本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
[実施の形態1]
(湿式画像形成装置100)
図1〜図3を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置100について説明する。図1は、湿式画像形成装置100の全体構成を模式的に示す図である。図2は、湿式画像形成装置100のパッチ画像形成に関する制御フローを構成する各要素を示すブロック図である。図3は、湿式画像形成装置100のパッチ画像形成および通常の画像形成に関する制御フローを示す図である。
図1に示すように、湿式画像形成装置100は、記録用紙50上に所定の画像を形成する。記録用紙50は、搬送ローラー41,42および転写ローラー31によって、搬送方向AR50に沿って搬送される。記録用紙50上に形成される所定の画像には、湿式画像形成装置100の使用者によって入力された外部信号に基づいて形成される通常の画像と、通常の画像形成時における粒状ムラの発生を抑制するために湿式画像形成装置100が試験的に形成するベタパッチ画像とが含まれる。
本実施の形態における湿式画像形成装置100は、作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20を備える。以下、作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20の各構成について、湿式画像形成装置100によって通常の画像が形成される際の動作とともに説明する。湿式画像形成装置100によってベタパッチ画像が形成される際の作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20の動作については、後述する。
(作像機構1)
作像機構1は、現像ローラー2(現像剤担持体)、現像液W、現像槽3、現像バイアス発生装置4(像形成手段)、帯電装置6、および露光装置7を含む。詳細は後述されるが、作像機構1は、感光体11の表面に形成された静電潜像を、現像部5において現像液Wを用いて顕像化する。当該顕像化によって、感光体11の表面にはトナー像(図示せず)が形成される。
現像液Wは、現像槽3内に貯留される。現像液Wは、トナー粒子およびキャリア液を含む。トナー粒子は、所定の割合でキャリア液中に分散される。現像ローラー2は、現像液W中に一部が浸漬された状態で、矢印AR2方向に回転する。現像液Wは、現像ローラー2の回転によって現像ローラー2の表面上に汲み上げられる。現像液Wは、現像ローラー2の表面上に担持されるとともに、現像ローラー2の回転によって現像部5に向かって搬送される。
現像ローラー2に担持された現像液Wは、現像液Wの膜厚が均等になるように調整される。膜厚が調整された現像液W中のトナー粒子は、現像チャージャー(図示せず)によってたとえば「正」に荷電される。現像バイアス発生装置4は、現像バイアスの印加によって、現像ローラー2と次述する感光体11との間に電界を形成する。現像ローラー2に担持された現像液Wは、当該電界の作用によって、感光体11の表面に移送される。
(現像液W)
ここで、本実施の形態における現像液Wについて詳細に説明する。現像液Wは、絶縁性を有するキャリア液と、静電潜像を現像するトナーと、前記トナーを分散させる分散剤とを主要成分として含んでいる。現像液Wに含まれるトナーの平均粒径は、たとえば0.1μm〜5μmである。現像液Wに含まれるトナーの平均粒径が0.1μm未満の場合、現像性が低下する。現像液Wに含まれるトナーの平均粒径が5μmより大きい場合、画像品位が低下する。
キャリア液としては、記録用紙50への残留防止を考慮して、揮発性を有する液体が用いられるとよい。揮発性を有する液体とは、たとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、または、鉱物油等である。トナー用の結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンーアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられるとよい。トナー用の結着樹脂としては、これらの樹脂を複数若しくは混合されたものが用いられてもよい。
トナーの着色に用いられる顔料および染料もとしては、一般に市販されているものを用いることができる。トナーの着色に用いられる顔料としては、たとえば、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、またはレーキレッドD等を用いることができる。トナーの着色に用いられる染料としては、たとえば、ソルベントレッド27、またはアシッドブルー9等を用いることができる。
現像液Wの調製方法としては、たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダまたはロールミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。得られたトナーをキャリア液と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、現像液Wを得ることができる。現像液Wのトナー濃度としては、10質量%〜50質量%が好ましい。
(1次転写機構10)
1次転写機構10は、感光体11(像担持体)、クリーニングブレード12、回収層12T、および1次転写バイアス発生部24を含む。感光体11としては、たとえば正帯電性を有するアモルファスシリコン製の感光体が用いられる。
感光体11は、作像機構1の現像ローラー2に対向するように配置されるとともに、後述する2次転写機構20の中間転写体21に対向するように配置される。感光体11と現像ローラー2との間に、現像部5が形成される。感光体11と中間転写体21との間に、転写部15(1次転写部)が形成される。
感光体11は、矢印AR11方向に回転する。現像ローラー2(現像部5)、中間転写体21(転写部15)、クリーニングブレード12、帯電装置6、および露光装置7は、感光体11の周りに感光体11の回転方向に沿って順に配置される。
感光体11の表面は、作像機構1の帯電装置6によって所定の電位に一様に帯電される。表面が一様に帯電された感光体11は、作像機構1の露光装置7によって露光される。所定の画像情報に基づく静電潜像(図示せず)が、感光体11の表面に形成される。感光体11は、静電潜像を担持しつつ、静電潜像を現像部5に搬送する。
詳細は後述されるが、本実施の形態における作像機構1の露光装置7は、通常の画像情報に基づいて露光量、露光範囲、および露光のタイミング等が制御されることに加えて、制御部8(図2参照)によっても制御される。制御部8は、メモリー9に接続される。メモリー9には、ベタパッチ画像を形成するために必要な露光量、露光範囲、および露光のタイミング等に関する情報が記録される。露光装置7が制御部8に制御されることによって、感光体11の表面には、ベタパッチ画像(詳細は後述する)に対応する静電潜像が形成される。
現像部5にまで静電潜像が搬送された際、現像ローラー2に担持される現像液W中のトナー粒子は、現像バイアス発生装置4によって形成された電界の作用により、現像ローラー2の表面から感光体11の表面に静電移動する。この際、トナー粒子だけでなく、キャリア液も感光体11の表面に付着する。感光体11の表面に形成されていた静電潜像は、トナー像(または後述するパッチ画像)として顕像化される。
感光体11は、表面に形成されたトナー像を担持しつつ、トナー像を転写部15に向かって移動させる。現像ローラー2から感光体11に転移せずに現像ローラー2上に残留した現像液Wは、クリーニングブレード(図示せず)によって現像ローラー2の表面から掻き取られた後、回収される。
上述のとおり、中間転写体21は、感光体11に対向するように配置される。中間転写体21は、矢印AR21方向に回転する。感光体11と中間転写体21との間に、転写部15(1次転写部)が形成される。1次転写バイアス発生部24は、1次転写バイアスの印加によって、感光体11と中間転写体21との間に電界を形成する。図1に示される第1濃度検出手段22および制御部23は、ベタパッチ画像が形成される際に使用される。第1濃度検出手段22および制御部23の詳細については後述する。
感光体11に担持され転写部15に搬送されたトナー像は、1次転写バイアス発生部24が形成する電界の作用によって、感光体11の表面から中間転写体21の表面に1次転写される。1次転写されずに感光体11の表面上に残留したトナーおよび感光体11の表面上の汚れ等は、クリーニングブレード12によって感光体11の表面から掻き取られ、回収層12T内に回収される。感光体11の表面に残留している電荷は、イレーサーランプ(図示せず)等により除去される。
(2次転写機構20)
2次転写機構20は、中間転写体21、転写ローラー31、および2次転写バイアス発生部34を含む。中間転写体21は、矢印AR31方向に回転する転写ローラー31(バックアップローラーともいう)に対向するように配置される。中間転写体21と転写ローラー31との間に、転写部25(2次転写部)が形成される。
転写ローラー31は、矢印AR41方向に回転する搬送ローラー41、および、矢印AR42方向に回転する搬送ローラー42のそれぞれに対向するように配置される。記録用紙50は、搬送ローラー41,42によって転写ローラー31の周囲に巻き付けられた状態で、転写部25を通過する。
転写部15において感光体11の表面から中間転写体21の表面にトナー像が1次転写された後、中間転写体21は、表面に転写されたトナー像(または後述するベタパッチ画像)を担持しつつ、トナー像を転写部25に向かってさらに移動させる。2次転写バイアス発生部34は、2次転写バイアスの印加によって、中間転写体21と記録用紙50の記録面との間に電界を形成する。図1に示される第2濃度検出手段32および制御部33は、パッチ画像が形成される際に使用される。第2濃度検出手段32および制御部33の詳細については後述する。
中間転写体21に担持され転写部25に搬送されたトナー像は、2次転写バイアス発生部34が形成する電界の作用によって、中間転写体21の表面から記録用紙50表面に2次転写される。2次転写されずに中間転写体21の表面上に残留したトナーおよび中間転写体21の表面上の汚れ等は、クリーニングブレード(図示せず)によって中間転写体21の表面から掻き取られ、回収層(図示せず)内に回収される。
記録用紙50は、2次転写された後、定着装置(図示せず)内に送られる。記録用紙50に転写されたトナー像の中のトナー粒子は、定着装置によって加熱および加圧される。記録用紙50に転写されたトナー像は、この加熱および加圧によって、記録用紙50の表面に定着される。その後、記録用紙50は排紙装置(図示せず)を通して外部に排出される。以上のようにして、湿式画像形成装置100における通常の画像形成動作が完了する。
(転写バイアス設定シーケンス)
湿式画像形成装置100においては、記録用紙50上に通常の画像が形成された際に、粒状ムラが発生したりこれに起因する画像濃度の低下が発生したりすることを抑制するために、1次転写バイアス発生部24によって印加される1次転写バイアスと、2次転写バイアス発生部34によって印加される2次転写バイアスとが、通常の画像形成前に、所定の値にそれぞれ設定される。
図3に示すように、湿式画像形成装置100においては、1次転写バイアス設定シーケンスST10、および2次転写バイアス設定シーケンスST20が順次実施された後に、通常の画像が形成される(ST30)。以下、各シーケンスST10,ST20について説明する。
(1次転写バイアス設定シーケンスST10)
1次転写バイアス設定シーケンスST10は、たとえば、湿式画像形成装置100の電源が投入された直後、湿式画像形成装置100によって所定の枚数の画像が形成された後、およびまたは、湿式画像形成装置100によって画像が形成されてから所定の時間が経過した後に実施される。
1次転写バイアス設定シーケンスST10が実施されるタイミングは、たとえば作像機構1のメモリー9内に記憶される。所定の条件が満足されたことを、制御部8が判断する。制御部8は、湿式画像形成装置100の主制御部(図示せず)に対して、1次転写バイアス設定シーケンスST10を実施するための信号を送出する。
図1〜図3を参照して、1次転写バイアス設定シーケンスST10が実施される際、まず、露光装置7に接続された制御部8が、感光体11上に複数のパッチ画像を形成するために必要な露光量、露光範囲、および露光のタイミング等に関する情報を、メモリー9から読み出す。制御部8によって制御された露光装置7は、感光体11上に、複数のベタパッチ画像に対応する複数の静電潜像を順次形成する。
複数の静電潜像は、現像部5に搬送される。現像バイアス発生装置4によって印加された現像バイアス(固定値)によって、複数の静電潜像は、現像部5において顕像化される。感光体11の表面には、転写部15よりも上流側の部分において、複数のベタパッチ画像が形成される(図3におけるシーケンスST11参照)。
複数のベタパッチ画像は、感光体11の回転によって転写部15に向かって移動する。ベタパッチ画像が転写部15に進入する際、感光体11と転写部15との間には、1次転写バイアス発生部24によって1次転写バイアスが印加される。
1次転写バイアス発生部24によって印加される1次転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部15に進入する前は、一般的な画像形成に使用されるバイアス値よりも所定の値だけ低く設定されている。1次転写バイアス発生部24によって印加される1次転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部15に進入する毎に、制御部23によって徐々に上昇される(図3におけるシーケンスST12参照)。
複数のベタパッチ画像の各々は、1次転写バイアスのバイアス値が変化されることによって得られる複数の転写バイアス毎に、転写部15において感光体11から中間転写体21に順次静電転写される(図3におけるシーケンスST13参照)。
図4に示すように、中間転写体21の表面であって転写部15よりも下流側の部分には、第1濃度検出手段22が配置される。第1濃度検出手段22は、中間転写体21の表面に転写されたベタパッチ画像P1,P2,P3の各々の濃度を、レーザー光22Lの反射光(光学式な手段)に基づいて検出する(図3におけるシーケンスST14参照)。
第1濃度検出手段22によって検出された複数のベタパッチ画像(ベタパッチ画像P1,P2,P3)の各々の画像濃度情報は、制御部23に送出される(図3におけるシーケンスST15参照)。
図5を参照して、1次転写バイアスのバイアス値が徐々に上昇されるにしたがって、中間転写体21に転写されるベタパッチ画像の画像濃度も上昇する。1次転写バイアスがバイアス値B1に設定された際、画像濃度C1(C1=C3×90%)のべタパッチ画像が得られる。1次転写バイアスがバイアス値B2(B2>B1)に設定された際、画像濃度C2(C2=C3×99%>C1)の他のべタパッチ画像が得られる。
1次転写バイアスがバイアス値B3(B3>B2)に設定された際、画像濃度C3のべタパッチ画像が得られる。1次転写バイアスをバイアス値B3からバイアス値B4(B4>B3)の範囲で上昇させても、画像濃度C3の一定値を有するベタパッチ画像が得られる。すなわち、ベタパッチ画像の画像濃度は、1次転写バイアスがバイアス値B3からバイアス値B4の範囲SSでは上昇せず、飽和する。
1次転写バイアスがバイアス値B5(B5>B4)に設定された際、画像濃度C2のべタパッチ画像が得られる。ベタパッチ画像の画像濃度は、中間転写体21にこのベタパッチ画像より前に転写されたべタパッチ画像の画像濃度よりも低くなる。同様に、1次転写バイアスがバイアス値B6(B6>B5)に設定された際、画像濃度C1のべタパッチ画像が得られる。ベタパッチ画像の画像濃度は、中間転写体21にこのベタパッチ画像より前に転写されたべタパッチ画像の画像濃度よりも低くなる。ベタパッチ画像の画像濃度が低下する原因は、1次転写バイアスのバイアス値が過度に上昇されることにより、転写部15において放電が始まるからである。
上述のとおり、1次転写バイアスのバイアス値B1〜B6およびこれらに対応する各々のベタパッチ画像の画像濃度C1〜C3の各情報は、第1濃度検出手段22に接続された制御部23に送出される。制御部23は、第1濃度検出手段22から受け取った情報に基づいて、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の1次転写バイアスのバイアス値の範囲R1および範囲R2を求める。
ここで、「パッチ画像の画像濃度が略飽和する」とは、1次転写バイアスのバイアス値が上昇されても、中間転写体21に転写されたパッチ画像の画像濃度が殆ど変化しない場合を意味する。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、感光体11の回転により転写部15に搬送されたトナー像の全て(100%)が中間転写体21に転写される場合が含まれる。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、1次転写バイアスのバイアス値が上昇されても、所定比率(濃度検出の精度にもよるが、90%〜99%)のトナー像が中間転写体21上に転写される状態で、画像濃度が殆ど変化しないような場合も含まれる。当該所定比率の値は、予め制御部23に接続されたメモリー55(図2参照)に記憶されている。
制御部23は、第1濃度検出手段22から受け取る複数のベタパッチ画像毎の画像濃度とメモリー55に記憶された所定比率とを比較することによって、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の1次転写バイアスのバイアス値の範囲R1(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B1≦1次転写バイアスのバイアス値≦B3」である範囲)を求める。さらに、制御部23は、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の1次転写バイアスのバイアス値の他の範囲R2(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B4≦1次転写バイアスのバイアス値≦B6」である範囲)を求める。
その後、制御部23は、通常の画像形成時に用いられる1次転写バイアスのバイアス値を、範囲R1および範囲R2内であってパッチ画像の画像濃度が飽和するバイアス値の絶対値以下(すなわち範囲R1内)となるように設定する(図3におけるシーケンスST16参照)。
1次転写バイアス設定シーケンスST10においては、以上の各シーケンスST11〜ST16を経ることによって、通常の画像形成時に用いられる1次転写バイアスのバイアス値が、上記の範囲R1内の所定の値に固定値として設定される。
(2次転写バイアス設定シーケンスST20)
2次転写バイアス設定シーケンスST20は、1次転写バイアス設定シーケンスST10によって、通常の画像形成時に用いられる1次転写バイアスのバイアス値が設定された後に実施される。
図1〜図3を参照して、2次転写バイアス設定シーケンスST20は、1次転写バイアスのバイアス値が所定の値に設定された状態で実施される。2次転写バイアス設定シーケンスST20は、露光装置7に接続された制御部8が、感光体11上に複数のパッチ画像を形成するために必要な露光量、露光範囲、および露光のタイミング等に関する情報を、メモリー9から読み出す。制御部8によって制御された露光装置7は、感光体11上に、複数のベタパッチ画像に対応する複数の静電潜像を順次形成する。
複数の静電潜像は、現像部5に搬送される。現像バイアス発生装置4によって印加された現像バイアス(固定値)によって、複数の静電潜像は、現像部5において顕像化される。感光体11の表面には、転写部15よりも上流側の部分において、複数のベタパッチ画像が形成される。
複数のベタパッチ画像は、感光体11の回転によって転写部15に向かって移動する。ベタパッチ画像が転写部15に進入する際、感光体11と転写部15との間には、1次転写バイアス発生部24によって1次転写バイアス(固定値)が印加される。複数のベタパッチ画像の各々は、転写部15において感光体11から中間転写体21に順次静電転写される。中間転写体21上には、複数のベタパッチ画像が形成される(図3におけるシーケンスST21参照)。
中間転写体21に転写された複数のベタパッチ画像は、中間転写体21の回転によって転写部25に向かって移動する。ベタパッチ画像が転写部25に進入する際、中間転写体21と記録用紙50の記録面との間には、2次転写バイアス発生部34によって2次転写バイアスが印加される。
2次転写バイアス発生部34によって印加される2次転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部25に進入する前は、一般的な画像形成に使用されるバイアス値よりも所定の値だけ低く設定されている。2次転写バイアス発生部34によって印加される2次転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部25に進入する毎に、制御部33によって徐々に上昇される(図3におけるシーケンスST22参照)。
複数のベタパッチ画像の各々は、2次転写バイアスのバイアス値が変化されることによって得られる複数の転写バイアス毎に、転写部25において中間転写体21から記録用紙50の記録面に順次静電転写される(図3におけるシーケンスST23参照)。
図3に示すように、記録用紙50の記録面であって転写部25よりも下流側の部分には、第2濃度検出手段32が配置される。第2濃度検出手段32は、記録用紙50の記録面に転写された複数のベタパッチ画像の各々の濃度を、レーザー光の反射光(光学式な手段)に基づいて検出する(図3におけるシーケンスST24参照)。
第2濃度検出手段32によって検出された複数のベタパッチ画像の各々の画像濃度情報は、制御部33に送出される(図3におけるシーケンスST25参照)。
1次転写バイアス設定シーケンスST10におけるシーケンスST15と同様に、2次転写バイアスのバイアス値が徐々に上昇されるにしたがって、記録用紙50の記録面に転写されるベタパッチ画像の画像濃度も上昇する。制御部33は、第2濃度検出手段32から受け取った情報に基づいて、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の2次転写バイアスのバイアス値の範囲R1および範囲R2(図5参照)を求める。
ここで、「パッチ画像の画像濃度が略飽和する」とは、2次転写バイアスのバイアス値が上昇されても、記録用紙50の記録面に転写されたパッチ画像の画像濃度が殆ど変化しない場合を意味する。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、中間転写体21の回転により転写部25に搬送されたトナー像の全て(100%)が記録用紙50の記録面に転写される場合が含まれる。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、2次転写バイアスのバイアス値が上昇されても、所定比率(濃度検出の精度にもよるが、90%〜99%)のトナー像が記録用紙50の記録面上に転写される状態で、画像濃度が殆ど変化しないような場合も含まれる。当該所定比率の値は、予め制御部33に接続されたメモリー55(図2参照)に記憶されている。
制御部33は、第2濃度検出手段32から受け取る複数のベタパッチ画像毎の画像濃度とメモリー55に記憶された所定比率とを比較することによって、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の2次転写バイアスのバイアス値の範囲R1(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B1≦2次転写バイアスのバイアス値≦B3」である範囲)を求める。さらに、制御部33は、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の2次転写バイアスのバイアス値の他の範囲R2(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B4≦2次転写バイアスのバイアス値≦B6」である範囲)を求める。
その後、制御部33は、通常の画像形成時に用いられる2次転写バイアスのバイアス値を、範囲R1および範囲R2内であってパッチ画像の画像濃度が飽和するバイアス値の絶対値以下(すなわち範囲R1内)となるように設定する(図3におけるシーケンスST26参照)。
2次転写バイアス設定シーケンスST20においては、以上の各シーケンスST21〜ST26を経ることによって、通常の画像形成時に用いられる2次転写バイアスのバイアス値が、上記の範囲R1内の所定の値に固定値として設定される。説明上の便宜のため、1次転写バイアス設定シーケンスST10および2次転写バイアス設定シーケンスST20の双方の説明について、図5における範囲R1を参照した。1次転写バイアス設定シーケンスST10によって検出される範囲R1と、2次転写バイアス設定シーケンスST20によって検出される範囲R1とは、かならずしも同一とは限られない。
湿式画像形成装置100においては、上述のとおり、1次転写バイアス設定シーケンスST10、および2次転写バイアス設定シーケンスST20が順次実施された後に、通常の画像が形成される(ST30)。
(作用・効果)
粒状のトナーが密集した部分と粒状のトナーが散在した部分とが周期的に表れる、いわゆる「粒状ムラ」と呼ばれる現象は、トナー像の転写効率がほぼ100%に達した後、それ以上に転写バイアスを印加した場合に生じる。
これは、転写部に高い転写バイアスが印加されると、転写部(ニップ部)の上流側に位置する空間内においても強い電界が形成され、転写前のトナー像中のトナー粒子が移動してしまうためである。これに対して、本実施の形態の湿式画像形成装置100においては、粒状ムラの発生する直前の絶対値で小さいバイアス値が、1次転写バイアスおよび2次転写バイアスとして設定される。
湿式画像形成装置100は、通常の画像形成時において、粒状ムラの発生を抑制することができるだけでなく、トナー像の高い転写効率を得ることができる。したがって湿式画像形成装置100によれば、より一層、高画質な画像を記録用紙上に形成することが可能となる。
本実施の形態においては、転写部15(1次転写部)に対応して1次転写バイアス発生部24および第1濃度検出手段22が設けられ、転写部25(2次転写部)に対応して2次転写バイアス発生部34および第2濃度検出手段32が設けられる。したがって、本実施の形態においては、1次転写バイアス発生部24および2次転写バイアス発生部34の双方が「像形成手段」に相当し、第1濃度検出手段22および第2濃度検出手段32の双方が「濃度検出手段」に相当する。
1次転写バイアス発生部24が「像形成手段」に相当し、第1濃度検出手段22が「濃度検出手段」に相当するとした場合、中間転写体21が「被転写部材」に相当する。2次転写バイアス発生部34が「像形成手段」に相当し、第2濃度検出手段32が「濃度検出手段」に相当するとした場合、記録用紙50が「被転写部材」に相当する。
湿式画像形成装置100としては、第1濃度検出手段22のみを備え、第2濃度検出手段32を備えていなくてもよい。この場合、1次転写バイアス発生部24が「像形成手段」に相当し、第1濃度検出手段22が「濃度検出手段」に相当し、中間転写体21が「被転写部材」に相当する。この場合であっても、湿式画像形成装置100は、通常の画像形成時において、粒状ムラの発生を抑制することができるだけでなく、トナー像の高い転写効率を得ることができる。
湿式画像形成装置100としては、第1濃度検出手段22を備えず、第2濃度検出手段32のみを備えていてもよい。この場合、2次転写バイアス発生部34が「像形成手段」に相当し、第2濃度検出手段32が「濃度検出手段」に相当し、記録用紙50が「被転写部材」に相当する。この場合であっても、湿式画像形成装置100は、通常の画像形成時において、粒状ムラの発生を抑制することができるだけでなく、トナー像の高い転写効率を得ることができる。
[実施の形態1の変形例]
図6に示すように、感光体11には、荷電量制御機構16が接続されていてもよい。荷電量制御機構16は、トナー像が感光体11から中間転写体21に1次転写される前に、トナーの荷電量を高める。トナーの荷電量が高められることによって、1次転写前のトナーと感光体11との相互の付着力が高まり、転写ニップ前のトナーの動きが抑制される。画像ノイズの発生が低減されることによって、より一層、高画質な画像を記録用紙上に形成することが可能となる。
図6に示すように、中間転写体21には、荷電量制御機構26が接続されていてもよい。荷電量制御機構26は、トナー像が中間転写体21から記録用紙50に2次転写される前に、トナーの荷電量を高める。トナーの荷電量が高められることによって、2次転写前のトナーと中間転写体21との相互の付着力が高まり、転写ニップ前のトナーの動きが抑制される。画像ノイズの発生が低減されることによって、より一層、高画質な画像を記録用紙上に形成することが可能となる。
[実施の形態2]
(湿式画像形成装置200)
図7〜図9を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置200について説明する。図7は、湿式画像形成装置200の全体構成を模式的に示す図である。図8は、湿式画像形成装置200のパッチ画像形成に関する制御フローを構成する各要素を示すブロック図である。図9は、湿式画像形成装置200のパッチ画像形成および通常の画像形成に関する制御フローを示す図である。
図7に示すように、湿式画像形成装置200は、記録用紙50上に所定の画像を形成する。記録用紙50は、感光体11および転写ローラー61によって、搬送方向AR50に沿って搬送される。本実施の形態においては、記録用紙50は、転写ローラー61の周囲に巻き付けられることなく、転写部65(詳細は後述する)を通過する。ここでいう所定の画像には、湿式画像形成装置200の使用者によって入力された外部信号に基づいて形成される通常の画像と、通常の画像形成時における粒状ムラの発生を抑制するために湿式画像形成装置200が試験的に形成するパッチ画像とが含まれる。
本実施の形態における湿式画像形成装置200は、作像機構1、および転写機構70を備える。
(作像機構1)
作像機構1は、現像ローラー2(現像剤担持体)、現像液W、現像槽3、現像バイアス発生装置4(像形成手段)、帯電装置6、および露光装置7を含む。詳細は後述されるが、作像機構1は、感光体11の表面に形成された静電潜像を、現像部5において現像液Wを用いて顕像化する。当該顕像化によって、感光体11の表面にはトナー像(図示せず)が形成される。
現像液Wは、現像槽3内に貯留される。現像液Wは、トナー粒子およびキャリア液を含む。トナー粒子は、所定の割合でキャリア液中に分散される。現像ローラー2は、現像液W中に一部が浸漬された状態で、矢印AR2方向に回転する。現像液Wは、現像ローラー2の回転によって現像ローラー2の表面上に汲み上げられる。現像液Wは、現像ローラー2の表面上に担持されるとともに、現像ローラー2の回転によって現像部5に向かって搬送される。
現像ローラー2に担持された現像液Wは、現像液Wの膜厚が均等になるように調整される。膜厚が調整された現像液W中のトナー粒子は、現像チャージャー(図示せず)によってたとえば「正」に荷電される。現像バイアス発生装置4は、現像バイアスの印加によって、現像ローラー2と次述する感光体11との間に電界を形成する。現像ローラー2に担持された現像液Wは、当該電界の作用によって、感光体11の表面に移送される。
(転写機構70)
転写機構70は、感光体11(像担持体)、クリーニングブレード12、回収層12T、転写ローラー61(バックアップローラーともいう)、および転写バイアス発生部64を含む。感光体11としては、たとえば正帯電性を有するアモルファスシリコン製の感光体が用いられる。
感光体11は、作像機構1の現像ローラー2に対向するように配置されるとともに、転写ローラー61に対向するように配置される。感光体11と現像ローラー2との間に、現像部5が形成される。感光体11と転写ローラー61との間に、転写部65が形成される。
感光体11は、矢印AR11方向に回転する。現像ローラー2(現像部5)、転写ローラー61(転写部65)、クリーニングブレード12、帯電装置6、および露光装置7は、感光体11の周りに感光体11の回転方向に沿って順に配置される。
感光体11の表面は、作像機構1の帯電装置6によって所定の電位に一様に帯電される。表面が一様に帯電された感光体11は、作像機構1の露光装置7によって露光される。所定の画像情報に基づく静電潜像(図示せず)が、感光体11の表面に形成される。感光体11は、静電潜像を担持しつつ、静電潜像を現像部5に搬送する。
詳細は後述されるが、本実施の形態における作像機構1の露光装置7は、通常の画像情報に基づいて露光量、露光範囲、および露光のタイミング等が制御されることに加えて、制御部8(図8参照)によっても制御される。制御部8は、メモリー9に接続される。メモリー9には、パッチ画像を形成するために必要な露光量、露光範囲、および露光のタイミング等が記録される。露光装置7が制御部8に制御されることによって、感光体11の表面には、パッチ画像(詳細は後述する)に対応する静電潜像が形成される。
現像部5にまで静電潜像が搬送された際、現像ローラー2に担持される現像液W中のトナー粒子は、現像バイアス発生装置4によって形成された電界の作用により、現像ローラー2の表面から感光体11の表面に静電移動する。この際、トナー粒子だけでなく、キャリア液も感光体11の表面に付着する。感光体11の表面に形成されていた静電潜像は、トナー像(または後述するパッチ画像)として顕像化される。
感光体11は、表面に形成されたトナー像を担持しつつ、トナー像を転写部65に向かって移動させる。現像ローラー2から感光体11に転移せずに現像ローラー2上に残留した現像液Wは、クリーニングブレード(図示せず)によって現像ローラー2の表面から掻き取られた後、回収される。
上述のとおり、転写ローラー61は、感光体11に対向するように配置される。転写ローラー61は、矢印AR61方向に回転する。感光体11と転写ローラー61との間に、転写部65が形成される。転写バイアス発生部64は、転写バイアスの印加によって、感光体11と転写ローラー61(記録用紙50の記録面)との間に電界を形成する。
感光体11に担持され転写部65に搬送されたトナー像は、転写バイアス発生部64が形成する電界の作用によって、感光体11の表面から記録用紙50の記録面に転写される。転写されずに感光体11の表面上に残留したトナーおよび感光体11の表面上の汚れ等は、クリーニングブレード12によって感光体11の表面から掻き取られ、回収層12T内に回収される。感光体11の表面に残留している電荷は、イレーサーランプ(図示せず)等により除去される。
記録用紙50は、トナー像を転写された後、定着装置(図示せず)内に送られる。記録用紙50に転写されたトナー像の中のトナー粒子は、定着装置によって加熱および加圧される。記録用紙50に転写されたトナー像は、この加熱および加圧によって、記録用紙50の表面に定着される。その後、記録用紙50は排紙装置(図示せず)を通して外部に排出される。以上のようにして、湿式画像形成装置200における通常の画像形成動作が完了する。
(転写バイアス設定シーケンス)
湿式画像形成装置200においては、記録用紙50上に通常の画像が形成された際に、粒状ムラが発生したりこれに起因する画像濃度の低下が発生したりすることを抑制するために、転写バイアス発生部64によって印加される転写バイアスが、通常の画像形成前に所定の値にそれぞれ設定される。
図9に示すように、湿式画像形成装置200は、転写バイアス設定シーケンスST70が実施された後に、通常の画像が形成される(ST30)。以下、転写バイアス設定シーケンスST70について説明する。
(転写バイアス設定シーケンスST70)
転写バイアス設定シーケンスST70は、たとえば、湿式画像形成装置200の電源が投入された直後、湿式画像形成装置200によって所定の枚数の画像が形成された後、およびまたは、湿式画像形成装置200によって画像が形成されてから所定の時間が経過した後に実施される。
転写バイアス設定シーケンスST70が実施されるタイミングは、たとえば作像機構1のメモリー9内に記憶される。所定の条件が満足されたことを、制御部8が判断する。制御部8は、湿式画像形成装置200の主制御部(図示せず)に対して、転写バイアス設定シーケンスST70を実施するための信号を送出する。
図7〜図9を参照して、転写バイアス設定シーケンスST70が実施される際、まず、露光装置7に接続された制御部8が、感光体11上に複数のパッチ画像を形成するために必要な露光量、露光範囲、および露光のタイミング等に関する情報を、メモリー9から読み出す。制御部8によって制御された露光装置7は、感光体11上に、複数のベタパッチ画像に対応する複数の静電潜像を順次形成する。
複数の静電潜像は、現像部5に搬送される。現像バイアス発生装置4によって印加された現像バイアス(固定値)によって、複数の静電潜像は、現像部5において顕像化される。感光体11の表面には、転写部15よりも上流側の部分において、複数のベタパッチ画像が形成される(図9におけるシーケンスST11参照)。
複数のベタパッチ画像は、感光体11の回転によって転写部65に向かって移動する。ベタパッチ画像が転写部65に進入する際、感光体11と転写部65との間には、転写バイアス発生部64によって所定の転写バイアスが印加される。
転写バイアス発生部64によって印加される所定の転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部65に進入する前は、一般的な画像形成に使用されるバイアス値よりも所定の値だけ低く設定されている。転写バイアス発生部64によって印加される転写バイアスのバイアス値は、ベタパッチ画像が転写部65に進入する毎に、制御部63によって徐々に上昇される(図9におけるシーケンスST12参照)。
複数のベタパッチ画像の各々は、転写バイアスのバイアス値が変化されることによって得られる複数の転写バイアス毎に、転写部65において感光体11から記録用紙50の記録面に順次静電転写される(図9におけるシーケンスST13参照)。
図7に示すように、記録用紙50の記録面であって転写部65よりも下流側の部分には、濃度検出手段62が配置される。濃度検出手段62は、記録用紙50の記録面に転写された複数のベタパッチ画像の各々の濃度を、レーザー光の反射光(光学式な手段)に基づいて検出する(図9におけるシーケンスST14参照)。
濃度検出手段62によって検出された複数のベタパッチ画像の各々の画像濃度情報は、制御部63に送出される(図9におけるシーケンスST15参照)。
上述の実施の形態1における1次転写バイアス設定シーケンスST10におけるシーケンスST15と同様に、転写バイアスのバイアス値が徐々に上昇されるにしたがって、記録用紙50の記録面に転写されるベタパッチ画像の画像濃度も上昇する。制御部63は、濃度検出手段62から受け取った情報に基づいて、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の転写バイアスのバイアス値の範囲R1および範囲R2(図5参照)を求める。
ここで、「パッチ画像の画像濃度が略飽和する」とは、転写バイアスのバイアス値が上昇されても、記録用紙50の記録面に転写されたパッチ画像の画像濃度が殆ど変化しない場合を意味する。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、感光体11の回転により転写部65に搬送されたトナー像の全て(100%)が記録用紙50の記録面に転写される場合が含まれる。パッチ画像の画像濃度が略飽和する場合には、転写バイアスのバイアス値が上昇されても、所定比率(濃度検出の精度にもよるが、90%〜99%)のトナー像が記録用紙50の記録面上に転写される状態で、画像濃度が殆ど変化しないような場合も含まれる。当該所定比率の値は、予め制御部63に接続されたメモリー55(図8参照)に記憶されている。
制御部63は、濃度検出手段62から受け取る複数のベタパッチ画像毎の画像濃度とメモリー55に記憶された所定比率とを比較することによって、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の転写バイアスのバイアス値の範囲R1(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B1≦2次転写バイアスのバイアス値≦B3」である範囲)を求める。さらに、制御部63は、ベタパッチ画像の画像濃度が略飽和する際の転写バイアスのバイアス値の他の範囲R2(画像濃度(転写効率)が90%〜100%である範囲、すなわち、「B4≦2次転写バイアスのバイアス値≦B6」である範囲)を求める。
その後、制御部63は、通常の画像形成時に用いられる転写バイアスのバイアス値を、範囲R1および範囲R2内であってパッチ画像の画像濃度が飽和するバイアス値の絶対値以下(すなわち範囲R1内)となるように設定する(図9におけるシーケンスST16参照)。
転写バイアス設定シーケンスST70においては、以上の各シーケンスST11〜ST16を経ることによって、通常の画像形成時に用いられる転写バイアスのバイアス値が、上記の範囲R1内の所定の値に固定値として設定される。説明上の便宜のため、上述の実施の形態1における1次転写バイアス設定シーケンスST10および本実施の形態における転写バイアス設定シーケンスST70の双方の説明について、図5における範囲R1を参照した。上述の実施の形態1における1次転写バイアス設定シーケンスST10によって検出される範囲R1と、本実施の形態における転写バイアス設定シーケンスST70によって検出される範囲R1とは、かならずしも同一とは限られない。
湿式画像形成装置200においては、上述のとおり、転写バイアス設定シーケンスST70が実施された後に、通常の画像が形成される(ST30)。
(作用・効果)
上述の実施の形態1における説明で述べたように、粒状のトナーが密集した部分と粒状のトナーが散在した部分とが周期的に表れる、いわゆる「粒状ムラ」と呼ばれる現象は、トナー像の転写効率がほぼ100%に達した後、それ以上に転写バイアスを印加した場合に生じる。
これは、転写部に高い転写バイアスが印加されると、転写部(ニップ部)の上流側に位置する空間内においても強い電界が形成され、転写前のトナー像中のトナー粒子が移動してしまうためである。これに対して、本実施の形態の湿式画像形成装置200においては、粒状ムラの発生する直前の絶対値で小さいバイアス値が、転写バイアスとして設定される。
湿式画像形成装置200は、通常の画像形成時において、粒状ムラの発生を抑制することができるだけでなく、トナー像の高い転写効率を得ることができる。したがって湿式画像形成装置200によれば、より一層、高画質な画像を記録用紙上に形成することが可能となる。
(変形例)
上述の各実施の形態における湿式画像形成装置100,200は、作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20を1つずつ備える。湿式画像形成装置100,200としては、作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20を、たとえば4つずつ有していてもよい。
作像機構1、1次転写機構10、および2次転写機構20の数は、使用される現像液の数に応じて増減される。湿式画像形成装置100,200が作像機構1等を4つずつ有する場合、作像機構1は、たとえば、Y(Yellow:黄色)、M(Magenta:赤紫)、C(Cyan:シアン)、および、K(blacK:黒)の各色に対応する。
イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの配列順序は、適宜変更されることが可能である。湿式画像形成装置100としては、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラック以外の色が用いられてもよい。
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。