魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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第六話 小悪魔と姐御と時々巌

2095年4月5日

 

「達也く~ん!」

 

 そういえば、今日はそんな日だったなと達也一団と一緒になった通学路にて、真由美の手を振る姿を見て今日のイベントを粗方思い出した。

 

「十六夜く~ん!」

 

 俺も巻き込まれることを確信し、色々と諦めることにした。さて、入るべきは生徒会か風紀委員か。

 

「深雪、どうやら生徒会の勧誘みたいだな」

 

「いえ、お兄様と十六夜の名前を呼んでいたようだけど」

 

 分かっているが現実逃避がしたかったのだ。後本当に話題は深雪の勧誘だろう。

 

「達也くん、十六夜くん、オハヨ~。深雪さんに皆さんも、おはようございます」

 

 器用に笑顔を使い分ける真由美。その小悪魔フェイスは対男性のものなのか。

 

「おはようございます、会長」「おはようございます、真由美さん」

 

 達也と俺は言葉で返し、他の面々は会釈で返した。

 

「深雪さんと十六夜くんに少しお話したいこともありますので……ご一緒しても構いませんか?」

 

 これは全体に向けて掛けられた言葉。あからさまだというのに何を取り繕おうというのだろうか。

 

「はい、私は構いませんが……」

 

「ああ、別に内緒話をする訳じゃありませんから。それとも、また後にしましょうか?」

 

 そう言って真由美は一歩離れたところに固まっている三人の方の様子をうかがう。お構いなくというように三人は横に首を振る。

 

「深雪と俺にという事は生徒会関連で?」

 

 いい加減三人が不憫に思えてきたし、達也が少し眉根を歪めているので話を進める。

 

「それもだけど十六夜くんの方は風紀委員の生徒会選任枠でね。一度、ゆっくり説明したいと思って。お昼はどうされるご予定なのかしら?」

 

 俺に対してだったり、深雪に対してだったりと忙しなく会話の対象を変える。俺には徹底的にフランクに歩み寄るつもりのようだが。四葉の者か、いじり対象か。彼女の評価が分からない以上思惑が判別できない。

 

「食堂でいただくことになると思います」

 

「達也くんと一緒に?」

 

「はい」

 

 どこか嬉しそうに答える深雪。諍いの対処は俺がこの前したから気にする必要がないと思ったのだろう。俺は引き続き対処を押し付けられるようだ。その内男子たちに刺されるのではないだろうか。四葉の名を知って出来る勇気があるかどうかは知らないが、そもそもこの身は超人であるが故に殺気には一等敏感である。そうそう刺されはしない。

 

「よろしければ、生徒会室でお昼をご一緒しませんか?ランチボックスでよければ、自配機がありますし。達也くんが一緒でも構いません」

 

「会長が構わなくても、副会長が構うでしょう。副会長と揉め事なんて御免です」

 

 生徒会副会長・服部刑部少丞範蔵(はっとりぎょうぶしょうじょうはんぞう)は達也のことをあまり良く思っていない。その理由の原因が二科生であることだろう。そこに反感を覚える時点で副会長として問題があると思うのだが。

 

「はんぞーくんのことなら、気にしなくても大丈夫です。はんぞーくんは、お昼はいつも部室ですから」

 

「……それはもしかして、服部副会長のことですか?」

 

 服部のあだ名にはさすがの達也でも疑問を呈した。服部は学校へ『服部刑部』で届け出ているから、『はんぞーくん』なんてあだ名はとても哀れに思える。彼は真由美被害者の会会員№1と呼ぶべき存在だった。

 

「そうです。それで、どうしますか?」

 

 ニッコリとした顔で首を傾ける真由美。深雪は期待するように達也を見る。そして俺は、無言で肩ポンした。

 

「……分かりました。三人でお邪魔させていただきます」

 

 達也は色々と諦めた。

 

「そうですか。では、詳しいお話はその時に。お待ちしてますね」

 

 真由美の顔と達也の顔は見事に対照的だった。

 

◇◇◇

 

 昼休み。生徒会室の扉の前で来た旨を伝えれば、扉のロックが解除される。

 

「いらっしゃい。遠慮しないでどうぞ掛けて。お話は、お食事をしながらにしましょう」

 

 生徒会室の一番奥にある机。座る真由美は笑顔を絶やさない。指し示された長机に俺と深雪が座り、その深雪の様子を確認してから達也が座る。メニューは何がいいかという書記である中条(なかじょう)あずさの問いに、司波兄妹は精進、俺は肉のメニューを頼む。自配機の操作を終え、服部を除く生徒会のメンバーと摩利が席に着く。

 

「入学式で紹介しましたけど、念の為、もう一度紹介しておきますね。私の隣が会計の市原(いちはら)鈴音(すずね)、通称リンちゃん。その隣が風紀委員長の渡辺摩利。それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」

 

 真由美の紹介に鈴音とあずさは多少物申したげだったが、慣れているようでスルーする。

 

「もう一人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会役員です」

 

「私は違うがな」

 

「そうですね。摩利は別ですが。あっ、準備ができたようです」

 

 自配機から料理が盛り付けられたトレー計6つが排出され、あずさと深雪によって配られる。それを確認してから摩利は自前の弁当を取り出した。達也がそれを手製かどうか質問し、そこから何故か深雪と仲睦まじい会話に展開。俺は一切口を挟まず、黙々と食事にありつく。女性比率の高さと目の前のイチャイチャに内心苦悶しながら。

 

「そろそろ本題に入りましょうか」

 

 それぞれがある程度食事を終えたところで真由美が話を切り替える。話の内容は、生徒会についてと伝統である入試主席の生徒会入りのお願いだ。深雪はそれに否を唱え、達也を生徒会に推薦するも規則違反であることを鈴音より伝えられる。それを受けて深雪は書記として生徒会入りを承諾した。

 

「さて、ではこちらの話だな」

 

 摩利が話を切り出す。生徒会の話が一段落し、次は風紀委員に関する話のようだ。そういえば、俺への用件は風紀委員の生徒会選任枠の様だったなと朝の会話の記憶から引っ張り出した。

 

「先ほども少し触れましたが。十六夜くんを生徒会選任枠として推薦したいと思っています。どうかしら?」

 

「一つよろしいですか?」

 

 俺は素直に風紀委員に入るつもりはなかった。何故なら、生徒会選任枠が達也の席だった原作知識を覚えていて、俺はその席を奪い、未来が俺の持つ知識から大きくズレることを危惧したからだ。

 

「なんだ?」

 

「校則を読んだ限り、風紀委員には一科生に限定する規則がなかったと思うのですが」

 

 原作なら摩利が気づくその規則の穴を俺が指摘する。

 

「ほう、それで?」

 

「生徒会選任枠を辞退し、その枠に達也を推します」

 

「なっ」

 

 達也の珍しい驚きの声を聞くことが出来た。摩利の方は面白いと言いたげに口の端を釣り上げている。

 

「どうして達也くんを?」

 

 俺が辞退することは予想もしていたようだが、達也を推すことまでは予想していなかったようだ。真由美の純粋な好奇心が伝わってくる。

 

「深雪が入学式の答辞で述べたことに俺も賛同しています。ですから、現状に一石を投じるべく、二科生である達也が風紀委員に入るべきだと愚考します」

 

 真由美も摩利も一科と二科の溝を憂慮している。彼女らはこの意見を無視できないはずだ。

 

「ええ、とてもいい考えね!摩利、生徒会は達也くんを風紀委員に推薦します」

 

 真由美も摩利もとってもいい笑顔をしていた。すぐさまに達也が異論を挿み、自身の無力を語るのだが―――。

 

「達也、問題ないさ。俺がしっかりサポートする」

 

「……どういう意味だ?」

 

 達也は俺から不穏な空気を感じ取ったのか、少し怯んでいた。

 

「風紀委員には特別選任枠というものもあったでしょう。是非ともその枠を俺に使わせてはもらえませんか?」

 

 先ほどの校則の穴を見つけるついでに、俺は特別選任枠という規則も見つけていた。それは生徒会長・風紀委員長・部活連会頭三者の推薦と教職員会の承認、推薦者の同意で風紀委員に加入できる規則だ。俺はその規則を使って風紀委員に入り、今後の達也の負担の軽減とイベントへのスムーズな介入を目論んでいた。

 

「素晴らしい案だ。と、そろそろ時間が無くなってきたな。続きは放課後にしたいが、構わないか?」

 

「……分かりました」

 

 一番反発していた達也が同意したことで満場一致となった。

 

「特別選任枠に関して、会頭と教職員会の方に話を通しておくわね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 そうして俺たちは生徒会室から退室した。

 

◇◇◇

 

 放課後。昼休みと同様、生徒会室の前に来た。達也の表情が暗いのは気のせいである。扉が開けば、中には昼の面子に服部、そして十文字(じゅうもんじ)克人(かつと)の姿があった。達也は服部に睨まれ、俺は十文字に睨まれる。達也の方は明確な敵意だが、俺の方は観察だろう。

 

「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、生徒会へようこそ」

 

 立ち上がってからそう挨拶する。達也をスルーするのは知っていたが、俺までスルーしたのはあくまで生徒会加入への挨拶なのだろうか。いや、俺が生徒会選任枠を辞退し、二科生である達也を推したことが彼の不評を買ったのかもしれない。

 

「部活連会頭の十文字克人だ」

 

 こちらはどっしりと腰を落ち着けたまま挨拶をする。巌の様と言われる彼はその方が様になる。

 

「よっ、来たな」

 

「いらっしゃい、深雪さん。達也くんと十六夜くんもご苦労様」

 

 すでに身内感を放って接するは摩利と真由美。

 

「十六夜くん、教職員会と十文字くんには既に話を通したんだけど。十文字くんの方が条件を出しました」

 

「条件?」

 

 俺はその質問の回答を目の前にいる本人に求めようとそちらを見る。素直に通らないことも考えていたが、克人からどのような条件が出されるかまでは予想できていなかった。

 

「実力の分からない者を推薦は出来ない。だからこそ、俺との模擬戦でそれを示してもらう」

 

 彼は真摯であった。そして、その条件も非常に彼らしく、妥当なモノだった。俺としても、実力が定かでない者を喧嘩仲裁の仕事をする風紀委員に推薦するのはどうかと思うし、実力がない者をそこに送れば自身の名すら傷つけかねないだろう。

 

「その条件、承諾いたします」

 

 勝つことが条件でなく、あくまで実力を示すことが条件。現在の俺がどこまで克人に通じるかも試してみたくもあった。お互い本気は出さないだろうが、特に拒否する理由もない。

 

「では、場所を移そう。第三演習室の使用許可を取ってある」

 

 克人は俺の承諾を受けて立ち上がる。試合場として指定されたのは、本来原作で達也と服部が戦う場所だった。

 

◇◇◇

 

「で、全員来るんですね」

 

 第三演習室には俺と克人だけでなく生徒会役員たちと摩利、司波兄妹も来ていた。他はともかく服部やあずさまで来ているのは意外である。いや、服部の方はそうおかしくないだろうか。

 

「いちおう私も推薦者になってるわけだからな。実力が見れるというなら見るだろう?」

 

 摩利の言葉に他の者たちも「実力が~」のあたりで頷いている。良くも悪くも四葉の名には注目が集まるという事か。肩をすくめて見せれば、得意げな顔をする摩利だった。彼らの観戦を他所に、俺は位置に着く。

 

「準備はいいか」

 

「ええ」

 

 まだ開戦してないというのに恐ろしい克人の気迫である。涼しく返して見せるがピリピリとした空気を感じていた。

 

「審判は私だ。直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる術式は禁止。回復不能な障害を与える術式も禁止。相手の肉体を直接損壊する術式も禁止。但し、捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。後、十文字が十分だと判断した場合は勝敗を決めず、試合を終了する」

 

「失礼。武器の使用は?」

 

 俺は懐から武装一体型CAD・シルバーブレイドを取り出す。別にこれが使えなくても構わないが、気持ちやりづらくなる。

 

「……なんだそれは?」

 

 傍から見れば、柄と鍔だけの剣であるから彼女の疑問は当然だろう。いや、柄と鍔の形が変わっているから剣にすら見えないかもしれない。

 

「こういう武器ですよ」

 

 俺はシルバーブレイドから展開されたカーボンナノチューブの布を硬化魔法で円柱状に固定する。その様を見て達也以外の周りの者は各々驚いていた。その中で特に摩利は目を見開いた後にシルバーブレイドを睨む。彼女は千葉道場の門下生であるため、これのパクリもとい参考元である薄羽蜻蛉を見たことがあるのかもしれない。

 

「……まぁいいだろう。使用は有りだ」

 

 質問したそうではあったが、ずっと待機している克人に配慮したようだ。俺は試合開始前という事で硬化魔法を解く。

 

「では。始めっ!」

 

 摩利からの開始の合図。俺は即座にガイアを抜き取り、サイオン弾を放つ。目標はもちろん、克人の起動式だ。が、俺の行動を読んでいたのか、素早く避けて魔法式を完成させる。

 

(初弾は外れ。この前の騒動の話を聞いてたか。展開したのは、『ファランクス』、だよな)

 

 防壁を幾重にも作り出す多重移動防壁魔法『ファランクス』。十文字家の専売特許。攻撃性の魔法ではないことに疑問を持つが、むしろ試したいことがあるので好機と思い突っ込む。シルバーブレイドをまた硬化魔法で円柱状にして、諸手で構える。

 

(対物一枚、突破できるかどうか!)

 

 シルバーブレイドをファランクスと思しき魔法に振り下ろす。それと同時に硬化魔法を常駐させたままもう一つの魔法を発動する。それは俺が『衝車(しょうしゃ)』と名付けた加重系魔法。打撃で生み出される衝撃を、一方向に整える魔法だ。といってもこの魔法、力の集中が甘いため一般人が用いたところで石壁すら突破できない。だがそれは、()()()()()()()()()。超人が用いれば障壁魔法を突破する力押しの魔法だった。

 

(割れた!いや、手ごたえが思っていた以上に軽い。ただの障壁魔法か)

 

 防壁が再生する気配はない。ファランクスだと思っていたのはただの障壁魔法だった。なぜ障壁魔法を使ったのか、思考する頭をすぐにリセットし、相手の懐へと飛び込む。克人は障壁魔法の突破に怯んだのか、次の魔法の展開が間に合っていない。シルバーブレイドを首に、寸でのところで止めた。

 

「……見事だ」

 

 降参を示すように、腕輪形汎用型CADを操作していた手が下される。場の空気の弛緩を感じ、俺も刀を下した。周りからの拍手が聞こえてくる。

 

「まさか、十文字がやられるとは」

 

 達也以外、その驚愕といった表情を隠していない。達也は予想の範疇で、驚いてすらいないのかもしれない。

 

「一年生と甘く見ていた。手を抜きすぎていたのは謝らなければいかんな」

 

 あちらは負けたというのに何処か清々しく、こちらに握手を求めるように手を差し出した。

 

「あくまで腕試し、ですからね。これで克人さんを負かした、なんて間違っても誇れませんよ」

 

 手を握り返す。こちらとしては、手加減して貰って、無駄な汗をかかずに済んだと思っている。十文字家の本気を突破できるか試せなかったのは残念ではあるが。衝車で突破ができなかった場合、()()()を出すか、手も足も出せないかだったろう。

 

「十文字くんの障壁魔法を叩き割る魔法があるなんて」

 

「『衝車』という衝撃を一点に集中させる俺オリジナルの魔法ですよ。まぁ、『破城槌』をアレンジしたようなものですがね」

 

 真由美の驚きの声に対し、真実と詳細は語らず魔法を説明する。あの魔法に違和を感じるとしたら『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』を持つ達也くらいだろう。そうなったとしても、超人技能までは思い至れないはずだ。

 

「充分な腕があることは分かった。俺からの推薦に異論は無い」

 

 生徒会長・風紀委員長・部活連会頭の通称・三巨頭が頷き合い、どうやら俺の特別選任枠は可決となったようだ。

 

「じゃあ、私たちは風紀委員会本部へ移動しようか」

 

 摩利は俺と達也を見て、移動を促す。

 

「渡辺先輩、待って下さい」

 

 服部は俺たちの移動を止める。彼の制止に俺は内心ほっとした。原作では、達也と服部の決闘がある。そのイベントが潰れることを少し懸念していたが、問題なさそうだ。服部は弄られた後、達也の風紀委員加入に対し苦言を呈した。服部の発言に、達也は服部の様子以上に妹の様子をちらちらうかがっている。大変申し訳ないが非常に微笑ましい。

 

「実力にも色々ある、と言っただろう?達也くんには魔法式を読み取る目と頭脳がある。ただ見ただけでは分かりづらいサイオン塊射出魔法を言い当てて見せた」

 

 あの魔法はサイオンを知覚できる魔法師でもサイオン弾を認識しづらい。俺が森崎との騒動で使ったあの場面、しっかり認識できていないと、俺と森崎の仲間らがただ魔法を不発しただけに見える。あの時、淀みなく魔法を言い当てたことに摩利は目を付けていたようだ。

 

「失礼ですが、補足させてください。お兄様ならば、起動式の時点で魔法を判別することが出来ます」

 

 ここで業を煮やしていたのか、深雪からの援護射撃が放たれた。

 

「ほう、やはりか。そうなると魔法が発動されなくても、どんな魔法を使おうとしたかが分かる。当校のルールでは、使おうとした魔法の種類、規模によって罰則が異なる。だが真由美や十六夜くんがやるように、魔法式発動前の状態で起動式を破壊してしまうと、どんな魔法を使おうとしたのかが分からなかった。だからといって、展開の完了を待つのも本末転倒だ。起動式を展開中の段階でキャンセルできれば、その方が安全だからな。彼は今まで罪状が確定できずに、結果的に軽い罰で済まされてきた未遂犯に対する強力な抑止力になるだろう」

 

 達也が起動式から魔法を読める事も予想していたのか、摩利はすらすらとそんな言論を展開した。その後も言い合いは続いたが、服部は摩利を言いくるめるのは不可能と判断して諦めた。

 

「会長……私は副会長として、司波達也の風紀委員就任に反対します。渡辺委員長の主張に一理あることは認めますが、風紀委員の本来の任務はやはり、校則違反者の鎮圧と摘発です。魔法力の乏しい二科生徒に、風紀委員は務まりません。この誤った登用は必ずや、会長の体面を傷つけることになるでしょう。どうかご再考を」

 

 今度は推薦者である真由美へと対象を変える。

 

「待ってください!」

 

 業を煮やし尽くしたようで、深雪が堰を切る。溢れ出る言葉は達也への不当な評価に対する怒りのようなそれ。服部は上級生として諭すように受け流していた。残念ながら、深雪は落ち着きそうにない。それを制すのはもちろん達也ではあるのだが、彼もまた、妹が見下されていたことに怒っていた。

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

 それから決闘など起こるわけだが、事の顛末は「さすおに」という言葉で表せられる。彼は異議を実力で叩き伏せた。

 その後にようやく風紀委員会本部に向かい、風紀委員の仕事の説明を聞き、他の委員との面通しも済ませたが。俺と達也の初仕事は、本部の掃除だった。




特別選任枠:その選任条件の厳しさから今まで選ばれた者が数少なく、絶対に埋める必要があるわけではなくあくまで補充要員的な枠であるため、半ば形骸化しつつあった規則。今回はその規則を見つけた十六夜によって有効に悪用(?)される。上限は3枠。

服部刑部:名誉ある生徒会長からの推薦を蹴り、そこに二科生を推薦した挙句、特別選任枠で風紀委員に加入しようとする十六夜の暴挙に少なくない敵意を持っていた。だが、達也の実力を見た時点で達也を推薦した意図を理解し、敵意は霧散した。

中条あずさ:十六夜がシルバーモデルの愛用者であるという噂を聞いていて、確かめるために模擬戦を観戦。原作であったように達也の模擬戦の後、シルバーホーンの話題に触れるが、「四葉」が怖くて十六夜のシルバーアーティラリーには触れられなかった。でもすっごく触れたい。

シルバーブレイド:薄羽蜻蛉のパクリ。刃渡約2m、厚さ5nmのカーボンナノチューブ製の黒く透き通った極薄の刃が付いた刀。刃は、巻き取ることにより全長約50cmのスティックにまで纏まる。展開の際はモーターで自動的に行われる。組み込まれている魔法は結合緩和、衝車、硬化魔法(円柱状)、硬化魔法(板状)。(仕様変更)

『衝車』:衝撃を一方向に整える加重系に分類される魔法。対障壁魔法として十六夜が作ったオリジナル魔法。力の集中が甘いのは展開速度とサイオン消費削減を重視したためであり、超人として振うならそれで充分なためである。

克人の手加減:『ファランクス』と障壁魔法が区別できるかの試しであったし、自身の障壁魔法でも突破は困難であろうという甘い目算によるもの。さすがに正面突破を予測できるわけがない。自身の甘さを認識できたために、得るモノはあったと本人は思っている。

奥の手:四葉といえば『精神干渉系魔法』か『極めて強力でユニークな魔法』かのどちらかであるが……。

※内容修正
・シルバーブレイドの仕様変更に関して(2017/12/3)

閲覧、感謝いたします。

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