〔まもなくザイレムはバスキュラープラントに到着する〕
〔当然、アーキバスも黙っては居ないだろう〕
〔総力を尽くして迎撃してくるはずだ〕
〔敵を殲滅し、プラントを制圧するぞ〕
[メインシステム 戦闘モード起動]
621、ラスティと俺がバスキュラープラント付近まで到着した。
これからバスキュラープラントの頂上へ向かい…?
やけに静かだな…
地下でルビコン解放戦線が攻撃しているからといって地上の戦力を全て回したわけではないだろう。
バスキュラープラント目前まで進んだ所にそいつは居た。
「お前がレイヴンか ウォルターの猟犬とやるのは初めてだ」
「そして隣にいるのはオルクスだな?お前ともやりたいと思っていた」
「もう1人はV.IV…見たことないパーツだ、それは新型か?」
「待ちくたびれていたところだ 退屈させてくれるなよ」
ランク01/S…V.Iフロイトが単騎で俺たちに襲い掛かる。
フロイト、真人間でありながら(諸説有り)オールマインドにアリーナの特例トップランカーとして認められたヴェスパーのエースパイロット。
理由なき強さの象徴といえる存在だ。
「どれも楽しめそうだが…まずはお前からだ、オルクス」
宣言通りにロックスミスが俺に拡散バズーカを放った。
爆風を避ける為、後方に跳躍。レーザーライフルで引き撃ちに徹する俺に対してフロイトは直撃を避けながら迫ってくる。
最低限の動きで最低限のダメージに抑える…凄まじい操作技術だ。
ロックスミスに載せられたブースター、FLUEGEL/21Zはバランス型と銘打ってはいるが近接推力にも長けている。ブレードホーミングで強引に距離を詰められたか…
レーザーブレードが掠ってしまった。
こちらは数で勝っている。このまま俺が気を引いて追撃してもらえば…と621達を見た俺は愕然とする。
621とラスティが各3機のレーザードローンの対処で足止めを食らっている…!?
あのドローンの動き…俺や621の扱うドローンとは全く異なっている。俺が使うドローンはマルチロックなど出来ないし、放ったドローンは敵に向かっていくだけ…
フロイトのドローンは行動の出だしを的確に潰して俺たちの連携を阻んでいるようだ。
おそらくフロイトはレーザードローンを手動で操作している。
自分のACと6機のドローンの同時操作で3対1に対抗するなんて…
『バケモノ染みた操作技術だな…!』
「そういうお前の動き…真人間とも強化人間とも違うな」
「人間としては早いが強化人間にしては無駄が多い…面白い」
「だが…そのACは面白くない。そのレーザーライフルとプラズマミサイル、恐らく大量のMTとの戦闘を想定しつつACともやり合える引き撃ち型のアセンブルだろうが…堅実すぎてつまらないな。いつものチェーンソーは持ってきて居ないのか?お前とならもっと楽しめた筈だったが…」
『…生憎それは壊しちまったんでな』
「残念だ」
引いては詰められ、引いてはまた詰められを繰り返してなんとかダメージの蓄積を目指す。
レーザーライフルでは貴重な衝撃限界は発生する前にパルスアーマーで回復されてしまった…
シールドとプラズマミサイルを装備しているお陰でなんとかダメージレースには勝てているが…実質ドローンなしでここまでやるのか…!
フロイトは拡散バズーカを俺に向けて放つ。なんの読み合いも無い突然の発射に動揺した俺は直撃こそ免れたが爆風で衝撃限界に達する。
『しまっ…!?』
「飽きたな…そろそろ次に行くか」
『は…?』
衝撃限界に対する追撃は無い。
爆風による煙幕の向こうに、既にフロイトはいなかった。
…やられたッ!?
『ラスティ!フロイトがそっち行ったぞ!』
ラスティに注意を入れた俺はアサルトブーストでフロイトを追いか始めるが、ドローンがまとわりつくように射撃を開始し回避を余儀なくされる。
「その新型、機動力に特化しながらも以前のスティールヘイズより耐久が増している…エルカノ製だな。ハンドガン、オービットで衝撃を蓄積し、スライサーで追撃するコア理論に基づいたアセンブルか。なら見慣れない肩の武装もエルカノのニードル技術だな。面白い。こっちはさらに楽しめそうだ」
「次はお前の動きを見せてくれ」
ラスティはスピードを活かしてフロイトを撹乱。いきなりレーザースライサーを展開して攻勢を仕掛ける。
機体コンセプトが割れている以上不意を打ちに行ったのだろう。
しかしフロイトは即座に対応。ラスティはスライサーをキャンセルしてニードルガンとニードルミサイルで衝撃の蓄積に切り替える。
「流石はエルカノの技術、凄まじい弾速だな」
そうは言いつつも危なげなくニードルミサイルを回避。
チャージしたレーザーブレードで一気に間合いを詰めラスティに反撃する。
ドローンを振り切ってラスティを援護しようとする俺と621だが、レーザーブレードの圧倒的な攻撃範囲に足を止めざるを得ず、再びドローンに追いつかれる。
ドローンの持続時間がやけに長い…一撃の出力を下げて弾数を増加している…?そんなことまで出来るのか…
機動力を活かして攻撃を躱し、連撃を続けるラスティとそれを戦闘経験とセンスで捌き、拡散バズーカとブレードで大火力をぶつけていくフロイト。スティールヘイズ・オルトゥスとロックスミスは重量こそ違えど双方共に近接型だ。
激しい攻撃の応酬が繰り広げられている。
「このラスティには…このルビコンで為すべきことがある」
「守りたいものがある」
「そして…彼らと見届けたい明日がある…!」
「それはACに関係ないだろ?」
「ACを動かすのは楽しい、強いヤツとやるのはもっと楽しい」
「それだけで充分だ」
「続けようか」
ラスティの言葉が響くことはない。
至近距離で拡散バズーカが放たれた。
全弾直撃した筈の拡散バズーカの爆炎を、スティールヘイズがレーザースライサーで切り払っていく。
「より高く飛ぶのは私だ!」
「ターミナルアーマーか…面白い!だが…」
ターミナルアーマーが終了するまでの5秒間。その終了後を飽和射撃で潰すつもりか、スティールヘイズに向けてドローンが放たれた。
瞬間、チャージされたレーザーライフルがロックスミスの左肩武装を貫く。
『…俺たちを野放しにしたな?』
武装が爆発し、大きくよろめいたロックスミスはパルスアーマーを展開。
「…させない」
しかし接近した621のアサルトアーマーが即座にそれを引き剥がすと同時に放たれたドローンを掻き消す。そして…
スティールヘイズ・オルトゥスのレーザースライサーが、ロックスミスを切り刻んだ。
「動け…ロックスミス…!」
「まだだ…これからもっと面白く…!」
ロックスミスの撃破完了。
油断せず確実にとどめを刺しに行ったのが仇になるとは皮肉なものだ。
「やはり彼は、死ぬ事も殺す事も恐れていなかったようだな」
「理由なき強さは…自分も相手も破滅させる危ういものだ」
『…機体は限界みたいだな、ラスティ』
「あぁ…悪いな…戦友、オルクス」
「むりされてもこまる。あとはまかせて」
「頼んだぞ…戦友達よ」
飛び去ってゆくスティールヘイズに背を向けて進み、俺たちはバスキュラープラントの頂上へ辿りついた。
『ようやく着いたな…』
「ここが…」
〔待て!敵性反応…!2人とも すぐにそこから離れろ!〕
「『ッ!?』」
回避は間に合わないっ!
蒼い光が、俺たちのACを焼き払った。
[Amphora M2 機体反応ロスト]
[DEYBREAK 機体反応ロスト]
間一髪で脱出レバーを引いて離脱した俺たちは目の前の敵に対する戦闘手段を失った事を理解する。
『お前は…まさか…!』
「あーきばす・ばるてうす…!」
「本社からの命令を…いえ…オルクスへの報復を…」
「障害を…排除します…」
「オルクス…!オルクスオルクスオルクスオルクスオルクスオルクスオルクスオルクスオルクスオルクス…!」
「おのれ…おのれおのれおのれおのれおのれ…!」
「この私に排除されること…光栄に思いなさい…」
『スネイル…!!』
◯アーキバス・バルテウス
ファクトリーに送られた瀕死のスネイルを搭載した改修型バルテウス
搭乗者の負担を考える必要がないのでその分出力が上がっている
◯スネイル
最新技術をふんだんに盛り込んだ上質な素体としてアーキバス・バルテウスの生体パーツにされた
ラスボスウォルターのように企業の命令とオルクスへの憎しみを混同した状態になっている
…同じ状況なのにこの格差である
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