魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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古都内乱編
第六十六話 友好度


2096年9月24日

 

「さて諸君、ついにこの日がやってきたわよ」

 

 風紀委員会本部。全風紀委員が集まった場で、千代田は皆の注目を集めた。

 彼女は風紀委員にとって大事な行事を行おうとしている。

 

「今月を最後に、私は風紀委員を辞める。なので、次期風紀委員長の選出よ!」

 

 そう。3年生は今月を以て風紀委員辞任だ。

 明確に言えば、風紀委員に任期はないため、卒業するまで務められる。

 しかし、受験勉強をそっちのけで風紀委員を務める者は居ない。

 という事で、受験勉強に身を入れるべく、3年生はこの時期に辞任する。

 何故この時期かと言えば、九校戦が終わった事で部活も退部となるから、ついでに風紀委員も辞めようとする生徒が多いからだろう。

 

 とにかく、千代田が風紀委員辞任すると、風紀委員長の席も空く。

 よって、次期風紀委員長の選出を、全風紀委員の互選によって行う。

 

「それでは各自、投票用紙に推薦者を記入し、この投票箱に投票しなさい」

 

 選挙でも使われてそうな本格的な投票箱。それをおもむろに取り出した。

 本気を出すところが違う気がする。

 でも、ツッコミは誰からも飛ばず、皆粛々と用紙に記入しだした。

 俺も皆に習って粛々と、「吉田幹比古」の名前を記入して投票する。

 

「投票し終えたわね。それじゃあ、四葉君。開票宜しく!」

 

「あ、俺がやるんですね」

 

 急な指名だが、俺は無駄に抵抗する事なく開票作業にかかった。

 計10票なのだから、そんな手間取る事もない。

 

「はい、結果が出ました。「四葉十六夜」9票、「吉田幹比古」1票です。……何故」

 

 恐ろしい事に、ほぼ満場一致で次期風紀委員長は俺だった。

 原作では幹比古が雫に1票差で勝って風紀委員長になった訳だが、微妙に原作改変してしまったのか。

 まぁ、大筋に影響はないだろうが。

 

「それが皆の総意だよ、十六夜。というか、誰だ、僕に1票入れたの」

 

「俺だが?」

 

「それこそ何故なんだ、十六夜……」

 

 なんだか釈然としないようだが、一応自薦はルール違反である。

 なら、俺が幹比古に票を入れるのは当然だろう。

 

「それでは、四葉君が9票という圧倒的支持率で、風紀委員長就任ね。異論がある奴は居るかしら。……居ないわね」

 

 試しに小さく挙手してみたが、千代田には無視された。

 あくまでも試しにだったので、俺はとやかく言わない。

 

「皆、新しい風紀委員長に拍手!」

 

 千代田が合図をすれば、俺以外の風紀委員が9人という少数ながらも拍手を大きく響かせた。

 なんにせよ、望まれているなら俺に否はない。

 

「これからは、恐怖政治が始まるのか……」

 

「森崎さん、何か言ったかな?」

 

「それが恐怖政治だと言っているんだ」

 

 俺と森崎は笑いを添えて、風紀委員長選出を締め括るのだった。

 

 

 

 時は風紀委員の巡回すら終わった時刻。

 俺は風紀委員本部に残り、とある作業に従事していた。

 

「いやぁさすが四葉君。引継ぎも楽で助かるわ」

 

 その作業とは、千代田が感激している通り、委員長引継ぎ手続き諸々である。

 手続きと言っても、そんな手間がかかる仕事ではない。

 なんて言ったって、千代田に委員長を引き継がせるための資料作り、手引きなんかを去年作ったのは俺だ。

 そのおかげで、するべき手続きは事前に頭に入っている。あまり喜べない「昔取った杵柄」だ。

 

「千代田委員長は上がってしまって構いませんよ。後は俺1人で充分です」

 

「そう?悪いわね。じゃあそういう事で」

 

 千代田は俺の言葉に甘え、本部前で待機していた五十里に駆け寄っていった。

 五十里は俺へ向けて苦笑いしてくるが、俺や千代田を咎めたりはしない。

 この手の作業を千代田に手伝わせると、かえって時間がかかる。その事を彼は知っているのだ。

 

「雫も幹比古さんも上がって良いよ」

 

 ついでに、手伝える事は全て手伝い終え、手持ち無沙汰になっている雫と幹比古も帰りを促した。

 促さないとずっと待っていそうだ。

 

「……良いのかい?」

 

 幹比古は飼い主の役に立ちたい大型犬のような、そんなしょんぼりとした表情を浮かべていた。

 もうそれは友情じゃなくて忠誠心ではないだろうか。

 不調を脱却させてくれたとかいう借りは、いつになったら返済完遂するのだ。

 

「子供の使いじゃないんだから、問題ないさ」

 

「そうか……」

 

 幹比古は煮え切らないまま、落とした肩を拾い上げる事もなくゆっくりと出口へ歩いていく。

 

「私は校門で待ってるから」

 

 雫は堂々と待つ事を宣言した。

 待つなと言いたいんだが、言って聞く気がしない。

 

「ぼ、僕も校門で待ってるよ!」

 

 俺が否定しないのを良い事に、幹比古が雫に同調しようとしていた。

 門で2人も帰りを待つとは、狛犬か何かか。

 

「カフェテリアで待っていてくれ」

 

 校門で突っ立てられるのも悪いので、もっと待つのに適した場所を指定した。

 雫は仄かに、幹比古は明らかに、嬉しそうに微笑んで頷く。

 とりあえず、指定は聞いてくれたらしい。

 俺は彼女らの背中を見送ってから、作業に戻った。

 

 黙々と続けて一段落つけた作業。俺も帰ろうと腰を上げれば、生徒会に続く通路の方から足音がする。

 

「十六夜、1人か」

 

 そちらの通路から顔を覗かせたのは、達也だった。

 そう訊ねるという事は、俺が1人になるタイミングを見計らっていたのかもしれない。

 

「ああ、1人だ。雫も幹比古もカフェテリアの方で待機してるよ」

 

「待機……。まぁ良い」

 

 雫と幹比古がわざわざなんで待機しているのか疑問を抱いたようだが、達也はその話題を横に置いた。

 

「十六夜、お前は周公瑾捕縛の協力を依頼されていないか?」

 

 些末な話題を横に置き、持ち出したのは周公瑾について。

 達也と周公瑾への認識を擦り合わせた事はないが、真夜からその情報が回っていると予想したようだ。

 まぁ、四葉が引っ掻き回された仇敵だ。直系に情報が回ってないなんて事はないだろう。

 

「いや、母上からそんな話は聞いていない。というか、もしかして逃げられたのか?」

 

 俺は真夜から情報が回っている前提で応じつつ、周公瑾から逃走すると伝えられた事は知らぬフリを通した。

 そうしなければ、周公瑾との内通が露呈する。

 

「残念ながらそうだ。横浜で捕り逃した」

 

「そうか……」

 

 俺は俯いて、悪い知らせにショックを受けているような演技をした。

 内心は、四葉から良く逃げられたものだと、周公瑾の技量に感心している。

 原作でもそうだったとはいえ、黒羽貢に追い詰められる経験をしている身としては、やはり驚いてしまう。

 

「お前はどうする。……できれば、協力してほしいが」

 

 あの達也が俺の事情を考慮しながら、消極的にも協力を願った。

 着実に信頼関係は築けているようだ。ならば、より強固な信頼関係を築くべく、こちらから積極的に行くべきだろう。

 

「母上に俺も捕縛に加えてもらえないか、打診してみよう」

 

「ありがとう」

 

 達也はわずかな笑みを携えて頷いた。

 その信頼の笑みに、嘘で得てしまった友情に、俺は罪悪感を覚える。

 だけど、俺は俺のために、その罪悪感を踏み潰したのだった。

 

 

 

 帰り、俺の両隣が雫と幹比古で固められるという無駄に心強い帰路を辿り、俺は何事もなく家に着いた。

 俺はすぐに書斎へ籠り、そこで真夜に電話をかける。

 

〈もしもし、十六夜。元気かしら〉

 

「もちろん、元気だよ」

 

 相変わらず真夜は電話に早く出る。

 東道青葉との一件で関係に傷が入ったかと不安だったのだが。実際、強制されて帰省した8月20日には、かなり危ない状態だっただろう。なのに、添い寝した次の日にはいつも通りになっていた。

 懸念点があるとすれば、そうなった真夜の心情が不透明である事か。

 

〈十六夜からという事は、何かあったのかしら。いつもはだいたい私からですものね?〉

 

「……ごめん。日常的な話題を提示できれば良いんだけど、母さんの時間を奪ってしまうかもって」

 

〈構わないわ、十六夜。貴方の心遣い、とても嬉しく思います〉

 

 少し棘があるように感じたのだが、どうやら杞憂だったようだ。

 一応謝っておけば、真夜は許してくれた上に喜んでくれた。

 何故そこで喜ぶのかは疑問ではあるが、今すべき話題ではない。

 

「それで、用件なんだけど。達也に周公瑾捕縛を依頼したよね?」

 

〈ええ。達也さんにそう依頼を出し、受諾の旨を伝えられました。何か、問題があったかしら?〉

 

「俺も、周公瑾の捕縛に加えさせてもらえないかな?」

 

 俺のその一言で、真夜の顔が引き締まる。

 思考しているようだが、如何なる事に思考を回しているか、判然としない。

 

〈……達也さんだけでは、周公瑾を捕縛できないかしら〉

 

 思考の後、開かられ口が発したのは、確認の言葉だった。

 真夜は、達也では戦力が不足しているか、俺に確認している。

 俺の鋭い勘を考慮しての確認だろうか。

 

「いや、できないという事はないだろうね。あくまで念のためだよ。それに、俺が加わっている方が達也も動きやすいんじゃないかな?情報は俺から降りている事にできるし」

 

 真夜の真意は読めぬまま、とりあえず当たり障りのない回答を行った。

 原作知識を持ち出し、未来を予知する必要はない。

 今回は達也の好感度稼ぎとして、作戦に加わりたいだけなのだ。

 最悪、加われなくても良い。俺が達也に協力しようと、真夜に相談した事実があれば、それだけで充分好感度稼ぎの材料になる。

 

〈……貴方も加えては目立ってしまうと思ったけど、達也さんの行動に動機付けができるのは確かに良いわね。分かりました、貴方は達也さんに協力してください〉

 

 真夜の許しが得られ、結果は最良の方へ転がった。

 

「ありがとう。それじゃあ、遠慮なく達也に同行させてもらうよ」

 

〈あまり無茶はしないでね?〉

 

「気を付けるよ」

 

 通話の最後はそんな親子のような会話で締められたのだった。

 

◇◇◇

 

2096年10月1日

 

 俺が達也に協力できる事を伝えたり、達也が真夜に独自裁量を認められた上、俺が完全に達也の指揮下になったり。

 生徒会長選挙で深雪が100%信任を記録したり、達也がフリーの古式魔法師に探られていたり。

 そんな話題に事欠かない日々が過ぎたが、俺視点で特筆すべき事はないので割愛する。

 

 そうして割愛した日々を乗り越えた今日は、新生生徒会の発足日だ。

 そのメンバーは、会長・司波深雪、副会長・七草泉美、会計・光井ほのか、書記・桜井水波、書記長・司波達也である。

 あえて繰り返そう、()()()・司波達也である。

 もちろん、公式の役職ではない。深雪の人格を把握しているなら察するだろうが、達也の位を非公式でも上げるため、深雪が作った非公式の役職である。

 役割は書記と変わらないし、深雪が自分より達也を上にしたつもりになっているだけで、まったく権力はない。

 しかし、そんな事に触れたところで誰も、というか俺が幸せになれないので流した。

 

 閑話休題。

 

 生徒会と合わせ、風紀委員も代替わり。俺が正式に風紀委員長になった。

 お互いの代替わりという事で、俺は生徒会に挨拶に行かねばならない。

 だが、何故だか新生徒会長が忙しそうだったので、挨拶は放課後までずれ込んでいる。

 

「俺は風紀委員長として、深雪は生徒会長として、お互い頑張っていこう」

 

「ええ。お互いの立場を守りながら、しっかり手を取り合っていきましょうね」

 

 俺と深雪は手を取り、握手をした。

 元々対等な立場であり、友達であるため、握手にぎこちなさはない。

 

「……「落ち着くところに落ち着いた」って、こういう事を言うんだろうね」

 

「うん。2年生のトップ2が風紀委員長と生徒会長っていうのはピッタリ」

 

 付いてきていた幹比古と雫は、その握手する光景に変な感想を漏らした。

 何故、彼らが俺に付いてきているのかという疑問があるだろうが、答えは簡単である。

 彼らは風紀委員の幹部的な立ち位置になろうとしているからだ。

 そんな立ち位置はないのだが、風紀委員長に付いて回る事で、対外的にそんな立ち位置を作り上げようとしている。

 やっている事は書記長という役職を作った深雪と同レベルな気がしてくるが、気のせいという事にしておこう。

 

「風紀委員の生徒会選任枠は埋まっているわよね?」

 

「ああ。全員2年生だし、辞退した人も居ないな。空いたのは教職員と部活連の方だ」

 

 生徒会長と風紀委員長となれば、自然と選任枠の話になるのだが、生徒会の選任枠は奇妙にも空いていない事が改めて判明した。

 生徒会選任枠は幹比古と、後2人。まぁ、その2人は特に問題がある訳でもなし、原作知識にある名前でもないし、言及はしなくて良いだろう。

 

「教職員枠と部活連枠は誰が入りそうかしらね」

 

「さぁ。どっちも候補が多いからなぁ」

 

 深雪と俺はどっちも責任がないため、談笑の体を成し始める。

 仕事がないのだからそうなる。

 

「幹比古、少し良いか?」

 

「どうしたんだい、達也」

 

 仕事がないと分かってか、達也は遠慮なく幹比古を部屋の隅に連れて行った。

 フリーの古式魔法師に探られたらしいので、もしかしてその相談か。

 いや、記憶が曖昧だが、原作知識に引っかかりがあった。

 この場面は、確か達也が幹比古になんらかの起動式を見せていたのだったか。

 原作にあった場面なら、俺が確認するまでもない。

 

「ほのか、達也さんが生徒会に残って良かったね」

 

「う、うん」

 

 雫もほのかとガールズトークをし出している。

 何故だか声量を抑えて内緒話みたいになっていた。

 達也に告白はしているはずだから、内緒にする意味はないはずなのだが。

 

 それにしても、場の雰囲気はもはや達也一団の集会である。

 泉美もこの場に居るのだが、彼女は進んで空気になり、俺と深雪が会話しているのをただ拝んでいた。

 この身内の空気を乱す者は居ない。

 と、思って矢先に、達也一団以外の声が生徒会室に響く。

 

「い、五十嵐鷹輔です!新生徒会発足に際し、挨拶に参りました!」

 

 その声の主は部活連のトップ、会頭に就任した五十嵐だった。

 扉越しなのに緊張が伝わってくる。

 

「入室して構いませんよ?」

 

「失礼します!……って、よ、四葉君!?」

 

 深雪に許可を得て入室した五十嵐は、俺を視認するなり目を見開いて仰け反った。

 地味に失礼なのだが、気持ちは分からなくもない。

 察するに、深雪に挨拶だけでもギリギリだった五十嵐の許容量が、俺の居室によって完全にオーバーしたのだろう。

 

「五十嵐君、会頭就任おめでとうございます」

 

「は、はい!そちらこそ生徒会長と風紀委員長就任おめでとうございます!生徒会や風紀委員の皆様には色々とお力を貸していただく事も多いと思いますがどうかよろしくお願いします!それでは!」

 

 深雪の就任祝いを受け取った五十嵐。

 彼は許容オーバーを引きずってか、返礼を早口かつほぼ一息に言い切り、すぐさまに出ていった。

 そんな彼の恐ろしく早い離脱に、俺と深雪は揃って苦笑している。

 

「深雪先輩から祝いの言葉を受け取ったと言うのに、自分の用件だけ済ませてさっさと退室なんて。あまつさえ十六夜さまに謝りもしないとは、とんだ無礼者ですね」

 

 深雪と俺を敬愛する泉美は、五十嵐の態度がお気に召さなかったらしい。

 まぁ、礼儀を尽くしていたかと言えば、ちょっと回答に困るが。

 しかし、苦言を漏らしているのは泉美だけで、他の皆は仕方ないと判断しているようだ。

 

「あれで会頭とは、力不足ではありませんか?」

 

「いや、逆に考えろ。深雪と十六夜に挿まれてなおプレッシャーに押しつぶされない人間が、果たしてこの学校に何人いる?」

 

 意外と言うべきか、達也が五十嵐を擁護しだした。

 だが、地味に俺と深雪の扱いが酷くないか。

 

「お兄様、それではまるで私と十六夜が圧をかけているようではないですか?」

 

 扱いの酷さを、しっかり深雪は指摘した。

 俺も頷いておく。

 

「十師族の直系と、それに比肩する天才だ。誰でも委縮する」

 

「そうですね!十六夜さまと深雪先輩に対し、畏まらない方がおかしいです!」

 

 達也の意見に同調する泉美。

 それは無礼とした行為を許してしまうから、掌が返っている状態になっているのだが、彼女はそれで良いのか。

 

「2人に委縮しない人っていうのは、言われてみればあまり思い当たらないかも。エリカと西城君、後は森崎君?」

 

 雫は条件に当てはまる人間を、頭を捻って3人まで捻りだした。

 改めて考えると、確かにその3人くらいか。

 

「エリカとレオは、会頭は性に合わないだろう。森崎も風紀委員に所属しているから、会頭候補には上がりづらい」

 

 残念ながら、雫が上げた3人は会頭候補に適していないと、達也に除外されてしまった。

 達也の理論に目立った破綻はないので、雫も反論しない。

 

「じゃあなんで服部先輩は五十嵐君を後任に?僕らの視点だと候補が全滅してるんだけど」

 

「前評判では十三束君が上がってたけど、それでどうして五十嵐君を選んだんだろう……?」

 

 幹比古とほのかが話題の的を絞った。

 絞られた話題は何故十三束を差し置いて五十嵐が会頭になったのか、である。

 

「根拠としては薄いが、五十嵐の方が十六夜と仲が良かったから、じゃないか?」

 

「……それは選出の理由になるのか?十三束さんと五十嵐さん、仲が良いのはどっちかと訊かれれば、五十嵐さんにはなるが……」

 

 十三束との交流は皆無だが、五十嵐とは去年の九校戦の時にモノリス・コードで組んでから度々交流がある。

 それこそ、今年の九校戦でもロアー・アンド・ガンナーの練習を付き合ったのだ。俺が暇潰しにアドバイスを送っていただけだが。

 となると、五十嵐の方がまだ俺対応の経験値があるか。

 

「深雪と十六夜、どっちにも物怖じしてしまう十三束か、十六夜だけには辛うじて物怖じしない五十嵐か。そのどっちを選ぶかという話だ。悪いが、俺にはどっちとも交流が少ないから情報が少ない。本当の理由は、それこそ服部前会頭を問い詰めてくれ」

 

「まぁ、そうだな。あの人選は結局服部さんの考えによるモノだからな」

 

 他人の思考など読み解ける訳もないのだ。

 それに、もう選ばれ終えた事。今更その話を蒸し返しても後の祭りだし、部外者が意見するのはお門違いだ。

 そうしてここでこの議論をする無意味さに気付いたのか、皆それ以降は会頭の人選について話題に上げないのだった。 

 




周公瑾捕縛に達也が力不足か訊ねる真夜:十六夜があの予言書を頭に入れている前提で、十六夜という予言書に出てこない存在が介入せねばならない事態になるのか、真夜は確認したかった。是が非でも加わろうという様子は十六夜にないので、とりあえず打診を聞き入れて様子見している。

服部前会頭の人選:十三束が十六夜に密かに憧れているのを知っており、憧れが先行して対等に立ち回れないのでは、という事。実母が日本魔法協会の会長であるため、協会と学校で板挟みになるのではないか、という事。上記2つを考慮し、十三束を除外。後は達也の推測通りで、五十嵐が選出されたのである。

 閲覧、感謝します。

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