魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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 やぁ。今回のお話は大分短いから、かさ増しの意味も込めて注意事項をみたいなことを言っとこうと思う。まぁ大したことかもしれんし、そうじゃないかもしれんな。

 今回のお話は、まぁぶっちゃけ今作主人公の意味不明な鬱屈とした話があるわけだ。鬱展開とかが苦手な人は帰った方がいいかもな。いや、ここまで見てきた人ならこいつが無駄に鬱陶しいほど暗い性格なのは分かってるかもしれないが。え?そこまで読み取れるほどしっかり書かれてない?そこは作者の技量不足ってことでご愛敬だ。むしろ、今回のでこいつの暗い性格が分かるんじゃないか?なんたって前世はゴミ袋の方が役立つ血袋だからな。特別な力貰った程度で立ち直れるなら自殺なんてしてないってことだ。

 ん?お前は誰だって?はは、名乗るほどの者じゃないな。まぁ、強いていうなら。

 ゴミ袋の方が役立つから首吊った、役立たずの血袋だよ……。


第九話 幕間~彼を語るには目が少なすぎる。精霊や妖精のそれも、分不相応だろう~

 彼は、あまりにも不思議な少年だった。

 

 ほとんどの者は彼の名前に恐怖を覚え、近づこうとしなかった。彼はそうなることが分かっていたのか、それに嘆くことはなかった。少なくとも、誰もその嘆きを聞いたことがない。

 

 彼は避けられることを、遠ざけられることを受け入れていた。その理由を理解し、誰にも進んで近づこうとしなかった。親しい者ができた今でも、彼は自ら近づくことは一切ない。誰かは、何かを怖がっているようだ、と言っていた。

 

 昼休みの時は大概中庭に備え付けられたベンチに腰を下ろしている。最近は風紀委員の活動や、友人に昼食を誘われてそこにいないこともあるが、週に2日は絶対に一人で佇む。

 

 ベンチで佇む彼は、まるで何かに憂いているようだった。空を眺めているか、自身の手を眺めているか。その姿は、それを見た多くの者に芸術的な美しさを感じさせた。ただ単に美しいだけだったら有名な美少女がいるが、彼の美しさはまた別のものだった。

 

 彼の顔はとても整っている。誰もかれも魅了する前述の彼女には及ばないが、それでも得も言えない魅力があった。彼女が彼女個人で完成された完璧な彫像だとするならば、彼は水墨画の一部である樹木だった。

 

 彼の姿は見る者によって少し違う印象を与えていた。ある者は『花びら舞わせ狂い咲く桜』と、ある者は『天まで高くそびえ立つ楠』と、ある者は『雨風に揺られ濡れる柳』と。

 

 彼と一番親しいであろう兄妹も、それぞれ彼に違うものを感じていた。兄は『底の知れない深淵』を見るように何処か恐れていながら、しかし彼を取り巻く現状を憐れんでいた。妹は『透き通る流麗な水』を見るように慈しみながら、しかし彼の深層に触れないようにしていた。

 

 彼に進んで関わろうとする少女は、彼に同情していた。彼の背中がとても寂しそうに見えて、かつての自分と重ね合わせていた。少女は彼を一人にしてはいけないと、進んで彼の傍に寄っていった。

 

 誰もが彼に違う印象を抱いていた。誰もが彼の本当の姿を知らなかった。

 

 それは当たり前だろう。彼が、彼自身が、それを隠し続けているのだから。隠したくて仕方がないのだから。

 

 彼は誰にも語らない。自身の真実を。彼が持つ罪を。罪を背負った訳を。清算すべき過去を。何も、何もかも語らない。

 

 語る訳はない。彼は誰にも心を許していない。許すことはない。今の彼を受け入れられたとしても、それは彼ではないのだから。

 

 いや、彼が許していないのは他人ではない。己自身だ。無力だった己。恩知らずの自身。だからこそ、本当の自分を見せることに恐怖を抱いていた。

 

 彼の今の姿も、持つ力も、身分も境遇も過去も現在も未来も。今の彼にとってすべては借り物で紛い物で偽物で。何一つ、彼の物ではなかった。

 

 だがどうでもよかった。

 

 それらが何であれ。

 

 己が何であれ。

 

 彼にとって、贖罪だけが、全てなのだから。

 

 それが、全てのはずなのだ。

 

◆◆◆

 

『大丈夫だよ。お母さんはお前が優しい子だって分かってるから』

 

 止めてくれ……。

 

『好きなものを目指しなさい。お前だったらきっとすごい奴になれる。お父さん期待してるからな』

 

 止めてくれ……。

 

『失敗したって?間が悪かっただけだろ。大丈夫さ。お前なら乗り越えられるだろう?お兄ちゃん信じてるからな』

 

 止めてくれ……。

 

『なぁにしょぼくれてんの!あんたならやれるって。お姉ちゃんね、あんたのこと結構頼りにしてるんだから』

 

 止めてくれ……。

 

『お前が』『お前だったら』『お前なら』『あんたなら』

 

 止めてくれ……っ。

 

『分かって』『期待して』『信じて』『頼りにして』

 

 止めてくれ!

 

 理解しないでくれ   期待しないでくれ 信じないでくれ     頼りにしないでくれ  抱きしめないでくれ    頭を撫でないでくれ 背中を押さないでくれ    目を見つめないでくれ  馬鹿にしてくれ  突き放してくれ    いらないと言ってくれ 殺してくれ

 

 答えられない 応えられない  堪えられない   こたえられない    コタエラレナイ

 

許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して

 

■して

 

◇◇◇

 

「……」

 

 汗で不快感を覚える朝。何か嫌な夢を見ていてことだけ覚えているが、何の夢だったかは覚えていない。ただ、思い出したくないことはよく分かった。

 

「……」

 

 時計を見て日付を確認する。時計は2095年6月26日午前6時26分を示している。日曜日の早朝だ。

 

「……シャワー浴びるか」

 

 まずはこの不快な汗を流し、ぼやけた頭をスッキリさせることから始めることにした。その次は何をしようか思案する。

 

「え~と。運動して、朝食食べて、読書して、昼食食べて、読書して、夕食食べて、読書して、寝よう」

 

 いつもと同じ日曜日を過ごすことに決めた。

 

「何読んでなかったっけ」

 

 俺の頭の中は、読書でいっぱいだった。夢について、もう微塵も覚えていない。

 

 何の変哲もない日曜日だった。




十六夜の前世:自身のことを無能というが、決して何もできない木偶の坊だったわけではない。ある程度の事は少しやれば人並みにできる男だった。が、どれほど努力しても人並み以上に出来ることは一切なかった。何かしらに優れた家族に囲まれた彼は、家族との比較で自身の無能を嫌悪し続け、しかし家族に嫌われたくない一心でその嘆きを語ることも弱気を晒すこともなかった。己の内に積もる自己嫌悪を、他人に嫌われたくないという自己愛でひた隠し、それでも零れそうになるほど満たされた自己嫌悪により、彼は首を吊って22年の生涯を閉じた。最期まで、心の内を語ることなく。

十六夜の休日:何の用事もないと完全な引きこもりと化す。整理整頓は得意だが、生活は割とだらしない。

閲覧、感謝いたします。

※シルバーブレイドの仕様を変更したため、それに関する部分を修正いたしました。4~7話の内容が少し変更されております。(2017/12/3)

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