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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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【幕間】 ユリーシアは煽りたい

 これはリアムがライナスから経済制裁を受けた直後の話だ。


 首都星の高級ホテルで暮らしているユリーシアだが、自室で下着姿のまま情報端末の前に座っていた。


 端末では、先輩――軍で秘書をやっている先輩や同期から、これでもかと煽りメッセージが送られてくる。


『愛人になった途端に、伯爵が経済制裁を受けた気分はどうですか!』

『勝ち組から負け組に転落するにしても、早すぎw』

『先輩って疫病神みたいですね!』


 ユリーシアは朝から激怒している。


 首都星のどのニュースサイトを見ても、バンフィールド家への経済制裁の記事が用意されていた。


 事情通という謎の人物が、ライナス殿下の手を払いのけたリアムへの制裁だと語っている。


 ほとんど事実だった。


 きっと、ライナス側からのメッセージなのだろう。


「こいつら、好き勝手に言いやがって」


 煽られまくっているユリーシアだが、一方的な被害者というわけではない。


 何しろ、ユリーシアも先輩や後輩を煽ってきた加害者でもある。


 以前には『若くて強くて、金持ちでイケメンの伯爵の秘書になりましたw このまま軍を引退します! 皆さん、お疲れっしたwww』


 などと煽っていた。


「お前らだって何度も失敗しただろうが! 絶対に許さない。諜報部隊にいた私の実力があれば、あんたらのアカウントくらいすぐに奪えるんだから!」


 軍隊で得た技術を使って、すぐに先輩や後輩のアカウントを乗っ取る。


 そして彼女たちの情報を抜き取るのだ。


「何よ。ブランド物のバックを買ったとか、有名レストランで昼食したとか――全部借金じゃない。後は、中途半端に偉い男に貢がせているだけね。私の方が凄いし! 毎日、高級ホテルで暮らして、ブランド物とか買い放題だし!」


 その素晴らしい能力を無駄なことに使っているユリーシアの部屋にやって来る人物がいた。


 ――ロゼッタだ。


「――ユリーシアさん、いったい何をなさっているのですか?」


 声を聞いてユリーシアがビクリと肩を震わせる。


「ロゼッタ――様」


 ロゼッタはリアムの婚約者であり、将来の正妻だ。


 ユリーシアよりも立場が上にある。


 ロゼッタもリアムが迎え入れたユリーシアを面白いとは思わないが、追い出すこともしなかった。


 だが、最近のユリーシアは目に余る。


「もう十時過ぎですよ。いつまでそんな格好をしているつもりですか?」


 下着姿のユリーシアは、髪も寝癖がついていた。


「いや、その――昨日は夜遅くて」


「知っています。高級レストランで随分と楽しんだようですね」


 その支払いを行うのはリアムだ。


 そして、幾ら支払ったのかを見ることが出来るのは――ロゼッタだ。


「違うんです! 首都星で人気のレストランで、予約を取るのも大変だったんです!」


 ようやく予約が取れたと思えば、夜遅くだった。


 料理や酒を楽しみ、SNSにアップして――元同僚たちに今の生活を見せてやりたかったのだ。


 ――煽るために。


 ロゼッタはそのことも知っていた。


「元同僚の方たちから評判が悪いようですね。ダーリンの評判を落とすような行為は許しませんよ」


「聞いてください! こんなのみんなやっているんです! 無事に側室コースに入った元同僚たちのSNSを見ますか!? これでもかってマウントを取ってくるんですよ!」


 ロゼッタが鼻で笑う。


「そんなの知りませんよ。それから、貴女はダーリンの軍事的な秘書であって、まだ正式な側室ではありませんからね」


「――え!?」


 ロゼッタは少し照れていた。


「ダーリンが言うには、側室を迎えるにはまだ早いとのことです。ですから、貴女は側室ではありません。また、貴女の役割を忘れてもらっては困ります。帝国の軍部とのパイプ役ですよね? ちゃんと仕事はしていますか?」


 ユリーシアがリアムの側にいるのは、軍とのパイプ役でもあるからだ。


 帝国軍の関係者と連絡を取り合い、時には話し合いもする必要がある。


 遊び回ってしばらく連絡すら取っていなかった。


 ユリーシアがロゼッタから視線をそらす。


 それで色々と察したロゼッタは、笑顔でユリーシアに告げるのだ。


「元特殊部隊のエリート軍人だと聞いていたのですが、どうやら間違いのようですね。ダーリンはしばらく忙しいので、貴女もその間に再教育を受けてきなさい」


「え!?」


 軍の再教育施設に送り込まれることになったユリーシア――そのことを、リアムはユリーシアが戻ってくるまで気付かなかったそうだ。


 リアムに忘れ去られていた。


ブライアン(´;ω;`)「リアム様の側室候補が酷くて辛いです」

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