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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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ロゼッタの成長

宣伝について色々と感想を書かれますが、これからも宣伝はします。


本日は「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です コミカライズ9話」更新日!


コミックウォーカー様、ニコニコ静画様で無料で楽しめます。

ニコニコ静画様の方では、コメントが600件をこえていました(^_^;


乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です コミカライズ版1巻は明日発売です!

 ――最近、軍は忙しいようだ。


 士官学校がある惑星には再教育と再訓練の施設もあるのだが、そこがここ数年の間はずっとフル稼働状態らしい。


 この惑星だけではなく、帝国にある施設のほとんどが同様の状況だ。


 候補生たちの間では、何か大きな作戦でもあるんじゃないかと噂が広がっている。


 現在俺は士官学校で最上級生――六年目を過ごしていた。


 先に卒業したティアにポケットマネーを渡し、パトロール艦隊を編成させているが順調なのか気になるところだな。


 どの程度の艦隊が出来上がるのか楽しみでもあるが、正直に言うと桁が多すぎてどれだけの金額だったのか分からない。


 普段使う機会も少ないし、貯まる一方なので丸投げしてしまった。


「――また増えているな」


 領内からの税収の一部が俺の懐に入るのだが、金額が多すぎて目眩がしそうだ。


 使う金額よりも増えていく金額が多すぎて、ありがたみが全くない。


 悪徳領主として、金の使い道が思い付かないのは駄目じゃないかと思う今日この頃である。


 考え込んでいると、のんきなウォーレスが話しかけてきた。


「リアム~、お小遣いをくれ」


「先週渡したばかりだが?」


「あんな金額、外に出て後輩におごったら使い切ってしまったよ」


 堂々と外で遊んできたことを自慢するウォーレスを見て、俺は腹が立ってくる。


 こいつは門限を破り、後輩たちと飲み歩いているのだ。


 ――俺の金でな!


「何で俺がお前の遊ぶ金を用意しないといけないんだ?」


「君が私のパトロンだからさ。ま、待って、お願いだから拳を振り上げないで! や、止めてぇぇぇ!」


 立ち上がってウォーレスに拳骨をくれてやると、頭を両手で押さえていた。


「怒らなくてもいいだろうに」


「お前だけが楽しそうで苛々する」


「リアムも遊べばいいだろう」


「遊べるなら遊んでいるんだよ!」


 ――俺だって遊びたいのだが、ペーターの件が未だにチラついて楽しく遊べない。


 男性器を爆発させる性病って何だよ。


 ファンタジー世界の性病というか、ウイルスが頑張りすぎて怖い。


 悪徳領主だって病気は怖い。


「股間が爆発するとか恐怖しかない」


 俺が本音を漏らすと、ウォーレスが笑うのだった。


「リアムもクルトも、そう言って幼年学校時代から遊ばなかったよな。こっちでは性病の検査もしているし、運が悪ければ爆発する程度だよ」


「爆発してるじゃねーか!」


 ちなみに、士官候補生も俺が在学中の六年間に二人ほど爆発したようだ。


 これは少ないのか、それとも多いのか?


 可能性が少しでもあるなら、俺は安全を優先して遊ばない。


 しかし、悪徳領主として遊びたい。


「別に最後までしなくても、女性と楽しく飲めば良いだろうに」


「――ま、そうだな」


 飲み屋があまり面白いとは思えなかったが、無駄に金を使うとかんがえれば悪くない選択肢だろうか?


 領民が汗水たらして稼いだ金で俺がダラダラと遊ぶ。


 ――実に素晴らしいな。


 これぞ悪徳領主だ。


 でも、正直興味がない。


 俺が悩んでいると、ウォーレスが士官学校卒業後のことを聞いてくる。


「ところでリアム、士官学校を出た後はどこで研修を受けるんだい?」


「首都星だ。俺のような大貴族は、首都星で雑用をするらしいぞ」


 大貴族に生まれれば、研修先は当然のように人気の部署だ。


 皇族であるウォーレスも同じである。


「私はどうなんだ?」


「お前は俺と一緒だ」


「これはあれかな? 面倒だからセットにされたのかな?」


「――そうかもな」


 ウォーレスが首都星に戻れると聞いて、楽しみにしている様子だった。


 そして、この場にいないクルトのことを思い出す。


「大学にいるクルトにも会えるんじゃないのか?」


「休日に遊べるとは思うが、あいつも忙しいんじゃないか?」


「いや、声をかけた方がいい。クルトの奴、リアムと離ればなれになるって言って、本当に泣いていたぞ」


 ウォーレスに言われ、幼年学校の卒業式で泣いていたクルトを思い出した。


 あいつは大げさな奴である。


「声をかけておくか」


「そうしてくれ。声がかからないと、クルトが本当に悲しむぞ。あ、そういえば、ロゼッタも今は首都星じゃなかったか?」


 ロゼッタの話を聞いて、俺は気が重くなるのだった。


 あいつにどう接すれば良いのか分からないのだ。


「声をかけた方がいいのかな?」


「――何故悩む? 婚約者だろうに」


 ウォーレスにそう言われ、首都星での生活が不安になってきた。



 一方その頃。


 首都星の宮殿では、ロゼッタが新しく行儀見習いに来た成人したばかりの女の子たちを前に先輩として教育を行っていた。


 全員に心構えを教えている。


「行儀見習いとして修行に来たからには、甘えは許しません。実家の力関係を理由に、他の使用人たちに横暴な態度を取るのは禁じます」


 来たばかりの頃よりも堂々とした態度を見せるロゼッタに、緊張した女の子たちが返事をする。


「はい」


「――よろしい。貴方たちがここで一つでも多く学べるよう、私も最大限協力します」


 行儀見習いとして後輩の教育を行う場合、職場での評価が高くなくてはいけない。


 そうでなければ後輩を持てず、いつまでも指導を受ける立場だ。


 以前、ロゼッタを馬鹿にしていた女の子たちが悔しそうにしていた。


 後輩たちを解散させると、その場にカトレアがやって来る。


 悔しがっていた女の子たちも姿を消すと、カトレアがロゼッタを褒めるのだった。


「ここに来たばかりの頃からすれば、見違えましたよ」


 カトレアにそう言われ、ロゼッタはお辞儀をしてお礼を述べる。


「カトレア様のご指導のおかげです」


「それもあるでしょうが、貴方の実力です。もっと誇りなさい」


 修業先で人一倍頑張り、今では周囲に認められるメイドになっていた。


 そもそも、過酷な環境で頑張ってきたロゼッタだ。


 この程度で折れてしまう精神はしていない。


 カトレアは、逃げていった女の子たちの事を思い浮かべていた。


「あの子たちも貴方を見習って欲しかったのですけどね」


 行儀見習いとしてやって来たのはいいが、彼女たちの評価はあまり高くなかった。


 ロゼッタは彼女たちについて何も言わない。


 それを見て、カトレアは微笑む。


「――立派になりましたね。残り一年ですが、後輩たちの指導を任せます。やり遂げて見せなさい、ロゼッタ」


「はい」


「それから、お婆様から伝言です。バンフィールド伯爵ですが、来年には軍の研修で首都星に配属されるとのことです」


「ダーリンが! あ、いえ。失礼しました」


 カトレアがクスクスと笑っていた。


「仲が良いのですね。二年間はこちらで過ごすと聞いていますが、この時期の男性は先輩から悪い遊びを教わります。――ロゼッタ、貴方も気を付けるのですよ」


「リアム様はそのような遊びは――」


「息抜きが出来ない男性は溜め込みがちです。真面目な人も失敗は多いですから、しっかり手綱を握っておきなさい。ただし、締め付けすぎはいけませんよ」


 リアムの立場であれば、側室を数人迎えていてもおかしくない。


 むしろ、バンフィールド家の状況を考えれば、いないと困る。


 リアムが倒れれば、跡取りの候補は直系ではなく親戚筋――あるいは、先代を呼び戻すことになるからだ。


 それだけは認められないというのが、天城やブライアンの考えだ。


 セリーナも同意見で、バンフィールド家が求めているのはリアムの子孫である。


「――理解しています」


「納得できていないという顔をしていますよ。その気持ちは理解出来ますけどね。普通なら義務を果たした後は好きにしなさいと教えるのですけどね」


 多くの貴族の娘が、跡取りを生んだ後は自由に恋愛を楽しむ。


 リアムの祖母も母親も、義務を果たした後は好きな相手と家庭を築いている。


 だが、リアムが好きなロゼッタからすれば、そういった義務を果たした後の話は関係なかった。


「私はリアム様一筋ですから」


「そう言える貴方が羨ましくありますね」


 カトレアはそう言うと、仕事に戻るのだった。



 首都星にある高級ホテル。


 そこでは大急ぎで工事が進められていた。


 トーマスが様子を見ており、支配人が内装の変更について説明している。


「大急ぎで作業を進めていますが、やはり来年には間に合いません」


 首都星でも歴史ある高級ホテルなのだが、ある理由から最近では随分と落ちぶれていた。


「最悪、リアム様の目に入らぬ場所は遅れても構いません。それよりも、従業員の教育はどうなっていますかな?」


 トーマスがこのホテルを見つけた時は、閑古鳥が鳴いて営業をしているのかも怪しい状態だった。


「以前働いていた者たちを呼び戻していますが、やはり経験のある者が足りません」


「急いで集めてください。リアム様が士官学校を卒業すれば、しばらくはここが活動の拠点となりますからな」


 支配人は真剣そのものだ。


「はい」


 力強い返事には、このチャンスを逃さないという意気込みが感じられた。


 このホテルだが、何か問題を起こして客足が遠のいたのではない。


 以前、酔って暴れた客を追い出したら、その人物が貴族で――かなり高位だったために、圧力がかけられたのだ。


 貴族を敵に回すと、いくら人気のあるホテルでもすぐに潰れてしまう。


 だが、逆に貴族を味方に付ければ――容易に復活できるのだ。


 支配人がトーマスに確認を取る。


「ところで、リアム様のお世話をする者たちですが、本当に能力だけで選んで構わないのでしょうか? 容姿を選考基準にした方がよろしいのでは?」


 気に入れば手を出しても構わない者を側に置く。


 支配人がそう言うと、トーマスは首を横に振る。


「リアム様は自分のお屋敷の使用人にすら手を出しません。趣味趣向云々ではなく、本当に自分に厳しいお方です。そのような者を側に置くよりも、しっかり仕事が出来る者を側に置いた方が評価は高いでしょう」


 トーマスの中で、リアムは高潔な貴族という扱いだ。


 支配人が俯く。


「――首都星で多くの貴族の方たちを見てきましたが、リアム様は立派な方なのですね」


「あの方は多少粗暴な口振りは目立ちますが、慈悲深い方です。敵に回れば容赦はしませんが、それ以外では寛容ですからね。支配人、余計な気遣いは無用です。自分の仕事をしてくれれば、リアム様は評価してくれますよ」


 支配人が背筋を伸ばして顔を上げた。


「承知しました」


 リアムを受け入れるために、首都星でも準備が進みつつあった。


 トーマスがリアムの住まいを確保できそうで安堵していると、部下が慌てて駆け寄ってくる。


「会長!」


「どうした?」


「そ、その! 首都星の商家の方たちが、会長に面会を求めています!」


「――何だと? 名前は?」


 首都星の商家が、わざわざ地方で商売をしているトーマスに会いに来るというのは異例のことだった。


 普通はトーマスの方が足を運ぶ立場である。


「クラーベ商会のエリオット会長と、ニューランズ商会の幹部であるパトリス様です。是非とも会長と会って話がしたいと」


 トーマスが目を見開く。


「どちらも大物じゃないか」


 クラーベ商会は帝国の御用商人だ。


 帝国でも指折りの大商家。


 そして、ニューランズ商会は首都星に本店を持つが、各地で手広く商売をしている大商家。


 どちらもトーマスのヘンフリー商会とは規模が違う。


 田舎で数店の店を経営している店主に、全国で商売をしている会社の社長や幹部が是非とも会いたいと申し出ているようなものだった。


 支配人も動揺していた。


 二人ともそれくらいに有名人ということだ。


「一体何が目的だ?」


 面会を拒否することも出来ないため、トーマスはすぐに二人と面会することにした。


ブライアン(´・ω・)「――」


ブライアン(´;ω:)「――ロゼッタ様が成長されて、このブライアンは嬉しいですぞ」

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