学校統廃合、近づく限界 バドミントンの相手は校長先生…稚内

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 「来年3月31日をもって、閉校してほしい」。今年1月末、稚内市の市立増幌小中学校の閉校を市長に要望したのは、子どもたちを通わせる保護者らだった。市も要望を受け入れ、閉校が事実上決まった。

 前身の学校から数えて約100年の歴史を誇る同校は、稚内空港から内陸に4キロの牧草地に囲まれた小さな集落にある。約30年前にJRの駅が姿を消し、今は路線バスも走っていない。今年度の児童生徒数は5人で、昼休みに鬼ごっこやバドミントンの相手をするのは畠山博次校長だ。運動会は地域住民約50人が集まり玉入れなどに参加した。

 来年度に新1年生が入学する予定はなく、このままだと児童3人になる見込みで、学校や保護者、地元町内会が昨秋から続けてきた協議では、閉校に反対意見はなかった。集団生活で育まれる社会性や協調性を身につける環境がないことに、中学3年の娘を通わせるPTA会長の村井雄大さん(40)は「もうどうにもならないところまで来た。子どもたちの将来を考えると仕方ない」と話した。

 閉校は教育委員会会議でも了承され、市内の小学校は10校となる。市教育委員会は来年度以降、子どもが新たな学校にスクールバスなどで通えるよう調整する。

 少子化の影響で道内では学校の統廃合が進む。文部科学省の学校基本調査によると、小学校は22年度に966校と30年前の6割に減少し、児童数も約22万7000人と半減した。小学校が1校しかない自治体は48に上る。

 その一つ赤平市の赤平小は昨年4月、少子化などで市内三つの小学校が統合して誕生した。市役所やJR赤平駅に近い中心部にあるが、全校児童約250人のうち半数がスクールバスで通学する。

 放課後には1階ホールに多くの児童が集まり、バスの到着を知らせる緑色のランプが点灯すると、「先生、さようなら」と外に駆け出し、4台のバスに次々と乗り込む。中には約10キロ離れた芦別市との境界付近から30分近くかけて通う児童もおり、複数の教職員が乗り間違えがないようルート別に色分けされたバスが発車するまで目を光らせる。

 3校の児童が入り交じってクラスを構成する同小にとっては、いかに出身校の「壁」を取り除くかがカギだった。学校側は統合前から合同授業や遠足を行い、親睦を深めた。赤平小として始動した後も、上級生らが企画に携わった校内ウォークラリーなどの行事を積極的に開いた。

 同級生が約10人しかいない学校に通っていた6年の三浦咲良さん(11)は、「一気に人が増え、仲良くなれるか不安だったが、新しく友達もできて楽しい」と笑顔を見せる。これまで行く機会がなかった市中心部のプールなどにも出かけるようになった。

 開校から1年が過ぎ、新しい学校としての意識も高まってきた。今のところ喫緊の課題は浮上していないが、疋田博和校長は「通学方法やコミュニティーの変化といった『アキレス けん 』に創意工夫や目配りでどう対応するか。これから教職員の真価が問われる」と気を引き締める。

自治体超え 授業など連携

 少子化が進む中、これ以上の統廃合が難しい48自治体の中には、自治体を超えた連携も生まれている。

 泊村と神恵内村の教育委員会は今年2月、合同で授業や課外活動を行うことを柱とした連携協定を結んだ。車でわずか10分の距離にある泊小(児童47人)と神恵内小(同21人)は、ともに複式学級で学んでいるが、体育でバレーボールをするのは難しく、道徳でも多様な考えに触れられない。協定では既に試行していたオンラインによる合同授業の本格化に向けた検討を行うという。

 泊村教委の高山誠教育長は「小規模な自治体がそれぞれ独立して教育するのは難しく限界がある。これからは同じ自治体内の学校のように(神恵内村との)連携を深めていきたい」と語る。少子化が進む中、学校は絶えず対応を迫られている。

北海道の最新ニュースと話題
スクラップは会員限定です

使い方
「地域」の最新記事一覧
記事に関する報告
4292042 0 未踏の人口減社会 2023/06/27 05:00:00 2023/06/27 15:33:22 2023/06/27 15:33:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/06/20230626-OYTAI50029-T.jpg?type=thumbnail
注目コンテンツ
 
読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)