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俺は星間国家の悪徳領主! 作者:三嶋 与夢
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リアム様御用達

6万ポイント突破記念!


今回は特別に幕間を用意しました。


気が付いたらこんなにポイントが増えているなんて――。


息抜きの作品だったのに、どうしてこうなったのか。


 惑星一つを支配する領主というのは、言ってみれば星一つを支配する王様だ。


 執務室。


 俺は自分が住む星を立体映像で眺めていた。


 何とも綺麗な星ではないか。


 手をかざすと、拡大と縮小を行い地図としても使用できる。


 こうしていると、星の支配者としての実感がわいてくる。


 俺の手に全てがある感覚だ。


「この星の全ては俺のもの。何をしようと自由だ」


 そんな俺の呟きに返事をするのは、緑茶と羊羹を用意しているブライアンだった。


「リアム様、三時のおやつの時間でございます」


「無駄に金のかかった茶葉とお菓子を用意したか? 俺は安物なんて口にしないぞ」


 税金で食うお菓子は最高だ。


 それが、とんでもない金額だとなおうまい!


「このブライアンが知る限り、領内最高の茶葉と、歴史ある名店の店主を呼びつけ作らせた羊羹でございます」


 馬鹿みたいな値段がする茶葉。


 何百年と続いた名店の店主を呼びつけ作らせたお菓子。


 俺の三時のおやつに、いったいどれだけの金がかかっているのか想像も付かない。


 食べてみると上品な甘さが口に広がり、それを苦みのないお茶で流し込む。


 組み合わせも最高だな!


「うまい! まさに最高の贅沢だな!」


 ブライアンも満足そうにしている。


「よかったですな、リアム様」


 金のかかっただけのお茶とお菓子だと思ったが、気に入った。


 俺のおやつタイムのローテーションに加えてやろう。


「ブライアン、今日のお茶とお菓子はローテーション入りだ」


「おや、よろしいのですか?」


「金ならある! 領民からたっぷり搾り取っているからな」


 大増税をしてから、税収は大幅に増えた。


 その辺り、天城が色々と処理をしているので詳しくは知らないが、領民たちが苦しんでいるのに食べるお菓子は最高の味がする。


 まさに至福の時間だ。


 ゲラゲラ笑っていると、ブライアンが早速連絡をしていた。


「リアム様、どちらもリアム様ご公認という扱いになってしまいますが、よろしいですかな?」


 悪徳領主の公認が、どれほどの価値があるというのか?


 むしろ、気に入られた方は複雑な心境だろう。


 俺に認められても嬉しくないが、この星の支配者である俺には逆らえない。


 だから、俺は喜んで認めてやる。


 大増税をして評判の落ちた俺のお墨付きをくれてやろう。


 もしも俺が領民なら、そんな糞領主のお墨付きがついた店など利用しないけどな。


「もちろんだ。なんなら、俺の名前で賞状を出してやるよ。リアム様のお墨付き、ってな!」


「分かりました。すぐに手配いたします」


「ちゃんと見えるところに飾らせろよ」


「もちろんでございます」


 飾ったらどうなるかな? 俺に恨みを持った客が離れて、俺との取引なしでは儲からないかもしれない。


 そうなったら、どんな顔をして媚びてくるのか楽しみだ。


 途中で難癖を付けて、切り捨てても面白いかもしれない。


「楽しみだな!」


 今日もお茶とお菓子がうまい!




 六百年以上の歴史を持つ歴史ある老舗のお菓子屋があった。


 リアムの曾祖父であるアリスターの代から店を開き、以降は細々と経営していた。


 引退した先代の店主は、朝から緊張した様子で店番をしている。


 息子に店を譲ったのだが、その息子はリアムの屋敷にいる。


 緊張した様子の先代は、朝から客が来ても対応がぎこちない。


 息子の嫁が、そんな先代に向かって言う。


「お義父さん、中で待っていたらどうですか?」


「だ、駄目だ。家の中にいると落ち着かないんだ」


 緊張して食べ物もろくに喉を通らなかった。


 すると、店に息子が駆け込んでくる。


 脇に抱えているのは、額縁に入った認定証だ。


「親父、やったぞ! リアム様のお墨付きをもらった!」


 息子――店主が両手に持った認定証を掲げた。


「何だって!?」


「これから定期的にお屋敷に納品するように言われた! リアム様が召し上がるときは、俺が屋敷に行って作ることになる」


 先代が椅子から立ち上がり、震えていた。


「お、おま――よくやった!」


 抱き合う親子。


 嫁がすぐに店の外に出て、のぼりを用意するのだ。


 タブレット端末で操作すると、のぼりの内容が変化する。



『リアム様御用達!』



 そう書かれたのぼりを見て、商店街を行き交う人たちが立ち止まった。


「あそこの店、リアム様の御用達になったの?」

「おいしいからね。今の店主も腕がいいから」

「買えなくなるかもしれないから、今の内に買っておく?」


 続々と店に客が集まり、並んでいた商品がドンドン売れていく。


 領内でリアムの名前は、これ以上ない信用だ。


 御用達となれば、同じ商品が飛ぶように売れていく。


 店を出た主婦たちが、端末を持って話をしていた。


「あら、あそこのお茶も御用達なのね」

「通販で手に入るかしら?」

「もう駄目みたいよ。予約待ちになっているわ」


 すぐに情報が広がり、通販されている品は売り切れていた。


 店の中、先代が笑顔で商品を袋に詰めて客と話をしていた。


「先代もこれで安泰だな」


「息子は俺よりも腕がいいから心配なんかしてないよ」


 朝から緊張し続けていた男の台詞とは思えない。


 店に連絡が入る。


 嫁が対応すると、


「はい」


『こちら、ヘンフリー商会の――』


 ヘンフリー商会から大量注文が入った。




 バンフィールド家の宇宙港。


 そこには、ヘンフリー商会の本社が置かれている。


 リアムの御用商人として、手厚く守られているヘンフリー商会。


 商会のトップであるトーマスは、リアムが公認したお茶と羊羹を幹部たちと試食していた。


 幹部たちは、これらに対して――。


「バンフィールド家の寄子の領地で売れるかな?」

「売れるだろうが、それならもっと発展している領地に持っていけばいい」

「リアム様の名前が通じるとなると、エクスナー家の領地はどうだ?」


 どこに持っていけば売れるのか?


 それを考えていた。


 海賊狩りのリアム。


 その御用達となれば、商品の中身はともかく信用がある。


 取引できる商品になるのだ。


 トーマスは完食し、そしてホッと一息ついた。


「悪くない。組み合わせもいい。セットで贈答用に配って様子を見るとしよう」


 この世界には人が住む惑星は数多い。


 中には、この商品を気に入る星もあるが、逆もある。


「バンフィールド家も扱う商品が多くなってきたね」


 トーマスは嬉しそうだ。


 扱う特産品が多いということは、それだけ取引できる場所が増えることを意味する。


 幹部の一人が言う。


「最近では、うちに圧力をかけてくる商会もありますけどね」


 トーマスの悩みの種だ。


 海賊絶対許さないマンのリアムは、星々を渡る商人たちにとってとてもいい領主だ。


 御用商人を狙っている商家は多い。


「――商売に問題が出るなら、リアム様に相談する。あまり迷惑をかけたくないのだけどね」




 執務室。


 俺はどうにも釈然としなかった。


 天城が俺の湯飲みやら皿を下げている。


「旦那様、どうかされましたか?」


 アレから数ヶ月――今日もお茶と羊羹はおいしかった。


 だが、問題なのはそこではない。


「おい、俺が公認してやったお茶と羊羹だが、通販サイトでどこも品切れなんだが?」


 天城は淡々と答える。


「既に数年待ちの状態です。状況改善には、最低でも三年はかかると予想します」


 店を拡張するとか、畑を増やすとか、人を増やすとか――そんなことはどうでもいい。


 何で売れているんだ?


 トーマスの奴まで「あのお茶と羊羹、評判がいいですよ」なんて言って来やがる。


 おかしくないか?


「ご安心ください。旦那様の分はしっかり確保されております。屋敷にも一定数が常に納品されており――」


「いや違うぞ、天城」


「はい?」


「俺のお墨付きが付いて、なんで売れるんだ? 俺だぞ? 大増税をして、変な髪型を弾圧したときは、デモが起きた俺だぞ!?」


 天城は少し間を開けてから答えるのだった。


「――良い物にお墨付きを与え、評価すれば売れるのではないでしょうか?」


「お、おう」


 普通すぎる回答に逆に戸惑ってしまった。


 たしかにうまかったからな。


 売れてもおかしくない。


 そもそも、俺の口に入る段階で、既に領内で人気だったのではないだろうか? そこに俺がお墨付きを与えても「え、今更?」みたいな感覚ではないのか?


 ――ミスったわ。完全に予想が外れた。


ブライアン(´;ω;`)「辛いです。このブライアンのお気に入りをリアム様にお勧めしたら、入手困難になって辛いです。このブライアンのお気に入りが――なかなか手に入らなくて辛いです」


若木ちゃん(;゜Д゜)「お茶とお菓子は、あんたのお気に入りだったの?」


ブライアン(*´ω`*)「あと――タイトルを変更しました。星間国家の存在する異世界に転生したので悪徳領主を目指してみた! は、今後「俺は星間国家の悪徳領主!」となります。心機一転でございます」


若木ちゃん( ゜∀゜)「なら、乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です、もタイトルを変更して心機一転するわ! いっそ、苗木ちゃんと愉快な仲間たちとか――」


( ○);y=ー( ゜д゜)・∵. ターン「うふょほい!」


ブライアンΣ(´Д` )「な、何事!?」


( ○)『・・・・・・』


(○ )『悪は去ったわ』


(○)『これからも、乙女ゲー世界はモブに厳しい世界をよろしくね♪』


(´・ω・`)「あ、いえ、あの――この作品は「俺は星間国家の悪徳領主!」で――」


( ○);y=『よろしくね!』


ブライアン(´;ω;`)「は、はい!」 (辛いです。変な木が出て来たと思ったら、次は一つ目が出て来て――辛いです)


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