僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~


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作:四季の夢
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第二話:入学と除籍!? 個性把握テスト!


SSは気分転換に書くのが一番……ですね


 入学試験から数日後。

 竜牙が家であるマンションの自室でネットサーフィンをしている時だった。

 不意に部屋のドアと叩く音。そして焦った様子の女性の声が竜牙の耳に届く。

 

「竜牙さん!? 届いた届いたわよ雄英からの結果!!」

 

 竜牙にとっては聞き覚えがあり、親しみのある人物。間もなく40才になる家政婦の“猫折”さんの声だ。

 どうやら雄英からの結果が届いたらしい。

 

「……どうぞ」

 

「失礼します!!――あっ」

 

 竜牙の言葉と同時に扉を開けた猫折さんだったが、履いていたスリッパが滑った事で突入レベルで入室し、そのままコケた。

 年齢の割には若々しい彼女だが、それに比例してかドジも目立つ。

 そんな彼女の手に封筒が握られていたが、その衝撃で中身が飛び出してしまった。

 中身は用紙二枚。そして円状の小さな機械が一台。

 そして飛び出した機械が本棚にぶつかった瞬間、そこから映像が飛び出す様に映写される。

 

『私が投影された!!』

 

 機械は投影機だったようだ。

 しかし大事なのはそこではなく、投影されたのがあのNo.1ヒーロー・オールマイトだという事。

 

「オールマイト……?――OBの特別出演?」

 

 オールマイトは雄英の卒業生。ならば、これぐらいのサプライズぐらいは雄英ならやりかねない。

 豪華な通知だな。竜牙がそう思いながら見続けると……。

 

『HAHAHAHA!――最初に言っておくけど、この為だけの特別出演とかじゃないよ!! 実は私は今度から雄英の教師として勤めることになってね! まぁそういうそういう事なんだ!!』

 

「胸熱だ……」

 

 竜牙はオールマイトの言葉に表情を変えないが、内側で感動していた。

 あのオールマイトが雄英の教師に。当然ながら受験生には知らされておらず、もし知らされていれば倍率は更に上がっていただろう。

 

『さて! ではこっからは諸事情で巻きで行くよ!――雷狼寺 竜牙! 敵P80! これだけでも合格ラインだが、試験官達が見ていたのはそれだけであらず!!――どんな状況でも助けてこそのヒーローさ!! 偽善上等! 我々が見ていたもう一つのPこそ救助活動Pだ!!――君の救助活動Pは42P!――合計122P――入試1位! 文句無しの合格さ!!』

 

「良かった……」

 

「おめでとう竜牙さん!! 今日はお祝いですよ!!」

 

 肩の力が自然と抜ける。自信はあったが、結果を決めるのは自分ではない。

 やはり合格通知が来て初めて安心出来るというもの。

 猫折さんも、そんな竜牙の合格を我が子の事の様に喜んでいる。

 

『雄英で待ってるぞ!!』

 

 その言葉を最後に、素敵な笑顔のオールマイトの投影は消えた。

 同時に自分が全国一の雄英高校。そのヒーロー科に入学が決まった事の実感が未だに湧かなかった。

 

「雄英に入学出来るのか……」

 

「そうですよ! 本当におめでとうございます!! 竜牙さんなら大丈夫だと思っておりました……いつも本当に努力しておりましたからね……!」

 

 感傷に浸っていた竜牙だったが、何故か猫折さんが泣き始めてしまい、逆に落ち着いてしまう。

 すると、ハンカチで涙を拭いていた猫折さんだったが、不意に思い出すように竜牙へ問い掛けた。

 

「あ、あの……竜牙さん。合格の事、旦那様と奥様にご報告された方が……」

 

「……いや良い」

 

 猫折さんの言葉に、竜牙はあまり間を開けずに返答した。

 それは意味のない事だと分かっているからだ。そして、そんな竜牙の言葉に猫折さんは何も言わず、そのまま雄英の入学式当日となる。 

 

 

▼▼▼

 

 

 雄英高校入学式当日。

 竜牙は送られてきた雄英の制服に着替え、リュックを背負って自宅から出発した。

 

――そして。

 

「教室の扉も大きいな……」

 

 無駄に広い校舎を歩いて辿り着いた指定された教室【1-A】

 その前に佇みながら、竜牙は目の前の大きな教室の扉を見上げて呟いた。

 規格外の肉体が多い“異形系”にも対応する為なのだろう。所謂バリアフリーであり、手で掴んでも想像以上に扉が軽い。 

 

――まだ来ていないのか……?

 

 室内からは話し声が聞こえず、まだそんなに集まっていないのかとも思ったが、時間的に考えて自分が最初とは考えずらい。

 竜牙は取り敢えず扉をスライドし、中に入いると……。

 

「……!」

 

――教室内にいたクラスメイト達に視線を一斉に向けられた。

 

 どうやら、ただ誰も会話をしていなかっただけらしく、来ていなかったのは自身を含めて4人であり、竜牙は何とも言えない雰囲気に僅かに呑まれかけた。

 

――重い空気だ……。

 

 竜牙は未だに牽制しているかのようなクラスの空気の重さを感じながらも、教室内を歩き、静かに自分の机を探し始める。

 その間にも視線を戻す者、未だに見ている者の二つに別れているが、竜牙が気にすることなく自分の席を見つけて着席した時だった。

 不意に右肩を誰かに突っつかれ、そちらの方を向くと……。

 

「試験振り」

 

「よっ」

 

 実技試験会場で共に0Pと戦った耳郎と障子が座っていた。

 

「同じクラスか……」

 

「いや、入ってきた時に気付くっしょ」

 

「お前、かなりマイペースだな……」

 

 素で気付かなかった竜牙だったが、二人は入ってきた時から気付いており、気付かなかった竜牙に何とも言えない表情を浮かべていた。

 しかし、そんな状況下でも挨拶は大事。竜牙は気にすることなく手を差し出す。

 

「……取り敢えずよろしく頼む」

 

「いや、本当にマイペースじゃん……別に良いけど」

 

 耳郎は呆れた様に、だがどこか照れくさそうに竜牙と握手を交わし、障子とも握手を交わした時だ。

 

「机に足を掛けるな!! 歴代の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか!!」

 

「思う訳ねぇだろうが! どこ中だこの脇役が!!」

 

 いつの間にか教室に来ていた説明会で隣にいた眼鏡と、明らかに典型的な不良染みたクラスメイトが何やら派手に言い争いを始めていた。

 話を聞く限りでは、不良の机の扱い方に眼鏡が怒った絵面だが、眼鏡の話も少し真面目過ぎるレベルで重い。

 そんな二人の様子を竜牙達三人は、比較的関わらない程度で見ていた。

 

「なにあれ……?」

 

「……クラスメイトだろう」

 

「確か、説明会の時にプレゼント・マイクに説明を求めた奴だったか……?」

 

 耳郎の呟きに竜牙が応え、障子も眼鏡の事を思い出した。

 けれど、そんな二人の言い合いは収まる気配はなく、担任が来るまで待つ事を決めた竜牙だったが、そんな時に扉の方から聞こえてくる物音に気付く。

 

「あいつは確か……」 

 

 竜牙が首を其方に向けると、見つけたのは校門でコケた緑髪の少年だった。

 入学式なのに何やら震えており、同時に絶望の表情を浮かべているのが不思議で仕方ない。

 

――蛇口を閉め忘れたのか……?

 

 昔、数時間の外出から帰宅した時、水道がチョロチョロと流れていた事があり、それに気付いた猫折さんの表情がまさにあんな感じだったと竜牙が思い出していると、眼鏡もまた少年の存在に気付く。

 そして、顔見知りなのか。二人は何やら会話を始めると、やがて最後のクラスメイトであろう一人の女子生徒も現れた。

 これで1-Aは全員が揃った事になる。残りは担任だけ。――だが、その問題も意味無いものだった。

 

――お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。

 

「ここはヒーロー科だぞ?」

 

 教室内に響く男性の声。

 声の低さから明らかに生徒の声ではなく、タイミング的にも考えられるのは担任の筈なのだが、その声の発生源にいたのは“寝袋”だった。

 

「……自律思考型寝袋?」

 

「いや、普通に顔は出てるじゃん」

 

 竜牙の的外れな答えに耳郎がツッコミを入れていると、その寝袋から人間が現れる。

 

「はい、静かになるのに9秒かかりました。時間は有限――」

 

――君達は“合理性”に欠くね。

 

 寝袋から出た、黒い服、ボサボサ髪の男。

 その男の言葉が不思議と深く刻まれるのを竜牙は感じていたが、同時にその男の異様さも感じ取っていた。

 

――気配……気付かなかった。

 

 教室だからと油断していたが、普通にリラックスしていたとはいえ、竜牙は“あんなの”が来れば気付かない訳がない。

 そう思っていたが、実際に気配は分からなかった。

 

「やっぱり雄英は凄いな……」

 

 竜牙が見た目は酷いが、男が確かな実力者だと判断。

 しかし男は竜牙達生徒に気にも留めず、寝袋からジャージを何着も取り出し、喋りながらそれを配り始める。

 

「俺は担任の“相澤 消太”だ……よろしくね。――そして“これ”着てグラウンドに出ろ」

 

「担任!?――し、質問宜しいでしょうか!」

 

「――却下」

 

 説明会同様に眼鏡が質問に挑むが、自分を担任と言った相澤は有無を言わさず却下。

 そのまま教室を出て行ってしまい、残された者達も取り敢えず指示に従うしかなく、急いでグラウンドへ向かう事を余儀なくされた。

 

――因みに、竜牙は着替えている時にその三人(緑谷・飯田・麗日)の名前を知るのだった。

 

 

▼▼▼

 

「個性把握テスト!!?」

 

 辿り着いたグラウンド。そこに既にいた相澤の説明に誰かが叫び、麗日も相澤へ詰め寄った。

 

「入学式は! ガイダンスは!?」

 

「ヒーローにそんな悠長な事している時間はない。――雄英は“自由”な校風が売り文句」

 

――“先生側”もまた然り。

 

 麗日の問いも素早く一蹴する相澤の言葉通り、担任によって入学式すら参加の有無があるらしい。

 まさに“自由”であり、そう言う意味ならばこの状況も納得するしかないと竜牙は納得――というよりも諦めた。

 

「“Plus Ultra”――良き受難を……か」

 

 竜牙は入試説明で言ったプレゼント・マイクの言葉を思い出し、気付けば呟いていた。

 あの時はマイク的に激励の言葉に思われたが、真価は入学してから発揮された言葉。 

 確かに普通の学校・ヒーロー科と同じならば、わざわざ雄英を選ぶ意味もないだろう。

 そう思いながら竜牙が一人、静かに納得していると竜牙は気付いた。

 

――全員の視線が“自分”に集まっている事に。

 

 どうやら竜牙の独り言は意外にも聞き取りやすいらしく、よくそんな事が言えたなと、困惑の視線も中には混ざっていた。

 

――どうしようか……。

 

 独り言故に既に自己完結している言葉。

 しかし、周り的には自分の次の反応を待っている感があり、竜牙が反応に困っている時だった。

 

「そういう事だ……取り敢えず見せた方が早い。――確か入試1位だったのは……雷狼寺か。雷狼寺、ちょっと来い」

 

「……はい」

 

 相澤の助け舟? と呼べば良いのか。

 取り敢えず呼ばれた竜牙は相澤の傍に行くが、入試1位という言葉を聞いた瞬間、周囲から敵意に近い感情を向けられた。

 だが竜牙は特に気にせず、何やら“特殊感”があるボールを相澤から投げ渡されてキャッチする。

 

「……ボール?」

 

「ソフトボール投げだ。今からやるのは“体力テスト”と同じ内容。ただし――」

 

――個性“解禁”のな。

 

『個性解禁……!?』

 

 相澤の言葉に、再び周りがざわつき始める。

 

 しかし当然と言えば当然の反応。

 街中での“個性”の無断使用が禁止されている世の中。

 中学の体力テストも“個性”の使用は当然禁止。素の身体能力のテストだった故に、相澤の言葉は新鮮どころか理解に苦しむ者もすらいた。

 

「うるさいよ。さっきも言ったろ……時間は有限。――因みに雷狼寺、中学時代の記録は?」

 

 本当に無駄が嫌いなのだろう。

 周りに注意しては、すぐに己の方へ首だけ動かす相澤の言葉に対し、ここで変な事を言う程に竜牙も空気が読めない訳ではない。

 

「……65m」

 

「それじゃ、個性を使用して投げて見ろ。全力で……はよ」

 

 円から出るなよ。――相澤がそう追加すると、竜牙はすぐに円の中へと入り、両手と両足に力を入れ始める。

 

――すると、その変化に他の生徒達も気付き始めた。

 

「むっ、手足が……!」

 

「なんだ、あの個性は……?」

 

 鳥頭――常闇と飯田が徐々に変化する手足を見て思わず呟き、その言葉を皮切りに他のメンバーもそこに意識を集中させてくる。

 生える様な、包むような感じで素早く変化する手足。

 しかし、同じ会場であった耳郎と障子だけが腕の変化に気付いていた。

 

「爪じゃない……?」

 

「人間の腕みたいだな……」

 

 白い毛と鱗で身を包んだ両腕。足のみが試験と同じ形態を取っている竜牙。

 最初、そして珍しい個性ゆえに視線は竜牙に集まっているが、当の本人は気付いていない。

 ただただ、競技に集中していた。

 

(人を超えた力――!)

 

 全身を駆ける力。己に眠る“竜”の力を竜牙は解き放ち、ボールを全力で投げた。

 ボールは風を切り、空へと消えて行く。

 そして1分もしない時、相澤が持っていた機械に音が鳴って飛距離を知らせ、相澤がそれを呟いた。 

 

「1024.4mだ。――と言う訳で、まずは自分の“最大限”を知れ」

 

 竜牙が出した記録。それは生身では絶対に出せない飛距離。

 それは“個性解禁”を自覚させられる事になり、同時にその記録が彼等を刺激した。 

 

「なんだこれ……すげぇ面白そう!!」

 

「1024mって凄いな……」

 

「個性が使えるってすげぇよ! 流石ヒーロー科だ!」

 

 重りでも外されたのか、一気に騒ぎ始めるクラスメイト。

 そんな彼等を竜牙はと言うと手足を戻しながら、横目で見つめる。

 

「面白そう……か。あんまり言わない方が良いと思うが」

 

 竜牙は、まるで一種のイベントに参加するかの様にはしゃぐ者達を、少し冷めた目で見てしまう。

 受験から解放され、あの雄英に入学出来たのだから仕方ない反応とも言える。

 しかし――

 

――お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。

 

 竜牙は思い出す。まだまともに自己紹介すらしていない中、相澤が言い放った言葉を。

 もし相澤が最初の印象通りならばと、竜牙は面倒ごとの匂いを感じ取っていた。

 そして、残念ながらそれは当たる。

 

()()()()……か。――ヒーローになる為の三年間を、そんな腹づもりで過ごす気なのかい?」

 

 相澤の言葉に全員の動きが止まる。

 何故か、迫力が今までとは違うと感じたから。

 

「良し……ならトータル成績最下位は見込みなしと判断。――“除籍処分”にしよう」

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 相澤の言葉に叫ぶ者がいた。

 あの倍率を勝ち抜き、その学校の入学式に除籍処分の危機に陥るなどと、誰が想像できただろう。

 まず無理であり、いくら何でも横暴としか感じない。

 

「待って下さい! そんな事――」

 

「生徒の如何は先生の“自由”だ。――これが雄英のヒーロー科だ」

 

 飯田の言葉を一蹴する相澤。

 他の生徒も理不尽と抗議するが、自然災害も敵も理不尽が当たり前。

 

――“Plus Ultra”乗り越えて見せろ。

 

 その相澤の言葉を最後に、クラスメイトは皆黙り込んでしまう。

 だが一人――“緑谷”を除いたクラスメイトの表情は既に覚悟を決めている。

 勿論、それは竜牙も同じ。

 

「……この良き“受難”に感謝を」

 

 相澤の言った通り、これも“Plus Ultra”だ。乗り越えれば良い。

 竜牙は始めから覚悟を決めていた。己には“夢”がある。その夢の為にこの受難を乗り越えると……。

 

「ほう……」

 

 そんな竜牙の呟きが聞こえたのか、相澤が意外そうに呟きながら“個性把握テスト”は始まった。

 

▼▼▼

 

【第一種目:50m走】

 

――四足歩行の方が良いな。

 

 竜牙、実技試験と同じ形態となり記録は3秒02。

 

「……スタートダッシュをミスった。3秒きれなかった」

 

「いやそれでも速すぎるって!」

 

「飯田を超えたな……」

 

 竜牙には、やや不本意な記録。

 しかし共に行動している耳郎と障子は十分過ぎると褒めてくれる。

 個性がエンジンの飯田に勝ったのは十分であり、現に飯田も悔しそうに嘆き続けていた。

 

 

【第二種目:握力】

 

 これには自信があったのか腕を複製した障子が540㎏の記録を叩き出す。

 しかし、竜牙も負けじと肩まで体を変化させ、それを超えた800台を叩き出し、周囲を騒がせた。

 

「500と800超えとか両方ゴリラか!? いや、片方は絶対に違うな」

 

「これは自信があったんだがな……雷狼寺、お前の個性って何なんだ?」

 

「――獣化とでも思えば良い」

 

――獣?

 

 竜牙の言葉に全員が疑問を浮かべる。

 明らかにそれは獣以上の何かとしか思えない。――が、竜牙はそれ以上語る事はなかった。

 既に、竜牙の意識は――緑谷に向けられていたからだ。

 

(あいつ……)

 

 竜牙は一人、過剰に焦った様子の緑谷をただジッと見つめながらも、やがて次の種目へと向かった。

 

【第三種目:立幅跳び】

 

【第四種目:反復横跳び】

 

【第五種目:ボール投げ】

 

 その後の種目。どれも竜牙は次々と記録を他者よりも超えて行った。

 だがその最中、やがて“ある三人”から強い視線を受け始める事となった。

 

(確か、八百万・轟……そして爆豪だったか)

 

 竜牙は気付かれない様に三人の方を見るが、八百万と爆豪は悔しさを滲ませている事からライバル視なのは分かる。

 だが問題は轟。表情を変えず、観察する様にずっと見ているのだ。

 眼力からは最早、執念の様なものすら感じれる。

 

 すると、三人の視線に耳郎と障子は気付き、二人は竜牙の下へと駆け寄った。

 

「雷狼寺、なんか見られてるけど?」

 

「あぁ……気付いてる。ライバル視?」

 

「そうだろうな。――爆豪は想像できるが、八百万と轟。あの二人は“推薦組”らしい。だから一般組のお前が気になるんだろ」

 

 障子の言葉に竜牙は納得した。

 一般入試でもあれなのだ。推薦組という事は、それだけでも実力を認められた者達。

 その中で選ばれた八百万と轟にとって、一般で入学し、現在のテスト結果の総合1位である竜牙は気になる存在なのだろう。 

 

「反復は峰田に負けたんだが……」

 

「いや、あれはしゃあないって」

 

 小柄のクラスメイト――峰田は個性を上手く使い、反復横跳びをまさかの1位。

 これには流石の竜牙も参ったとしか言えず、そんな今までの結果を三人で話していた時だった。

 

「緑谷46m……」

 

 相澤の言葉に竜牙は視線を移す。

 どうやら、今は緑谷がボールを投げていた様だが、どこか様子がおかしい。

 相澤も何か指導でもしているのか緑谷に近付き、あれこれと伝えていると、緑谷が何かに気付いた様に叫び始める。

 

「ま、抹消ヒーロー“イレイザー・ヘッド”!!」

 

 『イレイザー・ヘッド』――それが担任、相澤の正体。

 そのヒーロー名に周りは知らない者が大半で、竜牙を含め名前だけを辛うじて知っている者が何とかいるレベル。

 メディアを嫌うヒーローも世の中にはおり、知る人ぞ知るヒーローだ。

 

 そして指導は終わったのか、相澤は緑谷から離れて二球目が始まろうとしていた。

 そんな光景に、緑谷と近い者達は心配する者や疑問に思う者もいた。

 

「何か指導を受けていた様だな……」

 

「ハッ! 除籍宣告だろ!」

 

「うぅ……心配だよ」

 

「心配してる?――僕は全然!」

 

 それぞれの反応の中、麗日に青山という名の生徒はそんな事を言っていた。

――しかし、竜牙もその言葉に同意見だ。

 

「……同感。この状況で心配は無意味だ」

 

 竜牙の言葉に麗日を始め、周りにいた者達の視線が一斉に向けられる。

 特に爆豪の視線は尋常ではなく、親の仇を見る眼力だ。

 

「白髪野郎……!」

 

「君は……雷狼寺君!」

 

「……よろしく」

 

 本当に簡単な挨拶を交わした後、雷狼寺は未だに投げない緑谷を見ながらゆっくりと話し始める。

 

「皆、何かしらの努力をしてここにいる。あの入試の篩いに掛けられて……そしてあの緑谷は勝ち抜いた。ならそれが答えだ」

 

「で、でも……あの地味目の人、まだちゃんとした記録出してないんだよ!?」

 

「ならそれが答え。――“個性”の努力が足りなかったんだ。つまりはヒーローへの努力がな」

 

 竜牙は見る限り、緑谷は個性を扱いきれてないと判断していた。

 相性の問題もあるが、それは実技試験の時からそうだ。

 少なくとも、あれは通過した以上はそれ乗り越える個性と技術があったのだと竜牙は思っており、これで結果が出せないならばそれで終わり。

 

「……まぁ、結果はまだ分からないが」

 

「ハッ! 分かりきってんだろ! “無個性”の雑魚だぞ!!」

 

「無個性?――じゃあ救助活動Pだけで合格したのか」

 

「そうに決まってんだろ、あんなクソナード!!」

 

 余程、緑谷が気にいらないのか。爆豪の緑谷に対する言葉は激しく感情的だ。

 だが、その言葉に竜牙は納得できた。無個性ならば、ずっとビクビクと怯えや焦りの様子が納得できる。 

 思い出作りとして試験を受け、運よく救助活動Pで合格してしまったのだろう。

 

「……運が良いんだな。けど、そんな無個性が俺は――」

 

――羨ましい。

 

 竜牙は思わずそう呟こうとしたが、それは飯田の言葉によって遮られた。

 

「無個性!? 何を言っているんだ! 彼が実技試験で何をしたのか知らないのか!? あの0Pの仮想敵を――」

 

――ぶっ飛ばしたんだぞ!

 

 それと同時だった。緑谷の投げたボールが空高く跳んでいったのは。

 

「……記録706m」

 

「ヒーローらしい記録出た!」

 

 相澤の言葉に、麗日が嬉しそうに飛び跳ねる。

 投げた緑谷はどこか表情が苦しそうだが、少なくとも竜牙に緑谷の答えが見えた。

 

「……無個性な訳がないか。あの0Pを倒したのも納得」

 

 竜牙はそう言い終えると、静かにその場を後にする。

 後ろで爆豪が何か騒いでいたが、相澤によって拘束されてすぐに収まり、そのまま個性把握テストは進んでいった。

 

――そして結果発表。

 

「結果発表だ……因みに除籍は嘘ね」

 

 空中に結果を表示しながら相澤はそんな事を言い、何名かは壮絶な表情をしていた。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。……すぐに分かりましたわ」

 

 唯一、八百万だけが嘘だと見破っていた様で、緑谷達を呆れた様子で見ていたが、竜牙は――。

 

(……“自由”だから、やっぱ止めたって事だったり)

 

――雄英は“自由”な校風が売り文句。

 

 相澤の言葉が脳裏に過りながらも、もう過ぎた事だと思う事にしたのだった。

 そして全てが終わり、教室に戻ろうとする竜牙を耳郎と障子が呼びかける。

 

「雷狼寺! 早く行くよ!」

 

「教室で説明がある様だ……」

 

 いつの間にか“友達”になっている様で、雷狼寺は三人セットが自然に感じ始めながらも静かに頷くのだった。

 

「……今行く」

 

 因みに“個性把握テスト”結果――雷狼寺 竜牙――順位1位。

 推薦組の八百万と轟を2位と3位に抑え、彼等からの注目度も上がり出す。

――しかし、それでも竜牙のヒーローアカデミアは、まだ始まったばかりだ。

 

 

END

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