この給付金を不正受給している疑いが浮上したのが、長野市で放課後デイを運営する「きらっと」。

管轄する市や県が監査に入ったといいます。

SBCの取材班が訪れると成田憲彰(なりたのりあき)社長が取材に応じました。


成田憲彰社長:
「一言でいうと配置上のミスがあった」
「水増し(請求)ということではない」

成田社長は、人員が不足していた分の給付金を多く受け取っていたことを認めたものの、事務的なミスで「不正の認識はない」と回答しました。

金額は明らかにしませんでした。

成田憲彰社長:
「不備が指摘されれば、不備の通りにお金はお返しするつもり。適正な形での運営を努めたい」

給付金はどのようにどれだけ支給されたのか?

SBCは実態を県と市に問い合わせましたが、「監査中の事案であるため回答は控える」として、公表されませんでした。

厚労省によりますと、こうした福祉サービスを行う事業所での不正受給は全国的にも増加していて、今回のような問題は「氷山の一角」ともいえる状況です。

立命館大学の田村教授は、子どもの支援を第一に考えず、利益を追求する悪質な事業者もいると指摘します。

立命館大学 田村和宏教授:
「子どもを預かってなんぼみたいな形で、多ければ多いほど儲けが利潤が多くなると見ている業者もあって、本人のニーズに合わない対応をしているところも出てきている」

事案を公表し、再発防止を図る必要があるのではないか?

SBCが取材を進めると「きらっと」が運営する長野市内のほかの2つと、須坂市の事業所でも不正受給の疑いがあることがわかりました。

職員の勤務記録などを確認するため、県と長野市に情報公開請求をしました。

しかし、提出された書類は、黒塗りとなったものばかり。


「個人情報」だとして、開示された情報は大幅に限られ、給付金がどのように申請され、いくら支給されたのかは明らかにされませんでした。

県の担当者は「あくまで一般論」として取材に応じました。

県障がい者支援課 若林剛課長補佐(当時):
「(一般的に)不正請求とか人員配置基準を満足していなかったとかもちろんある」

「きらっと」に監査が入ってから4か月が経った2023年12月。

長野市と県が事案を明らかにしました。

長野市は市内の事業所3か所で、実際は勤務しない職員をいるかのように装い、給付金およそ1億7600万円を不正に受給したとして、詐欺の疑いで成田社長を長野地検に刑事告訴。

県は須坂市の事業所について、指定を取消す、行政処分を公表しました。

管理責任者などを適切に配置したように偽り、指定を受けたとしましたが、受給した金額は公表しませんでした。

しかし、「きらっと」はこれに反論します。

県の取り消し処分を不服として長野地裁に提訴。

市に対しても違法な監査で業務を妨害されたなどとして、損害賠償を求める訴えを起こしたのです。

今年2月、きらっとが県を相手取った訴訟の初公判が開かれました。


裁判後の成田社長:
「3年経った今頃になって、これは不正の取得ですと言われていることに疑問があった。行政の指導通りにやっていたつもりだったので、疑問に感じて訴訟を起こした」

きらっと側は、管理責任者が一時的に足りなくなることを事前に県に説明し、担当者から許可を受けていたと主張。

一方、県は事前に相談を受けた記録などはなく、管理責任者がいないのに申請を進めることはあり得ないなどとしました。