表現の自由戦士から非実在青少年規制条例だの、悪法だの、憲法違反だの言われましたが、改正後の東京都青少年の健全な育成に関する条例に関するアニメ作品の有害図書指定の状況を把握してみました。

東京都青少年の健全な育成に関する条例(一部抜粋)
(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
第7条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和23年法律第137号)第1条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

東京都青少年条例による表現規制に反対する声明

日本マンガ学会理事会

 日本マンガ学会は西暦2001年に設立され、会員として国内外の研究者 約500人を集めており、日本学術会議の協力学術研究団体に指定されています。

今年3月に提出され6月に否決された、マンガやアニメなどの視覚表現を規制する条例(「東京都青少年健全育成条例」改正案)が、この12月の都議会に再び提出されましたが、本学会はこれに対して強く反対するものです。

「非実在青少年」の判断について「恣意的な運用は不可能」
 改正案では、マンガやアニメ、ゲームなどに描かれたキャラクターで、「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」を、「非実在青少年」と定義。「性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」を「青少年性的視覚描写物」と呼び、これを青少年が容易に購入したり閲覧できないようにする努力義務を事業者や都民に課してる。

 さらに、「青少年性的視覚描写物」のうち、「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」については、都知事が「不健全図書」に指定できるとし、青少年への販売などを禁止。これに違反し、警告に従わない事業者には30万円以下の罰金も科せられる。

 都の見解では、「非実在青少年」の定義があいまいで恣意的な運用につながるのではないかとの指摘に対して、「作品の設定として、年齢や学年、制服(服装)、ランドセル(所持品)、通学先の描写(背景)などについて、その明示的かつ客観的な(1)表示又は(2)音声による描写(台詞、ナレーション)という裏づけにより、明らかに18歳未満と認められるものに限定するための規定であり、表現の自由に配慮して、最大限に限定的に定めたもの」と説明。「単に『幼く見える』『声が幼い』といった主観的な理由で対象とすることはできず、恣意的な運用は不可能」であるとし、視覚的には幼児に見える描写であっても「18歳以上である」などの設定となっているものは該当しないとしている。

 また、「性交又は性交類似行為」の規定があいまいで、18歳未満のキャラクターの裸が出てくるだけで規制対象になるのではないかとの指摘に対しては、法令用語としてどのような行為か限定されており、「性交を示唆するに止まる表現や、単なる子どもの裸や入浴・シャワーシーンが該当する余地はない」と回答している。

 このほか、改正案では、都の責務として、「都は、青少年性的視覚描写物をまん延させることにより青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきではないことについて事業者及び都民の理解を深めるための気運の醸成に努めるとともに、事業者及び都民と連携し、青少年性的視覚描写物を青少年が容易に閲覧又は観覧することがないように、そのまん延を抑止するための環境の整備に努める責務を有する」と規定した。

 この「まん延を抑止する」という点について、成人の購入・閲覧までも規制するものではないかとの指摘については、あくまでも「青少年が閲覧又は観覧することを抑止する、という意味である。成人への規制を意味するものではない」としている。

アニメの性描写規制、橋下知事も検討 まず実態把握へ
2010年3月19日

 漫画やアニメで18歳未満と判断される架空のキャラクターの性描写を規制する東京都の青少年健全育成条例改正案について、大阪府の橋下徹知事は19日、報道陣に「大阪府も検討する。規制する必要性があるか、まず実態把握する」と語り、規制するかどうかを検討する考えを明らかにした。府は性描写のあるマンガやDVDなどの販売状況などを調査するという。

 都の議論に、出版界などは「表現の自由を侵す」と批判している。橋下知事は「表現の自由にかかわるので慎重に見なければいけない。重要なのは実態把握。(規制が必要であれば)表現の自由も絶対的でない」と述べた。

 大阪府の青少年健全育成条例では有害図書について「総ページの10分の1または10ページ以上」など量的な基準はあるが、都の改正案のように内容で判断する基準はないという。

東京都で例の青少年条例改正後の有害図書指定の実態に関して、アニメ作品が一度も指定実績はない。

他の道府県では、上記の条例のように明文化はされていないものの栃木県や石川県、三重県、兵庫県、宮崎県ではマルドゥックスクランブル圧縮(アニメ映画、R18+)を、福井県ではノ・ゾ・キ・ア・ナ(OVA、R18+)、長崎県ではマルドゥックスクランブル圧縮とふたりエッチ LESSON.1(OVA)を有害図書等に指定している。

ふたりエッチ川上とも子版(創映新社)に関して、長崎県で有害図書類に指定(個別指定)されたのは、平成19年(2007年)です。

2007年は、TVアニメが未成年者による殺人事件で放送中止となったniceboat騒動と同じ年です。



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東京都青少年条例改正(非実在青少年規制等)以前に長崎県で行われたアニメ作品ふたりエッチ(創映新社)の有害図書指定(個別指定)

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条例改正の東京都よりも何年か前に長崎県でアニメが有害図書指定。
作品名はOVAふたりエッチ川上とも子版