魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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第九十話 清濁はとうに喉元を過ぎ

2097年1月28日

 

 20日の波乱を呼びかねないイベントから1週間以上が経過した。

 雫を交えた真由美との話し合いはイベントがあった次の日には行い、その話し合いについては丸く収まっている。

 

(まさか、雫が丸々許すとは思ってなかったが)

 

 日が沈んだばかりの夜。俺は書斎での読書中にその話し合いの顛末を思い出し、意外感を再燃させていた。

 そう。雫は真由美の横恋慕を許したのだ。

 真由美が婚約者候補に立候補する事(真夜には話を通してないので、まだ婚約者候補には正式になっていないが)、真由美が今まで以上に俺へスキンシップを取る事。真由美から許可を求められたそれらを、雫は許可したのである。

 

(……雫は真由美が俺に恋心を抱いているの、予想してたっぽいな。……俺が鈍いのか、それとも女の勘ってやつか)

 

 雫が取り乱さず、そうして許可をしたのは、あらかじめ真由美が恋のライバルになる事を予想していたからのようだった。

 だからと言って牽制するでも拒絶するでもなく、あえて許容するのは、いったいどのような思惑があるのか。そこら辺も、俺には読み解けない。

 

(……それにしても。……どうしたもんかな)

 

 まさか2人から迫られると思っていなかった俺は、この事態をどう収拾付けるべきか、未だに悩んだままだった。

 何度も言っているが、俺はどちらも切り捨てたくないし、浮気するような下衆野郎になりたくない。2人との疎遠も痴情の縺れも、俺は御免だ。

 

(……ん?……真夜からか)

 

 そんな出口のない迷宮で迷走していたところに、真夜からの着信が入った。

 悩みを一旦忘れるのに丁度良いだろうと、即座に応答する。

 

「もしもし、母さん。こんばんは」

 

〈ええ。こんばんは、十六夜〉

 

 挨拶から始まる通話。すぐに話題に入らなかったし、真夜の表情が険しいという事もないので、それ程重要な用事ではないようだ。

 真由美の件についてもう真夜に知られたかと内心で一瞬焦ったが、そうではないようなので一安心である。

 

「師族会議の準備で最近忙しかったようだけど、俺と電話してて大丈夫?」

 

〈大丈夫よ。準備と言っても、そう大した準備は必要ないですから。最近忙しかったのは別件ですし……〉

 

 重要な用事ではないと見て世間話から始めてみたが、何かさらっと不穏な一言を真夜が小さく呟いた。

 師族会議とは別件、しかして師族会議直前で忙しくなるとすると、師族会議で弘一を吊るし上げるための準備か。

 

「師族会議より優先しなくちゃいけない仕事か……。かなり重要な案件なんだろうけど、無理はしないでね」

 

〈だ、大丈夫よ?自分の体調も調整できないようでは、四葉家の当主は務まりませんからね〉

 

 とりあえず、藪をつついて蛇を出したくはないので、俺はテキトーに話題を流した。

 

〈ところで。雫さんとは上手くやっていますか?〉

 

 真夜もこの話題は続けたくないようで、別の話題を自身で提示する。

 

「……上手くも何も、婚約者候補の話をこの前したばかりじゃないか。仲を進展させるイベントなんてすぐには用意できないし、元よりそれ以前に結構な仲を構築したつもりだよ」

 

 真由美の件でその話題を少しタイムリーに思いつつ、さすがにこの場でその件を話すのはタイムリーツーベースではすまない気がしたので伏せた。

 

〈あら、デートの1つもしてないのかしら〉

 

「うーん、そうだね。年始からどころか、このところ行ってなかったなぁ」

 

〈……ちょっと待って、十六夜。その口ぶりだと、まるで1回はデートを済ませているように聞こえるのだけれど〉

 

「デートと呼べる程大層なモノではないけど、2人で買い物に行った事はあったね」

 

〈そんな……っ、こ、婚約者になる前にデートだなんて……、は、破廉恥だわっ!〉

 

「さっき自分で婚約者候補の時点でデートへ行く事を勧めてなかった?」

 

 何故か雫との仲を心配されつつ、思わず引き笑いが出てしまいそうな謎のコントが繰り広げられる。

 真夜がそんなコントに興じられるような人物となった事を、俺は喜ぶべきなのだろうか。

 

「それにしても。意外と雫の事を気にかけてくれるんだね。雫と話をさせる前は、俺が婚約する事も避けたがっているみたいだったけど」

 

〈……そうね、貴方の婚約を避けたかったのは認めます。……でも、彼女と、そして彼女の父君と話して、少し意見が変わったわ。有り体に言ってしまえば、悪い虫が付くくらいなら雫さんがくっついてしまった方が良いと〉

 

「ああ、そういう……」

 

 真夜は雫の人柄を理解し、同時に潮の意見も理解したらしい。

 つまりは、誰とも知らない奴に息子を取られるくらいなら、多少なりとも知っていて、少しでも信頼のある相手に渡した方がまだ良いという。何と言えば良いのだろう、親バカとはまた違う、強いて言うなら過保護が発揮されているのである。

 

「まぁ、うん……。母さんが少なからず乗り気で助かったよ……」

 

〈……ええ、そうね〉

 

 俺が『乗り気』と称したところで顔を背ける真夜。やはりと言うべきか、完全には乗り気でないようだ。先述の通り、雫とくっつけるのは、あくまで次善策なのだろう。

 

〈そ、そういえば十六夜。貴方に伝えておこうと思った事があったのだったわ〉

 

「……、なんだい?」

 

 これ以上俺の婚約関連について話し合いたくないのか、真夜はあからさまに話題を逸らした。そうと気付きながらも、雫との結婚まで交渉するのは早いだろうと、俺も婚約関連を後回しにする。

 そうしてただ談笑を続けようとしていた俺に、真夜は爆弾を放り込む。

 

〈ジード・ヘイグが日本でテロを起こそうとしているようです〉

 

「そう、ジードがテロを。……ジードがテロを!?」

 

 あまりにも平然と、声のトーンも日常的な話題を話すかのように平静なモノだったため、俺の思考が一瞬追い付かなかった。

 

「それ、重要な話じゃないの!?」

 

 今回はただの世間話、息子恋しと寂しくなった真夜が電話をかけてきたものと受け取っていたのだが、まさかまさかの不意打ちである。何故、そんな重要な話をこんな世間話の延長でぶちかましたのか。

 

〈そう慌てる事でもないのよ。なにせ、持ち込もうとしているのがUSNAから掠めてきた携行ミサイルなんですもの。その程度の火器では、貴方どころか四葉の従者たちだって殺せないわ〉

 

 軽い調子で話している真夜。どうやら彼女はジードの持ち込もうとしている武器を軽んじ、ジードのテロを楽観視しているようだ。

 確かに、携行ミサイルとは言え、個人が隠して持ち運べる量には限度がある。仮に、協力者がいたとしても、たかが知れている。ジードが動かせそうな手駒、『ノー・ヘッド・ドラゴン』や『ブランシュ』は、日本において勢力が非常に衰えているのだ。合わせて日本に潜む人員も減っており、その中で戦力と数えられるものはほとんどない。

 また、戦力を急遽調達するのも難しい。周公瑾がまだジードの手元に居た場合なら、周公瑾旗下の亡命者を戦力として調達できただろう。だが、周公瑾は残念ながらジードの手元を離れ、今は俺の手元にある。

 

 以上から、持ち込める武器・調達できる戦力の2つを加味しても、ジードは四葉ないし有力な魔法師を打破できる力がない。

 付け足すなら、ジードのその動向は追えている。これでジード打倒へ真面目に取り組めというのは、なかなか難しいかもしれない。

 

「……恐れるに足りないって言われれば、それもそうか。……でも、見過ごすのもどうなんだい?四葉を直接狙ってくるとも限らないだろう?」

 

〈もちろん、見過ごすつもりはありません。横浜事変を手引きした黒幕です。当然、報いは受けてもらいます〉

 

 真剣ではないが、警戒を怠ってもいない真夜。どうにも強大な敵としては見ていないが、潰すべき虫くらいには認識しているのかもしれない。横浜事変で(正確に言えば事変が起こる前の関連事項だが)、息子である俺が傷付けられた、その復讐対象ではある。よって、軽んじても敵視しないという訳ではないらしい。

 

〈安心して?十六夜。しっかりとジードの動向は追えています。予想外の事態は起こさせません〉

 

 真夜は俺を安心させるためか、自信満々にそう言い切った。だが、俺は違和感を知覚する。

 

(『フリズスキャルヴ』のオペレーターであるジードを追えている?真夜が同じオペレーターであると、ジードが気付いていないのか?)

 

 ジードを追えているだろうという自信を裏打ちしているだろうネットワークハッキングツール、『フリズスキャルヴ』。そのツールはネットワーク上にある情報を全て覗き見る事ができるというチートアイテムだが、情報の検索履歴が、他のオペレーターにも見られるという形で残る。それは、他のオペレーターにどんな情報を欲しがっていたか、筒抜けであるという事だ。

 誰の検索履歴であるか、誰がオペレーターであるかは、このツールの創作者であるエドワード・クラークと、その息子にして一オペレーターのレイモンド・クラークにしか分からない。

 だが、誰かが自身を探っているというのは勘付けるはずだ。

 

(……ジードは真夜がオペレーターと察した上で、あえて動向を追わせて油断させているのかもしれない。……自身を囮にして、裏で本命のテロを通す。……原作でも、そういう手だったのかもしれないな)

 

 原作において、ジードはテロを成功させていた。真夜がテロの準備をしていると気付いていたのに拘らず、だ。記憶にある限り、原作での真夜は俺の目の前にいる真夜より、このテロについて関心がなかったようではあるが。それでも、真夜を出し抜いたのは事実である。

 

 では、どうするか。

 

(……関心はあるが、でも全力って感じでもない。ここは全力を出すよう、進言すべきか?……いや、変に原作改変すれば、後の動きが読みづらくなるか)

 

 俺は、テロを未然に回避する手を持ちながら、原作遵守に舵を切った。

 

〈……十六夜、何か心配?〉

 

「いや、大丈夫。今まで上手く隠れていた相手をこうも簡単に捕捉できるもんかと、ちょっと疑問だったんだ。でも、相手の手駒が随分と削れている事を思い出してね。行動にボロが出る程追い詰められているんだろうと、思い直したんだよ」

 

〈……、ええ、そうよ。だいたい、私たちを翻弄していたのは、奴の手下である周公瑾の方でしたから。手下は優秀だったとしても、その頭が優秀とは限らないわ。少なくとも、戦略家としては、ね〉

 

 真夜の中でも俺が一瞬上げた疑問が頭に過ったようだが、周公瑾という存在によってその疑問が解消された。戦略家として優秀だったのは、手下である周公瑾だったのだろうと、真夜の中で結論が出たのかもしれない。

 

「とりあえず、ジードがテロを起こそうとしている事は、頭に入れておくよ」

 

〈ええ、そうしておいて。……じゃあ、名残惜しいけどここまでかしら。仕事に戻らなくちゃ〉

 

「了解。それじゃあ、またね」

 

〈ええ。また今度〉

 

 重要情報が紛れた世間話は、その締めも世間話をしていたかのように締められる。内心、やっぱり息子恋しと、仕事の合間を縫って電話してきた事に気付きながら。

 

「さてと……。周妃!」

 

 俺は電話を終えて直ぐ、周妃を呼び寄せる。あいつに訊かなければならない事が、さっきの世間話で湧いてきていた。

 

「お呼びでしょうか、大人(ターレン)

 

「さっき母上から、ジードが日本でテロを起こす準備をしていると、連絡が入った。お前もその事を知っていたか?」

 

 訊かなければならない事は、そう、周妃の情報収集、その進捗についてであった。

 周妃にジードを探らせていたはずだったが、真夜から聞かされた情報を、こいつから聞かされていないのだ。

 もし周妃がその情報を知らないという事だった場合、それは情報収集の成果が芳しくない事を意味している。逆に、情報を知っていて俺に回していなかった場合は、かなり問題だ。俺に対して謀反を企てている可能性が出てくる。

 

「申し訳ありません、大人(ターレン)!その情報については、私も知り得ておりました!しかし、知り得ていたのに拘らず、その情報を回さなかったのには訳があるのです!」

 

 周妃は明らかに焦りながら、俺へと頭を下げた。彼女が言葉にした謝意は本心からのように窺えるが、まだ疑いは晴れない。

 

「言い訳は聞いてやる。率直に話せ」

 

「はっ!私はジードを独力で捕縛する事を計画しておりました!それは偏に、ジード対処に貢献し、絶対の信頼を勝ち取りたかったためでございます!」

 

「……」

 

 周妃の言い訳に、俺は苦い顔で絶句してしまった。

 そういえば、俺はこいつに『名もなき少年兵』についての秘密を明かす対価として、ジードへの対処に貢献する事を要求したのだ。故に、秘密を知りたいこいつはジードへの対処に本気で取り組んでいたようだが。どうしてこうなった。

 

「この周妃、如何なる処罰も受ける所存でございます!」

 

「……分かった。お前への処罰は、今後の報告を密に行う事と、独力での捕縛計画を破棄する事だ」

 

「寛大なる処置、感謝いたします!」

 

 俺は周妃が本気で謝罪してきているように見えたし、いわゆる頑張りすぎて空回りしているようにも見えたので、今回の問題行動を改善させる事だけを処罰として言い渡した。周妃はその処罰を素直に受け、下げていた頭をさらに深々と下げる。

 

「それと、お前の仕事を少し明確化しよう。同時に、その仕事が達成できれば、ジードの件が済み次第、秘密を明かすと約束する」

 

「そ、それ程の慈悲を給わしていただけるのですか……っ」

 

「給わしてやるから静聴しろ」

 

「はっ!」

 

 もう既に忠臣じみた態度と言うか、何か泉美に似た、俺を崇拝するような態度をあの周妃が取ってきて俺は非常に困惑している。

 どこまで演技かは正直見抜けないが、ともかく話を進める事にした。

 

「第一に、ジードが何処でテロを起こすのかについての調査。俺が持つ知識だと、師族会議の会場を狙ったはずだ。その知識と差異があるのか、確認しておきたい。合わせて、師族会議の会議場が何処であるかも調査してくれ。こっちは最悪調査できなくても良い。母上から聞き出せるだろうからな。だから、調査を優先するのはジードの方だ」

 

 まず周妃の仕事とするのは、原作知識との擦り合わせ。万が一に原作と襲撃場所が変わっていたら、こっちは対策のしようもない。そのため、その調査は最重要となる。

 

「第二に、ジードが起こすテロの対応。テロが起こる現場で、俺たちは起こるテロに対処する。知識だとパペットテロ、死体を使って自爆テロをさせていたし、ジードが現状使える手札もそれくらいだろう。そのテロへの準備、それと、別の手を講じてきた時の準備も一応しておけ」

 

 次に、今回のテロに対する方針を明言しておく。事前に潰すのではなく、事が起こった時に対処しようというのが、俺の方針である。

 

「質問をお許しいただけるでしょうか」

 

「構わない。なんだ」

 

「事前にではなく、何故事後対応なのでしょうか。未来の知識があれば、未然にテロを防ぐ事も可能なのでは?」

 

 周妃の質問は、その方針についての疑問だった。と言っても、方針に対して嫌悪を抱いているのではなく、純粋に不思議に思っているだけのようである。

 

「相手が相手だからな、未然に防ぐのはコストがかかると俺は踏んでいる。それに、相手の警戒度を不必要に上げたくもないんだ。未然に防いで警戒度が上がれば、もしかしたらそのまま逃げられるかもしれない」

 

 テロを未然に防いだら、ジードの警戒心はマックスになり得るだろう。そうなると、テロを投げ出して逃走する可能性がある。できれば、ジードは今回で片付けたいので、逃走は許したくないのだ。

 

「なるほど。早々に逃走されるのは避けたいと。逃げの一手を切られれば、私でも追跡が困難になる場合もありますからね。納得いたしました」

 

 周妃もこの方針に理解を示し、不可解を微塵も残さず解消した。

 

「最後に、十師族と協力してジードの捕縛ないし討伐。師族会議中に襲撃されたとなったら、俺たちが被害を抑えたとしても、十師族のいくつかは動くだろう。それらと協力して、ジードに対処する」

 

「ふむ……。我々だけで事を治めないので?」

 

「他と変な衝突をしかねない。後、俺たちの貢献をしっかり他にもアピールしたい」

 

 ジードの手の内を知り、出方まで知っている俺たちなら、誰の協力もなしに対処できる。少なくとも、周妃はそう考えたようだ。

 だが、俺はそうしない。『四葉』はしっかり他と協調できる事、『四葉十六夜』が優秀である事。それらを目に見える形で示すためだ。

 

「なるほどなるほど。大人(ターレン)もなかなか人が悪い」

 

「周りが人の良い人ばっかりなら、俺も人が悪い事をしなくて済むんだがな」

 

「ご尤もでございますね」

 

 周妃も俺も、揃って悪い笑みを浮かべる。お互いに、正義感だけでは世間を渡り歩けないと理解しているのだ。だから、企みの1つも案じるというものである。

 

「俺からは以上だ。そっちからは何かあるか?」

 

「はっ!では、ジードの件で現状掴んでいる情報を報告させていただきます」

 

 俺が命令を下し終えたところで、周妃はさっそく『今後の報告を密に行う事』という命令を遂行する。

 

 なされた報告は以下の通り。

 ジードの携行ミサイル調達には、USNA政府の上部がいくらか関わっているという事。廃棄予定の兵器だったとはいえ、軍部のそれをテロリストが容易く掠め取れたのは、そもそも軍部関係者が横流ししていたためだったらしい。

 どうして一部とはいえ政府がテロリストに加担したかというと、どうにも人間主義者、反魔法主義を懸念しての事らしい。ジードに反魔法主義を煽るテロを日本で起こさせ、USNA内にいる人間主義者の目、そして活動エネルギーを日本に向けさせたいという思惑があるようだ。傍迷惑も甚だしいが。

 ジードの兵器調達に関する報告はそこで一旦締められ、続くのは戦力調達に関する報告。

 予想していた事だが、真面な戦力は現状調達できておらず、今のところ集めたのは足役だけとの事。まだテロを起こすには心許ない戦力なのだが、既に日本で戦力を調達する準備を整えつつあるという事も合わせて報告された。

 此処で言う日本での戦力調達とは、ジードの魔法『僵尸術(きょうしじゅつ)』を用いたモノ。人間を傀儡(かいらい)にして無理矢理従わせるというモノである。

 以上が周妃からなされた報告だ。

 

「傀儡にする相手を誘き出す役に、私がかつて亡命させた大陸の方術士がいます。なので、戦力調達の邪魔をできますが、如何なさいますか?」

 

 亡命ブローカーだった周公瑾の手による亡命者たち。それらはジードが動かせる駒であるが、その前に周妃の手駒であるという話。

 つまり、その亡命者たちを使おうとしている時点で周妃の情報網に引っ掛かり、また、周妃が罠を仕掛けられる状態であるという事。事前の対処は俺に止められてできないが、ジードの行動を妨害する事はできてしまう。

 

「いや、しなくて良い。さっきも言ったが、警戒度を上げたくない」

 

 だが、俺は妨害も制止した。ジードに嵌められ、傀儡になってしまう被害者を、俺は見過ごす。

 

「了解いたしました、大人(ターレン)。では、今は情報収集に徹します」

 

 周妃はその命令に、罪なき者たちの死に何の感慨も抱かず、素直に俺へと恭順するのだった。

 

「それと、大人(ターレン)。ジードとは別の件でお伝えしたい事が……―――」




真由美・雫・十六夜の三者横恋慕対談:詳細は後日公開予定。

「ジードとは別の件でお伝えしたい事が……」:本作独自展開フラグ。

 閲覧、感謝します。

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