時はまだスピード・シューティング新人戦・女子が終わって少しした頃。
「凄いじゃない!十六夜くん!」
「出場選手を全員トップ4に入れるとは、中々の技術力だな」
「十六夜さんのおかげで4位になれました!これで胸張って地元の田舎に帰省する事ができます!*1」
試合を観戦していた真由美と摩利、選手本人である滝川。彼女らから十六夜はそんな賛辞を受け取っていた。彼女ら以外からも賛辞を受け取っている訳だが――
「いやぁ、俺なんぞはちょっとした伝手で特殊なCADを作ってもらっただけですからねぇ」
――そんな返事で賛辞を受け取ろうとしない。
周りは十六夜のその態度を謙遜程度に受け取っていた。雫は「相変わらず」と、少し曇っている。
とかく、一種目への出場選手が全員上位入賞した事により、ちょっとしたお祝いをされるお昼を十六夜は過ごした。
そうして、十六夜がエンジニアとしてだけでなく、選手としても優秀である事を示す午後がやってくる。
◇◆◇
第三高の天幕にて。
「あら、一条さん」
「一色さんか。……十七夜さんの様子は?落ち込んでいると聞いたが。傍にいなくて良いのか?」
第三高のホープ、一色愛梨と
「……『1人にして』と、言われてしまったわ。……そちらも、
「……ジョージ*2をあまり緊張させたくなくてな。女子の方で出場選手全員を上位入賞させたエンジニアが競技に出張ってくるって事で、かなり気負ってるんだよ。スピード・シューティング、それも新人戦であいつが負けるとは全く思えないんだが」
実戦を重視する第三高、実戦能力に秀でた者たちが集う中でもなお秀でており、才気あふれる両者。二十八家としての面子もあり、普段は皆の模範たらんと背筋を伸ばしている2人。でも、それぞれの親友を憂うこの時ばかりは、その背中が少し曲がっていた。
「エンジニア……。北山十六夜、ね……」
「知ってるのか?」
「知ってるという程ではないわ。懇親会でちょっと話した程度よ。一条さんも見たのではないかしら。肌も髪も白くて、瞳が赤かったあの男性」
「ああ、一色さんが一目惚れしたんじゃないかって噂になってたあの……」
「沓子でしょ、そんな出任せを流したの!後でお仕置きしないといけないわね……!」
デマが流された不名誉を被る愛梨。お仕置きを計画するも、そうなる事を読んでか、お仕置き対象は姿をくらませている。まぁ、噂を流した犯人が沓子とは確定していないのだが。
「……ふぅ。とにかく、少ないけど情報は共有しておきましょう。彼、得意魔法が偏っている魔法師だと言っていたわ。得意魔法以外は苦手だから、魔工技師志望だとも」
『BS魔法師』というある種の蔑称を嫌っている愛梨。その呼称を避けながら言葉を置き換えつつ、得た情報を仲間に共有する。
「なるほど。エンジニアも兼任できるとなると、余程スピード・シューティングで優位に立てる魔法資質をしてるのか」
「紫外線を常時反射しているって、沓子が聞き出したそうだけど。それって光波振動系よね?スピード・シューティングに向いているとは思えないけど」
「色白白髪の理由はそれか。てっきりハーフかクォーターだと思ってたが。……紫外線反射は先天性スキルなんじゃないか?先天性スキルとして獲得した魔法と得意魔法は別系統である例はいくつかある。七草真由美さんは『マルチ・スコープ』という知覚系の先天性スキルを持っているが、別に知覚系が得意という訳ではないだろう?いや、魔法式が広く公開されている知覚系なんてないから、得意かどうか試しようがないが」
将輝は愛梨の疑問を解消すべく、先天性スキルと得意魔法が別系統の例を上げたが、あまり良い例とは言えない。
だが、一番身近であるその例が悪いというだけで、実際に先天性スキルと得意魔法が別系統の例は少ないが存在する。
だから、愛梨も揚げ足を取るような発言は控えている。
「何にせよ、仮説の答え合わせは件の男がしてくれる」
「彼の試合まで、答えはお預け、という訳ね。彼の出番、予選の最後というのが少しもどかしいわね」
将輝と愛梨は推測もそこそこに、十六夜の出番を待つべく、九校戦の生中継が映されているモニター前に腰を据える。
その時が丁度、スピード・シューティング新人戦・男子が始まろうとする時だった。
一番槍は、森崎俊が務める。
「ん?拳銃形CADを、2つ持ち?」
「……見る限り、この選手のエンジニアも件の男だな。とすると、あのCAD自体が特別仕様か」
小銃形CADが主流の競技で、拳銃形を2つも持ち出した森崎の異様な装備。愛梨も将輝も疑問に思ったが、事前に公開させれている各校の九校戦メンバー・データで担当エンジニアが十六夜である事を確認し、腑に落ちた様子となった。また、あのエンジニアが何か仕込んできたと。
ただ、2人のその推測は、ある点で間違いで、ある点で正しい。
2人もその事にはすぐ気付くだろう。
何しろ、仕込んできたのはCADに対してではなくて、選手自体に対して、だからだ。
試合開始のブザーが鳴り、今、森崎は左右のCADで交互に加重系を使い、2つの的を順次壊した。その時間間隔は、CAD片方の電源をオフにする時間よりも短い。
「なっ、CAD同時使用だと!?」
将輝はCAD同時使用である事を即座に見抜き、驚愕した。
CADに電源オンオフを切り替えるような特殊機構を組み込むのは、さすがに九校戦規定のCADスペックに収まらない。
つまりは、そのCAD同時使用が選手本人の技量によるモノなのだ。
「……侮れない相手は、エンジニアの彼以外にもいたようね」
新たな難敵の登場に、愛梨は、そして将輝も、相手を分析するべく映像を睨みつける。
その試合結果はフルスコア。CAD同時使用以外目立った点はない。ただし、将輝は目立たなかった点を逃さない。
「拳銃形は、小銃形より照準補佐が劣るはず。なのに的を1個も逃さなかった」
「栞みたいに、空間把握に優れているという事?」
「いや、空間把握能力じゃないな。あくまで私見だが、的に照準を合わせるのが早い印象だった」
的を壊したら間髪入れずに次の的へCADの銃口を向ける。その銃口は真っすぐ的をブレなく捉え、逃さない。それが森崎のやっていた事であり、『クイックドロウ』で培った高精度な照準操作である。
「……
「……そうね」
新人戦優勝、ひいては九校戦総合優勝を狙っていた一条と愛梨。彼らは予想以上の相手戦力をその目にして、肘を突いた両手を強く握り込んだ。決意を揺るがさぬように、あるいは、祈りを込めるように。
しかし、これがまだ余興にすぎない事を、彼らはまだ知らない。
◇◆◇
予選Aグループが終了し、すでに森崎の予選突破が確定した。残念ながら、もう1人いた第一高の選手は惜しくも敗退となってしまったが。Aグループには吉祥寺もいたため、割と激戦区の様相を呈していたので、予選敗退は仕方ないと言えば仕方がない。
ちなみに、吉祥寺は自身の得意技、『
話は予選Bグループに移る。当たり前だが、競技は非合法な妨害もなく、滞りのないスムーズな進行で進んでいく。
途中フルスコアを出す選手は登場せずに、十六夜の出番となる。
シューティングレンジに上って、瞑想するように目を閉じる十六夜。彼は、ここに至る直前に雫よりかけられた言葉を反芻していた。
―十六夜、本気出して
そんなたった一言が、彼を迷わせる。本気を出すか否かではない。雫にそう指令を出された以上、十六夜に本気を出さないという選択肢はない。
では、どう本気を見せるか。
(エイミィがやってたみたいに移動系でやるのも、別に手を抜いてる訳ではないんだよな。それこそ、エイミィができなかったフルスコアを達成すれば、それで充分だろうけど……)
雫が満足するかどうか。二番煎じを本気と捉えるかどうか。そこが、問題の焦点だ。
では、その問題をどう解決するか。十六夜は考える。
試合開始のブザーが鳴る直前まで考えこみ―――
「……やるか」
―――結論は決まった。
開始のブザーが鳴る。
「悪いな、選手諸君。こっから先は一方通行だ!」
◇◆◇
「何よ、あれ……」
モニター越しに見る光景に、愛梨は言葉を漏らした。一条や現場の観客たちは、息を呑んでいる。
その光景とは、スピード・シューティングの的が得点エリアの中で停止しているという、映像が止まったのか疑ってしまうような、現実である事も疑ってしまうような、そんな光景である。
「……得点エリアに入った直後に停止、という訳じゃない。……それぞれの的が法則性なく、ただ得点エリア内であるという事だけを統一して、停止している。あの男、的1個1個に停止させる魔法をかけてるんだ。自然落下を微塵もしてないから、継続してかけられているな」
「そんなっ、ありえない!」
将輝は冷静さをわずかに取り戻し、起こっている現象を冷静に分析したのだが。あまりの異常現象に、愛梨すらも呑み込めず否定してしまった。
「仮に物体の停止が加速系で行われているとしたら、射出された的の移動ベクトルを完全に演算して、その移動エネルギーを半分だけ転換してる事になる!そんな事、栞と同等以上の物理演算能力を持ってなければできないわ!」
「……優秀な解説だな。今、加速系が使われている事を話してる」
「そんなっ……」
信じられないと語った理論が、公式放送の解説によって実践されている理論だと反論されてしまう。それにより、愛梨は思わずその顔を悲壮感に染めた。将輝も似たようなモノだが。
「……あれで、100個目か。全部の的を停止させて、どうするつもりだ?」
異常な状況をギリギリ現実として認識し、100個目の的も停止したのを見届ける将輝。100個の的が全て得点エリア内で停止している現状で、十六夜が次に何をするのかまで、見届けようとしていた。
それに応えるかのように、十六夜は次の行動に出る。1つの的だけ停止を解き、代わりに移動ベクトルの転換で自由落下を自身の手元に飛んでくるよう操作する。
そうして1つの的を手に取った十六夜は、横一回転する事で遠心力を加えながら、フリスビーでも投げるように的を投げたのだ。
そうすると、その投げられた的はものすごい勢いで得点エリア内にある的に衝突し、お互いを砕く。
驚くべきは、その後の現象だろう。
その壊れた的の破片が、飛来した先の的に衝突して的を壊し、その破片がさらにその先の的に衝突して的を壊す。その現象が繰り返され、ついぞ、全ての的を壊すに至った。
「あ、あれは……、栞の、『アリスマティック・チェイン』……」
そう。十六夜の起こした現象は、まさに愛梨が唖然として零した通り。停止させた100個の的で行った、『アリスマティック・チェイン』である。
「……」
一条が、第三高の天幕にいた選手たちが、現場の観客が、中継を見ていた視聴者が、皆唖然としていた。
規律正しい破片の飛散。まるで花火のような美しい軌跡を見せた男・北山十六夜。彼は全てがパフォーマンスだったかのように、大仰な一礼をしてからシューティングレンジを降りるのだった。
◇◆◇
予選終了後、ちょっとの休憩を挿んで始まる準々決勝。しかし、会場は最早十六夜がどのような勝ち方をするのかと、期待するだけの場になっていた。
実際、十六夜は準々決勝第一試合に組み込まれた訳だが、対戦相手の第九高選手を難なく打倒した。
方法は、投げたコインを加速系で操作し、自身の的全てを射抜くというモノ。相手の妨害も意に介さず、ただ加速系で操るコインだけで以ってフルスコアを叩き出した。対戦形式でフルスコアを出すのは九校戦始まって以来の快挙であると、生中継でも後の振り返り放送でも大々的に取り上げられた。
しかし、その快挙すら十六夜にとって、ただの作戦の内なのである。
「やぁ、森崎さん。どうした?そんな深刻そうな顔をして」
「……七草生徒会長との模擬戦で使ったアレ、使わなかったんだな」
試合場前の控室に続く通路。ばったり出くわした森崎に、十六夜は手抜きを指摘される。
そう。準々決勝での戦い方は、真由美をノースコアに追い込んだ戦い方と異なっていたのである。
「対『カーディナル・ジョージ』*3戦の秘策だよ。万が一にでも対策されたくないからさぁ」
「……あれを対策できる奴なんて、俺は想像もできん」
「俺もそうだ。だから万が一。それに、相手さんただの魔法師じゃなくて研究者だろ?十師族も思い付かないような対策も考えられんじゃねぇかなぁって」
「……そこまでしなくても、お前だったら勝てるだろう。さっきのアレだって、妨害した上でフルスコアなんて、どうすれば良いんだか」
「悪いね、今回は微塵も手ぇ抜く気ないんだ。マイ・プリンシパルに『本気出して』って言われちまってな」
「……マイ・プリンシパルっていうのは、北山さんの事だったか。……そうか、お前は彼女に従順なんだな」
「後見人の娘ですしお寿司」
「……そうか」
森崎はあまり十六夜と雫の関係性を詮索する気がないようで、そう静かに一言呟いた後、試合場へと向かうべく歩み出した。
彼は準々決勝第二試合。ここで勝とうが負けようが、準決勝で絶対十六夜に負かされると、何処か諦観しているようだった。
それでも、きっちり準々決勝を勝つのだが。
彼は予選と違って二挺拳銃はしなかった。しかし、さりげなく起動式ストレージがカートリッジ化されているその拳銃形特化型CAD*4の機構を使用し、オートマチックピストルのマガジンと似た機構となっているそのカートリッジ装填機構で適宜起動式ストレージを変更。加重系魔法9個、硬化魔法と情報強化合わせて9個、加速系魔法9個、それらがそれぞれ入ったカートリッジを使い、攻防を巧妙に切り替えて戦った。
そうして彼は勝利を収めたのだった。
ちなみに、起動式ストレージをカートリッジ化した拳銃形特化型CADはNWCで既に製品化されている。製品名は割と直球で、ノーザン・マシンピストルである。
閑話休題。
続く準々決勝第三・第四試合も滞りなく進み、第三高生徒と吉祥寺が勝ち上がった。ある種意地悪な組み合わせで、準決勝第一では第一高同士、第二では第三高同士が戦う事になる。決勝に両校の最強選手を送り出すとすれば、順当な組み合わせとも言えるかもしれない。
とかく、準決勝まで競技は進み、まずは十六夜と森崎が対戦する。
負け濃厚であるために覇気がない森崎。ただ、抗う気力まではなくしていなかったようで、今できる全力で以って十六夜と相対する。森崎の全力というのはやはりと言うべきか、二挺拳銃だ。
片膝立ちの状態で対戦に臨む森崎。時にCADを一挺だけ手に持って的の破壊に専念しつつ、時に地面に置いていたもう1つのCADを拾い上げて同時使用。硬化魔法二重掛けの妨害。相手の的自体を硬化する魔法と、相手の的複数の相対位置を固定する魔法を行使。的を固くしつつ、相対位置固定による歪な軌道で妨害する。
だが、その程度、意に介する十六夜ではない。十六夜は準々決勝と同じように、投げたコイン1つで自身の的全てを射抜いていく。
結果は言うまでもないだろうが、十六夜の勝利だ。大歓声が響く中、森崎は俯き歯噛みしながら退陣し、十六夜は大歓声に応えるように大仰なお辞儀をしていた。
両者の明暗を鮮烈な程に分け、準決勝第一試合は終了する。
続く第二試合は第三高同士の戦い。どちらも加圧系で的を壊し、情報強化で妨害する王道な戦い方をしていた。故に、地力の差が勝負を分ける。
地力で上回っていた吉祥寺が勝利を収めた。
そうして、スピード・シューティング新人戦・男子、その決勝戦が幕を開ける。
「予想以上でした。貴方が他の選手に授けた戦術も、貴方自身の能力も」
「かの『カーディナル・ジョージ』にそこまでお褒めいただけるなんて、恐悦至極ってやつだね。特に、俺はどっちかっていうと技術者だからな。魔法資質よりも戦術の方を褒められるのは嬉しいぜ」
吉祥寺と十六夜は握手を交わしつつ、試合開始前に短い交流をする。
「貴方は凄い選手です。将輝も一色さんも目を付ける程に。だから、全力で打倒します」
予選、準々決勝、準決勝と見せられて、吉祥寺はまだ燃えていた。勝機は充分にあると、全力でこの戦いに臨もうとしていた。
それが、如何なる絶望に突っ込む事であるかも知らず。
「……そうか、なんか悪いな」
「『悪い』?何がですか?」
「こっから先は一方通行だって事だよ」
相手の勝機を、希望を叩き壊すだろう事に、十六夜は負い目を感じていた。でも、もう決めた事だ。『こっから先は一方通行だ』と。万に一つの勝ち目も与えないと。
十六夜は吉祥寺が訝しんだままなのも気にせず、手を離してさっさと自身のシューティングレンジに立った。
吉祥寺はその一方的な態度に少し不快感を抱きつつ、その不快感も闘志にくべながら、シューティングレンジに立つ。
3つ並んだランプが赤、黄と灯っていく。そうして、最後の青が灯り、試合開始のブザーが響く。ともすれば、晩鐘の鐘の音となるそのブザーが。
「The Show Must Go On!*5」
十六夜は、
何がどう一方的になるのか。その答えはすぐに、この試合を目にする者全てが知る事となる。
射出された的が、まっすぐ得点エリアに入るはずのそれが、得点エリアに入る直前で弾かれた。ただ、的全てではない。
「べ、ベクトル反転で、僕の的だけをピンポイントに……!」
吉祥寺は弾かれている的の法則性に気付き、また、どのように弾いているのかも読み解いた。
言葉にすれば単純な話だ。ただ、得点エリアに入る直前に、移動ベクトルが反転されているだけなのだから。
「あ、ありえない……。自身と相手の的を区別して、相手の的だけ弾くなんて……!」
吉祥寺は、その難解さまで読み解いていた。『言うは易く行うは難し』とはまさにこの事。今目の前で起こされている現象は、言葉にした程単純ではないのである。
そんな単純じゃないはずの現象を現実にされ、吉祥寺は放心する。
得点エリアに入る前に弾かれているのだから、自身は得点エリア内で的を壊す事ができない。点を得られない。
では、弾かれた的を加速系なり移動系なりで自ら得点エリアに持っていけば良いのか。それもおおよそ不可能だ。魔法で移動させたとして、物体は移動エネルギーを、移動ベクトルを得る。だとすると、その移動ベクトルを反転されて弾かれるのがオチだ。
考える。吉祥寺は考える。考えれど、考えれど、『不可能』の文字が頭に過る。
魔法研究者として優秀な頭脳は、ただひたすらに『攻略不可能』の結論を出す。
彼はただ、自分の的を全て弾かれ、相手の的が全て砕かれていくのを、見届けるしかない。
試合終了のブザーが鳴る。スコアは、100:0。
どちらのスコアが0か明記するのは、さすがにくどさまで感じさせるだろう。
そうして十六夜は、膝を付く吉祥寺の横で、観客へと大仰なお辞儀をしてから、この舞台を降りるのだった。