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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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斬艦

本日は「孤島の学園迷宮」の発売日!


小説家になろう未掲載作品ですので、LINEアプリか書籍版のご購入で読むことが出来ます。


学生たちが記憶を失い、目を覚ますと知らない孤島にある学園で目を覚ますところからスタートする作品です。


孤島からの開放条件は、島にあるダンジョンを攻略すること。


見知らぬクラスメイトたちとダンジョンを攻略する主人公の物語となっております。

 嫌な気配を感じて外に出て見れば、空に浮かんでいたのは戦艦だった。


「首都星の空に戦艦はやり過ぎたな。カルヴァン、暗殺はもっとスマートにするべきだよ」


 周囲を見れば、ククリたち暗部が戦っていた。


 パーティー会場の雰囲気は最悪だ。


 皆が怯えてしまっている。


 そして、外に出てきた俺に向かって、敵が襲いかかってきた。


 それをククリの部下が止めに入り――そのまま自爆する。


 俺のために死んだ。


 当然だ。


 それがこいつらの仕事だ。


 だが――。


「死者は裏切らない。お前らの忠誠心は本物だったと認めてやる」


 ――死んで初めてそいつを評価できる。


 自爆した俺の暗部は、その役目を果たした。


 だから、俺もさっさと終わらせるとしよう。


 俺を追いかけてロゼッタが飛び出して、その後に天城が出てくる。


 ロゼッタの腕を掴んで連れ戻そうとしていた。


「天城、放して! ダーリンが!」


「ロゼッタ様、旦那様の邪魔になります。大人しく室内で待機してください」


 その光景を見てホッとした。


 外に出てきた方が面倒になる。


「二人とも、早く中に戻れ」


 すると、戦艦から対空兵器による攻撃が俺たちに降り注いだ。


 刀を振るって全てを弾き飛ばすと、土埃が舞い上がる。


 しまった!? これでは天城のドレスが汚れて――と、思っていたら高性能なドレスを用意しただけあり、天城は汚れ一つなかった。


「あのデザイナー、気に入った。専属で雇ってやろう」


 そして俺は、刀の柄を握る。


 姿勢を低く構え、そして呼吸を整える。


 天城がロゼッタを連れて建物の中に入ったのを確認すると同時、戦艦からの攻撃が俺に降り注いだ。


 流石に首都星で主砲をぶっ放すのは気が引けたのだろう。


 だが、それがお前らの命取りだ。


 俺を殺したいのなら、さっさと主砲で蒸発させるべきだった。


 もっとも――その対策もしていたけどな。


 悪党とは用心深くあるべきだ。


 本物の悪党は油断などしない。


 俺が外に出てきたのも、勝てるからだ。


 俺が直々に相手をしてやる。


「俺の技はいまだ師匠に遠く及ばないが――お前は俺の敵じゃない」


 本当に全力の一撃だ。


 今の俺の最大限を出し切る。


「一閃」


 空に浮かぶ巨大な物体に向かって放った斬撃は、特別に持ち歩いていた俺の取っておきの刀で威力が増幅されたように感じられる。


 普段よりも威力があるという実感と、そして空に浮かぶ物体が静かになったのを感じた。


 構えを解いて刀を担ぐ。


「問題はこの後だな」


 ゆっくりと戦艦の中心部に切れ目が入り、徐々にずれ込んでいく。


 空に浮かんだ巨大戦艦が、首都星に残骸を散らしながら落ちてこようとしていた。


 きっととんでもない被害が出るだろう。


 俺は正当防衛を言い訳にするつもりだ。


 俺を狙った奴が悪いのだ。


「まったく、首都星の警備はどうなっているのか」


 すると、視界の端に動物の姿が見えた気がしてそちらを見る。


 だが――何もいなかった。


「見間違いか? それよりも、これからどうするかな」


 落とさなければ俺たちが殺されていた。


 建物にはシールドを展開できるので、俺たちの安全は確保されている。


 問題は周辺地域だ。


 戦艦が落ちてきたら大変な事態となる。


 俺の責任を問われることになっても困るので、何とかしたいと思っていると――空から一機の機動騎士がやって来る。


 首都星近くに待機していた俺の艦隊から、どうやら飛び出してきたようだ。


 マシンハートを得た俺の愛機は、通信障害など気にしないらしい。


 俺の危機に文字通り飛んできた。


「お前はいい子だよ、アヴィド」


 アヴィドが俺の目の前に着地すると、二十四メートルという巨体なのに揺れ一つ起きなかった。


 星間国家の技術は凄いな。


 アヴィドが手を伸ばしてくるので、それを足場に駆け上がってコックピットへと飛び込む。


 そのままコックピットのシートに座り、操縦桿を握りしめた。


「アヴィド、アレを落とすと後が面倒だ。――お前の力を見せてくれ」


 アヴィドのエンジンが唸りを上げ、空へと舞い上がる。


 そして、そのまま崩れていく戦艦を――下から押し上げ始めた。


「いいぞ。そのまま宇宙に押し返せ!」


 アヴィドの出力が上昇していくと、落下していた戦艦が空中で押し留まり――そのままゆっくりと上昇を開始する。


 戦艦に比べれば小さな機体が押し返すパワーは驚異的だ。


「あははは! これが俺の力だ!」


 戦艦からは次々に脱出艇が出ていた。


 接触したことで敵からの通信が届く。


『た、助けてくれ! このままでは我々は――』


 俺を殺しに来たのに、何て連中だ。


 俺に助けを求めてきたぞ。


 俺は操縦桿から手を離して、頭の後ろで手を組んだ。


 脚も組む。


 アヴィドは自動で動いており、俺のやりたいことを実行している。


「そうだな。このままでは、お前らは死ぬだろうな」


『た、頼む! 我々は命令されて――』


「首都星に戦艦で乗り込み発砲したんだ。お前らは生き残っても終わりだ。逃げた連中は大変なことになるだろうな」


『め、命令されて――』


「知らん。そのまま死んでいけ」


 アヴィドが更に速度を上げていくと、液体金属で包み込まれた首都星の壁が見えてくる。


 戦艦が壁にぶつかると、液体なのでもちろん通り抜ける。


 だが、その外は宇宙だ。


『や、やめてぇぇぇ!』


 大勢の声が宇宙に出ると消えて、そして戦艦を押し返したアヴィドは右手に刀を持つのだった。


「何だ、斬り刻みたいのか?」


 返事をするようにエンジンを唸らせたので、俺は操縦桿を握りしめる。


 マシンハートを得たアヴィドが可愛くて仕方がない。


 わがままくらい付き合ってやる。


「いいぞ。お前がどこまで俺の動きを再現できるか――見せてみろ!」


 アヴィドで一閃を再現すると、目の前の戦艦を斬り刻んだ。


 各部がその動きに悲鳴を上げて、ダメージレベルがグリーンからオレンジに変色する。


 しかし、マシンハートを得たアヴィドは自己再生を開始し、各部のダメージを修復してしまった。


「やるじゃないか。これでもっと暴れることが出来るぞ」


 俺に返事をするように唸りを上げるアヴィドは、暴れ足りないようだ。


「そう焦るな。宇宙には刈り尽くせないほどの敵がいる。飽きるまで遊んでやる」


 それを聞いてアヴィドが少し落ち着いたようだ。


 目の前の戦艦はズタズタにされ、バラバラになっていく。


 その中の一撃がエンジンを直撃し、戦艦が爆発を起こしてしまう。


 宇宙にデブリが飛び散っていた。


「馬鹿共が――おっと、それはそうと」


 俺はアヴィドに隠していた錬金箱を取り出す。


 漂っているゴミにアヴィドが手をかざせば、重力を発生させゴミが集まってくる。


 アヴィドはそれを握りしめて固めた。


 錬金箱を使用して、それを黄金に変える。


 ただのゴミが黄金の粒子に変換され、その姿を黄金に変えた。


「問題なく使えるな」


 やはり、今後はアヴィドの中に保管しておこう。


 入れる人間は制限されるし、今のアヴィドはマシンハートを得た本物の俺の愛馬だ。


 ――相棒の方がいいかな? アヴィド、馬じゃないし。


「さて、戦艦も押し返したことだし、そろそろ戻るとするか。だが、カルヴァン――俺にようやく隙を見せてくれたな」


 今まで動きを見せなかったカルヴァンが動いた。


 これは俺にとって大きなチャンスである。


 しかも、首都星で戦艦まで動かしたのだ。


 これは大きな失態である。


「お前をどこまで追い詰められるか、今から楽しみだよ」



 その光景を見ていた案内人は呆然としていた。


「――え?」


 未だに何が起きたのか頭が処理をしてくれない。


 処理することを拒んでいた。


 何しろ、リアムが戦艦を刀一本で斬ったのだ。


「な、何で?」


 主砲ではないとは言え、対空兵器のレーザーを刀で受け止めていたのも信じられない。


 その上、戦艦を斬ったのだ。


 人一人の力など、戦艦の前では無力という前提が崩れ去ってしまった。


「リアムはもう、手のつけられない化け物ということか」


 案内人は膝をついてしまう。


 今の自分はリアムに勝てるだろうか?


 弱り切った自分では勝算がない。


「何を間違ったのだ。私は一体何を!」


 すると、アヴィドが戻ってきた。


 パーティー会場から出て来たのは――天城たちだ。


 リアムが一番に向かったのは、心配して駆けつけたロゼッタではなく天城だった。


 それを見た案内人が笑みを浮かべる。


「既にお前は倒せない。ならば、せめてその心に傷をつけてやる。消えない傷をつけられるなら、私はこの世界で消えてもいい」


 もう、リアムを倒せなくてもいい。


 ただ、絶望させたかった。



 パーティー会場は混乱していた。


 首都星で戦艦による攻撃を受けたので仕方がない。


 天城は着替えをする暇もなく、会場内を動き回って手伝いをしていた。


 そんな天城が廊下を歩いていると、急に人の気配がなくなる。


 先程まで大勢が行き来していたその場所が、妙なことに人が近付かない。


「――何か異変が起きているのでしょうか?」


 慌ててリアムのもとへ向かおうとすると、天城の前に不思議な存在が現れる。


「こんにちは、お嬢さん」


 それは燕尾服姿の男だった。


 細身で背が高く、目元が隠れるまでシルクハットをかぶっている。


 ただ、天城にはその姿とは別に――認識できない何か、として瞳に映っていた。


「貴方は何者ですか?」


 人の形をしている何か。


 天城には、案内人の姿がノイズだらけでよく見えない。


 データにはない存在だ。


 頭の中でアラームが鳴り響き、目の前の存在が危険だと知らせてくる。


「ロボットに答える必要はない。お前が死ねばリアムが苦しむのだ。それが全てだ」


 案内人が懐から取り出したのは銃だった。


「満身創痍の私では、こいつに頼るしかない。だが、最初からこうしておけばよかったのだ」


 弱り切った案内人では、もう直接手を下せるほどの力がないようだ。


 だが、握った拳銃には天城を破壊するには十分な威力を持っている。


「っ!」


 天城が逃げようとするが、黒い煙が周囲に出現して天城の両足に絡みついて動けなくする。


 すぐに助けを呼ぼうにも、通信も遮断されて人が近付く気配がない。


 大勢が動き回っている建物内で、この場所だけには人が近付かない。


 そんなことがあり得るのか?


 目の前の存在が何かしているのか?


 天城は答えが出せなかった。


 案内人は微笑む。


「お前の首をリアムの前に放り投げたら、いったいどんな顔をしてくれるだろうな?」


 リアムの名前を出している目の前の存在に、自分は勝てないだろう。


 天城は瞳を閉じた。


「旦那様。申し訳ありません」


 案内人が口元に笑みを浮かべながら引き金を引いた。


ブライアン( ´・ω・`)「な、なんですと~(棒)」


ブライアン( ´・ω・`)「……」


ブライアン( ´・ω・`)「あ、本日は「孤島の学園迷宮」の発売日だそうです。既に手に入れた読者様もおられるのではないでしょうか? そちらも「俺は星間国家の悪徳領主!」と同様に応援していただけると助かります」

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