いやー、ええときにドカをやめましたわー。と言っているのは今季プラマックドカからLCRホンダに移籍を決めたヨハン・ザルコ師匠。なんでよ?少なくともドカに乗ってりゃ勝てる可能性はあったのに(実際去年ザルコは勝った)、いまのホンダに来たら勝つのはおろか、ビリケツ逃れるのが精一杯になっちゃうでしょが。
「だって今年はドカにマルケスが来たでしょが」とザルコ師匠。「マルクがドカに来るっていうのは、ニワトリ小屋にオオカミを放つのと同じことだからね。それでどうなったかはみんなももう見てるでしょ?おれぁあんなドタバタした争いに巻き込まれるのはまっぴらごめんさね」
ザルコが言っているのは、先のポルティマオ戦で発生したペッコとマルケスの接触転倒事故のこと。何人たりとてオレの前は走らせねえが信条のマルケスは今年、ホンダを離れて「勝てるバイク」であるドゥカティを手にした以上、安易に前を譲る理由などなくなった。そこにペッコにマルティンほか、同じく勝てるバイクであるドゥカティに乗るライダーが7人もいれば衝突は避けられない。
「ドカに来たマルクは、いまのところ口では謙虚にチャンピオンは無理ですとか言ってるけどあんなん嘘に決まってるからね(笑)心の中で考えているのはどうやってチャンピオンになるかってことだけだし、それはあのロッシが持つ9度の世界チャンピオンという記録に並び、それを抜く!ってこと。勝てるマシンに乗ってるのに、野心のないマルクなんて考えられないだろ」とザルコ。
「だからマルクがドカに来るというちょうどそのタイミングでドカをやめることができてホントよかったなって思ってるよ。ザルコ、しあわせ
」まあ確かに。ザルコの言わんとしていることはよくわかる(笑)でも、それでもホンダを選んだというのは足し算引き算ではどう考えてもマイナスの収支に落ち込む気がするのだが、あえてそれを受け入れているザルコに勝算はあるのだろうか。
「ホンダは、というか日本人は本当に勤勉だし熱心に仕事をしてる」とザルコ「現場に対する投資も膨大なものだ。ただ、現時点では投下されたリソースは、物事の成功だけでなく失敗についても同じだけ作用している。つまり、なにがうまく行って、なにがうまく行かないのかを、実際にコースを走りながら見極めている段階にあるんだ。いまは可能な限り走る距離を稼いで、そこでの成功と失敗をきちんと選り分けていく必要がある。それはすごくイライラする作業ではあるけどね。ポルティマオではもっとうまくやれると思って週末に臨んだけど、結果はまったく期待したものではなかった。正直、いまのホンダは何をするのが正しいことなのかもよくわかってない感じもあるけどね」
2020年、マルケスのケガとともに始まったホンダの低迷期もすでに足掛け4年。一向に解決策を見つけられないまま時は過ぎ、あげくエースのマルケスに逃げられてしまったホンダは今季、ドカ陣営からザルコとマリーニというふたりのライダーを引き入れたが、その効果はここまでまったく有効には発揮されていない。マリーニに至っては、毎回のセッションでビリケツにいるのが常態化しており、これは根本的に計画がうまく行っていないことを伺わせるのだが、マリーニに関してザルコは「あれは仕方ない」と同情的。「マリーニはマシンの開発に関して先行して新規パーツにトライしたり、ぼくらとは全く別のラインでの開発作業を行っているんだ。彼にしたって好き好んでビリケツ走ってるわけじゃない。マリーニは、言ってみればレースを使ってテスト作業をしてるんだ」
マリーニ本人は、この件に関して具体的な説明をしていないものの、ドカに乗っていた時はポールポジションを獲得したり表彰台に載ったりができていたというのにホンダでは毎回のビリッケツという状況を、文句も言わず甘んじて受け入れているのにはそれなりの理由があると匂わせる発言をしているため、ザルコが言うように、マリーニはレースで速く走るというよりマシンの開発要員としての役目を担わされているというのは事実だと思える。
こうして多大なる犠牲を払いながらレースを続けているホンダ。ザルコはそこにわずかな光明を見出している様子ではあるものの、時は止まってくれない。時間が経つほどにトップとの差が広がっていくように見えるホンダは、いつまでこの状況に耐えられるか。
HRCのトップとして現場を取り仕切るアルベルト・プーチは、「われわれはがんばっている。コンセッションの効果で、夏休みが明けるころにはさらなる進歩を見せることができるだろう」と楽観的な発言をしているようだが、プーチのこの「半年先はさらによくなる」という発言はこの4年間ずっと繰り返されてきたものだ。もういい加減具体的な結果として結実させなければ、ザルコの言う「膨大な投資」もすべて無駄になってしまう。
長いトンネルを抜けたその先で、ホンダが見るのはいったいどんな景色になるのだろうか。
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