僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~


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作:四季の夢
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第二十八話:汝の呼ぶ声


聖痕のクェイサーのテレサ
SHINY DAYSの西園寺 踊子
ガンソードのファサリナ
コードギアスのラウンズ

この上の2つ以上、好きなキャラが当てはまった人とはうまい酒が飲める。


 竜牙は現在、ねじれに連れられて学園の中、そこにあった長椅子に腰を下ろしていた。

 その隣にはねじれがおり、まさか中学卒業時に決めた目標の一つ、美人な先輩と二人で昼食を食べる(誘われて)が達成された事に嬉しさはあった。 

 

「さぁ食べよう! 一緒に食べようと思って作って来たんだよ~?」

 

 ねじれは竜牙と共に食べる様にお重の弁当箱を持参していた様だ。

 まさか学校でお重箱とは思った竜牙だが、よく考えれば日頃の自分だと思い出し、そして蓋を開けてみた。

 

「唐揚げ、卵焼き、竜田揚げ、山賊焼き、ブロッコリーとトマト……」

 

「うんうん! 竜牙くん、鶏肉が好きだって言ってたから気合入れて作ったんだよ? でも唐揚げ作ってたら竜田揚げもできちゃった、不思議だね!」

 

 満面の笑みで不思議がるねじれだが、本当に不思議だと思ったのは竜牙もだ。

 いや似て非なる物をどうやって作ったと思ったが、食べてみれば衣も中も美味しく、かなり美味だった。

 

――普通に好きな味だ。

 

「気に入ってくれたんだね? よかった~!」

 

 黙々と食べる竜牙の姿を見て、目の前で嬉しそうに笑い、自分も食べ始めるねじれ。

 

――結婚して胸に埋もれ――違う、抱きしめられて埋もれたい。

 

 そんな彼女を見て欲望が出て来る竜牙だが、ムッツリである自分は親友である峰田とは違う。

 表情に出さないからこその聖人であると、無理矢理に竜牙は己を納得させて欲望を鎮める。 

 

 そして暫く適当な世間話をしながら二人で食べ、時折ねじれの友達らしい人達も通った。

 そんな人達に手を振るねじれの姿を見て、彼女の雰囲気に当てられたのか竜牙は心が落ち着くのを感じていると、やがて食べ終わって重箱をねじれに返す。

 

「……ごちそうさまでした」

 

「はい! お粗末さま! ねぇどうだった! どうだった!? 美味しかったよね! 何が一番好きだった!」

 

「全部です」

 

「全部!? 一番好きなのが全部ってなんか不思議!」

 

 食べたすぐでも平常運転の彼女に癒され、竜牙は内心で思わず笑っていたが、せめてものお返しに近くの自販機で事務所で良く飲んでいたジャスミンティーを買い、ねじれに渡した。

 するとねじれはキョトンとした後、驚いて、嬉しそうな顔を竜牙へ向けた。

 

「わぁ~! どうして私の好きなの分かったの? なんでなんで!?」

 

「リューキュウ事務所でずっと同じの飲んでましたよ?」

 

 ずっと毎日、外周りでも同じのを飲んでいれば分かる。

 戦いの時は凄いが、それ以外が少し抜けているのが彼女らしいが、それも彼女の良さだと竜牙は思い、買ってきたマウンテンデューを飲みながら座る。

 

「……それで本題はなんですか波動先輩?」

 

 可愛い先輩との時間は嬉しいものだが、竜牙はそれでも盲目になる程ではない。

 ねじれが本題を持ってきていると思っていた。

 

「う~ん……一緒にお昼ご飯を食べるのが本題だったんだけど、教室でも言ったけどリューキュウやサイドキックの人達も竜牙くんの事を心配してたの! もちろん私も!」

 

「……そうですか」

 

 心配を掛けていた自覚はある。

 別れの時もそうだし、実際にメッセージもスマホに送られている。

 

「でも本当に良かったなぁ~竜牙くんが無事で……私もリューキュウも後悔してたもん」

 

「ご心配おかけしました……」

 

 咄嗟に身体が動いたのもあったが、やはり誰かと行動を共にするべきだったとも今は思っている。

 そうすれば何かが変わっていたかもしれない。

 

――蹂躙されていただけだ。

 

 竜牙の内心の言葉を否定する様に、そんな声というよりも感情が湧きだしてくる。

 そして()()も。

 

『また聞こえてくる……』

 

――オール・フォー・ワン。

 

 あれと()()してからずっとだ、自分のなのに自分じゃない声が聞こえ、感情が溢れてる様になったのは。

 

「うん! でも次はちゃんと一緒にいるからね! リューキュウやサイドキックの人達も一緒に!」

 

――また()()()のか? ようやく良くなってきているのに?

 

 竜牙の内心を知らないねじれは嬉しそうに言っているが、その彼女の言葉を竜牙の内側は否定してくる。

 怒りがまた湧いて来る。

 緑谷達の時もそうだった、弱い者からの意見と、進んで群れようとする行動に拒否感と共に怒りが付き添ってくる。

 

「今度はもっと色々と教えてあげるね! 竜牙くんの個性ならリューキュウがもっと伸ばしてくれると思うよ!」

 

――気に入らない。ありえない。何故、あんな弱者の力が必要なのかが。

 

 飛ぶだけのトカゲを竜牙は内心で拒絶する。

 弱い、明らかに自分という種に対して弱い種なのに何故かと。

 

「あっ……そろそろ行かなきゃ! ごめんね竜牙くん! また次もお昼一緒に食べようね!」

 

 時間を見てねじれはそう言って去ってしまった。

 だが竜牙はまだ椅子に腰を掛けており、手に持った空き缶を不意に粉々に握り潰した。

 

――あの男がまた来るぞ? また敗北(死ぬ)か?

 

 野生の敗北は死を意味する。

 例え生きていても、勝利の為に醜く生きるのと、負けたのに醜く生きるのでは根本的に価値が違う。

 だから周りが何を言おうと竜牙は関係なく進む事を選んでいる。

 

――負けたくない。死にたくない。

 

 心の何処かにある檻の鍵、それが壊れていく様な音が日々日々増していく。

 だが竜牙は気にしない。理解出来ずと感じる怒りや殺気を、竜牙自身が受け入れているから。

 

 

▼▼▼

 

 そして現在、放課後となって帰宅し始めようという時だった。

 

「ねぇねぇ! 皆で行けるんだから、明日も休みだしA組全員で買い物にいかない!」

 

 葉隠が嬉しそうに提案すると、周りもそれに合わせて賛成していく。

 

「おぉ! 良いなそれ、なんだかんだで初だよなクラスで出掛けんのって!」

 

「確かに日程通りなら色々と必要になるな……」

 

「暗視ゴーグルにドリル……赤外線カメラもいるな」

 

 上鳴や障子も同意し、峰田は目的が違うが賛成している。

 他も次々と明日の買い物に行くことを選んでおり、竜牙も日程表を見て考えていた。

 

――かなり忙しくなる、それにキャリーバッグも新しくしておくか。

 

 竜牙も色々と考える内に必要な物が出て来てくる。

 水着とかは大丈夫だが、今のキャリーバッグは古くて小さく、それ以外にも手軽な鞄も欲しいしサンダルも新調したい。

 もうここまで来れば、既に参加しないという選択肢はなかった。 

 

「雷狼寺、お前はどうする?」

 

「爆豪と轟は来ないみたいだけど、暇なら一緒に来ない?」

 

 そのタイミングで障子と耳郎が誘ってきたのもあり、竜牙は取り敢えず頷いた。

 

「あぁ……俺も買いたいのがある」

 

 竜牙の言葉に周囲は安心した様にホッとする。

 戦闘授業や一部の言葉を発してない時は安定すると分かったのか、緑谷達は安心しており、竜牙もその様子に気付いているが落ち着いている間に話を進めようと思った。

 

「場所はどこだ……?」

 

「あぁ、なんか木椰区のショッピングモールに行くってさ。まぁあそこなら大抵の物は買えるしね」

 

 耳郎から説明を聞き、周りと時間を合わせると明日に備え、今日はもう解散となる。

 竜牙も本当なら自主練したかったが、参加をすると言って以上は迷惑を掛けぬ様に今日は返る事を選ぶ。

 

――良いのかそれで? 奴が入ってくるぞ?

 

 また声が聞こえる。だが今は良い、どの道合宿が始まるならば蓄えていると思えば良いのだから。

 竜牙は納得させ、そして納得し、鞄を持った時だ。

 

「雷狼寺! 早く行かないと電車乗り遅れるよ?」

 

「早く行くぞ!」

 

 相変わらず自分に普通に接する耳郎と障子が教室の入口で待っていた。

 

――なんで二人は変わらないんだ?

 

 自分の様子に多少の変化を見せる周囲だが、二人はなんだかんだで変わっていない。

 何故なんだと竜牙は思い、一緒に校門を歩いてる時に聞いてみた。

 

「何とも思わないかって?」

 

「確かに少し戸惑ったが、戦闘訓練とか以外は普通だしな」

 

 二人は何を今更と、まさにそんな態度で言ったが特に言う事も無い様子だ。

 

「……そうか」

 

「寧ろ、聞いたら教えてくれんの? 巨悪とか言ってたけど……ヒーロー殺しじゃないの?」

 

「ステインは教えてくれただけだ……世の中にいる()()を」

 

 世の中にどれだけ本物ヒーローがいるのか、どれだけ偽物がいるかをステインは教えてくれて、それを俺と雷狼竜は納得した。

 ただそれだけだと、竜牙は内心で自己完結してしまう。

 

「それは俺達が聞きたい事じゃないが……まぁ、もし間違った事をするなら大丈夫だ」

 

「そん時は、責任もってうちらが止めるからさ」

 

「……出来るのか、お前等に?」

 

「いや普通に峰田よりは楽だと思うけど、うちは?」

 

 それはそれで問題だが、竜牙はその点は大丈夫だと思っている。

 

――あくまでも最短で戻らなければならないだけだ。

 

 友人達には手を出す事はない、そう()()をしなければ。

 そんな事を竜牙が思っている時だった、耳郎は思い出した様に呟いた。

 

「そういえば明日の服ってどうっすかなぁ……」

 

「迷うものなのか?」

 

「一応女子だし、気にはするって」

 

 男と違って女子は出かける様の服はスタンバイしていると思っていたが、やはりファッションは難しいらしい。

 

「……因みにだけど、雷狼寺はなんかリクエストってある?」

 

「……俺の意見なんかで良いのか?」

 

「あくまでも聞くだけ……」

 

 そう言って耳郎は顔を逸らしてしまい、竜牙は障子の方を見たが頷くだけだった。

 

――難しいな。

 

 峰田や轟達の時の様なノリで行けば、確実に怒らせるのは流石に分かる。

 だがどうするか、竜牙は歩きながら考えていた時だ。

 

「あら? 今帰り?」

 

「あっミッドナイト先生」

 

「どうも」

 

「最高で――いえ、どうもです」

 

 スポーツカーに乗ったミッドナイトに竜牙達は挨拶をすると、ミッドナイトも頷いた。

 

「気を付けて帰るのよ?――じゃあね」

 

 最後にウィンクして去っていくミッドナイトを見送り、少し楽な気分になった竜牙だったが、耳郎の話は終わっていない。

 

「それで、なんかあんの?」

 

「ガーターか網タイツ……あっ――」

 

 気付いたが既に遅く、竜牙は耳郎のイヤホンジャックの制裁を受けるのだった。

 

 

 

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