何と言うか、語彙は豊富だけど、それを人間関係の円滑化には使えないタイプなんですよね。典型的なレスバトラー。あと、弟に対して無自覚に甘い。ある意味相手に与える影響力を見誤ってる感じがします。本人的には上手く鍛え上げてるつもりなんでしょうけど、割と弟の情緒はぐちゃぐちゃですし、殺意の波動が別の場所に向かってる可能性もありますからね。弟も弟であらぬ人間に殺害宣言とかしてそう。並の人だったら気絶してますよ」
冴の貧乏ゆすりのスピードが早くなった。以前「凛に『絶対殺す』って言われたけど…アイツあれ以外レパートリーないのかな?」と苦笑する潔の言葉を思い出したからだ。
「兄の方もプライドとか情とかあるんでしょうけど、それにしたって関係ない人物を巻き込むのはいただけないですね。間に挟めば問題が解決するわけでもあるまいし。どっちも折れないから面倒なんですよね。加えて自分の意志を貫き通しながら相手と関わりたいからこんがらがった状況になってる。一度ぶっ壊して再構築した方が対処が楽ですね。こういうのは兄からが定番なんでしょうけど、逆に弟から別れを切り出すのはどうでしょう? 弟から『お前は必要ない』って告げられるの。ここまでの弟はプラスだろうとマイナスだろうと変わらない激重感情を兄に向けてきたわけだし、好きの反対は無関心とは古来からよく聞きますしね。今まで追いかける側だった人間が追いかけられる側にシフトチェンジするっていうのもロマンがあっていいですよね」
ニコニコと邪気のない顔で笑う彼女。彼女視点では妄想を語っているだけなのでダメージ判定は下らない。しかし冴にとって、その台詞はもはや時速100キロで飛来する六法全書と同レベルだ。つまり、とても痛い。
「俺は、どうしたら…」
凛が冷たく『必要ない』と言い捨てる場面を想像して、冴の顔が僅かに青くなる。落ち着け、糸師冴。素数を数えるんだ。2歳の時のふくふくほっぺたの凛、3歳の時の舌足らずで『にーちゃ!』と呼んできた凛、5歳の時のサッカーボールで転んで大泣きしてた凛…
落ち込む冴。マイペースな喜安。ちなみにこの間、士道は下ネタを延々唱えている。自分を見失わないためだろうか。だとしたら、こんなアイデンティティ確立の仕方は嫌だ。
「えっ、と…何故冴選手がショックを受けているのか分からないんですけど。大丈夫です、人は誰しも変わります。いつまでも側にいられないなら、側にいれる関係に作り直せばいいんですよ」
俯いていた冴に光が差す。背筋を伸ばしこちらを見据える喜安の姿は一種の宗教画のようだ。
「家族、友達、ライバル、多いに結構。でも別に、それだけが全てじゃないでしょう? 人が各々違うように、ぴったりハマる関係なんてひと握りしか存在しません。それでいいじゃないですか。壁にぶつかって乗り越えて、関係性をラベリングし直せばいいじゃないですか。あなたと相手に縁があることは、未来永劫消えやしないんですから。繋がる先が同じなら、その間を結ぶ名前が何であっても大して変わらないですよ」
いつの間にか、スタジオは静寂に包まれていた。ティファニーブルーの瞳がぼんやりと喜安を捉える。それはどこか迷子の少年のようで——あの雪の日に置いてきた後悔の形によく似ていた。
ずっとこのままだと思っていた。自分は世界一のMFになって、凛を世界一のFWにすることが自分の使命なのだと。そのためなら兄弟としての情も切り捨て、障害として立ちはだかる他ないのだと。
けれど、もういいのだろうか。もう一度、
「…まだ、俺でも間に合うか?」
「はい、たぶん! 冴選手ならきっとなれます! 素質は充分ですから!」
「……上手くいかないかもしれない」
「失敗くらい誰にだってあります。大切なのは自分の意志ですよ。悩んで、戦って、成長することにこそ意味がある。こんなところで何弱気になってるんですか、エゴイスト。人の人生に介入するのは、あなた達の得意分野でしょう?」
「…ああ、そうだな」
どこかすっきりとした様子で頷く冴。喜安が両手で冴の手を包み込む。
そしてふわりと微笑んで——
「だから……是非なってくださいね、プリキュア!!」
「ふざけんなああああああ!!!!!!」
怒号が響き渡る。
カメラの隙間をかき分けてスタジオに乱入してきたのは、ターコイズブルーの瞳を鋭くぎらつかせる男性。彼は相当頭に血が昇っているのか、どこに向けてか分からないキックを放つ。衝撃でブレる画面。
呑気に笑う喜安キャスター。激昂する凛。最後に、世にも珍しい冴と士道のチベスナ顔ツーショットが映され——放送は終了した。
────────────────────────
千切豹馬は後悔していた。
少し長めの休みを取り、久々に日本に帰って来たのが数日前。天気も良いし、家でゴロゴロするよりは、と外に出ることにした。燦々と照る陽射しに賑やかな街路。歩くだけでも気分が上がる。折角だしどこか寄って行こうか。確か、先日こっちに進出したブランドがあった筈だ。千切も贔屓していた系列店のやつ。そうだ、そうしよう。今季の新作を思い浮かべれば、自然と唇が微かに弧を描いた。それがいけなかったのかもしれない。
「オニーサン、今ひとり〜?」
「遊ばな〜い?」
「あー…」
派手なネイルと化粧を拵えた女性達に、千切は察する。これ、ナンパか。
「すんません。そういうのは、ちょっと」
務めて物腰柔らかに断るものの、女性達は全く引かない。むしろドンドン距離を詰めてくる様子に、千切の眉間のシワが深くなる。身バレ防止のために変装していたのが仇になったか。
しかしここで変装を解いてしまえば場は大混乱になるだろう。何より、貴重な休みが潰れてしまう。穏便に済ます方法はないか、と考えている間に、痺れを切らしたのか女性達が手を引っ張って来た。
「ええ〜っ、いいじゃん! オニーサンもヒマでしょ〜?」
「ウチらオススメの店あるからさぁ〜」
「お前らいい加減に……!」
無遠慮に絡みついてくる手足に苛立ちが募る。声を荒らげ、千切が手を振り払おうとしたその時——
「あーっ、兄さん! やっと見つけた!」
パッと辺りが拓けるような声が響いた。
奥から現れたのは小柄な女性。メガネをかけ、暖色のストールを身につけている。その姿に千切は漠然とした既視感を覚えた。
何だろう、どこかで見たことあるような…?
近づいてきた彼女は、纏わり付いている女性達が目に入っていないような気迫で千切の腕を掴む。
「もうっ、少し目を離した隙にすーぐほっつき歩いて! 探すの大変だったんですから!」
どういうことだ。自分に妹はいない筈だが。
困惑する千切に対し、全身で怒っています! と表現する彼女は、さりげなく女性達を遠ざけているように見える。目が合うと、パチリとウインクされた。
……合わせろ、ってことか?
「わ、悪い…」
こんな感じで良いんだろうか。
ぎこちなく頭を掻いてみる千切。すると彼女はみるみるうちに目を三角にした。あれ?
「悪いと思うなら最初からしないでください! 元はと言えば兄さんの将来を心配して一家全員集まったんですよ!? 三十路過ぎても定職に就かずフラフラ、フラフラ! お母さん、『パチ屋にでもなるつもりか』ってカンカンでしたよ!」
「エッ」
何それ聞いてない。
「それとも、また綺麗な女の人に養ってもらうんですか? 今みたいに、街中で引っかけて? それで刀傷沙汰になって裁判になりかけたの、私ちゃんと覚えてますからね」
「エッ」
何それ聞いてない。(2回目)
固まって二の句が継げない千切を無視して、彼女は女性達に向き直るとぺこぺこ頭を下げ出す。へにょんと八の字になった眉毛が哀愁を漂わせて何とも痛々しい。
「ごめんなさいお姉さん方。兄がご迷惑をお掛けしました。もうなんとお詫びを申していいか…」
「あ〜…いや、ダイジョブデス」
「…うん、全然、気にしなくていいんで……」
何だかこっちが誘ったことになってないか。
明らかに引いたような声色で二歩程後退りつつ手を振る女性達。最後は「妹さん、苦労してるんだね…」と彼女の肩を叩きながら去って行った。呆然と立ち竦む千切。
えっ、一体なんだったんだ?
「ふぃー、行ったか…」
ぽつりと呟いた彼女が後ろを振り向く。そして、
ガバっ!!!!!!
「誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」
地面にめり込みそうな勢いで彼女が頭を下げる。直角90度の綺麗なお辞儀だった。
「すみません…ナンパから助けるためとは言え、不名誉な冤罪を着せてしまって……」
「いや…むしろ助かった。ありがとな」
あのまま別れようとする彼女を引き留め、二人はカフェに来ていた。テーブル向かいで縮こまる彼女に、千切はケラケラ笑って返す。彼女の前に置かれたガトーショコラは心ばかりのお礼だ。
どうしてありもしない設定を出してきたのか聞くと、本人曰く「あれが一番納得してもらえる方法だと思ったからですね」とのこと。
「だって、いくらイケメンだろうと三十代で職なし、パチカス、ヒモなんて紛うこと無き事故物件ですよ。まともな人なら関わりたくない相手です」
つまり彼女はあの一瞬で千切の状況を判断して寸劇を開始したということだ。そう考えると、今目の前で「女の人って意外とシビアなんですよ?」なんてフォークを動かす彼女が只人じゃないように思えてくる。
「本当は彼女のフリするのが手っ取り早いんでしょうけど、初対面ではやり辛いし、スキャンダルとかもありますから」
「…スキャンダルって」
まさか、サッカー選手だとバレていたのだろうか。
千切の背中にひやりと冷たい汗が流れる。が、どうやら違うらしい。
「ああ、違います。お兄さんじゃなくて、私の方です。これでも、ちょっとした有名人でして」
頬をぽりぽりする彼女はどうにも気恥ずかしそうだ。「このメガネとかストールも一応、変装用なんですよ」とこぼして、彼女は千切の方へ首を傾げた。
「スキャンダルって言葉に反応するってことは、もしかしてお兄さんも有名な方?」
「いや全然」
嘘である。
この男、現在フランスのクラブチームの最前線で活躍中。敵からは『赤豹』と恐れられ、先日来日した際には全てのニュースの話題を掻っ攫っていった。
この男が有名じゃないのなら何を有名と言えば良いのか。
しかし、そうか。彼女も有名人なのか。ならあの漠然とした既視感も説明がつく。「お兄さんほどのイケメンなら、有名人でもおかしくないんだけどなー」と頬を膨らませる彼女に苦笑が漏れた。やめてそこ深掘りしないで、正解だから。
ガトーショコラを完食した彼女がパチンと手を叩く。
「あ、そう言えば名乗ってませんでしたね! 私は——」
きらきらとまつげが震え、口元が柔らかな笑みを象る。彼女が口を開きかけたタイミングで、突如飛び込んできた銃声が和やかな空気を打ち消した。
「全員そこから動くなァ!!!!」
おっと、今日は厄日らしい。
「ワオ。分かりやすく事件の匂いが」
「こんな街中で銃って、古典的過ぎねえ?」
「それで、どうします? テーブルの下に潜って頭抱えます?」
「それ避難訓練な」
コソコソと密談する二人。言うまでもないが、奥では男が店主に銃を突きつけている最中だ。さすが青い監獄を生き残ったスピードスターと伝説のキャスター。面構えが違う。
「お前らは人質だ。くれぐれも逃げようとするんじゃねえぞ…警察に連絡しようもんなら一発ズドン! だ」
黒づくめの格好をした男は威圧的にカフェの客を睥睨する。カチャリと構えられた銃が偽物でないことは、先ほどの威嚇射撃で実証済みだった。
「あっ、思い出しました。あの人、今朝報道されてた脱獄囚さんです!」
こそりと彼女が囁いた。何でも、強盗や殺人未遂を幾度となく繰り返してきた男で、現在も警察が捜索中らしい。それで焦ったが故にここに立てこもったのだろう。
「俺ァよお、もっとシャバの空気を味わいてえんだよ。のうのうと暮らしてる奴らの絹を割くような悲鳴が心地良い! まるで暗黒の大地に君臨する
頭大丈夫だろうか?
いや、脱獄してる時点でアウトか。
「…何語だ?」
「ワタシヨクワカラナーイ……」
おい仕事を放棄するな
事件現場とは思えないほど呑気な会話を広げていると、部屋の一角から火がついたような悲鳴が上がった。
「うわあああああああああああん!!!」
恐怖が限界に達したのだろう。年端もいかないような少女が泣き叫んでいた。男は不機嫌に顔を歪め、ジャキリと銃口を少女に向ける。母親が血相を変えた。
「うるせえ!!」
「ちょっと、子供に銃なんて…!」
「黙れっつってるだろ!! お前も撃たれてえのか!?」
今度は母親にも銃口を突きつける男。母親は怯えたように身体を強張らせる。
「…気分悪ィな」
ボソッと、千切は男に聞こえないほどの声で低く呟いた。いくらエゴイストの千切と言えども人並みの正義感はある。まだ小さな子供と母親に向かってわざわざ抵抗の道を塞いで脅す男に千切は不快感を覚えたのだ。
舌打ちひとつこぼそうとして…隣の気配が感じ取れない状況にスッと背筋が冷える。いつの間に…!? 咄嗟に目だけで周りを確認する。幸いにも彼女はすぐに見つかった。
「お母さん、落ち着いてください。子供さんに緊張がうつってしまいますよ」
「あなたは…」
彼女はあの親子の前にいた。
何かに気づいたかのように目を見開く母親に、彼女は無言で静かに微笑む。そして「君もね、」と少女の頭に手を乗せた。
「ゆっくり息を吸って、吐いて。だいじょうぶ、きっと何とかなるよ」
繰り返し、繰り返し。脳に染み渡るような柔らかな声音で彼女は少女に笑いかける。やがて少女の震えが治ると、彼女はそれまでのあたたかな表情を拭い去り、真顔で千切の方を振り向いた。
「お兄さん、何か策はありますか?」
「…一応、方法ならある」
千切は渋々口を開く。とは言っても、方法とは呼べないほどその場任せなものだが。
「俺がバケツを蹴って、アイツに当てる。銃さえ吹っ飛ばしちまえば、後はこっちのもんだ」
掃除用具入れに入っていた軽いポリバケツ。これなら蹴っても足を痛めないだろうし、多少ずれたとしても面積があるからカバーできる。コントロール? 誰に物言ってやがんだ、プロサッカー選手だぞ??
しかし、ひとつだけ問題があった。
「ただ、アイツがこちらを見ていない間に蹴らなきゃいけない。かと言って全員が動けないこの状況で立ったりなんかしたら、すぐ撃たれてお陀仏だ」
ほんの一瞬。ほんの一瞬だけ、気を逸らせれば。
千切が歯噛みしていると、彼女がスッと顔を上げた。爛々とした強い眼差しが千切を射抜く。
「分かりました。私に行かせてください」
「…いいのか? 怪我するかもしれないんだぞ?」
「任せてください! こう見えて割と丈夫ですし、何より…放っておけませんから」
彼女がちらりと横へ視線を走らせる。それだけで、彼女の想いは感じ取れた。
「……そうだよな。このまま好き勝手やられるのも、寝覚め悪いよな」
じわりと湧き上がってきたのは青い監獄で培った闘争心。真っ赤な目がギラリと輝き、口元に好戦的な笑みが浮かぶ。
「私が囮になりますので、その隙にお兄さんは蹴る準備を整えてください。ここからは生きるも死ぬも一連托生ですから」
「ばーか、俺は失敗しねえよ。そっちこそ、あんま気負うなよ」
「…優しいんですね」
彼女が目を伏せる。声帯を使っていないような溜息になり損ねた声。床についた掌から冷えた温度が伝わり、千切の赤い髪が揺れる。次に目蓋を開いたとき、彼女の瞳にはギラリとこちらを貫くような覚悟が滲んでいた。
——さあ、決戦の時は来た。
「ひとつ聞きたいんだけど」
「何でしょう?」
「どうやってアイツの気を逸らすつもりだ?」
千切の台詞が予想外だったのだろう。彼女が目をぱちぱちさせる。そしてわずかに眦をゆるめた。
「あれ、言ってませんでしたっけ。私、お喋りは意外と得意なんですよ?」
ニコリと笑った顔が記憶と重なる。
まさか、彼女の正体って——
「おにーさん! 全身黒コーデに身を包んだおにーさん! あなたのことですよ、馬狼選手とネス選手とカオナシを足して3で割らなかったような顔のあなた!!」
「どんな顔だボケェ!! てかそれ俺か!?」
緊迫感が一気に崩れ去る。というか、脱獄囚ノリいいな。
「そうですあなたです! …今、人生楽しいですか? 幸せですか? 周りの人ばかりが得をして、自分だけが搾取されている。誰も自分を助けてくれない。誰もあなたの言う通りに動いてくれない。そう思ったこと、ありませんか?」
「ハァ? ……んだよ、いきなり」
「そんなあなたに、教祖様のご利益が詰まったこの壺をご紹介!!」
「霊感商法かい!! というかそれ、今絶対ここでするべき話じゃないだろ!」
うん。これは男の言っていることが正しい。
しかし彼女は「やれやれ、空気の読めない人ですねぇ」とばかりにアメリカンな仕草で首を振って見せる。何でだろう、ちょっとイラつく。
「いいですか、もともと宗教に入る人って大体は何かに縋りたかったり、逃げ場が欲しい人たちなんですよ。つまり立てこもっていつ殺されるか分からないこの状況、我が宗教に入信する人が増える大チャンスってわけですよねぇ!」
「他人のピンチを喜ぶなよ!!」
どうしよう、今だけは脱獄囚の味方をしたい。
「あなただって何かに縋りたいってこと、あるでしょう? 例えば学生時代、デビューに失敗して友達を作れなかったあの時。今更行動しようにもグループは粗方決まってて、仕方ないから『一人でも別に平気ですよー。むしろ一人が好きなんですよー』って顔してたでしょう? 昼休みは行く宛もなく教室で本を読むか寝たふり。一見頭良さそうに見せるのに成績は中の下。いや、部活に打ち込んで疎かにしてる人が多い分、実際はもっと下…? 学校行事でクラスのリーダー的存在に話しかけられるも上手く受け答えできず、夜寝る前に悶々としてそう。でも、気にしないでいいんですよ。その子、あなたが思う程あなたに興味ありませんから」
うわぁ、えげつない。
「同じゲームやってる人見つけて話しかけたはいいけど会話が続かなくて『このゲーム面白いよねー』『わかるー』くらいのうっすいやり取りで終わってしまったり。何かにつけて『あっ』から始まるし、語尾が消えるせいで何度も言い直すことになったり。総合的に見て平均より下なのに、何故か謎のプライドを持って周りを見下してるでしょう? 悪い所を探して『でもアイツらはこんなこと出来ないし』ってイキってるでしょう? 無様ですねぇ。そんなんだから卒業アルバムの裏ページに、先生からの『よくがんばりました』みたいな雑の極みコメントしか書かれてないんですよ」
「うるさいうるさいうるさい!!」
脱獄囚が耳を押さえて叫ぶ。しかし彼女は止まらない。
「どうです? 当たってました? そうやって陰険に傲慢に卑屈に何十年も暮らしてきたせいで、ここまで転落してきたんですものねぇ?? ねぇ今どんな気持ち? 圧倒的弱者である小娘一人に煽られて、どんな気持ち??」
「だまれぇ!!!!」
男は血走った眼で彼女の方へ銃の照準を合わせる。にまりと下卑た笑みを浮かべた彼女が一瞬奥に視線をやって、唇が音もなく動いた。
——今です!
「…完っ璧」
彼女が作ってくれた、完全に無防備な隙。それを見逃す千切ではない。
床にバケツを置き、踏み込んで思い切り足を振り抜く。計算し尽くされた、一番得意なシュートの形。いつもと重さも形状も違うバケツは、美しい放物線を描いて男の顔面へと迫り——
GOOOOAAL !!!
ボゴッ! という鈍い音と共に床に男が倒れ伏す。離れたところに転がる銃と青いポリバケツ。喧騒の中に混じる彼女の「銃を遠ざけて! 手伝える人は、あの人の拘束をお願いします!!」という声を、千切は異世界の言語を耳にするような気持ちでぼんやりと聞き流していた。
「これで警察も呼べましたし…大変な一日になっちゃいましたね」
「たまたま入ったカフェで立てこもりとか不運にも程があるもんな」
表に出てきた二人は揃って溜息を吐く。陽が傾き、空が淡い黄に発光しているようだ。肌寒い風が吹き荒ぶ。
「なぁ、」と千切が呼びかけると、彼女は無警戒に振り向き首を傾げる。それに、僅かな罪悪感を覚えた。
「俺がここにいたこと、内緒にして欲しいんだ」
彼女がきょとんと目を丸くした。それから、ふにゃりと笑う。
「ふふ。やっぱりお兄さん、有名人だったんですね」
「…悪い」
「いいですよ。こっちで話は通しておきますね。頼りになる知り合いがいるんです」
ああやはり、彼女は優しい。千切の願いを突っぱねることも、訳を聞くことも出来たのに、彼女は全てを受け入れた。こちらが気に病まないように、軽いトーンで。
だからきっと、この優しさには報いるべきなのだろう。今日の事件でお互いに背を預け合った、秘密の共犯者のような彼女。そんな相手にさえ正体をバラしたくないと思うのは、ただの千切の我儘だ。
「それで、俺の名前は——」
どくどくと心臓が跳ねる。ち、の字を紡ごうとした唇がそっと押さえられた。彼女の人差し指だった。
「言わないで」
その瞳の力強さに、芯の通った声に、千切は無意識に動きを止める。
「…名前は、次会った時に教え合うことにしましょう。そっちの方が素敵ですし」
「……いいのか?」
だってそれは、喉元までせり上がってきた言葉を千切は飲み込む。適当な理由をつけてはいるが、それはあまりに俺に都合が良すぎる。
「いいんです。それが、いいんですよ」
彼女がゆるゆると首を振る。遠くからファン、ファンという音が聞こえてきた。パトカーが来たのだろう。……時間切れだ。
また会えるか、なんて野暮なことは聞かない。会えなかったらそこまでなんだろうし、会えたならもう一度「初めまして」をやり直したらいい。全ては運次第だというのに、千切は何故かひどく気分が良くて仕方なかった。
二人は目を合わせて、どちらからともなく近づく。そして、拳をコツンとぶつけて。
「じゃあ、またな」
「では、またいつか、お会いしましょう!」
さようなら、また逢う日まで。
——晴れやかに手を振る彼らの再会は、そう遠くない。
────────────────────────
おまけ
【好きなエピ】《突撃☆エゴイスト》全話一挙放送決定!【教えて】
・
・
・
518:名無しのストライカー
俺は斬鉄選手との問答が好きだな
喜安「(好きな動物がカブトムシと聞いて)カブトムシですか、いいですね〜! 私も昔よく虫取りしたんですよ。クワガタとかダンゴムシとか」
斬鉄「ダンゴムシは虫じゃなくないか? クモは虫だけど」
喜安「えっ、クモの方こそ虫じゃないのでは?」
斬鉄「???」
喜安「???」
519:名無しのストライカー
※どっちも虫じゃないです
520:名無しのストライカー
≫≫518
わかる。会話聞いてるとこっちの脳みそまで溶けてく感じするよね
斬鉄「Wednesdayって何月だ…?」
喜安「水無月じゃないですか……?」
521:名無しのストライカー
(色々と)混ざってる混ざってるぅ!
522:名無しのストライカー
斬鉄選手は歯医者の息子でインテリメガネだろ! なんで頭悪い扱いになってるんだよ!
…とか思ってた時期もありました(白目)
523:名無しのストライカー
斬鉄「本の虫? どこに生息してる虫なんだ?」
524:名無しのストライカー
むしろ何で喜安はこんなんで玲王選手の株取引の話についていけるんだよ
525:名無しのストライカー
喜安「〇〇の株はAIやメタバースに投資するネット企業の増加もあり、売上高見通しが市場予想を大きく超え〜」
凪「(信じられないものを見る目)」
526:名無しのストライカー
喜安「△△の株は先日今期の業績見通しを下方修正したため、株価が急落。失望売りが加速しており〜」
斬鉄「(状況が理解できない目)」
527:名無しのストライカー
喜安、お前はどこに向かってるんだ
528:名無しのストライカー
本人的には番組で取り扱った情報をそのまま引き出してる感覚らしい。まあいわゆる記憶媒体のイメージだな
それでもやってることおかしいのは変わりないが
529:名無しのストライカー
というか白宝回であんなボコボコにしてたのに、そこ仲良いの?
530:名無しのストライカー
凪選手は少し苦手っぽいけど、玲王選手とは仲良いぞ。定期的に連絡取るらしい
531:名無しのストライカー
玲王「喜安さん? 良い人だよ、困ってることはないか常に気にかけてくれるし」
喜安「息子が悪い男に貢いでるってこんな気持ちなんでしょうか…」
532:名無しのストライカー
≫≫531
抱く感情の乖離が激しいんですが
533:名無しのストライカー
≫≫531
いつの間にか玲王選手が息子になってて草
534:名無しのストライカー
まあ言うて白宝回がドロッドロ人間関係の煮凝りみたいな空気感だったからな。心配するのも無理はない
535:名無しのストライカー
玲王「凪が俺を捨てた(意訳)」
凪「玲王が俺を捨てようとしてる(意訳)」
喜安「凪選手って幼稚園児だったんです?(すっとぼけ)」
536:名無しのストライカー
≫≫535
喜安くんさぁ……
537:名無しのストライカー
≫≫535
キミってヤツは、本当にシリアスクラッシャーだね!
538:名無しのストライカー
俺は凪選手との絡みがもっと見たい
喜安「ヨーロッパリーグでの活躍、おめでとうございます! 凪選手も御影選手もスーパープレー連発してましたね! でも、無理は禁物ですよ」
凪「ん、ありがと」
喜安「仲良しなのは結構ですけど、なるべく縛るのは程々に…真冬の街路に置き去りにするとかは絶対やめて下さい」
凪「君の中で俺は一体どんな立ち位置にいるの?」
539:名無しのストライカー
≫≫538
喜安の脳内で、凪ヤバい奴認定されててワロタ
540:名無しのストライカー
2? 3? 回目の取材で「女の人殴ってそうとは思わないけど、誰にも見つからないように監禁はしてそう」って直接凪選手にぶちまけてたもんな
541:名無しのストライカー
≫≫540
あの時の凪選手の形容しがたい表情は忘れられませんね
542:名無しのストライカー
≫≫540
ああ、あの玲王選手が台パンしたやつ
543:名無しのストライカー
机「かなり恐怖を感じた」
凪「かなり恐怖を感じた」
544:名無しのストライカー
凪選手と玲王選手ってめちゃくちゃ親密だったよな? こんな対応してもキレられないわけ??
545:名無しのストライカー
玲王「凪が嫌な思いするのは嫌だけど、喜安さんといると見たことない凪の表情が味わえるから、これはこれで良いかなって思ってる」
546:名無しのストライカー
≫≫545
ご、業が深い…
547:名無しのストライカー
≫≫545
やめろ御曹司ぃ!! その先は沼だ!!!!
548:名無しのストライカー
玲王選手が闇の腐女子みたいなこと言ってるって一時期話題になったし、これに乗じた二次創作が増えたし、リアコ村は当然のように燃えたし、蜂楽もドリブルが上手い
549:名無しのストライカー
はいはーい! 我のお気に入りはチベスナ回のキュア士道です!!
550:名無しのストライカー
キュア士道wwww
551:名無しのストライカー
キュア士道やめぇやwwwwwww
552:名無しのストライカー
勝手にプリキュアにして差し上げるなww
553:名無しのストライカー
今でも士道選手、ときどき洗脳されてるもんな。個人的にはばろばろきゅんとタメ張れるレベルのグロ
554:名無しのストライカー
≫≫553
グロとか言ってやるなよ可哀想だろうが(いいぞもっとやれ!!)
555:名無しのストライカー
≫≫553
メイド馬狼は意外と需要あるんだぞ!(こういうおふざけ大好きですペロペロ)
556:名無しのストライカー
≫≫553
特級呪物コンビ万歳!!(お前ら落ち着けって)
557:名無しのストライカー
≫≫556
本音が隠し切れてないんよ
558:名無しのストライカー
≫≫557
(ファミチキください)
559:名無しのストライカー
≫≫558
(コイツ直接脳内に…!?)
560:名無しのストライカー
いやいや、士道ときたらやっぱ凛だろ。あの収録終了2分前に決めた華麗なるドロップキック、俺でなきゃ見逃しちゃうね
561:名無しのストライカー
イヤホンを繋ぎスマホで視聴していたワイ、無事に鼓膜が死亡
562:名無しのストライカー
チベスナ回はキュア士道と弟乱入に意識を持っていかれがちですか、私的には喜安にプリキュア勧誘されて、恍惚と魅入られてる糸師冴も芸術点高いと思う
563:名無しのストライカー
おっと目の付け所が変態な奴が現れたぞ??
564:名無しのストライカー
弟との不仲に心を痛め絶望に浸る糸師冴。無表情ながらその駒鳥の羽根に似た瞳に微かに傷ついた色を載せるのです。そんな彼に真っ直ぐ伸ばされる一人の手。その白くて柔い肌に包まれた時、彼は漸く救いという曖昧な輪郭に触れることが出来たのです。月の光のように優しく、天に降る星のように煌めく甘やかな希望。さあ世界よ、崇め奉れ。これが喜安田亜子だ。𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬 𝑭𝑶𝑹𝑬𝑽𝑬𝑹 ____
565:名無しのストライカー
≫≫564
うーんなるほど、既に脳を焼かれた方でしたか
566:名無しのストライカー
≫≫564
こういうスレでたまに出てくる無駄に語彙力ある文豪なんなの?
567:名無しのストライカー
消音すれば映画のワンシーンみたいな神々しさだもんな。全ては糸師冴の顔面が大☆天☆才! なのが悪い
568:名無しのストライカー
≫≫567
某ボカロ曲みたいにすんな
569:名無しのストライカー
ちょっと待ってwwwwwwww
570:名無しのストライカー
どうした、いきなり笑い出して
571:名無しのストライカー
いや、俺≫≫569な
士道選手のピー音のリズム、後半から繰り返しになってね? と思って調べたらさあ…
モールス信号で「助けて」だったwwww
572:名無しのストライカー
≫≫571
まじ?
573:名無しのストライカー
≫≫572
マジマジ。「・・・ーーー・・・」のリズムなんだけど、モールス信号に直すと「SOS」になってる
574:名無しのストライカー
つまり士道選手は、このメッセージを伝えるために下ネタを計算して言っていた…!?
575:名無しのストライカー
すごいと褒めるべきか、それ以前に下ネタを止めろというべきか分からない
576:名無しのストライカー
喜安「わ、すごい! モールス信号出来そうですね!」
壮 大 な 伏 線 回 収
577:名無しのストライカー
≫≫576
誰も回収するとか思わんのよ
578:名無しのストライカー
好きなエピソード聞かれると迷うけど、我牙丸パイセンの熊鍋回
579:名無しのストライカー
インタビューのはずが、最終的に「これで貴方も山育ち! 一週間生き延びられるサバイバル講座」になってたからな
580:名無しのストライカー
あれで喜安さん→我牙丸選手への呼び名が「師匠」になったのてぇてぇ
581:名無しのストライカー
ワイはキングとのプロレスかな
他にはない良さがある
582:名無しのストライカー
≫≫581
そこ交流あったっけ?
583:名無しのストライカー
≫≫582
前に悩んでた時、キングに相談乗ってもらったらしい。今でも懐いてるよ
喜安「(疲れが天元突破した状態でキングを見つけて)ママぁ…!」
馬狼「あ゛ぁ?? ママじゃねぇ」
喜安「じゃあパパ…」
馬狼「パパでもねぇ」
喜安「お兄ちゃん!!」
馬狼「あ? 何だ…ってお前妹じゃねぇ!!」
584:名無しのストライカー
面倒見いい馬狼たゅカワイイね♡
585:名無しのストライカー
≫≫584
キッショ
586:名無しのストライカー
≫≫584
氏ね
587:名無しのストライカー
≫≫584
太平洋の底に沈んでろ
588:名無しのストライカー
≫≫585 ≫≫586 ≫≫587
(´;ω;`)
589:名無しのストライカー
俺は千切選手とのやり取りが好き
テンポ良いし波長合ってるからか安定して面白い
590:名無しのストライカー
初登場回はビビったよな。めっちゃ親しげに話してるし。主に「そこ知り合いだったの!?」っていう衝撃で
591:名無しのストライカー
喜安「今日のゲストは、千切豹馬選手です! …お久しぶりですね」
千切「ああ、随分早い『また』だったな」
喜安「ふふふ、元気そうで何よりです」
592:名無しのストライカー
SNSが軒並黒アイコンになったリアコ大量虐殺事件。匂わせ女は良い暖炉の炎になってくれましたね
593:名無しのストライカー
あそこの二人、判断が早い&覚悟ガン決まってるから交わす会話全部ハードボイルドに聞こえるんだよな。誤解するのもしゃーなし
594:名無しのストライカー
本人たちの発言ですぐ沈静化したけどな
595:名無しのストライカー
千切「ナンパ断ろうとした結果、30代職なしパチカス女たらしになったのは初めてだわ」
喜安「その節は本当に…」
千切「しかもその後立てこもり事件に遭遇するし」
596:名無しのストライカー
お互い単身の時は何ともないのに二人になった途端厄災に見舞われ出すの、端的に言って頭おかしい
597:名無しのストライカー
これまでの被害実績
・立てこもり
・交通事故×3
・誘拐事件
・引ったくり
・爆弾予告←New!
598:名無しのストライカー
日本のヨハネスブルクはここだった…??
599:名無しのストライカー
喜安「ちなみにこの放送が始まるまでカメラ3台とマイク5本がお釈迦になりました」
不憫がすぎるのじゃ〜_(┐「ε:)_
600:名無しのストライカー
本人たちの相性がいい分、あの不運さはすごく残念。撮れ高はバンバンとれるのに、命の危機が二人を放っておいてくれない
601:名無しのストライカー
≫≫600
「命の危機が二人を放っておいてくれない」
何だそのパワーワード
602:名無しのストライカー
≫≫600
声に出して読みたい日本語
603:名無しのストライカー
≫≫600
やっすいメロドラマのキャッチコピーにありそう
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────────────────────────
登場人物紹介
喜安田亜子
《突撃☆エゴイスト》の総合司会。
図太さに磨きがかかってきた。一度潜り込んだら他者の干渉を許さない妄想トリップと早口でも聞き取りやすい滑舌が持ち味。人の話はあんまり聞いてなかったりする。
徐々にサッカー選手との交流が増えつつある。
凪誠士郎
今回の被害者その①
玲王について行った結果、とんでもねぇ目にあった人。もう番組には参加したくないけど、喜安とは定期的に会うことになる。これぞ
喜安からの認識は過去にDVしてたダメ男。わりとかわいそう。
御影玲王
今回の被害者その②
面白そうという好奇心の結果、様々なものを犠牲にベターを勝ち取った人。
満遍なくボコされてはいるが、打たれ強いので何度でも立ち上がる。喜安からの認識はダメ男にハマる被害者。最近開けてはいけない扉が開きそう。
糸師冴
今回の被害者その③
音MADが流行した時に本編視聴したはずなのにすっかり忘れてた人。
凛が割り込んでこなかったらそのまま洗脳されてた。危なかった。もし洗脳されていたら士道と一緒に「ふたりはプリキュア!」していた未来があったかもしれない。
士道龍聖
今回の被害者その④
危うくプリキュアになるところだった人。ちなみに規制音はリアルタイムで音響さんが入れてる。
喜安の爆発は好きだけどそれはそうとして近づきたくない。今後テレビ局で喜安に会うたびに熾烈なカバディ状態になる。
糸師凛
今回のMVP。
凪に忠告したし、冴と士道の収録現場に生身で飛び込んだ。キックで壊した三脚やカメラはちゃんと自費で弁償する。
後で士道から労いのメールをもらった。「
千切豹馬
貴重な休日を潰された人。二人ともすごく気が合うが、恋というより戦友。
単一だと問題ないけど二人揃うと(ダメな方の)化学反応が起こっちゃうタイプ。書き始めの頃は「強盗+誘拐+爆弾」に遭遇させようと思っていたので、ポテンシャルはそれくらいある。
コメント欄より
缶詰のパイナップルさん
ヒント:ブルーロック属性黄色インナーカラー系男子。
かっぱえびせんさん
ヒント:ブルーロック属性目隠れ系男子。