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名目賃金8カ月ぶり高い伸び、26カ月連続増-日銀正常化へ好材料

更新日時
  • 名目1.8%増、所定内給与2.2%増-実質1.3%減と23カ月連続マイナス
  • 4-6月に実質がプラス転換か、日銀の次回利上げ前倒しとの見方も

名目賃金は2月に8カ月ぶりの高い伸びとなり、26カ月連続で前年を上回った。物価の変動を反映させた実質賃金は23カ月連続で前年を下回ったものの、4-6月にもプラスに転換するとの見方も出ており、今回の結果は金融政策の正常化に取り組む日本銀行にとって好材料となり得る。

  厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.8%増。賃金の基調を把握する上で注目される所定内給与は2.2%増と、1994年10月(2.3%増)以来の大きな伸びとなった。一方、実質賃金は前年同月比1.3%減。政府の物価高対策の影響が一巡してインフレ率が再び押し上げられたことが影響した。

  今年の春闘で賃上げ率が33年ぶりの高水準となる中、日銀は3月、賃金と物価の好循環が確認され、2%の物価安定目標の実現が見通せる状況に至ったとして17年ぶりの利上げを決めた。植田和男総裁は、先行き名目賃金はさらに改善し、実質賃金はプラスに転化していくとみている。日銀の見通しにおおむね沿った内容で、市場の関心が高まっている次回利上げのタイミングが前倒しされる可能性もあるとの見方が出ている。

  伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、物価の伸びは鈍化傾向にある一方、「賃金は所定内給与が春闘での賃上げを反映して4月以降、一段と伸びを高めていく」と指摘。実質賃金は早ければ4-6月のどこか、あるいは同期の平均でプラスになると予想した上で、日銀の「次の利上げ時期は10月とみているが、前倒しになる可能性もなきにしもあらずだ」と語った。

春闘の結果などから賃金と物価の好循環の強まりを確認-植田日銀総裁

名目賃金は8カ月ぶり高い伸び | 実質は23カ月連続マイナス
 
 

  ブルームバーグのエコノミスト調査では約6割が10月までに次回の利上げが行われるとみており、7月と10月の予想が拮抗(きっこう)している。

日銀の次回利上げは10月までが6割、7月と10月の予想拮抗-サーベイ

  連合が4日発表した今春闘の第3回集計結果(2日時点)によると、平均賃上げ率は5.24%と最終集計との比較では1991年(5.66%)以来の高水準を維持。中小企業は前回集計を上回る4.69%と92年以来の高い伸びとなっている。  

  実質賃金の算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は2月に前年比3.3%上昇と、3カ月ぶりの高い伸びとなった。政府による電気・ガス代負担軽減策の影響が一巡したことが押し上げ要因となった。

  エコノミストが賃金のトレンドを見る上で注目するサンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースの名目賃金は1.9%増。所定内給与は2.0%増だった。

ブルームバーグ・エコノミクスの見方

「現金給与の伸びは、賃金と物価の好循環を期待している日銀にとって良い方向に向かっている。基本給も堅調なペースを維持。今後は春闘の結果を受けて4月の新年度から賃金上昇に弾みがつくとの期待が大きい。日銀は年後半に緩やかな利上げを実施し、政策正常化に向かうとわれわれは予想している」

木村太郎シニアエコノミスト

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