夏休みも終盤を迎えた頃、智宏は再び四葉の実家へ帰っていた。
別に真夜に「早く帰ってきて」とか、葉山に「真夜様を落ち着かせて欲しい」などと言われたからでは断じてない。そう。断じて。
本家に帰ってきてからというもの、朝昼夕の食事は真夜と食べたり、録画していた九校戦を真夜と観たり、親子にしてはベタベタしすぎなのでは?と思ってしまうほどスキンシップが多かった。
そしてある日の夕方。
智宏は達也に電話をかけていた。
『はい』
「俺だ」
『智宏か。どうかしたのか?』
「実はさ。新しい魔法を作りたいって思ってんのよ」
『ああ』
「で、達也になんかアドバイスでも貰えればと」
『そうだな・・・・・・智宏は強力な防御魔法がないだろう?作るならそれだな』
「防御魔法ねぇ」
『まさか攻撃魔法だけ覚えてればいいなんて思ってないだろうな?』
「ま、まさか。わかった。防御魔法だな?それならいける。ありがとうな」
『何かあったら連絡してくれ』
「おう」
達也との話し合いで決まったのは防御魔法。
新学期が始まるまで時間は多くはないが、できれば完成させたいと智宏は思った。この日の夜は達也から参考に送ってもらった起動式に、智宏がオリジナル要素を加えてCADに打ち込む作業をやったせいで寝る時間が半分以上削れてしまった。
翌日。
智宏は彩音を引き連れて魔法の屋外実験場へ来ていた。その足元にはスーツケースがあったが、彩音は何かあるのだろうと思ってあえて聞かなかった。
「さて。今日は新魔法のためにアシスタントとして彩音を連れてきた。異論は?」
「ございません。お役にたてるなら本望です」
「ならばよし。今回俺が習得したいのは防御魔法だ。昨日考えたが、流星群の応用にしたいと思っている」
「私は何をすればよろしいですか?」
「彩音には俺に向けて魔法で石を飛ばして欲しい」
「そんな!智宏様に石をだなんて!」
「いいから。これは実験でもあるんだ。やってくれ」
「・・・・・・かしこまりました。ところでそのスーツケースは?」
「ああ、これは後で使うんだ。とりあえず始めようか」
2人は50mほど離れると、周りに何もないのを確認してからCADを構えた。
「いいぞ!」
「はい!いきます!」
彩音が石を飛ばす直前、智宏はCADに昨晩打ち込んどいた魔法を発動し、人には見えない半径10mの空間を自分を中心にして展開する。そして石が飛んでくると、空間の中心、つまり智宏のいる場所から光条が高速で飛び出して石を迎撃した。
光条に触れた石は接触した瞬間に飲み込まれて消失し、光条自体も迎撃した瞬間に消えてしまった。流星群が物体に穴を開ける魔法なら、対象より大きな光で飲み込めばいいのだ。
初めはゆっくりだったのでマニュアルで迎撃していたが、次はどうだろうか。
「次だ!スピードを上げろ!」
「はい!」
智宏は先程より2、3倍スピードを上げた石を、今度はオートで迎撃しようとした。
マニュアルでは飛んでくる物体を認識して、それらが迎撃空間に入った瞬間に迎撃している。そしてオートはあらかじめ展開してある空間に智宏を対象とした攻撃のみを自動迎撃する。例えば狙撃される時などには役立つはずだ。
スピードを上げた石はまっすぐ智宏に突っ込んで行き、空間の中に入ると先程と同じように迎撃された。
「よしよし。オートもオッケーっと。じゃあ彩音!」
「はい!」
「今度は好きな場所に撃ち込んでくれ!もちろん俺に言わなくていい!」
「わかりました!」
次、彩音は智宏のどこに石を撃ち込むか少し考え、結果死角に撃ち込む事にした。
しかし、智宏は飛んできた方向に振り向きもせずに石を迎撃。これで不意打ちにも対応できる事が証明されただろう。
満足した智宏は彩音を呼び寄せ、持ってきたスーツケースに鍵を挿した。さらにパスワードを入力すると、ガチャッとロックが解除されたような音がする。
その中に入っていたのは・・・・・・
「彩音、これを」
「拳銃ですか?」
「ああ。使った事はあるだろ?」
「は、はい」
中には1丁の小さな拳銃。それと1着の防弾アーマーが収めれている。防御アーマーはチョッキより上半身を覆う面が多く、防御力を増した物だ。
「最後は実弾のテストだ」
「え!?本当に危険ですよ!」
「大丈夫大丈夫。俺防弾アーマー着るから。その拳銃だって威力は低いやつだし、彩音はこの防弾アーマーを狙ってくれればいいんだ」
「し、しかし・・・」
「なあに。失敗したら俺が未熟だったって事。責めはしない」
「本当に問題ないのですね?」
「ああ」
「・・・・・・わかりました」
最後は実弾を使用したテスト。
先程の魔法より速く、危険で、当たりどころが悪ければ死ぬ可能性だってある。魔法が実用化された今でもまだ銃器は軍や警察の武器だ。しかも対魔法師のハイパワーライフルも実装されている。
もちろん拳銃と防弾アーマーは真夜の許可をもらって持ち出した物。最初は真夜にも反対されたが、防弾アーマーを着るし急所に当てないようにさせると説得したら渋々了承してくれた。しかし真夜の事だ。万が一の時は救護班・・・もとい達也にいつでも連絡をとれるようにしているのだろう。
さて、防弾アーマーを着た智宏と拳銃を持った彩音は先程より離れた位置についた。
智宏が手をサッと挙げると、彩音は拳銃を慣れた動作で構える。その銃口は主である智宏に向けて。
そして彩音は狙いを定めて引き金を引く。
拳銃から飛び出した銃弾はまっすぐ智宏の肩へ・・・・・・。
智宏も迎撃空間を限界の20mに広げ、発砲する前に目を瞑った。
結果、迎撃空間に入った銃弾は先程の石と同じように光に阻まれ、智宏に命中する事はなかった。目を開けて身体を確認しても外傷は見つからなかった。彩音も拳銃にから弾倉を抜き、銃身をスライドさせて弾が無いのを確認し、安全装置をかけてからこちらに小走りで近づいてきた。
「智宏様!」
「・・・やったのか?」
「お怪我はされていませんか!?」
「ああ。上手く魔法が発動した感覚もあった・・・・・・成功だ」
「おめでとうございます!」
これで全ての実験が終了し、無事智宏の新魔法が完成した。
防弾アーマーと拳銃をスーツケースに戻して厳重に鍵をかけ、智宏は水筒からコップに紅茶を注いだ彩音からそのコップを受け取った。
「うん、ありがと」
「魔法の名前はどうされますか?」
「そうだな・・・・・・【ラム】なんてどうかな?」
【ラム】。
それは決して酒ではなく、昔アメリカ軍や自衛隊が使用していた近接防空ミサイルRAMの事。光球から出る光条がそれっぽいのでこの名前にしたのだ。ファランクスは既にあるし、近接防空兵器のCIWSのように弾をばら撒くのではない。残るのは誘導兵器だけなのでこうなった。
「ラムですか。素晴らしいですね!」
「ありがとう。じゃあ、帰ろうか」
「はい!」
こうして智宏は新しい魔法を会得し、家に帰って真夜に報告すると真夜は大変喜んでいた。
後々深雪に頼んで遠距離から自動小銃並の連射速度で攻撃してもらったが、それを全て迎撃した事により達也と深雪から賞賛を貰う事ができた。
まだ実戦で使った事のない魔法なので、克人のファランクスより優れてるとも劣っているとも言えない。だが、智宏は防御面において克人に勝る者はいないだろうと思っていた。それとキャスト・ジャミングは通じない・・・はずだ。通じるならそれは智宏より干渉力が高い事を意味する。あとナイフなどの近接武器で攻撃された場合は、その攻撃を弾けるようにした方が良いのだろうか?まぁそこまで接近されても体術でなんとかなりそうだが。
また、この魔法はファランクスと違って発動時はサイオンを常に供給しているため、強い攻撃になるほどサイオンの消費と疲労が溜まるのが早くなる。使い方には気をつけなければならない。また、瓦礫などの巨大な物体はさすがに迎撃できないので、それは重力魔法を使うなり流星群のシャワーを浴びせるなどして無力化すればよい。
数日後、智宏と彩音は7月の時みたいに真夜や葉山に送り出されて東京に戻ったのだった。
2期が始まりましたね。リーナが相変わらずポンコツだったのが個人的に嬉しかったです。リーナも可愛いけど雫が・・・雫の出番がぁ・・・・・・。
と、いうわけで今期はリーナを愛でることに専念します。