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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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幕間 ロゼッタとマリー

宣伝し忘れちゃった。


「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」コミカライズ六話が更新しました!


コミックウォーカー様、ニコニコ静画様で楽しめますので、是非ともチェックしてください。

 四年生に進級すると、半年間の長期休暇が待っている。


 この期間、幼年学校の学生たちは実家に帰って羽を伸ばすのだ。


 デリックを倒したリアムも、バンフィールド領に戻ってきていた。


 婚約者であるロゼッタと、子分のウォーレスも一緒だ。


 そして、リアムの家臣たちも同様に、屋敷へと戻ってきている。


 二千年前に石化されたマリーは、ロゼッタの部屋を訪れるのだった。


「ロゼッタ様、そろそろお時間ですよ」


 ドア横に付けられたインターホンでロゼッタを呼び出す。


 すると、慌ててロゼッタが返事をしてきた。


『は、はい!』


 使用人などいなかったクラウディア公爵家の出身であるロゼッタは、屋敷での生活に慣れていない。


 そのため、マリーに対しても下手に出ることが多い。


 ロゼッタの部屋の前には、常に女性騎士二名が警護をしている。


 使用人たちも控えており、マリーは声をかける。


「ロゼッタ様のご様子は?」


「お世話をされることになれていないのか、恥ずかしがって拒否することが多いです。今朝も支度は自分ですると仰っていましたので、我々は外で控えております」


 マリーはアゴに手を当てる。


「――問題だな」


 朝の身支度など、便利な道具がいくらでもある世界だ。


 別に使用人など必要ない。


 だが、ロゼッタの周りにいる使用人はプロである。


 そんな人間に仕事をさせないというのは、問題でしかなかった。


「リアム様は何と?」


「なれるまで様子を見ろ、と」


 すぐにでもなれて欲しいが、リアムが許すならマリーには逆らえない。


 そもそも、リアムだって側に置く者は少ない。


 特殊な生い立ちもあり、信頼する者だけを側に置く。


 ――周囲はそう思っていた。


 本来なら、伯爵という立場もあって大勢の使用人たちが周囲にいてもおかしくないのに、だ。


 何でも機械がしてくれる世界だ。


 贅沢というのは、その道を究めたプロを置いて自分の世話をさせることである。


 時に貴族は、身の回りにどれだけの人間を置いているかを競うことすらある。


 そのため、子供時代に使用人に全てをさせすぎて、駄目になる子供も多かった。


 幼年学校は、そうした子供たちを教育する場でもある。


(リアム様は質素すぎる。お立場も考えれば、もう少し贅沢をして欲しいものだな)


 そう考えていると、ロゼッタが部屋から出て来た。


「お、お待たせしましたわ」


 そんな卑屈なロゼッタに、マリーは背筋を伸ばして答える。


「ロゼッタ様、下の者に卑屈になってはいけません」


「そ、そうね。き、気を付けるわ」


 ロゼッタの態度にマリーは困りながらも、廊下に待たせている乗り物に乗せる。


「では、こちらへ」


 ――屋敷が広すぎて、移動するために廊下に乗り物があるのだ。


 ロゼッタにはそれが理解できなかった。


「どうして廊下に乗り物があるのかしら? そもそも、ここは廊下なのかしら? もしかして、アーケードかしら?」


 屋敷の中で乗り物に乗って移動するなんておかしいよ!


 ――それがロゼッタの気持ちだろう。


「すぐになれますよ」


 マリーがロゼッタを乗り物に乗せると、そのまま屋敷の案内をする。


 リアムの騎士団――その次席騎士であるマリーがする仕事ではなかった。


 だが、マリーはロゼッタに親近感を覚えている。


 緊張しているロゼッタを見ていると思うのだ。


(あの愚物により私は石にされ、クラウディア家は見せしめにされてきた。それを思えば、ロゼッタ様は私の仲間だな)


 二千年前に即位した皇帝により、苦しめられた仲間だ。


 そんな自分やロゼッタを救ってくれるリアムが、マリーにはとても尊かった。


「今日は屋敷内にあります病院をご案内します」


 ロゼッタは驚くのだ。


「病院が屋敷の中にありますの!?」


「当然です。それだけの規模がありますからね」


「でも、バンフィールド家には、首都星にも劣らない高度な医療施設を持つ病院があると聞いていますわ」


 そんな病院があるのに、屋敷にも病院が必要なのか?


 ロゼッタには理解できないようだ。


「――あちらもいずれご案内しますが、ある程度の覚悟を持ってください。あそこで治療を受ける者たちは、普通ではありませんからね」


 海賊に捕まり、酷い目に遭わされてきた者たちだ。


「話程度は聞いていますわ。戻ってきた筆頭騎士殿が、リ、リアム――旦那様に相応しい奥方になるには、知っておかなければならないと言っていましたから」


 マリーは額に青筋が浮かび上がるが、ロゼッタがいるので我慢して笑顔で対応する。


(あのミンチ女! 偉そうに説教してんじゃねーよ! 今度は挽肉にしてやる)


「リアム様の騎士団は設立から日も浅いですからね。まだ十年ほどしか経っておりませんし、筆頭騎士もすぐに変わるので気にしないでください」


「そ、そうなの? 十年とは短いですね。それなのに、随分と優秀な騎士が多いようだけど」


 この世界の感覚では、十年など短い。


 歴史のある騎士団となれば、最低でも結成から五百年の経過は必要だ。


「それにしても旦那様ですか」


「お、おかしいですか?」


「いえ、リアム様を旦那様呼びしているのは天城だけなのです」


「天城――アンドロイドでしたわね」


「リアム様がどう思われるかも心配ですが、ここは差を付けるために他の呼び方を考えましょう」


「他? 他に何かあるかしら? 名前呼びか愛称?」


 マリーは少し考えてから――。


「『ダーリン』などどうでしょうか?」


 ――そう、提案するのだった。




 屋敷に戻ってきた俺は、朝から贅沢をするのだった。


「朝からプールで遊ぶなんて贅沢だな!」


 夜の内に清掃し、水を入れ替えた巨大なプール。


 そこで水着美女たちを――並べられたらいいのだが、まだ俺の美女たちは揃っていない。


 水着姿の天城と――ブライアンがいるだけだ。


 天城の水着は露出控えめのパレオタイプだ。


 大人しい天城にピッタリの水着である。


 御用商人のトーマスに頼んで、高級な布で作らせた水着を用意した。


 際どい水着はどうでしょうと言われたので「馬鹿かお前は!」と怒っておいた。


 見世物じゃないんだよ。


 天城に際どい水着など着せるわけにはいかない。


 そして、ブライアンは肘や膝までカバーするタイプの水着だ。


 ――こっちはどうでもいい。


「リアム様、朝食の果物でございます」


「新鮮で高級なやつだよな? 俺はそれ以外には口にしないぞ」


「もちろんでございます! 領内の最高級品を、土ごと一緒に運んできました」


 ――何て無駄な労力なんだ!


 畑ごと持ってくるという発想がぶっ飛んでいる。


 食べてみると、瑞々しく甘い。


 果汁がサラサラしていた。


「うまい!」


 たかが朝食のために、ここまでするのである。


 悪徳領主って最高だな!


 天城が淡々と果物をカットしていく。


「地元で採れた物を食べる。旦那様は何と素晴らしいのでしょうね」


「嫌みか? そう怒るな。幼年学校では贅沢が出来なかったからな」


 やはり地元はいい。


 何しろ俺に逆らう奴はいないし、王様気分を味わえる。


 ただ、俺は王様より酷い何か、だけどな。


 ブライアンが次の品を持ってくる。


「リアム様、次はヨーグルトでございます」


「これも高級品か?」


「いえ、このブライアンの自家製でございます」


「お前、時々ぶっ込んでくるよな。まぁ、出されたら食うけどさ。――あ、うまい」


 意外とおいしかったのが悔しかった。




 ウォーレスは、慎ましいリアムを見ていた。


 朝から自宅のプールサイドで食事をしている姿を見て思う。


「リアムって慎ましいよな。食べているのはみんな自領の食材じゃないか」


 リアムのような領地を持つ貴族たちは、それこそ食べたい物を宇宙船で運ばせる。


 果物なら、畑や人ごと運んでくる。


 現代人の感覚で言えば、家庭菜園で取れたものを食べているように見えていた。


 この世界――貴族の贅沢はそもそもスケールが違うのだ。


 コーヒー一杯のために、とんでもないお金をかけることもある。


 最高の水を持ってこさせる。


 最高の豆を仕入れさせる。


 最高の道具を揃え、最高の人材を――。


 とにかく、そこまでするのだ。


 ウォーレスから見れば、リアムはとっても――慎ましい。


ブライアン(´;ω;`)「辛いです。しばしお別れと言っておきながら、すぐに戻ってこさせられる立場が――辛いです」


若木ちゃん( ゜∀゜)『コミカライズ六話が本日更新したわ! みんな楽しんでね!』


ルクシオン( ●)『どうして皆さん、私をヒロインにしたいのでしょうか?』

クレアーレ( ○)『いいじゃない。私なんて未登場よ』

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