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作:春川レイ
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夢と現実


圓城が列車の中に戻ると、座席や壁が肉のように膨らみ人々を侵食しようとしていた。脈打つ肉塊を迷いなく刀で斬り込む。乗客は魘夢の術により、眠っているため混乱せずに済んでいるのが不幸中の幸いだった。

「煉獄さん!善逸!伊之助ーっ!寝てる場合じゃない!起きてくれ!」

炭治郎が必死に叫ぶ声が聞こえた。圓城も素早く肉塊を斬りながら、車両を進む。途中で禰豆子と、覚醒したらしい伊之助、そして何故か寝ながら戦っている善逸がいたが、とにかく煉獄の元へと走った。

「…くっ、戦いにくい!」

車両は座席があるため刀を振りづらい。とにかく煉獄を起こし、連携を取らなければ非常にまずい。

その時炭治郎が同じ車両に入ってきた。

「圓城さん!煉獄さんは…」

「流石に起きているはずよ!とにかく一度合流…」

「よもやよもやだ!」

その時、前の車両から大声が聞こえた。圓城は叫ぶように声を出す。

「煉獄さん!鬼です!この汽車そのものが、鬼です!」

取り繕うのも忘れて、とにかく声を上げる。

その時、突然大きく列車が揺れた。衝撃で炭治郎と共に前方へ倒れ混む。

「何が…?」

炭治郎がわけも分からず呟いた時、炎のような羽織をはためかせ、煉獄が現れた。

「圓城!竈門少年!」

「煉獄さん!」

「よかった、起きたんですね!」

「ここに来るまでにかなり細かく斬撃を入れてきたので鬼側も再生に時間がかかると思うが、余裕はない!手短に話す!」

煉獄が手を広げながら大きく声を上げた。

「この汽車は八両編成だ!圓城は後方五両を守れ!残りの三両は黄色い少年と竈門妹、猪頭少年が守る!俺と竈門少年はその三両を注意しつつ、鬼の頚を探す!」

「頚!?でも今この鬼はーー、」

炭治郎が戸惑った声を出したが、それに構わず、煉獄の提案に圓城は思わず声を上げた。

「煉獄さん、私が頚を斬ります!交代してください!」

「む!頚を斬れるのか!」

「はい!場所も検討がついています!」

「いいだろう!俺が後方五両を守る!圓城と竈門少年は頚を斬ってくれ!どのような姿になろうとも、鬼である限り急所はある!俺も急所を探りながら戦う!君達も気合いを入れろ!」

「はい!」

圓城と炭治郎は同時に返事した。その瞬間、ドンとまた衝撃が襲い、煉獄がその場から消えた。どうやら先ほどの衝撃は煉獄が移動した揺れだったらしい。

「炭治郎!もう一度屋根に上がるのよ!」

敬称も忘れて炭治郎に呼び掛け、車両の扉を開けた。

「上にですか!?」

「さっきあいつは先頭車両にいたわ!恐らくはそこよ!匂いは感じない!?」

「強い風のせいで匂いが流れるんです!」

「とにかく急ぎましょう!」

2人で屋根へ上がり、前方を目指してとにかく走る。先頭の運転車両に到着すると、2人で一気に車両へ乗り込んだ。そこにいた運転手が真っ青な顔で叫ぶ。

「なんだ、お前らは!出ていけ!」

「ごめんなさい!」

圓城は叫ぶように謝ると、運転手の腹部を殴り気絶させた。同時に四方八方から手の形の肉塊が襲ってくる。圓城が刀を振る前に炭治郎が動いた。

「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦」

上半身下半身をねじり、刀を振るう。螺旋を描くように周囲を切り裂いた。

「圓城さん!ここです!真下から匂いがします!」

「任せて!」

圓城は刀を構え大きく振り下ろす。

「睡の呼吸 弐ノ型 枕返し」

床が切り裂かれ、破壊される。圓城と炭治郎はそこに大きな頚の骨を見つけた。

「水の呼吸 捌ノ型 滝壺」

「睡の呼吸 壱ノ型 転寝」

2人揃って一気に攻めるが、肉塊に防がれる。裂け目がすぐに塞がり、再生を繰り返した。必死に攻撃を繰り返すが、骨に届かない。

「圓城さん!呼吸をあわせて連撃しましょう!どちらかが肉を斬り、どちらかが骨を絶つんです!」

「ではあなたが肉を!」

「はい!」

2人で呼吸を合わせる。

「行くわよ!」

「はい!」

刀を構え振り下ろす瞬間、不意に肉塊から眼が現れた。中心には『夢』と刻まれている。

「ーーがっ!」

血鬼術だと理解した瞬間、突然の襲撃に対応出来ず一瞬目眩がしたが、ギリギリの所で持ちこたえた。

「ーーっ、炭治郎!」

炭治郎も意識を消失したが、夢の中で自分の頚を斬り覚醒したらしい。しかし、覚醒する度に鬼の眼と視線が合ってしまい、消失と覚醒を繰り返している。

「炭治郎!私なら術に持ち堪えられる!私の方が肉を斬るわ!だから、なんとかーー!」

と、言った瞬間、夢と現実が混乱したらしい炭治郎が自分の頚に刀をかけた。ギョッとした圓城が慌てて、炭治郎の腕を掴み止める。

「炭治郎、私の目を見なさい!」

「え、圓城さーー」

「罠に嵌まるな!心を強くもて!強い心をもたないと刀を振るえないわ!これは現実よ!」

圓城は大声で叫びながら、片手で隊服の中から次々に短刀を取り出し、眼の方へ向かって投げた。短刀で鬼は倒せないが、時間稼ぎにはなる。

「私が肉を斬るから、あなたはーー」

「圓城さん!」

その時、後ろから目を覚ましたらしい運転手が桐を持ち、圓城に襲いかかった。

「夢の邪魔をするな!」

圓城が反応する前に、炭治郎が動く。とっさに圓城を庇った炭治郎の腹部に桐が深く突き刺さった。

「炭治郎!」

炭治郎はすぐに運転手を殴り気絶させる。

「大丈夫です!圓城さん!」

「動けるのね!?」

「はい!」

「じゃあ、行くわよ!」

一瞬だけ目をつぶり深呼吸をする。そして、刀を構えた。

「睡の呼吸 伍ノ型 浅睡眠」

勢いよく刀を四方八方に振るう。肉塊を一気に切り裂いたその時、ようやく骨が露出し一瞬の隙ができた。そこを狙い、炭治郎が動いた。回転をしながら刀を振り下ろした。

「ヒノカミ神楽 碧羅の天」

その刀はしっかりと、そして確実に魘夢の骨を捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※大正コソコソ噂話
圓城は最初に鬼に襲われた時、短刀を使ったから日輪刀よりも短刀が好き。自分で集めた短刀を隊服の中にたくさん隠しています。短刀投げの技術は名人級。
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