「ロシアの勝利か人類滅亡かの二択」“プーチンの頭脳”極右思想家ドゥーギン氏初めて語る~後編

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24.02.2023

ロシアがウクライナに侵攻して1年がたった。今回の戦争はロシア側からはどのように見えているのか。“プーチンの頭脳”ともいわれる極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏が、日本のメディアに初めて語った。3回シリーズの前編は「特別軍事作戦」が引き起こしたロシア社会の活発な動きについて聞いた。(中編後編を読む)

「プーチンは長くて激しい戦争に準備をしていなかった」

ーー特別軍事作戦はプーチンの判断だったと伺ったが、地域限定の作戦ではなく、欧米との長い戦いになることをプーチンが最初から分かっていたのでしょうか?

分かりません。すぐに終わると期待していたのではないかと思うこともあります。プーチンはこの軍事作戦の意味を理解していたが、技術的なディテールに関しては信頼していた特定の人物に頼ったのに、期待外れだったのです。プーチンは彼らを処分しなかった。このような危機的な状況下で期待外れとなった人や任務を果たさなかった人にしっかり罰を与えるべきです。
 
そういった処分はなかった。プーチンは明らかに失望させられたし、誰が期待外れだったのかも明らかである。プーチンはそれを認識はしたが、処分はしなかった。辞職した人、首になった人、それまでの地位にいる人もいます。プーチンは長くて激しい戦争に準備をしていなかったと私は思います。

「ロシアが勝利するか、人類滅亡になるかの2択」未来を決めるポイントとは

ーー期待外れとなったのは誰でしたか?

これは国内のマターなので海外のメディアには答えません。

ーープーチンは「雨の王様」だと仰っていたと海外のメディアが伝えて

いるが、どうでしょうか?
 
私は海外のメディアに対してそういった話をしていないのでこれはプロパガンダです。ウクライナのプロパガンダのフェイクニュースです。

ーー特別軍事作戦はいつ終わるのか、どのように終わるのかご意見を伺いたいです。
 
どのように終わるのかということならお答えできます。しかしその前にイントロダクションが必要です。歴史とは自由なものです。歴史は機械的に動くものではないので、「明日は~が起きる」と言えば、その時点で誤りが発生します。

歴史は人類の一つ一つの判断によって形成されます。その(判断の)集合体は歴史となります。歴史はオープンなものなので、物理的なものと同じように未来をプログラミングしようとするのは正しくありません。

今後はどうなるのか、いつになるのかと聞かれると、これはオープンな問題で、私、あなた、一人一人の日本人、韓国人、フランス人、ハンガリー人、アルゼンチン人、ナイジェリア人、サウジアラビアの人やエジプト人(の活動)によって決まってきます。ロシア人、ウクライナ人、ポーランド人、ベラルーシ人、もちろんアメリカ人によって決まってきます。しかしアメリカ人だけが決める、グローバルなエリートだけが(将来を)決めるということではありません。
 
歴史は全人類によって形成されるものです。一人一人の判断は歴史を形成します。私は未来の特定のポイントにだけ言及します。

第一、ロシアはこの戦争で負けることはないということを理解しないといけません。クリミアや4つの新しい地域だけを失うだけではなく、自分自身を失うからです。ロシアのすべての人がそれを分かっています。
 
勝利の定義はまた別の問題です。4つの地域、7つの地域で形成されたノヴォロシア、ウクライナ全土になるのか、これはまだ未解決の問題です。しかしロシアの勝利は最低の条件で、最低限の勝利は絶対的です。その勝利のためにロシアはいくらでも、どんな相手とでも戦います。
 
大祖国戦争と同じです。ドイツ軍がモスクワに近づいたし犠牲者が多いので降伏しましょう、というパターンもあった。しかし自分が目指したことを達成するまであきらめないというのはロシア国民の本質であり、それを証明する事例が歴史の中にたくさんあります。
 
全世界と戦わないといけないとしても、核兵器を使う必要があるとしても、ロシアは勝利するまでは止まりません。勝利するまでにかかる時間は私には分かりません。
 
ロシアのあきらめない本質、客観的にも主観的にも、政治敵、心理的、歴史的、地政学的な観点からしても止まることが出来ないと欧米が理解していれば、人類滅亡だけがロシアを止める唯一の手段であることを分かっていたはずです。
 
我々を止める唯一の手段は戦略的核兵器であるが、そうすれば我々は同じ手(戦略的核兵器)を使います。プーチンはこのことについて何度も話したし、そうなる可能性は高いです。
 
これはプロパガンダではありません。未来は上記の通りです。我々は勝利し、勝利の後に世界各国が我々に対して今後の方針、つまり制裁を導入するか仲良くするか、圧力をかけ続けるか、圧力を止めるのか、現状を受け入れるのか、ということを決めるが、これはあくまでも我々が勝利をしてからです。
 
勝利するまで我々は止まることも後退することもありません。後ろに一歩下がったら、100歩も下がるのでロシアが滅亡します。ロシア国民も大統領もそれを理解していますのでこれで十分です。しかも国民は徐々に戦闘に参加するようになった。

新しい地域の市民は武器を手に取りました。彼らはよその人ではなく、ロシア国民であり、武器を手に取った彼らは勝利を逃さないようにします。

(ロシアが)勝利するか、人類滅亡になるかの2択です。3つ目のシナリオはありません。勝利する以前の平和はありえません。(ロシアの)勝利そのものが平和です。ロシアが勝利してから、平和になります。ロシアが勝利しなければ、終末の日(最後の審判)が訪れます。
 
上記は未来を決める条件です。次に、時間はどれぐらいかかるのか、という質問です。我々は核の危機の可能性も視野に入れているが、それは一瞬で起きます。我々はこの戦争を1年、2年続ける可能性もあるが、西側が極端な手段をとれば、ロシアも極端な手段で対抗することになります。
 
我々は勝利しなければ止まることがないのでこの戦争はいつまでたっても続く可能性もあるが、人類滅亡であっという間に終わる可能性もあります。
 
西側がロシアかベラルーシに対して戦略核兵器、戦術核兵器を使えば、もうおしまいです。この紛争は他の国でも展開される可能性があるし、NATO諸国が直接参加する可能性もあります。そうなったら当然(終わる)時期が変わってきます。NATOに武器供与を受けるウクライナの軍と戦うのとNATOと戦うのとは差が大きいからです。
 
NATO諸国が直接参加すれば状況が緊迫化し終末の日が早まります。もしくは戦争は長引くが、いずれはロシアが勝利します。その場合、多大な犠牲を払うのは我々だけではありません。
 
ロシアの条件に基づいていない平和の可能性を冷静な分析から排除すべきです。これはあり得ません。ロシアの人は残酷で攻撃的だからではなく、(戦争は)もう始まったので後戻りが出来ないからです。先に進むしかありません。
 
勝利すれば、多極世界が形成され平和もしくは停戦になる可能性があります。しかしどこかの段階で異常が発生すれば、人類は滅亡します。

核戦争の可能性…「西側もロシアもそれに踏み切ることはない」

ーー確認ですが、核兵器を最初に使うのは西側諸国ということですね?
 
ロシアは最初に使うことは絶対にありません。ロシアは具体的な目的とその目的を達成するための具体的な手段の資源があるからです。
 
ロシアは核兵器を使うことなく目的を達成します。そして西側諸国、ここでウクライナを除外した西側諸国も自らの目的を達成します。彼らの目的とはロシアの孤立化、大多数の国との関係の遮断、技術発展の妨害、欧米にあるロシアの資源の没収であり、その目的をすでに達成しています。

西側は既に目的を達成し勝利しました。しかしウクライナは勝利することはなく、消えるしかありません。全人類とともに消えるのか、我々の勝利によって消えるのか。ウクライナは交渉の切り札です。目的を達成した西側は新たな要求が現れます。
 
ギリシャ語で「ギュグリス」という言葉があるが、この言葉を他の言語に訳せません。これはタイタニズムの大罪で、過大な欲望を意味します。西側はこの対ロシア戦争で勝利したが、さらに欲張って、ロシアをやっつけたいです。ロシアはそれを容認できないのです。
 
ウクライナは既に存在しません。もう終わっています。勝利することはありません。ロシアに負けるか、全人類とともに滅亡するかです。核戦争とは全人類の滅亡です。ウクライナだけではなく、日本も含めて全人類(の滅亡)です。すべてが消えます。西側もロシアもそれに踏み切ることはありません。
 
ロシアは適切な手段で目的を達成できます。西側は既に適切な手段で目的を達成したのです。ウクライナはいかなる手段を使っても自分の目的を達成することはない。

(ロシアと西側の間に)板挟みになった人たちはなんとなく消えることはありません。ウクライナが置かれた状況は悲劇的、悲劇的です。このテロリストたちは私の娘を殺害したが、私の中に怒りはまったくありません。報復したい気持ちもないし怒りもありません。

ウクライナは存在しなくなります。チャンスはあったが、そのチャンスを失ってしまった。存在しないのです。これは悲劇であり、良いことは一つもありません。その国民は存在するチャンスを失ってしまったのです。その国民性、歴史的な経験のなさ、国政のなさによってナイーブな国民は国家を失ってしまいました。良いことは一つもありません。自分自身を失い、自滅したのです。

いくらクレイジーな社会であっても選ぶことはないような人を(選挙で)選んでいるからです。滅亡に導く人達を選んだのです。頑固さなのか継続性なのか、その方向性をあきらめません。ウクライナは自分の手で自分を破壊し存在できなくなることは極めて遺憾です。
 
30年の間にチャンスはあったが、危険なラインに到着してから戻る国と違って、そのチャンスを失いました。国家を守り切る国がいます。ジョージアは部分的ではあるが守りきれたしアルメニア等の旧ソ連諸国はなんとか持ちこたえています。
 
しかしウクライナはすべてのラインを越えました。それによって自分で自分を破壊しました。ウクライナの破壊はあとどれぐらい続くのか分からないが、彼らは自滅しないので、それを止めることが出来ません。
 
ロシアが正しいと認めることはウクライナにとって救いになるが、心理的な理由で彼らはそれを認めることが出来ません。どうすればいいのでしょうか?こんなことを目にするのは怖いし悲しいです。彼らはロシア人で、私たちはウクライナ人です。
 
これは兄弟を殺す内戦です。西側諸国が彼らの特徴を利用し始めた戦争です。彼らは脳みそを失ってしまいました。これは強大な悲劇です。ウクライナで起きていることは私たちにとっても正教にとっても東スラブ民族にとっても世界にとっても悲劇です。
 
我々は同じ国民であり、彼らの苦しみと悲しみは私個人の苦しみです。この対立では良いものと悪者はいません。これは歴史的に必要なことであり、ウクライナ人が国家を構築できなかった悲劇的な結果でもあります。

「ロシアの英雄」が死亡した娘に「最後まで戦う決意は強くなっただけ」

ーー先ほどお嬢様が殺害されたことに触れましたが、その殺人の意味や目的は何だったと思いますか?
 
ウクライナにとって何の意味はありません。これはヒントでした。捜索の結果によると、おそらく私を狙った犯罪でした。私の娘は我が国の英雄になりました。鮮やかで勇敢で、愛国者で哲学の研究者でした。

彼女も私もウクライナにとっても西側にとっても脅威ではなかった。私を殺す理由は、西側が作った私のイメージにあります。プーチンと会ったことのない独立した思想家である私のことを「プーチンのラスプーチン」と呼んでいました。
 
私はプーチンの側近者で、彼に悪影響を与えている「プーチンのラスプーチン」だと伝えられていました。西側の諜報機関は英国が関与したラスプーチン本人の殺人を含め、「ラスプーチン」とみなす人物の処分に長けています。

イギリスの意向に反しナポレオンに近寄り始めたパーヴェル1世も同様です。西側諸国のテロリストからすれば、(娘の殺人)はプーチンに対する予告でした。

実際にはウクライナのブダノフ情報総局長が関与したが、彼の判断ではなかった。米国よりもこれはテロを使って歴史に影響を与えたいと思った英国の判断でした。ラスプーチンの殺人は、象徴である人物の殺人です。

そしてこれは私と私の家族に対する報復です。妻も娘も息子も考え方が同じです。私たちは自由主義のグローバリズム、欧米のヘゲモニーに反対し、多極世界のために戦っています。
 
私の書籍は日本語を除いて世界のすべての言語に翻訳され読まれています。私は全世界で知られ、私の思想は欧米ヘゲモニーの反対派に通じます。イスラム教徒、キリスト教徒、中国人、中国人と対立しているインド人、パキスタン人、イラン人、トルコ人、アフリカの人、南米の人、欧州の人、トランプの側近者の中にも私の支持者が多いです。
 
私は西側の自由主義ヘゲモニーとの対立にロシア国内外の多くの知識人を巻き込もうと(広めようと)しています。これはバイデン、マクロン、英国の首相にとって脅威となると思います。西側は哲学的な討論等の適切な方法を使ってこの対立に立ち向かうことが出来ないということです。
 
私は彼らが破壊したくなった象徴的な存在になったのです。私を止めるため、西側のヘゲモニーに立ち向かう国民、文明、文化の統合を止めるためです。
 
欧米をそのヘゲモニーから解放することも必要です。ドイツや最近NATOに加盟した国々が植民地であるだけでなく、米国も人間の代替を作ろうとしLGBTやAIを推奨するあのグローバルなエリートの人質になりました。
 
その思想の持主である私を爆発したわけです。そしてプーチンにヒントを与えたのです。プーチンはそのヒントに気づいて、死亡した娘に「ロシアの英雄」(勲章)と勇気の勲章を付与しました。
 
最後まで戦う決意は強くなっただけです。敵は私を破壊しようとしました。私に痛みを与え、私を人間として、父親として殺しました。しかし思想家としての私はそれによってさらに強くなりました。
 
私とダーシャ(娘)、私と妻、私と無数の仲間のミッションは引き続き世界で普及しています。

ブログで綴った「雨の王様」の真意は?

ーー「雨の王様」についての確認ですが、露軍がヘルソンを撤退してから、「国のトップは国を守る責任があり、それをしなければ雨の王様だ」とあなたはブログで綴ったと海外のメディアが伝えています。
 
その通りで、ブログで綴ったがインタビューではなかった。
 
私は全面的に大統領を支持しています。西側(メディア)は私のいろんな発言を引用しながら歪曲しています。(撤退に関しては)責任を負うべきだと私は言ったし、実際には(部分的)動員が始まりました。
 
国民の全面的な信頼を得た大統領は聖なる王様として、ちなみに「雨の王様」とはそういう意味だが、国民に全面的に信頼されているリーダーとしてみんなを救うステップに踏み切る必要があります。これが私が(SNSで)言いたかったことです。

ヘルソンからの撤退は悲劇であり、私たちの心に対する打撃でもあった。プーチンはしかるべき結論をしなければ悲劇で終わっていました。プーチンもそれを分かっていたが、私は圧倒的な多数の意見を述べただけです。
 
「雨の王様」とは聖なるリーダーです。国民に対して責任を負う聖なるリーダーです。「雨に対する責任」とは何かというと、宇宙や世界に対する責任です。雨の王様は特定の層の福祉、年金の支払い等の特定の分野に責任を負うのではなく、聖なる王様として宇宙の責任を負っています。今我々にとっての宇宙はウクライナです。私たちの将来、宇宙の将来は戦場で決まります。当然ながら(戦場で)全力を尽くすべきです。
 
ヘルソン(からの撤退)について自分の痛ましい気持ちをSNSで表したのに、その解釈は本来の意味とは全く異なっていました。

ロシアの大統領は欧米の大統領のようなものではなく、聖なる王様に近い存在です。日本の天皇(のようなものです)。首相は特定の領域に責任を負うが、彼(プーチン)は国民の未来に責任を負っています。私はこういうことを言いたかったのです。

その発言が誤解され、歪曲された状態で拡散され、どれが私のブログの引用でどれがそうでないのか分からなくなります。

「ロシアの行動を理解してない」ドゥーギン氏から日本はどうみえるのか

ーー確認ですが、特別軍事作戦のプーチンの目的はノヴォロシアと呼ばれる新たな領土の獲得ではなく、多極世界の構築だという理解で良いですか?

その通りです。プーチンは多極世界、世界秩序の再構築、つまり一極集中の世界から多極世界への移行についてよく発言しています。
 
次のことに注目したいと思います。多極世界の構築とその多極世界の参加者としての地位を獲得したい中国は(特別軍事作戦の)意味をしっかり理解しています。親欧米派であるインドもそれをよく理解しています。インドは中国ほどロシアを支持しないが、多極世界の必要性を理解しています。日本はまったく受動的であるのは驚きです。
 
日本は偉大な文明であり、偉大な国家です。「文明の衝突」の中に日本は独立した一極でした。にもかかわらず、日本では多極世界の考えは全く存在しません。日本の知識人でさえロシアの行動を理解していません。

この戦争の目的は多極世界であるとプーチンやラブロフを含め多くの政治家が言っているのに。日本は(多極世界)の一極になれるチャンスがあります。チャンスがあるのはロシアだけではない。中国、インド、イスラム諸国、アフリカ、南米諸国はそれをよく理解しています。
 
欧州の野党も分かっています。米孤高のトランプの野党も分かっているのに、日本は分かっていません。ハンティントンは日本のことを「独立した文明」と呼んでいます。

独立した文明であるならば、このユニークなチャンスを活用してください。中国との関係において、同盟国である欧米諸国に従うだけでなく、自分のポテンシャルを発揮してください。しかし日本は全く動かないのは不思議です。
 
ハンティントンは日本を「独立した文明」として位置付けたのは時期尚早だったのかもしれません。これは一極集中世界と多極世界の戦いであるのをみんなが理解し、自分なりに適応し始めているが、日本は自分のことについて自分の頭で考えてみてはどうでしょうか?
 
昔、ある日本人の哲学者から聞いた話だが、日本人は自分のことを神だと思っています。その神に勝った者、第二次世界大戦の米国のことですが、彼らはさらに強い神です。このようなアルカイックな思考パターンから脱却しないといけません。
 
多極世界では米国も日本もロシアも中国も神様です。時には対立も起こるが、自分の主権を優先すべきです。主権が神です。中国、インドは既にそれを実現しました。中国を止めろ、北朝鮮を止めろというのではなく、日本は目覚めるべきです。
 
そうなったら「多極世界の理論」という私の書籍の日本語訳も出版されるでしょう。(前編中編を読む)

(BS-TBS 『報道1930』 2月10日放送より)

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/330028?page=3