僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~


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作:四季の夢
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第四話:予兆! 委員長と宣戦布告


「オールマイトの授業はどうですか!?」

 

「……胸熱」

 

 登校時間。雄英の校門の前に居座る集団――マスコミ。

 その内の一つからの質問に竜牙は足を止めずに答え、そのまま校内へと入っていった。

――が、後ろの方では生徒達の声が未だ多く聞こえ、このままでは登校の妨害で遅刻者がでるだろう。

 そう思っていたが、数人の先生達とすれ違った事でそれは心配なさそうだと思い、竜牙は自販機に寄り道してから教室へと向かうのだった。

 

 

▼▼▼

 

 

「……学級委員長を決めてもらう」

 

『学校っぽいの来たぁぁぁぁ!!!』

 

 前日の実戦演習の説教から始まった授業。

――しかしそこからのどんでん返し。学校らしい課題が始まった。

 

 そして同時に始まる自己推薦の嵐。

 普通ならば誰もやりたがらないが、ここはヒーロー科。

 集団を導くと言う大事な役目があり、トップヒーローに必要な力を磨けるのだ。

――勿論、例外もいる。

 

(……まずは己を磨く事に専念したい)

 

 竜牙的にも轟を倒せたからといって、この我の強いメンバーを纏めるのは骨が折れる。

 ならば、今は自分磨きに力を入れた方が竜牙的には良い。――だが、そう簡単に事態は収まらないもの。

 

(……決まりそうにもないな)

 

 皆が自己推薦ばかりで、他者を推薦する者はいない。

 これでは絶対に決まる訳がなく、また面倒ごとになりそうだと思った時だ。

 

「静粛にしたまえ!! “多”を導く大変な仕事だぞ! それをただやりたいからと、簡単に決めて良い筈がない。――今こそ! 信頼えるリーダーを決める為、投票を行うべきだ!!」

 

 飯田がここで男を見せる。  

 周りの暴走を止め、全員に後腐れなしの投票を提案したのだ。

――が、そんな彼もまた、誰よりも綺麗に真っ直ぐに手が伸びていた。

 

『うそつけ!? そびえ立ってんじゃねかよ!!』

 

「日も浅いのだから信頼なんて薄いわ飯田ちゃん……」

 

「だから……だからこそ……ここで票を取った者こそ本物だと思わないか!」

 

 蛙吹の言葉にもめげずに飯田は反論し、その言葉に全員が黙った。

 確かに殆どの者が己に入れようとする中、ここで票を取った者は本物だ。

 

(……一番、挙手が綺麗だった飯田に投票しよう。それに――)

 

 やや考えながらも、既に竜牙は他人事状態。八百万が作り、配られた用紙。それに素早く“飯田”の名前を記入し、そのまま投票して終わりだ。

 そして、そのまま結果発表。

 

 案の定、大半が自分に投票する中。名前がないのは少数であったが、その中でも3票と2票を取った者が現れる。

――緑谷3票。八百万2票だ。

 

「僕が3票!!?」

 

「あと一票……悔しいですわ」

 

 結果が決まる中、それでも多少の文句はあったが何だかんだで纏まり、緑谷が委員長・八百万が副委員長が決定した。

 しかしそんな中で、一番やりたそうだった飯田は一人、黒板に書かれている自分の名前を見つめていた。

 

 飯田――1票。

 

「一体、誰が……」

 

 その飯田の呟きを聞く者は誰もおず、竜牙は窓の景色を見ながら欠伸をしていたのだった。

 

――余談だが耳郎と障子は自分に投票しており、最初は竜牙に投票しようと思ったが、投票が終わるまであからさまに一回も目を合わさなかった事で察したらしい。

 

 

▼▼▼

 

――そして午前中が終わり、お昼の時間になった時、竜牙は食堂には行かず、教室にまだ残っていた。

 

「雷狼寺、お昼は一緒に食堂に行かない?」

 

「席なら取っておくぞ?」

 

 丁度、食堂に向かおうとした耳郎と障子が、残っている竜牙に声をかける。

 だが、竜牙はリュックから弁当箱――というより重箱レベルの物を取り出して見せる。

 

「……いや、弁当はある」

 

「うわっ……スゴッ! 何が入ってんのそれ……?」

 

「雑穀ご飯と――ケンタ〇キー」

 

『昨日のお土産だ絶対!!』

 

 竜牙の弁当の中身に、その場に残っていたメンバー全員が昨日の反省会の戦利品である事を察した。

 余程、チキンが好きなのだろう。昨日、テイクアウトした土産をお昼まで持参しているのだから筋金入りだ。

 

「大丈夫そうだな」

 

 その光景に障子はそう呟き、耳郎も安心した様に頷く。

 どこか抜けている竜牙は言わなければ、食事もとらなそうな感じなのだ。

 現に、今さっきもずっと空を眺めており、云わなければ気付かなかった可能性が高い。

 そこで弁当箱を出したのを確認できれば耳郎も安心し、他の者達と食堂へと向かおうとした。

――時だった。

 

『緊急警報発令!!――“セキュリティ3”が突破されました。生徒の皆さんは屋外へと避難してください。これは訓練ではありません。――繰り返します――』

 

 校内に警報が鳴り響く。同時に放送されるセキュリティ3の突破。

 同時に無駄に広い校内でも聞こえる叫び声。――典型的なパニックだ。

 

「えっ! ちょっ――なにこれ!?」

 

「セキュリティ3……?」

 

「……校内に“侵入者”が入った様だ」

 

 耳郎と障子はそこまでパニックになっていなかったが、学生手帳を開く竜牙の言葉に表情が変わる。 

 

「侵入者って……避難しないとまずいじゃん!」

 

「だが、周りはその避難のせいでパニックの様だ。――むっ?」

 

「……治まり始めたな」

 

 障子と竜牙が索敵していると、まるで雨が弱まる様に段々と悲鳴や足音が収まり始めてゆくのに気付く。

 ほぼ収まった時、再び放送が始まった。

 

『やあやあ! 校長の根津です。侵入者の正体はマスコミの様だね。だから避難は大丈夫。後は先生達で対処するので、生徒の皆はクラスに戻って連絡を待つように』

 

「マスコミ……?」

 

「……朝の連中だな」

 

 根津校長の放送の内容を聞いて、竜牙達は思い出す。

 どうやら雄英の警備を掻い潜ったらしく、朝のマスコミが無断侵入を強行した様だ。

 呆気ない事実に、耳郎は疲れた様に溜め息を吐いた。

 

「なにそれ……あほらし」

 

「人騒がせだな……」

 

(……妙だけどな)

 

 竜牙は一人、妙な違和感を抱いた。

 雄英のセキュリティ。それは並みのヴィランでは歯が立たない驚異のセキュリティ。

 勿論、それは勤務しているプロヒーローの先生達を含めての話だが、やはり侵入は銀行の金庫よりも難しく、しかも突破できる“強個性”が必要。

 この個性の無断使用が禁止されている世の中で、オールマイトの取材の為とはいえ、そんな個性を持ち、ここまでするマスコミがいるだろうか?

 

(……逮捕を承知の上で警備システムに何かしたのか?)

 

 違和感は残る。だが、それを考えるのは自分の仕事ではない。

 結局、竜牙が答えを知る事はなかった。

 

 

▼▼▼

 

 その頃、追い出したマスコミを警察に預けた雄英の先生達――プロヒーローは入口に集結していた。

 何重にも施された警備扉。――“だった物”を前にして。

 

「――マスコミは利用されたね。邪な者が入り込んだか……宣戦布告か。どちらにしろ、生徒達に被害を出させる訳にはいかない。――プロヒーロー(先生達)は当分、気を抜かないでもらいたい」

 

 根津校長の言葉に、頷かない者は誰もいなかった。

 

 

▼▼▼

 

 

 騒ぎが収まった後、竜牙は一人自販機で飲み物を買い、クラスに戻ろうとした時だった。

 

「雷狼寺くん!!」

 

「……飯田か」

 

 竜牙は飯田に呼び止められた。飯田は肩で息をしており、何やら急いできた様だ。

 

「……どうした? 何か問題が――」

 

「僕に投票してくれたのは君なのか!?」

 

 額に汗を浮かべ、真っ直ぐに竜牙を見つめる飯田の言葉。

 答えだけならYESだが、その言葉の真意を竜牙は分からず、沈黙で返してしまう。

 飯田の話もまだ終わっていなかった。

 

「気になっていたんだ……僕はさっきの投票で自分に投票していない。なのに確かに僕に1票入っていた!――だから、みんなに頭を下げて聞いたんだ。――誰に投票したのかを」

 

 その結果、誰も自分に投票していないのを飯田は知った。

 となると、残りは聞いていない一人――竜牙だけだ。

 

「――君が僕に投票してくれたのだろうか!」

 

「……一人称、よく変わるな」

 

「えっ……あっ!――ゴホンッ! 君が俺に投票――」

 

「……なんか問題だったか?」

 

「えっ……? いやそうではない!!……そうではないんだ」

 

 竜牙の言葉に飯田は強く否定するが、やがて顔を下へと向ける。

 

「君の事は……耳郎くんや障子くんからも聞いた。実技試験の0P撃破。そして推薦組の轟くんをも倒した実力。――ハッキリ言って、君は僕よりも全てが上だ。だからこそ気になってしまった……そんな君が何故、僕に入れたのかを!」

 

「……挙手した手が一番綺麗に伸びていたから」

 

「えっ!?……それだけなのかい……?」

 

 竜牙の言葉に飯田はショックを受けた様に肩を落とす。

 だが、話が終わっていないのは竜牙の方もだ。

 

「それに……お前は既にあのメンバーを纏めていた」

 

「?……なんの話だい?」

 

「……投票の時だ。皆が好き勝手に騒ぐ中、お前が止めた。――お前も分かってたろ? ヒーロー科ゆえに、全員が我が強い。そんなメンバーをお前はお前らしいまま導いたんだ」

 

「投票だけで大袈裟だ。導いたって言われても……俺は正しいと思ったから、投票を進言しただけで!」

 

「……それでもだ。思って行動するだけでも勇気がいる。それを普通に行ったお前は大した奴だと思うがな。――お前の導きはクラスの結束。その()()()()()だ……それに飯田」

 

――“Plus Ultra”だろ?

 

 竜牙はそう言ってその場を後にするが、飯田は顔を下へと向けており、やや震えている様にも見えたのだった。

 

 

――その後、緑谷が委員長の座を飯田へ託す等の事があり、委員長は飯田へと変わった。

 この日以来、飯田が竜牙へと積極的に話し掛ける様になったのも、変化の一つだったりする。

 

 

 

END

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