ふるさと納税感謝祭を訪れた官房長官時代の菅氏(2017年、時事通信フォト)

ふるさと納税感謝祭を訪れた官房長官時代の菅氏(2017年.時事通信フォト)

 

 ふるさと納税は当初、寄付金の上限が個人住民税の1割までとされていたが、2016年度から倍の2割に引き上げられた。また面倒な確定申告を省略できる「ワンストップ特例制度」も創設された。

 そうしてふるさと納税は急カーブを描いて膨らんでいった。2018年度の寄付は2322万4000件、5127億1000万円。初年度に比べて実に63倍の寄付総額という成長ぶりである。

 だが、ふるさと納税はしょせん金持ち優遇批判が絶えない欠陥税制である。寄付金の上限が所得税や住民税の多寡によって決まるため、収入の多い人ほど寄付控除額が多くなる。

 2年ほど前から高額返礼品競争が過熱し、総務省が寄付金額の3割までに規制したのは周知の通りだが、それでも富裕層にとってはかなりありがたい。たとえば年収1億円の大金持ちが100万円を寄付し、返礼品として30万円相当の高級和牛を大量に手に入れる。自己負担分の2000円で30万円の牛肉をネットで買うようなものだ。

 そしてふるさとチョイスをはじめとしたサイト業者には、年間400億円以上の手数料が入る。須永は今年に入ってトラストバンク株を手放し、社長から会長に退いて悠々自適に暮らしているという。まさしく富裕層とネット業者のための新自由主義政策が、ふるさと納税にほかならない。

【プロフィール】
森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。

※週刊ポスト2020年12月18日号

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