2096年12月25日
「それでは。一日遅れになりましたが、ご唱和ください。メリークリスマス!」
『メリークリスマス!』
魔法科高校2学期最後の日。その放課後、部活動も風紀委員と生徒会の活動も終わった時間。達也一団行きつけの喫茶店、アイネベリーゼでエリカの音頭に続くよう、達也一団(一年生の集まりに参加している水波を除く)の唱和が響いた。
一日遅れのクリスマスパーティー、達也一団が集まったその祝い事は、相変わらず喫茶店を貸し切って催されている。当然、貸し切り費用は俺持ちだ。
最初の唱和を終えたところで皆が談笑を始め、本来クリスマスパーティーを開くべき昨夜に開けなかった事についてから切り出される。
開けなかった理由は分かり切った話、皆の都合が合わなかったからだ。雫とほのかは北山潮が経営する会社でのパーティーに参加していたし、幹比古は吉田家がやっている魔法塾、その若手集団のパーティーに監督役として呼ばれたり、エリカなんかは関東地方警察のパーティーに送り込まれていたりしていた。
ちなみに、「十六夜君は雫んところのパーティーに行ったみたいだけど、なんかあった?一夜の過ちを犯したりとか」などという弄りをエリカから受けたが、俺も雫も揃って微笑むだけに留めた。何も言わなかった事で変な妄想をされたとしても、これ以上弄られるよりは良いと、俺も雫も考えたのだ。
その後は取るに足らない話題と食事に終始し、時間は呆れる程早く流れていく。
「今年も、もう1年が終わりですね」
そろそろお開きという雰囲気になってきた辺りだろう。パーティーの終わりと1年の終わりを重ねたか、美月はそうしみじみと言葉を発した。
「今年は平和だったわねぇ」
残り時間を惜しんで感傷的になるのを嫌ってか、エリカは陽気に切り返す。そこから始まるのは、1年の振り返りだ。
吸血鬼騒動やピクシー事件が話題に上げられ、何人かが「平和だったか?」と首を傾げる。吸血鬼騒動1つとっても、正直平和とは言い難い。
それに加え、俺と司波兄妹は七宝琢磨関連やパラサイドール、周公瑾捕縛があった。一等首を傾げたいのは俺たちだろうが、3人とも努めて平静を取り繕う。
「去年の横浜事変に比べれば」とレオが提言したところで、皆が納得して頷く。あれと比較したら、だいたい平和になってしまうだろう。それでも俺と司波兄妹は平和と言い難いが。
「達也さん。初詣、来年も行きませんか?……あ、もちろんみんなでです!」
1年の振り返りも済ませ、続くは来年の話。ほのかが初詣のお誘いを達也に、そして皆にかけた。達也の名前を言葉の最初に置いた事から勘違いされるかもと、彼女は慌てて訂正している。
「初詣か。……すまない、今年は俺も深雪も大事な用事があるんだ」
「俺も、毎年ですまないが、実家で大事な催しがあってね」
ここで残念な事に、偶然にも司波兄妹と俺が不参加となってしまう。まぁ、偶然でもなんでもなく、3人とも同じ用事、四葉家慶春会のせいだが。
「謝らなくても良いわよ。代わりに、また別の日に集まりましょう?」
「そうね。一段落着いたら連絡するわ」
エリカが俺たちの罪悪感を解そうと陽気に振る舞えば、深雪もエリカの意図を汲み、また会う約束を取り付けた。
そのなんの事はないやり取りに、俺は酷く違和感を覚える。
(……原作と差異がある、か?いや確かに、このイベントは原作でもあったような。……その時の深雪の反応が違うのか?)
俺は自身の違和感を内心で精査する。
(……細かいところは全然だが。……そうだ、原作だと深雪は次期当主になるって事で気を病んでたんだ。気を病んでいたのは……、この時期だと結婚についてか?)
時期としては原作の四葉継承編に合致するこの辺り。深雪が気に病む事へ頭を回して、彼女が達也以外と結婚するだろう事で気を病んでいた事を思い出す。
(……原作ではこの辺りでも気を病んでいた描写があったとして。それから乖離しているのは、次期当主が自身になると思ってないから、か?)
深雪の中では次期当主最有力が俺になっていると予想し、それで深雪自身が次期当主就任を回避できると勘違いしているのかもしれない。
次期当主就任を回避できれば、早婚を求められる魔法師であっても、まだ幾ばくか猶予を得られる。深雪の中で、そう推論されているのだろう。
(ま、実際は原作通り深雪が次期当主になるんだが。達也との婚約が決まるんだし、問題ないだろう)
深雪の推論は外れるのだが、彼女の望む結果になる事を俺は知っている。なので、この場では特に訂正しなかった。周りに四葉関係者以外もいるために、そもそも訂正は憚られるのだ。
「十六夜さんは?」
「んーー……。スケジュール的には大丈夫かな?実家で冬休みを全部使い潰すって事はないだろうし。暇ができたら連絡するよ」
短くない思考で返事が遅れていた俺は、雫によって現実に引き戻される。思考の時間をスケジュール確認のそれに装い、遅れた返事をした。
こうして、時間いっぱいまでの談笑を挿み、平和なクリスマスパーティーはお開きとなるのだった。
◇◇◇
2096年12月26日
冬期休暇初日。四葉本家に帰省するのは31日なので、それまでは暇だ。と言っても、31日以降は色々慌ただしくなるだろうと思っているので、早々に課題を終えてしまおうと机に向かっている。
休憩を挿みつつ進めていて、切りが良いと思える進捗に達したのはもう夜の時間。四葉の遺伝子があるおかげで課題に苦労する事はないが、それでもそこそこの時間は椅子に座っていたので、俺は固まった体を解すように伸びをした。
そんな時だ。唐突に明かりが消えた。
「……停電?……ブレーカーが上がったか?」
スイッチをいくらオンオフしようと、部屋の電灯がつく事はない。他の電子機器も操作してみるが、独立したバッテリーがある物以外は動く気配がない。
地震が起こった訳でも雷が降った訳でもないので、ブレーカーが上がったという可能性のみになるだろう。
ただし、そんな事は初めてだ。この家に住んでいて、一度もブレーカーが上がった事はない。周妃が何か無駄に電気を食ったかと疑える。だが、電化製品なんて日常生活に使う物しか持ち込まなかった周妃が、どうやればブレーカーが上がる程に電気を食えるのかは、想像する事すら難しい。
一応確認のため、周妃に真偽を訊ねようと自室から出れば、彼女はまるで見計らったように待ち構えていた。
好都合と俺がさっそく口を開こうとする前に、彼女が口を開く。
「
「……お客様?」
こんな停電中に来客の知らせを受けたので、俺は一瞬呆けてしまう。しかし、周妃はそんな事を気にせず、俺の先導をするように踵を返してゆっくりと歩き始めた。
色々疑問だが、彼女に付いて行くしかない。
そうしてリビングまで連れられてみれば、そこには本当に、蝋燭の明かりに照らされたお客様がいた。
「……」
そのお客様とは、凄い形相でソファーに腰かけている男性、黒羽貢である。
「……こんばんは?」
予想外過ぎてただの挨拶が口から漏れたし、疑問形になってしまったし、顔は引きつっている。
なんだってこのタイミングで、黒羽貢が俺の家に押し掛けてくるのか。
「……この停電は私の工作だ。君の家に張り巡らされた、予備電源もない脆弱なセキュリティを突破するためのな。しばらくすれば回復し、後に電線点検のミスによるモノと報じられるだろう」
挨拶は返してくれない貢だが、状況の説明はしてくれた。つまり、俺の家に忍び込むため、わざわざここら周辺を停電させたのだ。
誰を狙った工作か読ませないために、わざと範囲を絞らなかったのだろう。
「しかし、私はまんまと罠に嵌まった訳だ。電子的なセキュリティだけでなく、魔法的なセキュリティも張り巡らされているとは」
貢の鋭い睨みが俺から周妃へと移される。
どうやら、周妃の探知に引っ掛かり、こうしてリビングに待たされる事となったようだ。本来は、この周妃にも気づかれずに、俺とだけ接触する予定だったのかもしれない。
残念ながら、相手が悪いというモノだ。黒羽貢から逃げ果せていた周妃の探知を潜り抜けるとなると、事前情報もなしに遂行するのは不可能である。
「そいつは何者だ。君にガーディアンを付けるなんて聞いていないし、桜シリーズでもなければ楽師シリーズでもない。そんな女が、何故君の下に居る」
「彼女は周公瑾の娘です。持っている情報を渡す代わりに、身柄の保護を要求してきました。なので、一旦俺が預かっています」
貢の疑念に、俺は端的なくらい率直に答えを返した。
そうすれば、貢は唖然とする。
「……あの男の、娘?……いや、人相は確かに似ているし、探知魔法も現代魔法のそれではなかった。……とすると、真実なのか?」
「改めまして、自己紹介させていただきます。私は周妃。貴方様方に迷惑をかけた男、周公瑾の実の娘です。遺伝子検査をなされますか?」
唖然としている貢に、周妃は追い打ちをかけた。周公瑾だった時とよく似た微笑みを顔に貼り付け、面影を強調している。
「……毛髪どころか血液一滴すら残っていない奴と、どう遺伝子を照合すると言うんだ。それより、奴と同じ魔法を使って見せてもらった方が手っ取り早いだろう」
「申し訳ありませんが、『
「ええい、もう良い!その名前が出てくる時点で、お前は周公瑾の事をよく知っている証明だ!」
追い打ちされたおかげか、貢は頭の回転が回復してきていた。さりげなく古傷まで抉られているが、それで周公瑾と周妃の繋がりを見出し、とりあえず周妃が周公瑾の娘であると仮定したようだ。実際は騙されているのだが。
「亡命ブローカーが娘を隠していたというのも、無理はない話だ。それで、その己という最大の盾がなくなったために、娘を四葉に送り込んだと」
「大変身勝手な振る舞いであると、我が父ながら呆れます。ただ、そうしなければ私の命を狙われるというのは事実です。ですから、私自身も身勝手を自覚しつつ、十六夜様の恩情に甘えています」
弱々しくいじらしい演技をして、貢の推測を裏付けようとする周妃。当の本人が貢の隠密を見抜くという実力を披露しておいて、思惑通りにいっているかは不安だ。
「恩情、か。篭絡でもされたか」
「彼女の持ち得る情報は非常に利益のあるモノなので、それを対価に保護させていただいています。この事は、母上にも話を通して了承いただいた事です」
「……ご当主様の許可が得られているなら、私がとやかく言ったところで何も変わるまい」
貢は周妃の保護に物申したかったようだが、四葉家の最高意思決定権が判を押していると見て、眉間に深い皴を作りながらも引き下がった。彼も、真夜とは事を構えたくないのだろう。
「……まぁ良い。……敵の忘れ形見が居るのは良くないが、そんな事を話しに来たのではない」
非常に煮え切らない様子ではあるが、貢は頭を振って、その煮え切らないモノを振り落とした。
そう。彼には一帯を停電させてでも話したい議題があるはずだ。その議題は、周妃についてではない。彼はここに来るまで周妃について知らなかったのだから、停電にさせた動機とするには時系列がおかしくなる。
だからこそ、次が貢の本題だ。
「名もなき少年兵。君は、四葉を手に入れてどうするつもりだ」
「……話が飛躍しすぎていて、意図が読めません。そもそも、俺が四葉を手にできると?」
急な話題に、俺は眉をひそめてしまった。
貢の中では俺に四葉を手に入れる算段が前提で話されているが、そんな算段はないし、するつもりもない。何がどう勘違いされているのか。
後、貢が俺を『名もなき少年兵』と称した事を周妃が訝しんでいるが、面倒なので保留する。あわよくば忘れてほしいが。
「白を切らなくても良い。君は正式に四葉家次期当主となるんだ。その先の展望くらい、考えているだろう?」
「……ああ」
貢が苛つきを滲ませながらしたその問い詰めで、彼がしている勘違いを俺は察する事ができた。
貢は俺が次期当主候補辞退している事も、深雪が次期当主になる事も知らないのだ。その無知が、彼に俺が次期当主になると勘違いさせていた。そうして、四葉家次期当主となった俺が何を仕出かすのかと、警戒しているのだろう。
酷い勘違いをされているのは悲しいし、上記2つの事を真夜から知らされていないのは哀れである。
何にせよ、真夜が伏せているのだから、俺がその2つの事を明かしてはいけない。なので、その勘違いは訂正せず、しかし本心を答える事にする。
「俺は母上、真夜さんが望むままに動くつもりです。彼女が四葉家の繁栄を願っているなら、四葉家の未来に尽くしましょう。彼女が世界への復讐を願っているなら、世界の未来を壊しましょう。それだけです」
四葉真夜のために生きる。彼女に尽くす。それが俺の贖罪であり、至上命題だ。それ以外は二の次であり、至上命題のためなら二の次以下を蔑ろにしても、俺は一向に構わない。
これは、俺の偽らざる本心である。
「……何故真夜さんに尽くす。命を拾われはしたが、視点を変えれば、君は利用されているだけだ」
俺の本心については真である事を、貢も窺えたのだろう。本心については疑わず、その本心に至った過程を疑問視しているようだ。
「確かに、そういう見方もあると思います。でも、真夜さんが俺を重用してくれているのも確かです。俺の価値を認め、正しく運用してくれている。俺にとってそれで充分、いや、それが最高なのです」
「……少年兵時代に、兵器である事を刷り込まれたか」
その本心に至った過程は前世ありきのため、貢は理解しきれなかった。代わりに、一番あり得そうな可能性を独り言ちる。
「そうかもしれませんね、自覚はありませんが。ただ、
貢が見出した可能性を拾い上げるため、俺はその可能性を捕捉する当時の心境を述べた。まるで兵器として刷り込まれた上で、自身の最適運用法を求めていたように。
そんな最適運用とかは微塵も考えてなかったが、正しい贖罪の方法を考えていたのだから、これが嘘とは一概にも言えない。
「……真夜さんが四葉の繁栄を願っているなら、君はそれを成就するんだな。例え、彼女が悲惨な最期を迎えたとしても」
「そうですね。四葉家となれば、悲惨な最期も想定し得るものでしょう。だとするなら、俺の答えはこうです」
貢があり得る仮定を持ちだしたので、俺はその仮定に付き合う。同時に、一旦言葉を切り、注意を引いてから俺は宣誓する。
「彼女の最期の言葉を聞き届けます」
悲惨な最期を迎えようとする真夜が、最期に願った事を俺は叶える。徹頭徹尾、彼女の願いを聞くのが、俺の贖罪なのだ。
「……そうか、分かった」
俺の宣誓を反芻して少し。それから貢は腰を上げる。
「私が言える事は一つだ。……君が敵でない事を願うよ」
いつだかと同じように、でも以前とは違って諦めを孕み、貢はそう言い残して背を向けた。蝋燭の明かりが消え、夜闇に紛れた彼は窓から外に出て、その身をくらませる。
彼の気配が遠ざかっていくのをしばらく知覚していれば、リビングに電灯の明かりが灯った。貢が言っていた通り、電気が復旧したようだ。
周妃は念のため、家の電化製品に何か影響がないか点検して回り、無事を確認してからリビングへと戻ってきた。
「
戻ってきた彼女の第一声がそれである。
「黒羽貢が貴方様をそう称し、貴方様はその事に一切動揺していなかった。つまりは、貴方様が『名もなき少年兵』である事は、彼と貴方様における共通認識になるはずです」
矢継ぎ早に、逃げ場を潰す追及をしてくる。
「であるならば、貴方様には『名もなき少年兵』と称されるに足る経歴があるはずです。しかし、そんな経歴は私の知る限り存在しない。貴方様は生まれてから15年もの間、四葉家に閉じ込められていたはずです」
自身が握らされた情報が嘘であると、周妃はもう確信を持っているようだ。
「……どうかお教えいただけませんか。私は貴方様を敬愛しているのです。決して、誓って裏切る事はしません。……ですから、どうか」
周妃は俺の前で跪き、許しを求めるように俯いた。その態度は迫真である。ただ、だからと言って俺の良心を揺さぶれる訳ではない。
俺は、ただ冷静に思考する。どこまで打ち明ければ周妃の疑問は解け、俺の秘密は守れるのか。どこまで、この者を信頼して良いのか。
(『リライト能力』を明かしてしまっても、俺の前世には至れないだろう。憑依を繰り返すパラサイトとは訳が違う。世界すら越える事なんて、さすがに与太話が過ぎる。反して、『リライト能力』は呑み込みやすいだろう。『リライト能力』を前提とする『超人』については教えてあるし、実証もできるからな。そうして『リライト能力』を明かせば、俺が後天的に四葉になったのは説明が付く)
『リライト能力』と、俺が『名もなき少年兵』と呼ばれた経緯について。それらを明かしたところで前世には繋がらないと、俺は判断する。
では結局、明かすかどうかだ。
(……こいつとの信頼関係は作っておくべきだ。裏切られたら、俺はジードの二の舞になる。しかし、そもそもこいつが俺を信頼するかどうか、だ。それは、今後の態度で探っていくしかないよな)
信頼関係を作れるかどうか。それが焦点となる。そもそもとしてその関係が成り立ちそうにないのだったら、疑問を持たれて不満を感じさせようと、経緯も明かすべきではない。その経緯は、俺が四葉直系という周囲の認識を改め、俺の土台を崩す。
「……すまないが、今はまだ教えられない。悪いが、俺はまだお前をそこまで信頼していない」
という訳で、一旦保留である。
「
周妃は俺の保留に、酷く悲しそうな顔をしていた。美少女の相貌でそうされると、良心とは別のところが揺さぶられる気がする。
「……ただし、だ。お前がジード・ヘイグの捕縛ないし討伐に貢献できたなら、考えてやろう」
「
あまり不満の芽を育てさせるのも良くないだろうと、俺は明確な目標を提示した。そうすれば、周妃は純情な乙女が恋を成就させたかのように、喜びの花を咲かせる。
再度言うが、不満の芽を育てさせないためにこうしたのであって、周妃に心を揺さぶられたのではない。
「……まぁ、なんだ。……励めよ」
「言われるまでもなく!」
せめて上司のように振る舞うべく、そんな一言を送る俺。そんな一言でも嬉しいのか、周妃はメイドらしい、スカートを摘まみ上げる一礼をして、すぐさまに動き出した。
「結局お前自身は家に居るんかい」
周妃があの怪しい自室で幾ばくか籠ったと思ったら、その後は普段通りにキッチンで俺の夕食をこしらえていた。
「貴方様のお世話は何よりも優先すべき事ですので」
「いや、ダメ人間じゃないんだから……。お前の料理は美味しいけどさ」
「お褒めいただき、光栄の至り。レストランのオーナーとして料理の腕を磨いたのも、無駄ではありませんでした」
「……オーナーは別に料理が上手くなくても良くない?」
ボケなんだか天然なんだか分からない周妃の言動に多少異論を唱えるだけで、俺は彼女に料理を止めさせようとも、家から追い出そうともしないのであった。
気に病んでいない深雪:十六夜の読み通り、自身が四葉家次期当主になるとは思っておらず、婚約もまだだろうと暢気にしている。
蝋燭の明かりに照らされていた貢:十六夜宅に忍び込もうとした結果、見事周妃の張っていた探知結界に引っ掛かり、発見された。自身を発見した相手の実力が底知れず、また相手の態度が穏やかなものであったため、指示に従ってリビングに待機していた。
追い打ちされた貢:本作においても、影で周公瑾の『
閲覧、感謝します。