世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つに至った超人社会。――それが俺達の世界だ。
――そんな世の中故に生まれた存在。
『ヒーロー』・『ヴィラン』
“個性”を悪用する犯罪者。それを敵――<ヴィラン>と人は呼ぶ。
逆にヴィランを“個性”を発揮して取り締まる者達。それを<ヒーロー>と人々は呼び、称えている。
――だが、それ以外にも存在する者達が二種類いる。
『無個性』・『突然変異』
無個性は言葉通り、この超人社会の中で“個性”が発現しなかった者を指す。
――そしてもう一つ、突然変異もまた名前通りだ。
基本的に両親から“個性”が遺伝するのが大半な中、両親の“個性”とは関係ない力を発現する者達が“突然変異”と呼ばれている。
――そう、これは……。
『もう勘弁して!! 私じゃあなたを育てられない!!』
『理解してくれ……お前と私達は違うんだ……!』
――突然変異の物語。
「俺の物語だ……」
▼▼▼
カーテンから漏れ出す朝の日差しと、目覚まし代わりであるスマホのアラームによって、一人の“少年”がベッドの上から目を覚ました。
今日は少年にとって大切な日。いつもより早めの起床であり、落ち着いた様子で少年は洗面所へと向かって朝の時間を始めた。
――顔を洗い、歯磨き、フワリとした白い髪を梳かし、身だしなみチェック。そして“制服”に着替えた後は簡単な朝食の時間。
少年の家は高層マンションの一室。広く、近代的な家電や家具ばかり便利な家の中で少年はテーブルの上に簡単な軽食を置き、テレビの電源を入れた。
『おはようございます! 朝のニュースの時間です!』
天気予報・最近のニュース・ヴィラン警報・どのヒーローが地区にいるか。変わりのない内容を見えながら朝食を済ませ、画面の左上の“時間”が7時50分を刻むと、少年はテレビの電源を切る。
「……行こう」
自分に伝える様に呟き、少年は鞄を背負うと鍵を持って玄関へと向かう。
冷えた玄関で履きなれた運動靴を履くと、少年は家の中の方を向いた。
「……行ってきます」
響く事もなく家の中に消えて行った声。少年以外、
そんな
家には鍵の掛る音だけが鳴り響く。
――ここから少年――