論文提出を3日後に控えた夜。
達也は自分のホームサーバーが攻撃を受けているのに気がついた。
何度撃退してもしつこくアタックを続けており、相当な執念だと達也は感じている。
アドレスの変更をしなくてはならなくなった状況に、達也はため息をついて逆探知プログラムを立ち上げたのだった。
翌日。
達也からメールを受け取った智宏は昼休みに2人でカウンセリング・ルームを訪れていた。
もちろん相手は遥。
「途中で接続を切られてしまいましてね。どこから攻撃されたのかはわかりませんでした」
「それで。私は何をすればいいのよ」
嫌がっていることを隠そうともしない。というか達也と智宏が姿を見せた瞬間に「げっ」という顔を遥がしていたのを智宏は覚えていた。
まぁ3人の過去の経緯を考慮すれば遥を責めることはできないだろう。
遥は不貞腐れながらも依頼を聞いた。
「達也も先生にそんなに手間を取らせませんよ。な?」
「その通りです。先生、最近魔法関係の秘密情報売買に手を出している組織について教えてくださいませんか?」
「あのね?私にも守秘義務があるんだけど・・・・・・」
「無論です」
「むっ・・・・・・はぁ。先月末から横須賀で密入国事件が起こっているわ。あとマクシミリアンやローゼンの部品メーカーが盗難にあってる」
1度受けてしまうと中々縁を切れないもの。
諜報に携わる者としてまさか自分が仕掛けられるなんて思ってもみなかっただろう。
ちなみにマクシミリアンとローゼンはCADの世界トップメーカーだ。
「魔法機器の製造メーカーがですか」
「無関係じゃなさそうだな」
「決まったわけじゃないわよ。でも論文はメディアに入れて持ち歩きなさい」
これ以上話すことはない、という風に遥はディスクに向かう。引き際は心得ていたので、智宏と達也は礼を言ってカウンセリングルームを出ていった。
そして放課後の風紀委員会本部にて、達也は五十里相手に昨日の不正アクセスの顛末を説明していた。
「本当かい?被害は?」
「こっちは大丈夫でした」
「先輩のお宅こそ大丈夫でしたか?」
「うん。何もなかったよ。じゃあクラッカーの狙いは・・・」
「ええ、論文ですね」
「心当たりはないけど・・・この話は市原先輩にもしとくよ」
「ありがとうございます」
五十里は冷静に現状を理解して提案を立てた。智宏と達也もそれに賛成し、対策を考え始めた。
するとそこへ・・・
「やっほー。啓お待たせ!」
顔を見なくても声色でわかる機嫌の良さで花音が部屋に入ってくる。
返事を待たずにドスンと音を立てて五十里の横に座った花音は彼の腕を抱え込んでじゃれ付き始めた。
そして一緒に入ってきたのは摩利だった。
達也は立ち上がって席を譲る。
「二人とも久しぶりだね。達也君、花音の仕事ぶりはどうだい?」
「え!?摩利さん!」
「そうですね・・・・・・整理整頓はきちんとやっています。捨てるのは上手なんですが思い切りすぎる時もありますよ」
「「うっ!」」
達也は抑揚の無い口調で告げると、摩利と花音はそろって居心地悪そうに顔を背けた。
摩利は自分は整理整頓が苦手なのだと言うことを自覚していたし、花音は必要な物までポイポイ捨ててしまう事が多々あった。
「花音はもう少し事務をやなきゃダメだよ?司波君に押し付けじゃないか」
「だ、だってぇ~」
五十里と一緒にいる時といない時の態度が大きく変わるこの瞬間、他の風紀委員が見たらどう思うだろうか。
そんな事を考えながらも、智宏は摩利にこう言った。
「ところで先輩はなぜここへ?もしかして警備の話ですか?」
「おっと、そうだな。我々が行うのは会場ではなくプレゼンメンバーと資料や機材の警護だ」
「会場はやらないのですか?」
「そっちはプロを手配する」
「なるほど」
「了解です」
やはりコンペの会場にはプロの魔法師が警備を担当するらしい。学生よりも実戦経験がある彼らの方がよいのだろう。
だが問題は生徒の護衛だった。
4年前に会場へ向かう生徒が襲われる事件があり、その時から各校は護衛を付けるようになったらしい。
「啓を守るのはあたし!」
と、花音が自信たっぷりといった顔で摩利を見る。それに対し五十里と花音以外は彼女を苦笑するのではなく温かい目で見るだけで済ませた。
「市原には服部と桐原が付くそうだ。問題は君なんだが・・・」
「そうよねぇ。司波君に護衛って言ってもね」
「俺がやりますよ」
「智宏・・・?」
「まぁ四葉なら達也君と同等くらいの実力はあるし・・・・・・大丈夫か。頼めるか?」
「任せてください」
こんな感じで達也には智宏が護衛に付くことになった。
確かに、達也を護衛できる生徒はほぼいないと言ってもいい。逆に足でまといになるだけだ。1高で達也の護衛が務まるのは智宏や克人ぐらいなのだろう。
その日の放課後、智宏と達也、五十里、花音の4人は高校の近くにある商店街に来ている。なぜここにいるのかというと、学校の購買にある3Dプロジェクター用の記録フィルムが在庫切れを起こしていた為に、わざわざ文具店まで足を運んだというわけだ。
ちなみに護衛をするはずの花音は五十里にベタベタくっついていたので、店内にいる間は智宏が監視を行っていた。
会計が終わると周囲の監視をしていた智宏は外に出る。そしてさっきからわかりやすい敵意の視線を感じていたのでその方向に意識を向けていた。
店から出てきた達也も同じ視線に気がついていたのだろう。智宏と目を合わせると「ふう」とため息をつく。そんな2人の様子に何かを察した五十里は小声で智宏に話しかけた。
「どうかしたのかい?」
「先程からこちらを監視している者がいまして・・・」
「え!それってスパイ!?」
智宏の後に「どうします?」達也は聞こうとしたが、花音が割り込んできてしまう。しかも大声で。
その声量は近くで監視している者に対して逃げろと言っているようなもの。その証拠にこちらを見ていた視線は外れて気配も遠ざかっていた。
しかし、普段から鍛えている花音は智宏と達也が見ている方向に向かって走り出す。
「私が!」
「花音!気をつけて!」
「わかってるって!」
同世代でもトップスクラスの実力を持っている花音はアスリート並の脚力は持っていないが、一般の高校生になら余裕で追いつける。
追いかけるとすぐに逃げていく小柄な人影を視界に捉え、それが少女であることや自分と同じ制服を着ている事に驚きながらもぐんぐん距離を詰めて行った。
その時、追いかけられている少女は走りながら後ろにカプセルを放った。
まずいと思った花音は目を腕で庇おうとしたが間に合わず、カプセルは凄まじい閃光を放って周囲の人間の目にダメージを与えた。
ダメージを回避できた五十里は花音の前に庇うように立ち、【
すると少女がいつの間にか乗っていたスクーターのタイヤが空回りを始め、前に進まなくなってしまった。
もう詰んだ。
誰もがそう思った時、焦った少女はグリップの脇にあるボタンを押した。
その瞬間、スクーターの後部座席が吹き飛び連装のロケットブースターが姿を現した。ブースターは噴煙を吐き出しスクーターを急発進させ、智宏達が唖然としている内に少女の姿はみるみる小さくなって行く。
「ま、まじか」
「何考えてるのよ・・・」
液体燃料をシートの下に仕込んでまで逃げた少女に対し、4人はしばらく硬直していたのだった。下手したらあの少女はバイクごと吹っ飛んでいたかもしれないからだ。
♢ ♢ ♢ ♢
智宏達から逃げた少女は協力者が用意してくれたボックスワゴンに乗り込み、先程まで背中を襲っていた熱に恐れを抱き始めた。まさかこれほどまで恐ろしいとは思っていなかったのだろう。
少女は壊れ始めていた。
しかし、誰も彼女を止める者はいなかった。
東京の池袋にあるビルの一室。ここにはがっしりとした体型の男達が旧式のモニターを眺めていた。
「
「大丈夫でしょう」
「ふん。まぁいい」
「そう言えば監視対象・司波小百合は魔法科高校に通っている子供に会っています」
「魔法大学の付属高校です。作戦に好都合ではありませんか?」
「確かにな。第1高校も活動対象にするか・・・・・・ならば小娘に対する支援を強化しろ」
男は部下に指示を出し、そのまま後ろに立っている1番大柄な男に対して続けざまに命令を下した。
「
「
そして大柄な男は命令を受けると部屋を出ていった。
映画の最初らへんでリーナが「任務から帰ってきたばかり」って言ってたけど、あれは日本での任務だったんですね。よくよく考えるとお土産も日本の物だった気が・・・・・・。もう1回映画見直そうかな。