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次世代の直売所に大事なバイヤー気質。仕入れは小売業のキホンのキ。【直売所プロフェッショナル#06】

次世代の直売所に大事なバイヤー気質。仕入れは小売業のキホンのキ。【直売所プロフェッショナル#06】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。彼らは、直売所の戦略として、商品を自ら探しに行く姿勢が不足していると指摘します。では商品を自ら探しに行く「直売所3.0」とは、どのようなお店なのでしょうか?

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小売業の仕事は仕入れと販売

小売業とはなんでしょうか?
小売業とは、商品を消費者に販売する商いのことです。
だから、小売業は商品がなければ成り立ちません。当たり前ですよね……。

そんな当たり前のことをわざわざ述べるのは、その認識が不足している直売所も散見されるからです。

小売業の仕事は仕入れと販売のふたつ。
これが農産物直売所の場合、よりよい販売に目が向くことがあっても、よりよい仕入れに焦点があたることは少ないのです。直売所は「委託式」だからです。
何度もこの連載で書いていることですが、委託式である直売所は単なる場所貸し業になってしまうケースが多いのです。

当連載の第4回で、需要と供給を調整する仕組み(=安値傾向を防ぐ仕組み)をいくつか持っている直売所を「直売所2.0」と表現しました。さらに、今回は、仕入れ機能を強化している直売所を「直売所3.0」と呼びたいと思います。
仕入れ機能とは言いかえればバイヤー機能。つまり直売所3.0はバイヤー気質にあふれた現場です。
なぜ、バイヤー気質が大事かといえば、消費者のニーズをつかんでいるのは農家でも自治体でもなく、売り場を日々管理している直売所のスタッフのはずだからです。消費者のニーズをもっともつかんでいる人が活躍することは、どんな分野の商売でも大事なことです。

では、実際には直売所3.0のスタッフはどのようなことを行っているのでしょうか? 見ていきましょう。

「直売所3.0」とは


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「直売所3.0」にはこんなスタッフがいる

(1)「品揃えGメン」

当たり前すぎることですが、消費者が欲しい野菜・果物をきちんと揃えることが何よりも大事です。
直売所3.0の売り場スタッフは、消費者が欲しいものを揃えるために、農家への声掛けを毎日のように行っています。
たとえば、ダイコンがいつも大量に出荷されてくるのにネギが少ないと分かれば、ネギを作っている農家にすぐに声掛けします。さらに、はざかい期に向けて、通常と違う作型(収穫期)を農家にお願いしています。

委託式の直売所は、出荷している農家の側である程度調整をかけますので、売り場スタッフが放っておいても需要と供給が調整される部分もあります。しかし、直売所3.0ではそれだけにとどまらず、各農家が栽培している品目を把握し、足りないものがあれば出荷するように促します。

これを行わないと、たとえば先の例では、ダイコンが売れ残りやすいと全ての農家が感じた場合、ダイコンの出荷を控え目にしてしまい、次の日や次の週には店頭のダイコンが足りなくなったりします。地域内には在庫があるのに、過剰に供給を減らしてしまうわけです。直売所のスタッフは、常に売り場を観察する「品揃えGメン」として、農家と密なコミュニケーションをとって供給が過少になるのを防いでいく必要があるのです。

こちらの連載別稿も参考にしてください。
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(2)「供給過多対策のアイデアマン」

委託式である直売所の避けられない運命として、特定の品目が供給過多になることがあります。ふつう、直売所ではその状況は放置されます。委託式なのですから道義的にはそれでも構わないといえば構わないのです。
しかし、直売所3.0では、供給過多になることが分かっている品目は、あらかじめ売り方の作戦を練ったり、フェアを企画したりします。供給過多になりやすい品目はその季節がくる前からだいたい分かっているので、事前にアイデアをいろいろと出していきます。
つまり、小売りの両輪である仕入れと販売がうまく連携しているということです。

(3)「地域の魅力発掘請負人」

地域には、実は、魅力的な商材でありながら、直売所に並んでいないものがあったりするものです。
それはもしかするとあまりに人気があるために直売所に出てこないものかもしれません。であれば、直売所3.0は、農家さんなり関係団体なりと交渉をし、その商材をゲットします。
あるいは、地元の人が気づいていない、実は素晴らしい商材が眠っている可能性もあります。直売所3.0は「地域の魅力発掘請負人」として、積極的に農家のところにでかけて、商材を発掘します。農家のおばあちゃんがなにげなく作っている切干大根が人気になる、そういうことだってありえます。

農家の庭先で切干大根を発見。農家を巡ってこうした商材をしっかりと開拓したい

(4)「近隣店舗ウォッチャー」

直売所は地域内の農産物を売るのが基本なので、季節によってない品目があるのはある程度仕方ありません。しかし、地産地消だから仕方ない、と諦めていたら売り上げは上がりません。
本当に売り物は地域内にないのでしょうか? 直売所3.0のスタッフは隣町の直売所、つまりライバルを見に行きます。意外と、同じような気候であっても、野菜のラインナップがまったく異なっていたりするものです。
もし自分の直売所にないものがあれば、それを作っている農家を探したり、新しく作付けをお願いしたりします。

(5)「種をまく人」

直売所3.0のスタッフは、農家さんに欲しい商品の作付けを積極的にお願いします。そうして、直売所の特徴となる商品を増やし、収益を向上させていきます。
なお、作付けを変更することは農家さんにとってリスクとなるので、この作業には直売所スタッフと農家さんのあいだの信頼関係が欠かせません。
直売所と農家の作付け相談については、この連載の違う回で詳しく扱おうと思います。

探しに行くのは野菜・果物だけではない

以上のように、直売所3.0のスタッフは強いバイヤー気質を持っています。結局のところ、バイヤー気質を持つ人にあるのは、もっと多くのおいしいものを消費者に届けたいという思いです。そういう思いがあれば、自然と探しに出かけたくなるはずです。

そして、野菜や果物にくわえて、加工品などそれ以外のラインアップも大事です。
保健上の課題もある精肉や魚介類などはここでは脇においておくとしても、お菓子、飲料、調味料、レトルト食品、豆腐、乾物といった加工品はお客様の満足度を考えるとたいへん重要です。にもかかわらず、ここに目が向いていない場合が多いのです。

なかでも、お菓子や飲料は賞味期限などを気遣う必要があまりないわりに、必ず動くアイテムになってくるので、しっかりと品ぞろえしたいところです。必ずしも地元産にこだわらなくてもよいと思います。
そうした商品は、地域の農業と関係がないではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかし、むしろお菓子を目当てに来た人が地元のニンジンの一本でも買ってくれれば地域の農業収益に貢献することになるのです。ぜひそういう発想を持ちたいところです。

当社店舗「しゅんかしゅんか」の売り上げの約半分は野菜以外が占める

地域の消費者が少しでも直売所に足を向けたくなるような、加工品の品揃え。
ここでも直売所のスタッフのバイヤー気質が問われてくるわけです。
単なる場所貸しとなるだけではなく、小売業として、主体的に品ぞろえを考えていきたいものです。

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