東京在住の女性Ｍ様から「私とセックスをしてください」と言われた。私の正しい使い方である。ストレートな物言いは好きだが、それではやりますかとはならなかった。私の左脳が邪魔をして「なんでそんなことを思ったのですか」と問うてしまった。Ｍ様は言った。これまでの自分は、周囲の人のこととか過去や未来のことばかりを考えて、今を生きていなかった。死んだように生きていた。このまま死ぬのはごめんだと思い、半年後に死ぬとしたら何をやるか考えたら「イケメン逆ハーレムを作りたい」という願望がムクムクっと湧いて来たから、それを実行した。Ｍ様は、そのようなことを話した。

素晴らしい。ブラボー。私は、第一希望を口にする人が好きだ。明朗に潔く、単刀直入に。単刀直入と言う言葉を「エロいな」と思う程に。私に会いに来た人で、会いたいと思った理由を「なんとなく」とか「直感です」とか言う人が多い。私は、こういう人を微妙だなと思う。本当は何かしら強い気持ちがあるのに、それを言語化することをサボり、あわよくば私に言語化してもらおうとしている感じが鼻につく。そんな人に、私は私の本気を出さない。Ｍ様のように、恥も外聞もなく自分の思いを真っ向勝負で（ストーカーのように粘着質な感じではなく）差し出す勇者にこそ、私も私の本気を出したいと思う。俺の単刀を直入してやりたいと思う。

半年後に死ぬとしたら、恥も外聞も気にしている場合ではない。老後の心配は全部吹き飛び、今、いかに今を充実させるかがすべてになる。やっちゃいけないとされていることこそやりたいと思い、やっちゃいけないとされていることを全部やろうとなる。死を前提に生きている人間には、老後がない。老後の心配がない。考えても見るがよい。毎日の生活が真剣で腑抜けたものでなければ、老後の心配が付け入る隙はない。充実した生活に、老後の心配はない。老後の心配をしているのは、お前が既に老人だからだ。ロバートデニーロは七十九歳でこどもを作った。アルパチーノは八十三歳でこどもを作った。老後の心配をしている暇があったら、ゴッドファーザーを見ろ。充実した生活の消滅した瞬間が死であるならば、俺たちに老後はない。

今年九十四歳になるマスターが死ぬほど美味いハンバーガーを出す喫茶店が熱海にある。長生きの秘訣は、傍若無人に生きること。これがマスターの口癖である。傍若無人に生きると世間から散々叩かれるが、世間の人々は、傍若無人に生きている人が羨ましくてたまらないのだ。本当は自分も好き勝手に生きたいのだが、それをするだけの器量も覚悟もないから、自由を体現する人々を叩く。自由に生きたいだなんて口先だけの大嘘で、本当は、自由を恐れている。周りに迷惑をかけなければ何をやってもいいなどといった生ぬるい綺麗事をばら撒きながら、結局、俺にだけは迷惑をかけるなよと牽制し合う。そんな人間ばかりの世の中で、マスターの存在は貴重だ。この喫茶店の評価は最悪だが、最悪なのはマスターではない。客の方である。最悪の評価をくだした人間が最悪なだけで、最悪と言われる人や店は最高である場合が多い。

頭でっかちな人間ほど男性性とか女性性などと退屈な能書を垂れる。グラデーションもバランスもない。男性性１００%。女性性１００%。それが俺だ。これまでは早逝がかっこいいとか芸術家は暗い方が傑作を残すみたいな考え方をされていたが、かっこよさの概念を変える。言い訳をしないで、思い切りよく、楽しそうに生きている奴が一番かっこいい。百歳になってこどもを作る方がかっこいい。最悪と評価されても自分の姿勢を貫く方がかっこいい。死ぬより生きるがかっこいい。愛も許しも生まれた意味も、好きなことの中に全部ある。面白くてたまらないことを、やればやるほど元気になることをやるんだ。俺が欲しいのは、最高だけだ。何もなければ、何かをやりたくなるまで、何もやらないでいればいい。多くを望まなければ、人生はとても楽しい。媚びるなよ。金のために生きるなよ。俺たちの人生に、最高以外はもう要らない。言い訳をしないで、思い切りよく、楽しそうに生きている人間が、一番、魅力的だ。