クズが可視化されるSNS
有吉さんがラジオで「SNSの最大の功績は、世の中に潜んでいるクズを炙り出して、可視化させたこと。」という趣旨の発言をしていた。
その意見には私も100%賛成できる。
私は気持ち悪いSNS文化と、大人の成熟した現実世界の文化というのは、混じり合わずに分断されたまま続くと思っていた。それが思いの外、現実世界とマッチし始めた。いわゆるオタクと言われる人じゃなくてもアニメを見たり、そこで使われるような変なノリだったり、下品なオタク用語を知る人も増えて、特に違和感なく現実とネットの境界は薄れつつある。
私がSNSおよびネットの世界に恐怖を覚えたのは、ニコニコ動画が出現した時くらいの事だった。というのも、勝手にどこの誰か知らない人達が、汚い言葉で罵り合っている状況が平常運転として認識されていることに吐き気を催した。
「あぁ、世の中にはこんな事を腹の中で思っている人間がいるのか。」と思えば思うほど、現実世界でも人のことを信じきれなくなっていった感はある。
やばい奴はニュースで報道されるような捕まってる奴くらいで、身近にそんな人はそうそういないと思っていた。それがネットによって、捕まるほどではないが心が腐り切っている人間が溢れている事に気がついた。
今のようにネットが区画整理される前の有象無象の治安が悪い環境ではあったが、特定の人を匿名で簡単に馬鹿にして傷つける文化は既に根付いていた。使っているのも大半が学生や若者という感覚だったが、今はしっかり大人も使っている。
人の心が時代によって親切になったり荒んだりすることはないと思う。教育の質の変化はあるにしても、汚い心の人間が俗世間で普通に会社員として働いていることを考えると、大学を出て会社に就職して、誰かしらん人と一緒になって人生を組み立てていくという行為がリスキーにも思えた。
だが、人に会わずに生きていくなんてことは現代ではほぼ不可能なわけで、それをやるほど私も人間嫌いというわけではない。毒に触れたとしても、最低限生きていける耐性は身に着けなければならない。
ただ、自分に危害を加える人間に会いたいという人はそうそういないだろう。そういうヤバい人間がなるべくいない場所に行きたいと思うのは自然なことであるし、ネットを見ている限り母数は多そうである。
だが、実際にそういうヤバイ奴の基準というのも明確ではないし、何を持ってして人間の心が汚れていくのかも、正確に判断できるものでもない。会社に行けば上司はだいたい嫌な奴だが、それは仕事のストレスで嫌になっているのか、組織全体の緊張感を作るために嫌な奴を演じているのか、単に生まれたときから周りと勝ち負けの勉強だけしてきて性格が悪い嫌な奴なのか、本人にさえ知ることは出来ない。
日本の20~30人くらいの組織に1人はだいたい嫌なやつがいる。という現象が当たり前なら、もうそれは避けようがないかもしれない。
SNSで発信したことが本心とも限らないし、嘘とも限らない。どちらにしろ、AIのようなロボじゃない限り、SNSで汚い事を発信する人間の風上にも置けない奴が、今日も日本のどこかでごく普通に生活しているということだと思う。
こういうとき、日本語というのは日本人が発言しているというわかりやすいツールであるような気もする。もし英語なら、世界中のどこにいる人なのかわかりづらいかもしれない。
最近また芸能人の訃報があった。何を原因にそうなったのかはわからないが、一説にはSNSが原因の一つだったのではないかと言われている。たまたま私の聞いているラジオ番組で、その故人がゲスト出演している回を聞いた時は、とても力強い言葉でお悩み相談のリスナーを励ますようなメッセージを送っていた。
その時既にギリギリの状態だったのかもしれないな。と思い返したりも出来るが、私には何も出来ないし、ラジオ番組の関係者の人もすごく無念に思っているかもしれない。
なんというか、人の人生ひとつ取ってみても、外から見ているだけでは想像できないほどの環境で育ち、壮絶な人生を送ってきた人もいれば、私のように何も考えずにただ生きてきて、勝手に行き詰まっている人もいる。
苦労してきたから良いとかダメとかそういうことではなく、どんな人に対しても周りの人にリスペクトを持つという精神は日本人なら忘れてはならないと思う。だから勝手に見た目でナメたり、余計なバイアスをかけるのは成熟した大人がやることではない。
最近は物騒な事件が多いので、まず他人に心を開くということより、まず警戒する、そんな雰囲気の人間関係が出来上がっている。仕方ない部分もあるが、それによる断絶や弊害も多いのではないかと思う。
日本人として日本で生まれ育ったら、災害などで共に行きていく共感性の高い性格になりやすいと言われている。それがSNSの世界でも通用するのかわからないが、少なくとも昨今のネットの世界は平和な世界とは言えない。
ネットという簡単に人と繋がれることで、良い面が出るのか悪い面が出るのか、使い方次第だと思う。最近はマッチングアプリが流行っているが、結局やっていることは人が出会うだけだし、自分に都合の良い人間をフィルタリングして選別するという行為が日常的に行われている。
一見、フィルタリングすれば自分に都合の良い人間が入ってくると思ってしまう。だが、フィルタリング機能がある以上、簡単に嘘をついて利益を得ようとする人も増えてくるだろう。
フィルタリングしたところで、良い人と出会えるとも限らない。日本はやたら価値観を統一したがる傾向があるし、先入観を持ちやすい。文化が単一的であるし、周りの人の噂を真に受けて同調化しやすい。それは差別を生みやすいだろうし、自分の価値観を壊す柔軟な性格になりにくい。
SNSなど、自分を偽るには最高の舞台であるようにも思える。偽り目立てる人間が活躍できる舞台なら、正直者の心優しい人間には向いてない世界だろうし、どんどん自分を誇張して、勘違いできる人間じゃなければネットの世界では活躍できなくなる。
だからこそ、インフルエンサーなどの投稿者の本性を暴こうとするファンや視聴者も増えてくる。自分が心の汚い人間であると公表して受け入れられる関係を築いていればいいが、それが出来る人は本当に極僅かかもしれない。
完璧な人間はいない。長い間付き合っていても、結婚して生活をともにしたら、こんな人だったのか。と失望する人も多い。
YouTubeなどSNSを見ていると、急に変な企画を出したら嫌いになったり、変な言い回しをしたら、失望したと言ったり、自分にとっての理想を押し付けている。
理想の人というのはあくまでも理想であって、現実にいるかどうかは別の話ではある。
なぜか人は完璧な理想が叶うと思っている。理想が叶う人生が完璧だとも思っている。SNSはそういう誤解を与えやすい。実際は計画どおりに人生が進んでも思っていたものと違う。と感じる人が多い。
AIが発達してきて、フェイクを簡単に作りやすくなった。人間がこれまで鍛えてきた技能もAIと一瞬で入れ替わるくらいの技術革新が加速している。そういう環境下で、これから本当に魅力的な人は、「何の技術や能力もないけど、愛される人」であったり、「ただいるだけでその場の雰囲気を良くする人」だと予想する人もいる。
能力がある人が優秀だと言われていたが、特定の業界では急速に代替化が進んでいく。いずれほとんどの仕事が代替化されるなら、人間が本来持つ性格や人間性の良し悪しが人間の価値になるのかもしれない。
AIというのは、勝手に自ら学んでいくが、人間というのはさほど学ばない。実際にどの時代も同じようなことで差別が起こったり、ルールとして変わっても人の心情の奥底は変わってなかったりする。
結局は時代に合わせて上っ面を塗り替えて、それっぽく生きているだけで、根本的な部分は人が生まれ持ってきたものからさほど変わらない。ヤバい奴はヤバい奴であり続けるし、それはどんな職業でどんな場所にいても変わらない。
人間は他人に何を期待しているんだろうか。自分の好きな人が、自分の理想通りであってほしいと思うにしても、理想通りじゃなければ嫌いになるなんて、かなり身勝手ではある気もする。
クズでも好きな人でも、その人はその人として生きていくだけで、誰かの理想を叶えるための人間ではない。好かれるために生きる必要もないし、偽る必要もない。偽るならそれはビジネスで生計を立てているだけで、その人の本質的な姿と混同させるべきではない。
俳優に演技をするな、と言う人はいないし、役のままで普段生活しろ。という要望を受け入れる必要もない。なぜなら彼らの仕事と彼ら自身は違うからである。
SNSは趣味でやっている人もいれば、大金を稼ぐ仕事としてやっている人もいるので、境界が曖昧になりやすい。だから世間に誤解されやすいのだろうか。
芸人になろうか迷っていた時、SNSなどで芸人がオモチャにされている状況を見て、こんなクズのオモチャにされる仕事なら、大金貰えてもやらないほうがいいな。と思うようになった。
私が学生時代に期待していたほど社会は区画整理されてなかったし、大人になっても小中学校で経験したような揉め事が勃発していた。いくつになっても人は変わらないんだなと思うようになったし、SNSの拡大でそれについて確信を得るようにもなった。
社会が理想通りじゃないというのは悲しい。理想の人が理想通りじゃなかったら、また他の人を探すしか無い。しかし、社会が理想通りじゃなかったら、この先もずっと生きづらい。その生きづらさを抱えている人が現代では増えてきたように思える。
昔はさほど期待していない人が多かったんだろうか。あるいは、期待以上の社会だったんだろうか。どれだけテクノロジーが発達しても、それによる弊害は生まれる。
自分の理想を押し付ける人ばかりで、他人の理想を叶えてあげようとする人が詐欺師しかいないのが悲しい。
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